闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ファーストボス・6

 

 

戦闘開始から数十分、戦局は僅かであるがこちらに傾いていた。

 

 

「A班、刀を弾いてD班とスイッチ!!D班はソードスキルを叩き込んだら即座にB班とスイッチ!!HPがイエロー手前まで来ているのならポーションで回復をするんだ!!一瞬遅れるだけで仲間が死ぬと思え!!」

 

「「「「応ッ!!」」」」

 

 

ディアベルによって開幕の奇襲から立ち直ったレイドの連中が、ディアベルの指示に従って行動する。コボルドロードの刀をタンク職のプレイヤーたちが力を合わせて受け止めて弾き飛ばし、コボルドロードの体勢が崩れた隙に短剣や片手剣を持った早く動けるプレイヤーたちのパーティーとスイッチ。ソードスキルをコボルドロードの下半身に集中させて放ち、コボルドロードのゲージが一つ砕けた。

 

 

普通ならそこでもっとダメージを稼ごうとその場に留まりたくなる物だが欲張らない。無理をすれば手痛い反撃を食らうと分かっているから即座に交代し、最初のタンク職のプレイヤーとは違うタンク職のパーティーと入れ替わる。

 

 

「A班D班は切れ味と耐久度の確認!!B班は10回受け止めたらC班と交代!!E班、準備は良いな!?」

 

「任せろ!!」

 

「あいさー!!」

 

「合点!!」

 

「良し!!B班後退!!C班前へ!!」

 

 

コボルドロードの刀を十度受け止めたB班は踏ん張ることをやめて吹き飛ばされる。もちろんそれはわざと吹き飛ばされている。自分の足で下がるよりも吹き飛ばされた方が早く下がれると数十分の交戦の間に気づいたからだ。転がってくるB班を避けながらC班はコボルドロードの前へ出る。

 

 

「取り巻き、消滅確認!!」

 

「F班、G班、番兵(センチネル)が湧くぞ!!」

 

「了解!!」

 

「死に晒せぇ!!」

 

 

前に死んだ番兵(センチネル)の死体がポリゴンに変わって消滅するのと同時に玉座の奥から新たな番兵(センチネル)が現れる。その数は八匹、12人からなる二班の方が数の上では有利でそれを利用しない手はない。F班とG班は新たに沸いた番兵(センチネル)をマンツーマンで止める。そうなれば必然的に4人が余り、その4人が誰かと合流して5人で確実に番兵(センチネル)を殺しに行っていた。そうなれば5人がフリーになり、今度は6人で番兵(センチネル)を囲む。そうやって時間はかけるが危険を冒すことなく、相手に何もさせずに番兵(センチネル)を片付けていく。

 

 

「C班後退!!E班、ぶちかませ!!」

 

 

C班がコボルドロードの攻撃を弾くのと同時に前に出て来たのは両手剣や両手斧、メイスなどの重量のある武器を持ったプレイヤーたち。そして放ったのは発動後の硬直が長めな代わりにノックバックやダメージの大きいソードスキル。これはキツイのかコボルドロードは悲鳴を上げ、硬直で動けないE班にヘイトを向け、

 

 

「〝色合わせ(こっちを見ろよ)〟」

 

 

その間に入って〝色合わせ〟による気配集中で俺に全ヘイトを向ける。A班の準備が整うまでは30秒ほど。その間を俺たちH班が引き受ける。

 

 

「デカイ相手はーーー」

 

「ーーー末端から削るッ!!」

 

 

俺だけを集中して視野が狭くなったコボルドロードの背後からユウキとシノンがソードスキル〝スラント〟を発動させて斬りかかる。ダメージとしてはD班の放ったソードスキルよりも下回るそれだがその代わりに発動後の硬直が短いという利点がある。〝スラント〟の発動、硬直、そして硬直が解けた瞬間に再び〝スラント〟を放つというソードスキルの連発をいとも容易くやってのけてコボルドロードの足へのダメージを蓄積させていく。

 

 

そうすればいくら〝色合わせ〟で集中させているとは言えど気付かれる。そんな2人を引き剥がすためかコボルドロードは刀を腰の辺りで構えて溜めを作る。狙いはソードスキル、構えからして恐らくは範囲攻撃。ソードスキルは確かに強力だが、それを発動させるにはどうしても予備動作が必要になる。隙を作ってからならまだしも、この状況ではその予備動作はコボルドロードの隙でしかない。

 

 

「ウォォォォォォォ!!」

 

「ハァァァァァァァ!!」

 

 

その隙に躊躇うことなく飛び込んだのはキリトとアスナ。片手剣のソードスキル〝ソニックリープ〟と細剣のソードスキル〝リニアー〟による全力の突撃。後のことなど考えない全力のソードスキルがコボルドロードの胸を貫いてコボルドロードの構えを崩し、クリティカルが発生したのかユウキとシノンが与えたダメージと合わせてゲージの五割が削られる。

 

 

〝色合わせ〟、〝色重ね〟(ヒースクリフ)

 

「あぁ」

 

 

コボルドロードのキリトとアスナに向けられたヘイトをコボルドロードに斬りかかりながら〝色合わせ〟により奪い取り、コボルドロードの体勢が立て直される直前に〝色重ね〟によりヒースクリフに押し付ける。

 

 

そして行われるコボルドロードの猛攻。それまで良いようにやられていた鬱憤を晴らすかのように乱暴に振るわれる刀の乱撃をヒースクリフはたった1人で受け止め、受け流し、払い除ける。それによりダメージが発生するがヒースクリフはそれに怯える事なく、それどころか嬉々とした様子だった。

 

 

空を飛ぶ鋼鉄の城を追い求め、今そこで生きている茅場晶彦(ヒースクリフ)だからこその歓喜だろうが放置して死なせるわけにはいかない。

 

 

〝色絶ち〟(首寄越せやぁ)!!」

 

 

気配遮断による隠密を実行し、コボルドロードの背後からガラ空きの首を〝アニールブレード〟で斬る。ヒースクリフにのみ集中していたので首のガードは甘く、切れ味を回復させていた事もあってゲージを削り切り、続くゲージの三割を一気に削る。

 

 

そしてこの瞬間、コボルドロードの体力ゲージは最後の一本になった。

 

 

アルゴから聞いたのだがSAOのボスにとどめを刺した時にはLA(ラストアタック)ボーナスというものが存在するらしい。その名の通りにボスにとどめを刺したプレイヤーに強力なアイテムが与えられるシステムの事。βテスターならば誰もが知っていることで、恐らくは製品版でも実装されているとのこと。デスゲームと化したSAOではまさしく命懸けの行為になるがその見返りは大きい。誰か1人でも狙いに行くのではないのかとアルゴは危惧していたが、

 

 

「ーーー全員、油断するな!!ボスの体力がゼロにならないと戦いは終わらない!!」

 

 

ディアベルが檄を飛ばしてボス戦の終わりが見えた事で生まれた緩みを正し、いるであろうβテスターへの牽制を行う。

 

 

そうだ、それで良い。フロア攻略の一度目で誰かが死ねば後の攻略に差し障ることになる。相手が死ぬまで欲をかかず、危険を冒さず。そうしてもらえなければアルゴの指示でわざわざお膳立てしている意味が無くなる。

 

 

だが、HPのゲージが最後の一つになった事でコボルドロードは()()()。纏っていた鎧、兜、盾を投げ捨てて身軽になる。そして新たに沸いた番兵(センチネル)を掴みーーー指示を出していたディアベルに向けて()()()()()()

 

 

「ナッ!?」

 

 

その予想外の行動にディアベルは硬直して回避行動を忘れ、番兵(センチネル)と正面衝突した。

 

 

「不味い……!!」

 

 

ディアベルの体力はまだ緑だが指示が飛ばなくなった事で各班が困惑の色を見せた。数秒あれば立ち直れるような小さな困惑だが、その隙をコボルドロードが見逃すはずが無い。掬い上げるような軌道で放たれた刀のソードスキル〝浮舟〟が、ディアベルの事で僅かに鈍っていたA班を吹き飛ばす。

 

 

そして追撃のつもりなのか刀がエフェクトに包まれる。狙いは吹き飛ばされたA班たち。空中にいることと吹き飛ばされた衝撃から回避も防御も不可能だろう。

 

 

「ーーーさせるかぁ!!」

 

 

おそらくコボルドロードが防具を投げ捨てた時点で動いていたキリトがそれに割って入った。コボルドロードの胴体にエフェクトを纏った〝アニールブレード〟を突き立てて下に向けて切り裂き、一気に切り上がる。ソードスキル〝バーチカル・アーク〟。防具を投げ捨てたことで防御が下がったのか、残っていたコボルドロードのHPを三割削る。そしてソードスキルの発動後の硬直で動けなかったキリトをコボルドロードが蹴り上げた。

 

 

誰かの悲鳴が聞こえる。キリトは天井付近まで蹴り上げられたもののHPはまだグリーンのまま。死にはしないだろう。

 

 

だから俺が動いた。

 

 

〝色絶ち〟(気配遮断)〝色合わせ〟(気配集中)もする事なく、コボルドロードの眼前へと飛び上がる。回避も反撃も出来ないタイミングでの真っ向からの奇襲、コボルドロードの取れた行動は腕を交差させて顔を庇う事だけだった。

 

 

あぁーーー()()()()()()

 

 

「首を寄越せと言ったよな?」

 

 

〝アニールブレード〟を逆手に持ち替え、身体を弓なりになるほどに反らして力を溜め、

 

 

「ーーー嘘だよ」

 

 

一気に解放して全身を使い、()()()()()()()()()()()()()()()。コボルドロードの肘から下が、刀を握ったまま地面に落ちる。悶えるコボルドロードを見ればHPのゲージが部位欠損によるボーナスなのか残り一割まで削られていた。

 

 

「ーーーぶちかませやキリトォォォォォォ!!」

 

 

全身を使った事で背中から落ちている俺は天井を足場にしているキリトを視界に入れる事が出来た。そしてキリトは天井を蹴り、勢い良くコボルドロードに向かって落ちる。

 

 

盾を捨てた事で防御は不可能、刀を無くした事で反撃も不可能なコボルドロードは上を見て、落ちてくるキリトを視界に入れるがもう手遅れだ。

 

 

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

キリトの〝アニールブレード〟がコボルドロードの額に刺さり、勢いのまま股まで一気に切り裂く。正中線を斬り裂かれたコボルドロードはその場に立ち尽くしーーー背中から仰向けに倒れた。コボルドロードが倒れた事でボス部屋が静まり返り、HPのゲージが砕けた音が響き渡る。

 

 

「終わった、のか……?」

 

 

本当に終わったのかを疑うような声が聞こえた。そして、その数秒後に軽快なファンファーレと共に目の前に大量の経験値とアイテム、それにMVPボーナスなるものが書かれたリザルト画面が現れた。

 

 

それは間違いなく、ボス戦が終わったことを証明していた。

 

 

「やった……やったぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

誰かが叫んだ。それを皮切りに誰もが叫んだ。それは勝利を、誰も死ななかったことを喜んでいた。誰もが武器を投げ捨てて、近くにいた者に抱きついたり肩を組んだりして喜びを表している。

 

 

「予想外はあれど死者は無し……完全勝利だな」

 

 

背中から落ちた俺は寝転がったままその光景を眺めていた。この勝利に水を指すことなんて誰にも許されない。第一層攻略完了という偉業を俺たちは成し遂げたのだから。あのヒースクリフでさえ、小さくガッツポーズをとって喜んでいる。

 

 

「「ウェーブッ!!!」」

 

「腹ぁッ!?」

 

 

ボス戦が終わって気が抜けていたのかユウキとシノンのダイブを避ける事が出来ずに押し潰される。2人とも小柄とは言え合わさればそれなりの重量になる。何か口から出てきそう。

 

 

「勝った!!勝ったよ!!」

 

「誰も死なずに勝てたわ!!」

 

「ウプッ……そ、そうだな」

 

 

口から出そうな物を飲み込みながら飛び込んできた2人を抱き締める。天真爛漫なユウキは兎も角、シノンまでもが目に涙を溜めて誰も死なずに勝利できた事を喜んでいた。

 

 

そんな俺たちの事を何人かが微笑ましそうに見ているので中指を立てておく。すると親指を下に突き付けられた。何人かの口がロリコンと動いている。顔は覚えたぞ。

 

 

どうしようもなく締まらない終わり方ではあるがSAO開始から約一ヶ月の12月4日、アインクラッド第一層の攻略が完了した。

 

 

 






ディアベルはんの欲張らない確実な指示とH班というズバ抜けたプレイヤーたちの頑張りにより無死者で第一層攻略完了。やっぱり戦いは数なんだよ!!

この小説ではフロア・フィールド・ネームドボス撃破の時にLAボーナスの他にMVPボーナスというのを加えています。詳しくは次回か次々回辺りに。

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