闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ネクストステージ・3

 

 

「ーーーよっ、来たゼ」

 

「ーーー折角食べ歩きをしていたと言うのに一体何の用だね?」

 

 

日が暮れた〝ウルバス〟の街。ユウキとシノンと3人で借りていた宿屋にアルゴとヒースクリフを招いた。アルゴには情報屋として、ヒースクリフは茅場晶彦としての意見が聞きたいから呼び出した。ちなみにユウキとシノンには別室で待機してもらっている。

 

 

「悪いな、急に呼び出して。非常事態だったもんで2人の意見が聞きたくてさ」

 

「ふむ……ウェーブ君がそう言うのならそうなのだろうな」

 

「まぁナミっちがつまらない嘘つかないって分かってるシ……それデ、一体何があったんダ?」

 

「鍛冶屋のプレイヤーに詐欺をやられかけた」

 

 

詐欺の言葉が出た途端、2人の目の色が変わる。アルゴは驚き、ヒースクリフは好奇心。異なる色だが2人とも興味を持ったことには変わりなかった。

 

 

「詳しく聞かせロ」

 

「どの様な手段で?」

 

「落ち着け。犯人は捕まえてあるから聞き出せば良い」

 

 

そう言って風呂場に続く扉を開ける。〝ウルバス〟の宿屋の中でも上等な部屋を取ったので風呂場だけでも相当広い。

 

 

そして風呂場には白目をむいて気絶している鍛冶屋のプレイヤーであるネズハの姿、その周りには釘や蝋燭などが散乱していた。

 

 

「……何をしたんだよ」

 

「ちょっと拷問して話しやすくさせといた」

 

「いきなり拷問というワードを出して来たぞ」

 

「いやね、情報を聞き出そうとしたら拷問か尋問じゃん?その二つだったら拷問選ぶの当たり前じゃん?」

 

「拷問が当たり前とか怖すぎる……!!」

 

 

アルゴが素の口調に戻る程にドン引きし、ヒースクリフに至っては呆れ顔になっている。

 

 

そもそもSAOで拷問は可能かと聞かれたら肯定する。SAOにはペインアブソーバーシステムという痛みを再現するシステムが備わっていて、それにより仮想世界でも現実の様に痛みを感じることが出来る。だが、あまりにもリアルと同じ痛みだと仮想世界でダメージを受けたらリアルに障害が残るかもしれない。そこで俺と茅場は()()()()()()()()()()()()()()、どの程度ならリアルに影響を及ぼさないかを探った。その結果、リアルの半分程度の痛みなら問題無いと結論付けた。つまり、SAO内で感じる痛みはリアルの半分程になる。

 

 

半分程とはいえ、痛みを感じるのなら色々と〝やりよう〟はある。今回ネズハにした拷問はその〝やりよう〟の一部というわけだ。

 

 

拷問してる時に薄ら思ったけど、これ圏内じゃなかったらオレンジ案件だったな。圏内バンザイ。

 

 

「おい、起きろや」

 

 

気絶しているネズハの頬に張り手を二度。障壁が出てダメージこそ発生はしないが、衝撃が突き抜けてネズハの意識の覚醒を促す。

 

 

「ーーーハッ!?起きます起きます!!だからもう蝋燭は!!釘は!!〝フレンジーボアの肉〟は!!〝リトルペネントの胚珠〟は止めて下さい……!!」

 

「本当に何やったんだよ」

 

「前半の方が凶悪なのに後半は用途が分からなくて恐怖を誘ってくるな」

 

「お前がやった事の手段やら動機やら全部吐いてもらうぞ?」

 

「分かりました!!何でも話します!!だからもうクリームは止めて……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「炉に強化素材を使用した時に生じるライトエフェクトで目眩しをして、その先に〝クイックチェンジ〟で試行回数残りゼロのエンド品と入れ替えるカ……」

 

「そうする事でエンド品は破壊、手数料を返品したとしても強化された装備が丸々手元に入ってくると」

 

「動機はFNCで生じた両眼視機能不全というハンデを物ともせずに付き合ってくれた仲間の装備の調達資金を稼ぐ為」

 

「はい……」

 

 

風呂場から部屋を移して手段から動機までを余さずに話したネズハは椅子に座りながら顔を俯かせていた。

 

 

事の始まりはネズハがFNC、〝フルダイブ不適合(ノン・コンフォーミング)〟という脳とフルダイブマシンの間に生じる接続障害で遠近感が分からなくなってしまったことから始まる。普通のフルダイブゲームならばどうにかなるだろうそれだが、デスゲームとなったSAOでは余りにも致命的過ぎた。ネズハは仲間と一緒にSAOを始め、デスゲームになった時には彼らに置いて行かれると思った。自分だってそうすると、置いて行くと言われたら納得出来るように覚悟を決めて。

 

 

だが、仲間たちはそうはせずにネズハを連れて行くことにした。仲間を見捨てられないと、SAO開始当初に先行者たちが死に物狂いでリソースを奪い合っていた頃にネズハのリカバリーを優先して行動していたのだ。仲間が不平不満をこぼす事があったが、ネズハを見捨てる事なく一丸となって修行に付き合ってくれた。

 

 

それが、ネズハにとっては辛かった。

 

 

伝説の勇者(レジェンド・ブレイブ)〟というチームはもう何年も前から活動しているチームで、いろんなゲームのランカー常連だったそうだ。このSAOでもそうなると、本物のヒーローになるんだと。だからこそ、自分が足を引っ張っている事が何よりも辛かった。

 

 

そんな思いを抱いて、八つ当たりする様に酒場で酒を飲んでいる時に黒いポンチョを着た男から〝戦闘スキル持ちの鍛冶屋〟になるのなら、良い稼ぎ方があると言われた。顔を隠していて怪しさしか無かったが、それで仲間の助けになるのならとネズハはその方法を聞いた。それが、ライトエフェクトで目眩しをしている隙に〝クイックチェンジ〟で武器をエンド品とすり替える方法だった。

 

 

おかしいと思うが誰も文句は言えないだろう。強化によるペナルティーを完全に把握しているのは現状ではアルゴとヒースクリフしかいないだろうから。初めの客が俺で無かったら、間違いなく荒稼ぎ出来ていたはずだった。

 

 

「成る程ネ……ナミっちはどうしたいんダ?今回の被害者はナミっちなんだからサ」

 

「……ネズハ、いや読み方的にはナーザの方が正しいのか?」

 

「ッ!?分かるんですか!?」

 

 

ネズハのプレイヤーネームはNezha。ネズハとも読めるが伝説の勇者(レジェンド・ブレイブ)というチーム名から考えればナーザと読むのが正しいだろう。ナーザとは封神演義に登場する少年の神、哪吒の事。哪吒の呼び方の方が有名で知られていないのだが正しくはナーザなのだ。

 

 

「まぁどっちでも良い。詐欺されたとはいえ未遂だったんだ。だけど、SAO内で生命線と呼べる武器を奪い取ろうとしたことの罪は重い……なんせ、間接的に殺そうとしていたのと同じだからな」

 

 

デスゲームと化したSAOでのこの強化詐欺は思ったよりも深刻な被害を生み出しかねなかった。生命線である武器を、プレイヤーによっては思い出のある武器を奪い取ろうとしていたのだから。

 

 

「だけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

悪行と呼べる行いなのだが、俺はそれを間違っていると思えなかった。仲間の力になりたい、その為になんだってしてやる。その根幹が善であれ悪であれ、貫き通そうとするその意思は素晴らしいものなのだから。

 

 

「だからお前の行動をある程度縛らせてもらおう。拒否権は無い、罪悪感で押し潰されそうになっても貫いてもらうぞ」

 

「はい……」

 

「一つ。今回の強化詐欺の手段、時期を見てアルゴが発表すると思うが……()()()()()()()()()。思いついて実行し、出来てしまったから注意してもらう為に公開した、そう言張れ」

 

「え?」

 

「二つ。俺たちの鍛冶屋(スミス)になってくれ。一々新しい街に着く度に鍛冶屋を探すのが面倒で仕方がないんだ。俺が呼び出したら直ぐに来い」

 

「はい?」

 

「三つ。〝投剣〟と〝体術〟のスキルを取れ。確か〝チャクラム〟とかいう手元に戻ってくる投擲武器が第二層のフロアボスで取れたはずだ。システムアシストが効く投擲武器なら、遠近感が取れなくても戦えるだろ?」

 

「ちょ、ちょっとナミっち!!それって……!!」

 

 

ネズハは俺が何が言いたいのか分かっていない様だがアルゴは理解して焦り出し、ヒースクリフはやれやれと肩を竦めている。

 

 

「悪くないだろ?俺たちにも利益があり、ネズハにも利益があるんだから」

 

 

今回の強化詐欺未遂、被害者である俺の判断は……()()()。ネズハが俺の出した提案に全て従うならば俺からこの件を蒸し返す事は無い。

 

 

「良いのかね?それで」

 

「良いと思うけどな……一つ目でこれからの強化詐欺を防ぐ事が出来るし、二つ目で俺に鍛冶屋(スミス)が付く。三つ目で遠距離攻撃が出来る奴が増える。win-winってやつだよ」

 

「……はぁ、ナミっちはそういう奴だったナ……」

 

 

アルゴに呆れられるが俺はこのくらいが妥当だと思う。それに俺はネズハのことを少しばかり気に入った。やろうとしたのは悪行だが、間違ってないと共感しているのだから。

 

 

まぁ、未遂じゃなくて一度でもやってたらその時は殺していたけど。

 

 

「……投擲武器?僕は……戦えるんですか……?」

 

「〝投剣〟と〝体術〟があればな。〝チャクラム〟は俺が取ってきてやる」

 

「あぁ……あぁ……!!」

 

 

戦える様になる事が嬉しいのか、ネズハは嗚咽を漏らしながら泣き崩れた。ヒースクリフにアイコンタクトでネズハのことを任せて、アルゴと一緒に部屋から出る。

 

 

「……ナミっちはこれで良かったのカ?」

 

「良かったからこんな提案してるんだよ。それに、誰も傷つかない終わり方の方が良いだろ?」

 

「全くナミっちは……今回の強化詐欺については任せナ」

 

「悪いな、情報操作みたいな事やらせて」

 

「流石に今回の件はまんま伝えるわけにはいかないし、独占するわけにもいかないからナ。精々オレっちの得になる様に広めるサ」

 

「埋め合わせは今度するから」

 

 

罵倒されてもしょうがないことをしたはずなのにアルゴは文句一つ言わずに今回の強化詐欺の手段をどう広めるかを考え出していた。それを見て、〝色絶ち〟でアルゴの認識から消えて宿から出る。アイテムボックスから〝アニールブレード〟と〝イルファングブレード〟を取りで出してそれぞれを腰と背中に下げ、ユウキとシノンに少し出てくる事をメールで伝える。

 

 

そしてそのまま〝ウルバス〟を歩き、夜のフィールドに出る。ネズハを捕まえた時から視線は感じていた。それが夜になるに連れて強くなっていき、今では殺気を感じる程だ。アルゴは兎も角ヒースクリフが気づいていない辺り、相手は相当やる様だ。

 

 

態とらしいが誘い出す為に、犯人の顔が見てみたいが為に圏外まで出てきたがーーー

 

 

「ーーーIt's show time」

 

 

ーーー流暢な英語と共に闇から現れた二本のナイフがその答えだった。

 

 






キチガイにとって拷問は当たり前の事なんだよ!!尋問よりも拷問の方が効率的だと言い張るキチガイの鏡。

ネズハ生存。パシリが増えるぞ、やったね!!なお、ウェーブがチャクラムを知っていたのは動作確認の時に使って変わった武器だったので覚えていました。

そして黒幕登場……ヒロインのいない、男同士のホモ祭り(殺し合い)の始まりダァ!!
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