闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ファーストボス・2

 

 

「おぉ、集まってるな」

 

 

噴水広場に着くとそこには大勢のプレイヤーたちが集まっていた。装備は誰もが似たような物だが間違いなく現時点で集められる一級品の物を身につけている。この時点でプレイヤーたちのレベルの高さが伺える。

 

 

先に行かせたユウキとシノンの姿を探すと、キリトとフードのプレイヤーに話しかけている2人の姿を見つけた。正確には2人がフードのプレイヤーに話しかけて、キリトが少し離れたところで疎外感に打ち拉がれているのだが。

 

 

「よっすキリちゃん、玉無くした?」

 

「うぉっ!?」

 

「キャッ!?」

 

 

隠蔽(ハイド)〟と〝色絶ち〟で隠密を実行し、キリトの背後に立って話しかけてから解除するとキリトとフードのプレイヤーはリアクション芸人の様な反応を見せてくれた。ユウキとシノンの2人は、慣れているのか手を振るだけのリアクションしかしてくれないので新鮮だ。

 

 

「なんだウェーブかよ……ってちょっと待て、その発言の意味は?」

 

「いや、キリトからキリちゃんにスペクタクル性転換してくれたんじゃ無いかと期待してね」

 

「オーケー分かった。殴らせろ」

 

 

額に青筋を浮かべながら放って来た右ストレートを見切って躱す。その後も右左とパンチが飛んでくるがどれも掠りもしない。

 

 

「ハッハッハ、リアルで爺さんの知り合いに玉取り専門の医者がいるから紹介してやろうか?」

 

「いっぺん死ね!!」

 

 

煽って楽しかったがこのままだと武器を抜きかねないので鎮圧のためにパンチをキャッチし、捻り上げて転がして関節を極めてその上に座る。

 

 

「降りろぉ!!」

 

「お前が落ち着いたらな。で、そちらのお嬢さんは?キリトのナンパ相手?」

 

「ナ、ナンパァ!?そんなんじゃ……」

 

「違います」

 

「……ハッハッ、そうだけどさ……もう少し間があっても良いじゃ無いか……」

 

 

フードのプレイヤーからの即答でキリトの身体から力が抜ける。ふむ、この反応を見る限りだと意外と期待していたみたいだな。

 

 

「俺はウェーブ、ユウキとシノンの保護者だよ」

 

「2人の……私はアスナです」

 

 

名前だけの簡単な紹介をしてペコリと頭を下げるアスナ。2人と話して余裕が出来たのか、アルゴと会った時に見かけた焦燥は多少薄れている様だった。

 

 

「ウェーブ!!友達が出来たよ!!」

 

「これでボッチだなんて言わせないわよ」

 

「根に持ってたのね……あぁ、これ待たせたお土産ね。アスナと一緒に食べなさい」

 

 

ここに来る途中で買って来た適当な焼き菓子の入った袋をユウキに渡すと顔を綻ばせる。シノンは焼き菓子の味チェックに集中し、アスナは躊躇いがちに焼き菓子を食べたが一口口にすると猛烈な勢いで食べだした。

 

 

「キリト、一つ忠告。思春期だから下心あるのは仕方ないけどがっつき過ぎるのは引かれるから止めといた方が良いぞ」

 

「善処します……」

 

 

アスナのあの一言が余程辛かったのか、キリトの反応がイマイチ悪い。どうにか立ち直ってくれないと弄りがいが無いなと考えていると、ウェーブのかかった青髪の青年が噴水広場の中央に現れた。

 

 

「ーーーハイ、ちゅうもーく!!予定よりも多少遅れたけど会議を始めたいと思います!!俺はディアベル、職業は気持ち的に〝ナイト〟やってます!!まぁ、SAO のシステム的には職業なんて無いんだけどな!!」

 

 

青髪の青年ーーーディアベルの言葉に噴水広場の空気が多少和らぐ。ピンっと張り詰めた空気も悪く無いのだが、個人的には多少緩んでいるくらいがちょうど良いと思う。張り詰めているということは余裕が無いということで、緩んでいるということは余裕があるということなのだから。

 

 

「さて、SAO が始まってもうそろそろ一ヶ月が経とうとしている。ここにいるプレイヤーたちはこう思ったんじゃ無いか……そろそろ上に上がりたいって」

 

 

ディアベルが指を上に指すがそれは空を意味しているのでは無く、第二層の事を言っているのだとここにいる全員は理解した。そしてそれはここにいる全員が思っていたことでもある。

 

 

「俺もだよ。さっき言った通りに俺はナイトを目指している。だが第一層で手に入れられる防具にナイトに相応しい物は何も無い!!武器だって〝アニールブレード〟を数段階強化したものが最高だ!!プレイヤーの戦闘方法(スタイル)によりけりだが……ほとんどみんなが同じじゃ無いか!!」

 

 

それは仕方のない事だろう。決められた空間の中で活動したのなら同じ様な武器防具になるのは当たり前のことだ。ディアベルは、その当たり前のことを嫌だと叫んでいる。

 

 

「この世界を生きようと強くなろうとしている人もいるだろう、デスゲームのクリアを目指して強くなろうとしている人もいるだろう。だからと言って、俺は量産型の冒険者なんて絶対に嫌だ!!」

 

 

それはここに集まった全プレイヤーが思っている事だ。VRMMOというジャンルに手を出したのは現実とは違う自分に成りたいと思ったから。デスゲームになったとは言え、特別な自分にならずに没個性として振る舞うなど耐えられないはずだ。

 

 

「だから俺は!!今日の第一層攻略会議の音頭を取らせてもらった!!例えこの世界が茅場の言う通りの世界だとしても!!俺は全力で生きたい!!走って走って前のめりに倒れたい!!アインクラッドの最下層でメソメソ惨めに泣いて死ぬのは嫌だ!!君たちだってそうだろう!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

「くたばれ茅場ぁ!!」

 

「ファッキューかやひこぉ!!」

 

 

ディアベルの熱弁に賛同する様な声が上がる。ディアベルは人を乗せることが上手かった。誰もが思い、共感する事を口にして自分もそうだと肯定することで連帯感を持たせている。指導者というよりも煽動家のやり方に近いのだが今の段階ではこれが一番手っ取り早く済む。

 

 

「あぁ!!だから戦おう!!この世界に負けない様に!!始まりの街で引きこもってる奴らに、このゲームがクリア出来ることを教えてやろうぜ!!」

 

 

そして、第一層が突破出来ると知れ渡れば始まりの町でクリアは出来ないと思って引きこもってるプレイヤーたちに希望を持たせることが出来る。もしかしたらクリア出来るんじゃないか?だったら自分も戦えるんじゃないか?そう思わせることで、今埋もれている人材を発掘する事に繋がる。

 

 

「「「「オォォォォ!!!!」」」」

 

 

体育会系の様なノリで威勢の良い声を上げるプレイヤーたち。ユウキは目に見えて興奮しているし、シノンは煩そうに顔をしかめているがノリそのものは嫌っていない。キリトも静かだが目にはやる気が見え隠れしている。アスナに限っては戸惑いの様なものが見えるが時期に解決するだろう。

 

 

「じゃあ、ボスに向けての会議をーーー」

 

「ーーーちぃょっと待ったぁ!!」

 

 

……良い雰囲気であるほど、水を差されると萎える物は無い。ディアベルが演説を終えてボスに向けての話し合いをしようとしたところでトゲトゲという奇抜な髪型をした男性が飛び出してきた。ディアベルも熱が冷めたのか、少し呆れ気味の様子だった。

 

 

「……えっと」

 

「ワイはキバオウいうもんや、ディアベルはんには悪いが言わせてもらいたいことがある」

 

 

奇抜な髪型の男性ーーーキバオウはそう言って息を思いっきり吸い込み、

 

 

「ーーーこの中にいる元βテスターの卑怯者ども!!出てこい!!この中にもあるはずや!!正直に名乗り出い!!おどれらがなんもかもん独り占めしくさったせいで死んでいった奴らにワビ入れぇや!!そしてズルして貯め込んだ金やアイテム全部差し出さんかい!!」

 

 

そう、叫んだ。それはSAO のことを前もって知っていたプレイヤーに対する糾弾のつもりだろう。その叫びからは本気の怒気が伺える。

 

 

あぁ、()()()()()()()

 

 

「クッ」

 

 

あまりの見苦しさに笑いが溢れる。キバオウの叫びのせいで静まり返っていたので思ったよりも響き、そして音源である俺がすぐに特定される。

 

 

ーーーキリトに腰を下ろした状態の俺が。

 

 

「……良い加減退いてくれないか?」

 

「うん、良い加減飽きてきた」

 

 

キリトから立ち上がり、キバオウの前に立つ。眉間にしわを寄せて威嚇のつもりなのか鼻を鳴らしているが滑稽で無様で笑えてくる。ディアベルが心配そうにこちらを見てくるが心配いらないと目で返す。

 

 

「ジブン、何がおかしいん?」

 

「笑うしか無いだろうが?ビクビクしてスタートを遅れたくせして一番に駆け出した奴のことを怨んでいるだなんてな」

 

「なっ!?」

 

「βテスターが独占した?違うだろうが。お前たちが怖くて怖くて引きこもっている間に彼らは真っ先にフィールドに出て戦っていたんだ。いわば先駆者と同じ、その報酬がアイテムや金。その功績に敬意を払いはすれど、嫉妬するなど御門違いにも程がある」

 

「ッ!?だけど!!アイツらのせいで死んだもんもおるんや!!」

 

「βテスターが悪いと?知らん、そんなもん自己責任だろうが。死ぬかもしれないと分かっていてフィールドに出た者まで面倒見きれるか。それに、お前が嫌うβテスターはしっかりとビギナーたちの指導をしているぞ?」

 

「う、嘘や!!アイツらがそんなことするはず……!!」

 

「残念、〝鼠〟からの確かな情報だ。一部ではあるがβテスターが率先してビギナーたちにこの世界の戦い方を教えているとな。お前の言う卑怯者がだ」

 

 

ここまでくればキバオウの旗色は最悪と見ても良いだろう。論破した結果、顔は真っ青だし、周囲のプレイヤーからの目線は冷たい。だが容赦はしない。

 

 

俺は人の足を引っ張る行為だけは許せないのだ。自分の意思で停滞した癖に、前に出ている奴を妬んで邪魔をする奴らが。自分は悪く無い、あいつが悪いのだと責任転嫁している奴を見ると吐き気がするし、ヘドが出る。

 

 

故に、見つけたら徹底的に叩き潰すことにしている。

 

 

「全く……アイテムや金が欲しいならば欲しいと最初からそう言えや。βテスターを辱める意味が分からん」

 

 

ウインドウからアイテムボックスを開き、その中にあるコルの詰まった皮袋を取り出す。入っている金額は四万コル、皮袋の垂れ下がり具合から大金が入っていると分かったのか、キバオウは顔色を変えた。

 

 

そして皮袋を逆さまにして、入っていたコルを全て地面にブチまける。

 

 

「欲しければ拾えよ。惨めに、這い蹲って、犬の様に」

 

 

後からキリトに言われたのだが、この時の俺は相当良い笑顔をしていたらしい。

 

 

 





ディアベルはんの煽りにより士気はアゲアゲ、そしてサボテンによりサゲサゲ。

ウェーブは妬みだとかで人の足を引っ張る奴はついつい叩き潰したくなっちゃうの。だけどそう言うの無しで妨害行為に命を捧げる様な奴は認める。認めた上で叩き潰す。

そしてここに集まっているプレイヤーはこのリアル重視アインクラッドの世界で戦ってきた奴らだ。つまり……分かるな?
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