闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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フリータイム・5

 

 

資金を調達し、大砲とバリスタの生産を依頼してから5日後、エギルから必要台数分のパーツと弾が出来上がったと連絡があった。これで現地で大砲とバリスタを組み立てれば〝ザ,ファフニール〟の攻略の準備は整う。つまり、二十五層の攻略が開始されるという事だ。

 

 

〝風魔忍軍〟からの連絡では〝ザ・ファフニール〟には特に変化は無し。ただ武器を持ったNPCが挑んでいるが、数分も持たずに全滅する事が何度かあったそうだ。おかげで主街区の〝ボーデン〟には男性のNPCの姿は見えなくなった。気持ちは分からないでも無いが、無策に突っ込んでもそれは自殺と変わらない。勝機が無ければどんなに勇ましくても自殺行為でしか無いのだ。

 

 

ともあれ、二十五層の攻略に向けて俺たち〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟が〝採掘場〟から主街区までの護衛を務めることになった。PoHとストレア以外のメンバーが揃うのはなんだか久しぶりな気がする。

 

 

「なんか久しぶりだな」

 

「そうですね。僕らなんやかんや別行動してばかりでしたから」

 

「私とユウキはレベリングしててアルゴは情報の収集と拡散、シュピーゲルも〝風魔忍軍〟と一緒にフロアボスの観察をしていたからね」

 

「まぁそのおかげで情報はバッチリ集まったゾ。この情報を元にしてナミっちとヒースクリフが作戦考えてるからナ」

 

「ねぇねぇ、話し合うのは良いんだけど手伝ってくれない?」

 

 

〝採掘場〟に向かう道中でたまたま現れたネームドボスをユウキ1人に任せて俺たちは話し合う。ネームドボスは〝プレデター・プランツ・ソルジャー〟という、ハエトリソウが3メートル台の人型になった植物型のモンスター。自分から動き回って獲物を捕食するという食虫植物の定義をぶち壊してくれたネームドボスである。

 

 

〝プレデター・プランツ・ソルジャー〟は頭と両手と計三つの葉を使ってユウキを圧殺しようとしているが、それをユウキは()()()()()()()()()()()()()()()。リアルでも思ったのだがユウキの反応速度は常人よりもかなり早い。反応速度だけならば正直な話、俺を超えている。唯一の例外はキリトで、あいつだけがユウキよりも優れた反応速度を持っていてユウキの動きに対応出来る。

 

 

だからと言って俺がユウキよりも弱いわけでは無い。そもそも見られて反応されるのであれば見られずに動くか、視認出来ない、もしくは反応出来ない動きをすれば良いだけの事だ。これは俺だけではなくてPoHやヒースクリフもできる事で、PVPの成績だけを見るならば俺を含めた三人がキリトとユウキを圧倒している。

 

 

そしてそのまま〝プレデター・プランツ・ソルジャー〟はユウキに後の先を取られ続け、全身を斬り刻まれてHPがゼロになった。

 

 

「結局ムエンゴで倒せちゃった……」

 

「おめでとう、ついにユウキも逸般人ね」

 

「ウェルカム……!!ようこそ……!!歓迎する……!!我々は歓迎する……!!」

 

「正直、やっとかって思ってル」

 

「ユウキは基本ソロじゃなくて複数で戦うからしょうがないと言えばしょうがないけどな。ネームドボスをソロで倒してないのはアルゴだけだな」

 

「おっと、オレっちにソロでネームドボスと戦えと?」

 

「させる意味が無いから、そもそもソロでネームドボスに挑む機会すら無いだろうが」

 

 

攻略組の中でもソロで最前線から二層以内のネームドボスを倒したプレイヤーは逸般人と呼ばれて敬意を表される事になる。〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟ではアルゴ以外の全員が、〝血盟騎士団〟ではヒースクリフとアスナが、〝風林火山〟ではクラインが、〝風魔忍軍〟ではコタローが、ソロプレイヤーではキリトがソロでネームドボスを倒している。〝アインクラッド解放隊〟はネームドボスに挑もうとしないので論外、〝ナイトオブナイツ〟は集団戦が全体の戦法を取るのでソロでネームドボスに挑む事をしない。だからと言って〝ナイトオブナイツ〟の実力を疑うわけでは無い。〝アインクラッド解放隊〟は違うが。

 

 

「ウェーブ、ネームドボスソロで倒したからご褒美ちょうだい!!」

 

「良いぞ、何が良い?二十四層のスイーツのフルコースか?」

 

「肩車!!」

 

「肩車?……良いけど、そんなので良いのか?」

 

「うん!!」

 

 

ユウキの意図が分からずに聞き返してしまうが、ユウキは迷う事なく頷いて肩車を強請ってきた。ネームドボスをソロで倒してそんな事で良いのかと考えるが、そうして欲しいのならと屈むとユウキは軽やかに跳躍して肩に乗ってきた。

 

 

「おぉ!!高い高い!!」

 

「軽いなぁホント、飯食ってる?」

 

「あれは……!?」

 

「知っているのかシノン!?」

 

「かつてユウキはウェーブにエロを感じると言われた事があった。あぁして肩車をする事でウェーブの顔を太腿で挟む事でそのエロスポイントをアピールしているに違いない!!ユウキ、なんて恐ろしい子なの……!!ところでシュピーゲル、私はお尻にエロを感じると言われたのだけどどうしたらアピール出来るのかしら?」

 

「好きだった女の子にそんな事を聞かれるか……」

 

「……良いなぁ」

 

 

割と周りが何が騒いでいるようだが気に止めるだけで済ます。確かにシノンが言う通りにユウキの太腿で顔を挟まれるのだが、ユウキが好き勝手動くのでバランスを取るのが大変だ。油断をしているとユウキを落としてしまいそうになる。

 

 

「ありがとうね、ウェーブ」

 

「おいおいどうした?悪い物でも食ったのか?」

 

「食べてません〜!!……お父さんにこうして肩車してもらったなぁって、懐かしくなっちゃって」

 

 

紺野木綿季以外の紺野家の人間は、全員がHIVに発症してしまい病院生活を強いられている。だが、発症する前までは誰もが普通に生活をしていたのだ。木綿季(ユウキ)もこうして肩車を父親にしてもらった事があるのだろう。

 

 

あいにく、俺には肩車をしてもらったという記憶は無いが。

 

 

「このくらいならいつでもしてやるから遠慮するなよ?殊勝なユウキとかユウキらしくなくて不自然過ぎて吐き気を催すレベルだから」

 

「ウェーブ、ボクの事なんだと思ってるの?」

 

「無遠慮で突っ込む天真爛漫な女の子」

 

「間違ってないんだけどなんか納得がいかない」

 

 

頭の上で悩むユウキが可笑しくて笑いがこみ上げてくる。ユウキがユウキ自身をどう思っているか分からないが、俺からしたらユウキはそう言う女の子なのだ。

 

 

命の大切さを知っていて、命の短さを知っている。だから後悔しないために全力でぶつかり、全力で生きている素敵な女の子だ。

 

 

「悩め悩め若人よ。悩んで悩んで答えを出せよ」

 

「年寄りぶる程の年齢じゃないでしょ?」

 

「……でも四捨五入したら三十路なんだよなぁ」

 

「お尻を生かす……Tバック?いやいや、それは勝負下着……もっと遊びの無い服の方が良いのかしら?」

 

「なんか精神がゴリゴリ削れるから止めてほしいです」

 

「ウェーブに頼んだら私にもしてくれるかな……?」

 

 

シュピーゲルのSAN値が凄い勢いで削れている事以外はいつも通り平和そのものだ。もうすぐ二十五層の攻略だというのに変に気負いしている様子は見られない。

 

 

これなら少なくとも〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟は大丈夫そうだなと、〝採掘場〟に近づいた時だった。

 

 

「ーーーなんでや!!」

 

 

〝採掘場〟の方から、そんな耳障りな怒鳴り声が聞こえてきた。

 

 

 






二十五層攻略前の最後のほのぼの。気がついたらユウキチがヒロイン力を高めていた。

ネームドボスをソロで倒したら逸般人、フィールドボスをソロで倒したらキチガイ、フロアボスをソロで倒したらマジキチと呼ばれる。なお、マジキチはキチ波1人だけ。

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