闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

18 / 121
ネクストステージ

 

 

「ーーーむ?」

 

 

電子音が聞こえた気がして目を覚ます。身体を起こして辺りを見渡せば死屍累々。第一層攻略メンバーたちが物の見事に屍を晒していた。無論死んでいるというわけではなくて、第一層攻略記念と称して第二層の主街区〝ウルバス〟の酒場で行った祝勝会の結果がこれだ。

 

 

ユウキとシノンは酒瓶を抱きかかえて眠っていて、ヒースクリフは酒樽に寄りかかりながら眠っている。そしてディアベルは何故か中身の入ったままの酒樽に鼻フックされた状態で詰められていた。俺が起きていた時にはこんな状態では無かったのに何があったというのだ。

 

 

この現状を見る限りでは祝勝会に参加しなかったキリトとアスナは正解だろう。誰もが限度を考えずにガバガバ飲んでいたので今日一日中二日酔いで苦しむに違いない。

 

 

そこで、俺が起きたのは電子音が原因だった事を思い出してウインドウを開いて確認する。するとアルゴから転移門をアクティベートするように指示があった。そう言えば〝ウルバス〟についてからそのままの勢いで酒場に直行したからアクティベートを済ませていない。転移門はアクティベートしないと開かないので、未だに第一層と第二層は繋がっていないのだ。

 

 

たまたま手に持っていた酒瓶にまだ中身があったのでそれを飲み干して、空になった瓶を投げ捨てる。その時に誰かの悲鳴のようなものが聞こえた気がするが気のせいだろう。

 

 

酒場を出て、朝日を浴びながらダラダラと中央広場に向かう。広場の中心には巨大な輪っかが支えも無しに宙に浮いている。その輪っかに触れる、それだけでアクティベートは終了して、第一層と第二層を行き来する事が可能になる。

 

 

アルゴにアクティベートした事を知らせるメールを出そうとした時、エフェクトが現れる。第一層から誰かが転移したようだ。

 

 

「ーーーヨォ、ナミっち」

 

「おはようさん、アルゴ」

 

 

転移してきたのはアルゴだった。フードを被り、顔に描かれた三本のラインはそのまま。しかし、目元には薄っすらと隈が出来ていた。どうやら寝れていないようだ。それは第二層解放の興奮からなのか、それとも攻略に出たまま知らせも何もしなかった心配からなのか、個人的には後者であってほしい。

 

 

「無事に攻略出来たみたいだナ」

 

「死者ゼロで攻略出来た。だけどコボルドロードの奴、扉開くのと同時に斧投げて来たぞ。扉が開いたらプレイヤーが来るって分かってやってる。下手な偵察すると学習して知恵つけてくるぞ」

 

「マジかヨ……ボスが学習するとかアインクラッドはホント地獄だナ」

 

「まぁ俺のようなロクデナシには生きやすい事この上ない世界だけどな」

 

 

少なくともアインクラッドに来てから俺は一度も窮屈な思いをした事がない。法律と権力が物を言う秩序に雁字搦めに縛られたリアルよりも、力が全てで無秩序で混沌としたこの世界の方が生きやすいのだ。

 

 

それを昨日のボス攻略の時に改めて認識した。そして、攻略メンバーたちもその気がある様に感じられた。もしもSAOをクリアしてリアルに帰ることができても、アインクラッドの方が良かったと事ある毎に引き合いに出しそうだ。

 

 

「……自虐ネタは寒いゾ?」

 

「本当の事だからしょうがないよ。ちなみにアルゴ、MVPボーナスって聞いた事があるか?」

 

 

昨日のボス攻略のLAボーナスはキリトが取った。だが俺のリザルト画面にはMVPボーナスというものが書かれていたのだ。ユウキやシノンに確認しても2人のリザルト画面には無かったというし、βテスターであるキリトも心当たりが無いようだった。本当ならヒースクリフ辺りに聞くべきなのだろうが、聞こうと思った時には酒樽を持っていたので諦めた。

 

 

「MVPボーナス……確か、ボス攻略の際に一番貢献したプレイヤーに与えられるボーナスだったはずダ。β版には無かったけど製品版では追加されるってどこかで見た気がするゾ」

 

「貢献したプレイヤーね……間違いなく俺だな」

 

 

ボスの偵察に始まり、ボス戦の際にもヘイト管理やクリティカル連発などをしまくっていた。一番働いていたという自覚はある。

 

 

「ナミっちが取ったのカ……ちなみにどんなアイテムだったんダ?」

 

「えっと……これだな」

 

 

ウインドウを開いてアイテムボックスからMVPボーナスで得たアイテムを取り出す。それは刀だった。刃渡りだけで1メートルはある大振りな刀で、コボルドロードが持っていた刀をそのまま小さくしたようなデザインだった。

 

 

「〝イルファングブレード〟だってさ。カテゴリーは刀、切れ味が高い代わりなのか耐久値が低い。まぁ刀って武器の使い道考えたら切れ味追求して脆いのは当然なんだけど」

 

「……うわぁ、何これ?第一層でドロップする武器じゃないぞ」

 

 

〝イルファングブレード〟のスペックを見てアルゴはドン引きしていた。その気持ちはわかる。何せキリトに見せたところ、強化無しでも()()()()()()()()()()だと言っていたから。いくらMVPボーナスとはいえやり過ぎた感はあるのは否めない。要求STRはクリアしているのでこのままこれをメイン武器にするつもりだ。サブには〝アニールブレード〟と〝アイアンランス〟で事足りる。

 

 

「いやぁ刀は良いねぇ。西洋剣も悪く無いけどやっぱり斬るなら刀が一番だ」

 

「……あぁ、ナミっちリアルで武術やってたんだったナ」

 

「おう、爺さんと母さんと一緒に日本刀担いで山に入ってバトルロワイアルやってたな」

 

「頭可笑しくないカ?」

 

「ちなみに俺が7歳の時の話だ」

 

「頭可笑しいと思ってたら狂ってタ……いつもの事だナ」

 

「解せぬ」

 

 

今日は〝ウルバス〟で一日ダラダラ過ごすつもりなので武器は要らないと判断し、武装解除のボタンを押して装備していた〝イルファングブレード〟をアイテムボックスに仕舞い込む。その時に8時を指した時計が目に入った。

 

 

「8時か……アルゴ、朝は食べた?」

 

「まだだけド?」

 

「良かったら一緒にどうだ?奢るぞ」

 

「それなら良い店を知ってル。シーちゃんとユーちゃんを誘って行こうゼ」

 

「あ〜……2人共、多分二日酔いだと思うぞ?昨日はシコタマ飲んでたから……」

 

「子供に酒を飲ませるなよロリコン鬼畜野郎」

 

「ロリコンは兎も角、鬼畜と呼ぶのは止めろ」

 

「ロリコンは良いのカ!?」

 

「幾ら否定してもダメだったからなぁ……逆に考えてみた。もうロリコンでも良いやってね……」

 

「……ごめん。何か情報一つタダで教えるから、元気出して?」

 

「その優しさが辛い」

 

 

朝日が目に染みて、目から涙が出てきた。

 

 






MVPボーナスはボス撃破に最も貢献したプレイヤーに与えられるボーナス。今回ウェーブは偵察とヘイト管理やクリティカル連発などをしまくったからMVPに選ばれました。ちなみに貢献度が高ければ高いほどに高スペックのアイテムが与えられる。

転移門の設定改変。アクティベートしないと開かないようにしました。

ロリコンを受け入れたウェーブ……もう何も怖くない……!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。