闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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フリータイム・4

 

 

「何がどうしてそうなった」

 

 

ストレアがいるであろう共同の鍛冶場は大いに賑わっていた。二十五層で発見された大砲とバリスタはある程度は量産の目処が立ったらしく、そこそこの量のそれぞれのパーツが出来上がっている。手筈ではこれを砦に持って行き、現地で組み立てる事になっている。

 

 

炉の熱で、立っているだけで汗が出てきそうな程に熱い共同の鍛冶場。だが、今のここではそれ以外の熱で熱くなっていた。

 

 

「みんな〜頑張って〜!!」

 

「ウォォォォォォォ!!ストレアちゃぁぁぁぁん!!」

 

「頑張るよ!!俺、超頑張るよ!!!」

 

「こっち見てくれぇッ!!」

 

「やべえどうしよう、ストレアちゃんと目が合っちまった」

 

「これだから童貞は……ストレアちゃんがお前なんて見るわけないだろ?」

 

「表出ろやこの早漏野郎ぉぉぉ!!!」

 

「かかって来いやこのもやし野郎ぉぉぉ!!!」

 

 

休憩時間なのか、ゴスロリ調の衣装を着たストレアが鍛冶場で一番高いところに立ち、その周りに鍛治職のプレイヤーたちが群がっている。ストレアがハートマークでも付きそうな応援をすれば、鍛治職のプレイヤーたちが狂喜乱舞する。リアルでアイドルのライブがこんな感じだなぁとやや現実逃避しながらそれを見ていたら、

 

 

熱くなったのか、ストレアが服の前に着いていたファスナーを開けて上を脱いだ。

 

 

それを見て鍛治職のプレイヤーたちがさらに狂喜乱舞する。

 

 

その光景を見て迷わずに俺は飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく……人前で服脱ぐなって言っただろうが」

 

「だって熱くなったから……」

 

 

もう色々と危なくなって来たと判断してストレアを鍛冶場から連れ出し、正座させて説教をする。鍛治職のプレイヤーたちがストレアが連れ出されたのを見てハンマーを手に襲いかかろうとしていたが、丁度休憩時間が終わったのか何事も無かったかのように大砲とバリスタのパーツ作りに戻った。

 

 

「熱くなったからと言って脱ぐなよ。俺がいたから良かったけど、もしかしたら同人誌展開になってたかもしれないんだから。良いか、男なんて生き物は表面上どう取り繕うが中身は狼なんだ。無防備にエロい格好してたら襲われる事を忘れるな」

 

「男はみんな狼?……ならウェーブも狼なの?私、食べられちゃうの?」

 

「バーカ、手ぇ出すならそうと決めた瞬間に手を出してる」

 

「そうなの?それはそれで何か複雑な様な……」

 

 

ストレアは美人でエロくて、女性としてはかなり魅力的な部類に入る。正直な話、ストレアと行動してて、無防備な姿に劣情を抱いた回数は数えるのが億劫になる程あった。だが、だからと言ってストレアに手を出そうとは思えなかった。

 

 

ストレアは無垢な性格だが、その無垢さはどこか幼さを感じさせる。まるで大人の身体に子供の精神が入った様な歪さ、精神と肉体の齟齬を感じた。もしもその齟齬が無ければその場の勢いに任せて手を出していたかもしれないが、その齟齬のお陰でストレアに手を出す事は無かった。

 

 

他のプレイヤーが手を出すかもしれないと考えたが、ストレアも攻略組に参加している1人だ。複数に不意打ちで襲われても反応してそのまま制圧、もしくは逃げ出せる程度の実力はある。

 

 

過去に一度、ストレアに手を出そうとしたプレイヤーが壁にめり込んだことがあった。

 

 

「兎も角、露出が多い服は良いけど脱ぐな。分かったな?」

 

「下着姿はセーフ」

 

「アウトだよコンチクショウ」

 

 

折檻のつもりでの頭を鷲掴みにすれば、ストレアからグワァと女性らしからぬ声があがる。痛みは感じるがダメージが発生しない程度に抑えてあるので大丈夫だろう。ストレアの露出が多い事は別に何も言わないが、脱ぎ癖だけはどうにかして欲しい。女性としてもう少し慎みを持ってくれればと考えたが、身近にいる女性が攻略組の者が殆どな事を思い出して諦めた。

 

 

「ーーーHey brother、なんか楽しそうな事してるじゃねぇか」

 

 

背後から声をかけられた事でストレアが俺の手を払いのけてその場から飛び退き、〝クイックチェンジ〟で両手剣を取り出した。俺はと言えば特に警戒も何もなし。声をかけて来た者の気配は捉えていたし、そもそもSAO内で俺の事を兄弟(brother)なんて呼ぶ者はたった1人しか居ない。

 

 

「アイアンクローしてただけなんだけどなぁ……まぁ楽しかった事は否定しないさ。久し振りだな、PoH」

 

 

振り返ればそこに居たのは黒いローブを着てフードで顔を隠したPoH。声の主がPoHだと気が付いて、ストレアも警戒を解く。

 

 

「PoHじゃん。久し振り〜」

 

「ストレアだけか?いつも引っ付いてるCrazy girlsはどうした?」

 

「Crazy girlsってお前な」

 

「それ以外どう言えば良いのか知らねえんだよ。なにせあいつら、なんかホモ臭がするとか言って襲いかかって来たんだぞ」

 

「実際のところ、そんなに間違ってないから困るんだよな」

 

 

ユウキとシノンはPoHの事を蛇蝎の如く嫌っている。理由はPoHが言った通りにホモ臭がするから。PoHから殺し合い的な意味で求められているのでそれを嗅ぎ取ってなのかもしれない。

 

 

初めてPoHの事を紹介した時に、全力で男として殺しに行くとは思わなかった。

 

 

「んで、なんの連絡も無しにどうしたんだ?」

 

「何、二十五層の攻略を俺も手伝おうと思ってな」

 

「あぁ、だからPoHのカーソルはグリーンになってるんだ」

 

 

PoHは快楽主義で、面白ければ他人を傷付けたり殺す事を躊躇わない。その為にいつもはカーソルがオレンジだったが、ストレアが指摘した通りにグリーンに戻っていた。恐らく攻略に参加する為にカーソルをグリーンに戻す〝贖罪クエスト〟をクリアして来たのだろう。俺もカーソルをグリーンに戻す為にクエストをクリアしなければならない。

 

 

「珍しいな、お前が攻略に参加するなんて」

 

「なんか()()()()()()()()()()()()()()だからな。参加しない手は無いだろう?」

 

 

基本的にPoHは背中を預けてはいけない種類の人間だ。何せスリルを楽しむという、人間として性格の壊れた破綻者なのだ。一方的に信じて頼れば、いつか飽きたからと背中を刺されてしまう。だがそれはスリルさえ与えれば、PoHを楽しませれば裏切らないという事でもある。間違いなくリアルでは排除されるであろう人間だが、PoHという男をよく理解すれば、そのリスクを背負っても十分にリターンを得られるほどの価値がある事が分かる。

 

 

ともあれ、いつもこちらから誘っても乗り気でなかったPoHが自分から参加しようとしているのだ。断らない訳がない。

 

 

「分かった。ヒースクリフにはこっちから伝えておく」

 

「あのCrazy girlsにも言っておけよ」

 

「覚えてたらな」

 

 

俺の言葉にPoHは楽しげに笑いながら中指を立てて、そして景色に溶け込むように消えていった。PoHの〝気配遮断〟と〝隠蔽〟のスキルの合わせ技か。追いかけろと言われても追跡が難しそうなほどに見事な隠密だった。

 

 

「良かったの?私たちは兎も角、他の人たちはPoHの事を嫌ってるみたいだけど」

 

「まぁ実際のところ、PoHはただの愉快犯だからな。嫌われるのは当然だろ」

 

 

PoHは攻略組でも、犯罪者だから、愉快犯だからと嫌われている。今は見逃されているが、いつか攻略組とPoHとの間で殺し合いが起きてもおかしくない程に。それ程までにPoHは嫌われているが、

 

 

「それでも()()()()()()。PoHが参加した以上、勝ちしか見えないぜ」

 

 

それ以上に強い。嫌われ者だろうがなんだろうが、PoHは強いのだ。それは攻略組の誰もが認めている。だからPoHの参加に多少嫌悪感を表すかもしれないが、攻略の最中で後ろから斬りかかる様な事はしないと断言出来る。

 

 

そもそも、PoHを殺すのは俺だ。口約束でリアルで殺し合おうと言ったが、その時が来たらリアルだろうがSAO内だろうが俺が殺す。PoHもその事を理解しているはずだ。

 

 

俺としてはリアルで殺し合いたいが贅沢は言えない。

 

 

「ウェーブ、なんか凄く悪い顔してるよ」

 

「ちょっとPoHとの約束思い出してワクワクして来た」

 

「そんなんだからユウキちゃんとシノンちゃんからホモ臭がするとか言われるのよ」

 

 

ストレアの発言に心が少し痛んだが、リアルでPoHと殺し合う時の事を考えて誤魔化すことにした。

 

 

 






ストレアはエロい。ウェーブもそう思ってるけど精神的な幼さを感じて、そういう対象として手を出すつもりは無い。だけどムラムラはする。

ヒロインPoHニキ、二十五層攻略に参加。これは勝ち以外にあり得ない。

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