闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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フリータイム・2

 

 

ネームドボスを合計で7体、その他のモンスターを狩りまくってレベルが2つ上がったところで切り上げて〝ボーデン〟の宿屋に戻る。圏内設定が解除されているが〝ボーデン〟はまだ街としての機能を保っており、モンスターの侵入を防ぐ為に〝血盟騎士団〟と〝ナイトオブナイツ〟の団員たちが交代で見張りをしている。

 

 

戻って来たのは夕暮れ時だが夜が近いためにモンスターが凶暴化し、〝ボーデン〟に群がってくるが二十人ほどの〝ナイトオブナイツ〟の団員たちがそれを押し返しているのが見える。〝血盟騎士団〟がプレイヤーの質を追求しているのならば、〝ナイトオブナイツ〟は数による有利を追求している。タンクが〝パラライズリザード〟の噛み付きを盾でカチ上げれば、それで出来た隙に誰かが飛び込み急所を攻撃する。そしてその誰かの出来た隙をタンクがカバーする。攻略組の誰もがある程度の連携を取れるようにはしているが、どこのギルドが一番連携の取れた動きが出来るのかと聞かれればヒースクリフであっても〝ナイトオブナイツ〟の名を挙げるだろう。ディアベルの指揮無しでありながらも数では負けているというのに互角どころか押している戦いをしていた。

 

 

それを遠目で見ながら出店で〝パラライズリザード〟の肉を使ったホットサンドを買う。毒抜きさえしてあれば〝パラライズリザード〟の肉は中々にいける食材なのだ。

 

 

ホットサンドを齧りながら街の様子を見て回り、然程大きな変化は見られないと判断して宿に入る。すると、ローブ姿のアルゴが死にそうな顔をしてソファーに寝転がっていた。

 

 

「……大丈夫?生きてる?」

 

「つ、疲れたヨ……」

 

 

いつも通りのイントネーションで、返事が出来ているので一先ず大丈夫だと判断してソファーの空いているスペースに座る。ユウキとシノン、シュピーゲルの姿が見えないが時期に帰ってくると連絡を貰っているので心配はしていない。

 

 

「ホットサンド買って来たけどいるか?」

 

「ちょ、頂戴……」

 

 

手を伸ばすが余程疲れているのか、ホットサンドの入った紙袋に届く前に力尽きて落ちる。仕方がないのでホットサンドをアルゴの口元に運んで、食べさせてやる。

 

 

「そんなになるまで何してたのさ?」

 

「ムグムグ……ネズハの所に行って〝朽ちた剣〟の修復を頼んデ、二十五層の現状を二十四層以下全部の階層に伝えて回ってタ。これで余程の馬鹿じゃない限りは二十五層に中層プレイヤーは来ない筈だヨ」

 

「あ〜……良いところで余計な邪魔が入る時程、鬱陶しいことは無いからな」

 

 

二十層攻略の時に一度、遊び半分でやって来た中層プレイヤーを叩き返した事がある。攻略マージンどころか安全マージンすら取っておらず、装備も最前線で通用する物ではないという何がしたいのか分からない奴らだったので圏内で適当に痛め付けて叩き返した。せめて安全マージンくらい取っていれば〝風魔忍軍〟の監視を付けて放置したのだが。

 

 

「そういえば〝アインクラッド解放隊〟の様子はどうなってる?」

 

 

先走った〝アインクラッド解放隊〟は攻略に参加出来るメンバーを失った筈だ。一応攻略組の中でも最多の〝アインクラッド解放隊〟だが、ディアベルの〝ナイトオブナイツ〟とは違い連携も何もなしに数で押すだけの戦法しか取らない。それが〝アインクラッド解放隊〟の弱みでもあり強みでもあるのだが、今回の件でメインのメンバーがいなくなった筈。自暴自棄になって何かをやらかしてもおかしくない。

 

 

「ン〜……調べたけど大人しかったナ。普通なら反省でもして力を付けようとしているのかって考えるけド……〝アインクラッド解放隊〟のリーダーはキバオウだからナ」

 

「嵐の前の静けさとしか思えないな」

 

 

〝アインクラッド解放隊〟のリーダーはキバオウで、徹底したアンチβテスターの指針を取っている。βテスターと思わしきプレイヤーのことを僻み、蔑み、少しでもそういう素振りを見せれば徹底的に叩いてくる。正直なところ不和しか生み出さないギルドだったが、人材を派遣してくれているからと見逃されていたのだ。だがそれも今回の件で見限られ、攻略組には居られなくなるだろう。

 

 

このまま大人しくしてくれれば良いのだが、キバオウの事だから余計なことをやらかしそうで怖い。ヒースクリフとディアベルに伝えて用心してもらおう。

 

 

「ふぅ、ご馳走様」

 

「あいあい、お粗末様」

 

ホットサンドを食べ終えてある程度体力が回復したのか、アルゴは起き上がった。そして隣の部屋に入り、寝間着姿になって戻って来る。

 

 

「まぁ、何はともあれ状況は進んだんダ。二十五層の攻略も時間の問題だナ」

 

「〝ザ・ファフニール〟がどれだけ強いのかが心配だけど全員が自分の役割果たせば問題無いだろうよ。やっぱり戦いは数だな!!雑兵でも万も集まりゃ一騎当千を殺せるんだよ!!」

 

「ヘェ、じゃあ()()()()を殺そうと思ったらそれだけ集めなきゃいけないって事カ?」

 

「怖いこと言わないでくれよ……てか、SAO内には一万も人が居ないだろうが」

 

 

さらりと怖いことを言ってくれたアルゴだが、2人きりの時に限って俺の事をアダ名では無くて名前で呼んでいる。アルゴの中でどういう心境の変化があったのか気になるところだが、それに容易く踏み込んでも痛い目を見るだけだ。

 

 

「膝貸してくレ」

 

「ハイハイ」

 

 

アルゴがソファーに飛び込みながら、俺の膝を枕にして横になる。アルゴの疲労具合は恐らく攻略組の中でもダントツだろう。こうした事で少しでも癒されてくれるのなら、喜んで膝くらい貸してやる。

 

 

「……」

 

「ん?どうしたんダ?もしかして……オネーサンに見惚れているのカ?」

 

「いやね、アルゴの目って綺麗だなって」

 

 

久し振りにアルゴの目を真っ直ぐに見た気がする。髪と同じ金色の瞳。初めて会った時から変わらずに澄んだ色合い。この世界で情報屋なんていう仕事をしていれば、綺麗事だけでなく汚い部分も見ることがあっただろうに、その瞳は穢れる事なく綺麗に輝いていた。

 

 

「そうカ?自分じゃ分からないナ」

 

「まぁ良いことだ。出来れば変わらずにいてほしいね」

 

「そういうウェーブの目は怖いな」

 

「生まれ付きだからほっとけ」

 

「でもその目、オネーサンは嫌いじゃないゾ?」

 

「……ありがとよ」

 

 

照れているのがバレて揶揄われた腹いせにアルゴの頭を強引に撫で回したり、それにキレたアルゴが俺の脛を本気で蹴ったり、さらにそれにキレた俺がアルゴの頭をアイアンクローしたりと、色気の無いじゃれ合いだったがそれでも溜まっていたストレスを解きほぐすには十分過ぎる時間だった。

 

 

 






ユウキチ、シノノン、ストレアとやってきたので続いてアルゴの回。キチ波とのじゃれ合いで情報屋の仕事で溜まったストレスを解消する。これでまだ情報屋として働けるな!!

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