「カハーーーッ」
真っ白になった視界と全身を磨り潰される様な衝撃から空間爆撃に直撃した事を悟る。目は微かに見えるが耳は轟音でやられて使い物にならない。加えて左腕の肘から先と右脚の付け根から先の感覚が無くなっているので〝部位欠損〟でも起こしたに違いない。ボヤける視界でHPを確認すればマックスあったはずなのにあと数ドットでゼロになるまで削られていた。
第一形態とは比べ物にならない程の威力に〝部位欠損〟が発生する広範囲攻撃。俺のステータスのおかげで死ななかっただけで、ユウキを投げていなかったら多分死なせていただろう。あの時の俺の判断に拍手を送りたい。
〝妖刀・不知火〟を口に加えて残された右腕でアイテムポーチから〝治癒結晶〟を取り出して使用。マックスまではいかないが数ドットしかなかったHPはグリーンまで回復し、〝部位欠損〟で無くなっていた左腕と右脚、それに霞んでいた視界と潰れていた聴覚が元に戻る。
「ーーー不知火ぃぃぃぃぃ!!!」
元に戻った足で着地すると死にかけた事を心配してなのか離れた足場からユウキが俺の本名を叫んでいる。確かに助けられたと思ったら死にかけていたとなれば心配は普通にするだろう。大丈夫だという意味を込めてサムズアップしたら安堵した表情と共に下向きのサムズアップを突き付けられた。
多分心配させるなという意味なのだろう。だけど微笑みながらそれは止めてほしい。なんかよく分からない恐怖を感じるから。
片目で〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟を見ながら片目で下の戦況を見る。一瞥した限りでは苦戦している様子は見られない。〝リトル・ティアマト・ガーディアン〟の多さにこそ手こずっているが順調に殲滅出来ている。
助けは要らないと判断して右脚の薙ぎ払いを回避しながらユウキにハンドサインを送り作戦を伝える。頷いて了承の意思を確認したところで〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟に接近し、宝石を全力で叩き斬る。
悲鳴を上げて悶えるがそのリアクションは段々と小さくなっている気がする。ダメージになれたのか、それとも痛がればそれが隙になるとAIが判断したのか。
どちらにしても好都合だと考えながら宝石に切っ先を突き立てて落ちない様にしながら宝石に残っていた傷跡をひたすらに殴り続ける。その間に少しでもダメージになるようにと突き立てた〝妖刀・不知火〟で抉るもの忘れない。
流石にそこまでやられれば我慢ならないのか〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟は激しく悶絶。HPゲージが7本目まで削れた事に満足しながら近くの足場に着地、
そして全力で逃げ出す。
〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟のタゲは俺に向けられているので脚のラッシュは俺に来る事になる。必ず殺すという殺意が乗せられた一撃必殺の連撃を回避し続ける。初見では焦ったが二度目ともなれば流石に慣れる。それにユウキを抱えていないので一度目よりも自由に動けるのだ。
躱せて当然。躱せない筈がない。躱せなければおかしい。
そしてラッシュの締めだと言わんばかりに放たれた挟み込みを跳躍して躱す。次に来るのはあの空間爆撃だろう。血が上った様子から息切れした様子になり、視線が向けられる。
〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の目にはあの時と同じ様に妖しい光が灯っている。その視線を空中で体勢を上下に入れ替えながら足場の裏側に着地し、掴んで落下しないようにしながら受け止める。
「良いのか、俺ばっかり見てーーーもう一人いる事、忘れてないか?」
「ーーー
空間爆撃が放たれるであろう直前に、横合いからユウキが7連撃のソードスキルを叩き込み〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の行動を中断させた。
〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の視線は俺に向けられていた。つまり〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の注意は俺のみに向けられていて、ユウキを全く注意していなかった。そんな状況であれば不意打ちなんてものは正面からでも成功する。
ユウキの活躍により7本目のレッドまで削る事が出来た。注意していなかった、来ると身構えていなかったからなのか〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の悶絶は最初の頃と同じ様なオーバーなもの。しかし気を抜いてはならない。ユウキは空間爆撃を中断させたのだ。タゲがユウキに移った瞬間に空間爆撃をして来る可能性はある。そうなればユウキのステータスでは耐えられずに死んでしまう。
なので、足場を蹴って〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟に向かう。悶えて振り回される腕を掻い潜りながら接近を果たして頭部に着地、そのまま〝妖刀・不知火〟で宝石を斬る。
「
斬る、斬る、斬る、斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る……苦しみから顔を擦る〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の腕が来るまでの約10秒の間に全力で斬り続ける。跳躍しながらでは一度か二度が限界だったが頭部という足場が確保出来た以上は
懸念があるとするなら武器が持つかということだけ。鉄クラスの硬度を刃物で斬るなんて常識的に考えればおかしいことで、そのおかしいことを実現させる代償として武器の寿命をガリガリと削っていく。リアルなら鈍で数回、名刀クラスで十数回しか放たない程に武器への反動は大きい。
だがそんな懸念は〝妖刀・不知火〟に関しては不要だったらしい。
斬鉄を放つ度に耐久値が削れ、それと並行して
こんな能力があったんだなと感心しながら〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟の腕を飛び降りて避け、HPゲージが8本目のレッドまで削れていることを確認して足場に飛び移りながら全力で逃げる。
そして空間爆撃が放たれた。俺の周囲一帯が爆ぜ、視覚と聴覚と触覚に大きなダメージを与えながらHPを大きく削る。発生した〝部位欠損〟で無くなったのは両足。片手さえ残れば良いので足が無くなったところで問題は無い。〝治癒結晶〟を砕いてHPと〝部位欠損〟を回復させる。
予想していた通りに空間爆撃が放たれて、タゲを取っといてよかったと安堵しているとさらに脚のラッシュが放たれた。来る可能性があると考えていた上に三度目ともなれば焦りは微塵も感じない。ユウキはソードスキルを放って直ぐに逃げ出しているので巻き込む心配も無い。
「さて、次は何をしてくれるんだ?」
全力で逃げ回りながら、俺は〝ティアマト・ザ・ロアードラゴン〟が次に何をして来るのかを心待ちにしていた。
空間爆撃(強)、それはキチ波ステータスでも残り数ドットまでHPを一気に削り、さらに四肢の内ランダムで二箇所に〝部位欠損〟を発生させる極悪技。何が酷いって範囲は第一形態の時と然程変わりがないこと。つまり広範囲に高威力とかいう。