「「「「「ーーー乾杯ぁい!!」」」」」
「か、乾杯ぁい……」
ウェーブが男だけで飲み会をすると言うので対抗するように女子だけで飲み会をする事にした。メンバーはボクとシノンとアスナ、ストレアとアルゴ、そしてアスナの友人だと紹介された中層プレイヤーで鍛治職人のリズことリズペットの6人。
「ッハァ〜!!キクゥ〜!!」
「この一杯のために生きているって感じね」
「二人とも、なんだがお酒以外に楽しみがない大人みたいになってるわよ!?」
「ユーちゃんとシーちゃんだから仕方ないんじゃないカ?」
「すいませ〜ん、このスピリタス?って奴くださ〜い!!ジョッキで!!」
「ストレアさん!!それただのアルコールだから!!ジョッキで飲むような物じゃ無いから!!」
駆けつけ一杯とエールを飲み干し、シノンと共にその美味さに舌鼓をうっているとアスナから注意されてしまった。分かってる、オッさん臭いと分かってるけど辞められないんだ。アルゴは後で〆る。リズは攻略組に囲まれてガッチガチに緊張している様子だったがストレアと絡ませておけばその内平気になるだろう。
でもストレア、どうしてスピリタスをジョッキで飲もうとしたの?
「ねぇみんな……ちょっと相談があるんだけど良いかな?」
お酒を入れながら食事を進め、リズの緊張もほぐれて来たところでストレアがワイングラスを置きながら神妙な顔付きでそう言って来た。ストレアのこういう表情は珍しい。基本的に
それなのに今のストレアには悩んでいますと分かるほどに顔に出ている。お酒を入れたから口に出したのだろうが、そうでなかったらもっと溜め込んでいたに違いない。
「どうしたの?ストレアさん」
「悩みがあるなら聞くわよ?」
「ユウキ、流石に今回は悪ふざけは無しで行きましょう」
「シノンこそ反射でズドンしないでよね?」
「絶対に口外しないってオネーサン約束するゾ」
そんなストレアの姿を見たから、初対面であるはずのリズでさえストレアの悩みに応えようとしてくれている。
みんなの視線を浴びながらあっと、えっとなんて言い淀み、タップリと時間をかけてストレアは決心したように口を開く。
「ーーーウェーブの顔が見れなくなったんだけど、これって病気かな!?」
「ハイ、解散!!」
「お疲れ様〜」
「明日からも頑張るゾ〜」
「待って待って待って!!」
テーブルにコルを叩きつけて帰ろうとしたボクたちをアスナが引き止める。その必死さに少しだけ申し訳なく思ってしまうけど、あれだけ時間をかけて出て来た言葉がこれなのだからこのくらいの反応は許して欲しい。リズなんか面白い事を聞いたっていう風に目を輝かせてるし。
「だって……ねぇ?」
「それってあれよね?」
「間違いないナ」
「まさかこんな話が聴けるだなんて……!!」
「え?みんな、原因が分かるの?」
「「「「……え?」」」」
アスナから出た言葉が信じられなかった。ボクとシノンは言うまでもなく、アルゴは現在進行系。リズは年頃なのでそう言う話に興味があるからストレアがウェーブの顔が見れない理由を察する事が出来たのだろう。そこまでは良い。
だけどアスナがまさか分からないだなんて……下手したらウェーブが闇堕ちしてた時以上の衝撃だ。
「アスナ、アンタそれ本気で言ってるの?」
「うん、私は分からないけど……」
「シノンさん、アルゴさん、どう思います?」
「アスナの振る舞いから育ちの良さは伺えるけど……」
「そう言う事に無知なのか?それとも天然なのか……」
「アルゴ、いつもの口癖取れてるけど」
「今はそんな事を気にしている場合じゃない……!!」
これは問題だ、大問題だ。ボクたち〝
「じゃあ今からストレアのお悩みを解決する特別教室を開きます。講師はボクとシノンとアルゴとリズ。あ、アスナはストレアと一緒に生徒側ね」
「え、どうして?」
「良いからさっさと座りなさい。でないとズドンするわ」
「アーちゃんの秘密を週一で暴露してやる」
「鍛治の強化をこれからわざと失敗するわよ」
「ヒィッ」
半ば脅すようにしながらストレアの隣にアスナを座らせる。正直申し訳ないと思ってるけどこれもキリアスの実現の為だ。それに高校生なのにこれが理解出来ないとかダメだと思う。
「えっとまずはストレア、いつからウェーブの顔が見れなくなったの?」
「……〝ホロウ・ストレア〟と戦ってる最中にウェーブに助けられてから。ほら、色々あったでしょ?」
色々と言葉を濁しているのはリズがいるからだろう。流石に知り合って間も無い中層プレイヤーであるリズにストレアの正体を明かす訳にはいかない。
ストレアの正体がAIであるというのは昨日の内にストレアの口から攻略組の全員に伝えられた。
自分はAIだった、騙していて御免なさい、でも自分はみんなと一緒にSAOをクリアしたいと涙を流しながら語るストレアを攻略組は受け入れた。というよりもボクを始めとした攻略組の全員がストレアがAIだとしてもそれがどうしたと思ったに違いない。
だってストレアはストレアだから。AIだったとしても、プレイヤーでないとしても、ストレアである事に変わりはないのだから。
多分その事が関連してウェーブが格好良く何かやらかしてこうなったのだろう。それ以外に考えられない。
「ならどうしてウェーブの顔を見れないのかしら?ただ見るだけなら問題無いでしょう?」
「なんでか分からないけどウェーブの顔を見ると顔が熱くなって、胸が苦しくなって……気がついたらウェーブの事を考えるようになって……でもウェーブの事を考えると胸が苦しいのに温かくなって……」
それを聞いてストレアの症状がなんなのか確信した。シノンとアルゴとリズを見れば彼女たちも確信したようで頷いている。分かっていないのはストレアとアスナだけだ。
「どうする?言っちゃって良いのこれ?」
「教えて正しい方向に教育してやらないと〝ホロウ・ストレア〟みたいに変に拗らせる可能性があるわよ」
「え、何?〝ホロウ・ストレア〟ってヤンデレかメンヘラだったの?」
「聞いた限りだと〝ホロウ・ストレア〟って完全にイッちゃってる具合だったから……」
本当ならこの答えはストレア自身で見つけさせた方がストレアの為なのかもしれない。だけど変に拗らせる可能性を考えるとこの場で教えて正しい方向に教育してやらないといけないのだ。
少なくとも腕を斬られて喜ぶような拗らせ方をさせてはならない。
アイコンタクトで教える事を満場一致で決め、誰が教えるのかを決めようとしたら3人からボクがやれと目で訴えられた。抵抗したものの、流石に3対1では叶わなかった。
これが塩を送るような真似だというのは重々理解している。シノンも、きっとアルゴもそれを分かっている。
だけど、それでも、その想いは間違っていないから。どうであれその感情に真正面から向き合って欲しいから。ストレアの気持ちに答えを教えてあげるのだ。
「ストレア、それは病気なんかじゃないーーー人を好きになるって事だよ」
野郎共の馬鹿騒ぎをしている傍での女子会。リズはこの頃にはアスナと友人って事で。キリリズ?実現させませんけど何か?
ストレアのヒロイン力を高めていく作業。どのくらい高める事が出来るのだろうか。