〝ホロウ・ウェーブ〟を倒して〝ホロウ・ストレア〟を任せたストレアの方を見ると何故かストレアは膝を着いて無抵抗、〝ホロウ・ストレア〟が両手剣を振り上げているシーンだった。このままではストレアが殺されると判断した俺は〝ホロウ・ウェーブ〟との戦闘で気怠い身体を無理矢理動かして〝ホロウ・ストレア〟の両手剣を防いだのだが……何故か知らないが、乱入した事で距離を取った〝ホロウ・ストレア〟からゴミでも見る様な目で見られている。
「どうした?そんな目で俺の事を見て」
「……ウェーブ、さっき自分がなんて言ったか覚えてる?」
「……?うちの貴重な非汚れ系の天真爛漫オッパイのストレアに何吹き込みやがった、だっけ?」
「大体合ってるけどさっきよりも酷くなってるわよ……!!」
「いや、だってさぁ〝
「なんで若干半ギレしてるのよ」
ユウキとシノンは俺の社会的な立場を削ってまで俺を落とそうとしてくる……結局落とされたけど。アルゴは割りかし腹黒だし。そんな中でストレアは純粋で天真爛漫、しかも巨乳というとても素晴らしい属性を備えている。特に巨乳のところが重要。そんな彼女がいつもの彼女らしからぬ様子になっていれば半ギレの1つや2つはしたくなる。
「ウェーブ……」
「どうした?そこの怖い奴に虐められたのか?」
「私……AIで……モンスターで……人間じゃ無くて……」
涙を流しながら嗚咽交じりに語るストレアの声は悲痛な物だった。恐らく〝ホロウ・ストレア〟から自分の正体を聞かされて、その衝撃で混乱しているのだろうか。
はぁ……
溜息を吐きながら、俺はストレアの頭に拳骨を見舞った。割と本気で、それこそダメージが発生するレベルで。
「今更気が付いたのかよ。そのくらい、姉って単語で予想しておけ」
「……え?」
「待って。ウェーブ貴方、ストレアの正体に気づいてたの?」
「AIである〝ホロウ・ストレア〟が姉と呼んだのならストレアもAIじゃないかくらいは予想してた」
この位なら予想して当然だ。〝ホロウ・ストレア〟の発言を聞いてからまさかと半信半疑だったが、ストレアと出会った時に記憶喪失だと言っていた事を思い出して予想の1つとして数えるくらいの確信はしていた。
「で、お前がAIだとして俺の感想を言わせてもらう……
そう、ストレアがAIだろうが人間だろうが、俺からしてみればそれがどうしたというレベルの話でしか無い。元が何であろうと出会った時から今日まで一緒に戦い続けて来たのはストレアなのだから。そして戦う事を選んだのは他ならぬストレアの意思だから。それにカーディナルが関与する余地なんて微塵もない筈だ。
AIだから、人間じゃないからと悩んでいる事が、俺から言わせて貰えば余りにも馬鹿らしい。
「わ、私は……」
「……だったら、どうしたいのか言えよ」
持っていた刀……〝ホロウ・ウェーブ〟からドロップした〝妖刀・不知火〟の刃をストレアの首筋に当てる。ストレアの首の皮が切れ、滲み出した血が刃を伝う。
「苦しまずに死にたいのならそういう風に殺してやる。苦しんで死にたいのならそういう風に殺してやる。
最早これは脅しに近い。自分の正体が人間じゃ無いと知らされて精神がボロボロのストレアにする事じゃない。攻略組の奴らに知られたらリンチされて爆発させられる未来が見える。
でも、こうするしかない。この場で蹴り上げてでも答えを出させる以外に無いのだ。こういう問題は後回しにすれば余計に拗らせて面倒になると経験で分かっているから。
だから然りげ無く選択肢を狭めて与えてやる。俺が投げ掛けた物は全てが死に直結している。考え無しの、罪悪感しか持っていない者ならば疑問に思う事なく死ぬ事を選ぶだろう。仮にストレアがそうであって、死ぬ事を選んだのなら俺はその通りにストレアを殺す。
でも、ストレアが抱いているのが罪悪感だけでは無いのなら、他に何かを欠片でも感じているのなら。
「わた、私……AIで……人間じゃ無くて……」
震えてどもるストレアの声。眼からは涙がボロボロと溢れている。
「今まで、知らなかったけど、みんなを騙してて……」
瞼を強く閉じても涙は止まらない。身体を強張らせても震える声はそのまま。
「でも……でも……!!私は生きたい!!生きて、みんなと一緒に戦いたい!!最後まで戦って、このゲームを終わらせたい……!!」
そうして吐き出された本音は生存欲。生きたい、死にたく無いと、みんなを騙していた罪悪感を抱きながら叫んでいた。
「……そうだよなぁ」
それを聞いて身震いする。あぁ、素晴らしいと、美しいと泣き叫ぶストレアの姿を見て感じている。さっきまで〝ホロウ・ウェーブ〟と心意を使って戦っていた反動からか、感情の抑制が上手くできない。
だから、思った通りに行動してしまう。
「えーーー」
ストレアの手を引き、抱き締める。痛いくらいに力強く、物理的な距離をゼロにして密着し、ストレアを全身で感じる。
「良く選んだ。人間じゃ無くても、AIだとしても、俺はストレアの味方だ。お前の面倒見るって会った時から決めてるからな」
片手を腰に回し、片手で手荒く頭を撫でる。ユウキとシノンに見られたら処される事をしている自覚はあるが、感情の抑制が上手くできないのだから仕方がない。
ストレアの面倒を見ると決めたのだ。なので俺はストレアの選択を尊重する。罪悪感を抱きながらも生きたいと叫んだ彼女の意思を、この世界で生きるストレアの意思を尊重する。
「だから待ってくれ。すぐに終わらせるから。その後の事は、フロアボス終わってから考えようや」
どうにか泣き止んだストレアを待たせて〝ホロウ・ストレア〟と向き合う。ストレアが選ぶまで待っていてくれた事を感謝しないといけないな。
「悪い、待たせた」
「ううん、私にも責任あるから気にしてないよ……でも、私の前で他の女の子とイチャつくのはいただけないわよ?」
「そこは許せよ。流石に自殺しかねない精神状態で放置は出来ないからな」
「確かにそうよね。うん、ウェーブならそうするって思ってた」
「身内限定の優しさだけどな」
「誰彼構わずに優しさ振り撒く優柔不断よりも良いと思うわよ」
「そいつはどうも」
〝ホロウ・ストレア〟の武器は両手剣に鎧、見た所負傷している箇所やダメージを受けている様子は無し。それに対して俺は右手に〝妖刀・不知火〟を、左手に〝妖刀・村正〟を握る。ユウキとシノンから貰った〝宵闇の剣〟と〝煌翼の剣〟は〝ホロウ・ウェーブ〟との戦闘で壊れてしまったから。
「二本とも刀なの?片手剣は?」
「〝ホロウ・ウェーブ〟との戦闘で壊れてな。あぁ安心してくれ、手抜きとかしないから」
そもそも、俺はリアルで二刀流をするときはどちらも刀を使っていた。SAOでは気に入った刀が二本揃うことが無かったので片方を片手剣にしていたのだが今は気に入った刀が二本揃っている。
つまり、ようやく本来の武器で戦うことが出来るようになった訳だ。
そして合図も何もなしに俺と〝ホロウ・ストレア〟は同時に突貫する。
100ページ突破にユウキチとシノノンを放ってヒロインしているストレア。2人が見ていたらグヌヌってからウェーブの事を逆レしていた。