闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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フリータイム・6

 

 

聞こえてきた瞬間に声の主が誰なのか、なんでここに来たのかを察し、みんなにハンドサインで指示を出そうかと思ったがその瞬間には全員がその場から離れて姿を消していた。〝隠蔽〟を使っているのかシステム的には感知出来ないが気配を探れば〝採掘場〟の物陰に散らばるように隠れているのが分かる。

 

 

「なんでワイらにそれをよこさんのかい!!」

 

「これは攻略組からの依頼で作ったモンだからだよ」

 

「ワイらだって攻略組や!!」

 

「嘘言うなよ。ヒースクリフさんとディアベルさんから〝アインクラッド解放隊〟は攻略組から外された事は聞いてる」

 

 

〝色絶ち〟で隠れながら近づけばそこにいたのはキバオウが率いる〝アインクラッド解放隊〟のメンバー大凡40名と〝採掘場〟の現場監督らしき鍛治職のプレイヤーが話し合っている姿だった。〝伝説の勇者(レジェンド・ブレイブス)〟の面々は現場監督のプレイヤーの後ろに立ち、他のプレイヤーたちを守っている。

 

 

「聞いてるぞ。あんたら、勝手にフロアボスに挑んで負けたんだってな」

 

「あれは……鼠や!!鼠がフロアボスの情報教えんかったのが悪いんや!!」

 

「中層ギルド誑かしておいてよく言うぜ」

 

「なんやとぉ!?」

 

 

現場監督のプレイヤーがキバオウの事を見事なまでに煽っているが、このままでは良くない。〝アインクラッド解放隊〟は〝血盟騎士団〟や〝ナイトオブナイツ〟の様な一枚岩ではない上に、規律が正しいと言えない組織だ。後ろ二つの組織なら煽られても我慢して別の形で報復するだろうが、〝アインクラッド解放隊〟は感情に任せて襲い掛かる可能性がある。

 

 

〝採掘場〟の存在は攻略組にとって生命線に等しい。ここの存在のおかげで俺たち攻略組は良い装備を作って貰えるのだから。

 

 

キバオウの目的はここで作った大砲とバリスタを強奪する事だろう。そして負けた〝ザ・ファフニール〟に挑んで勝つつもりか。だが今の〝アインクラッド解放隊〟が〝ザ・ファフニール〟に挑んでも無様に負けるのが目に見えている。そんな事になれば折角掻き集めたコルが無駄になり、攻略に遅れが出る。

 

 

それを防ぐ為に、俺は堂々とキバオウと現場監督のプレイヤーの間に割って入った。

 

 

「ちーす」

 

「なっ……!?〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟の!?」

 

「大砲とバリスタの用意は?」

 

「出来てる。あんたらを待ってたら所にこいつらが来たんだよ」

 

「了解。じゃあ下がっといて、邪魔だから」

 

「あいよ」

 

 

現場監督のプレイヤーが下がったのを見て改めてキバオウに向かい直る。キバオウの間にあるのは動揺、そして怯え。俺の事を知っているからこそ俺に敵わないと分かっているのだろう。

 

 

「んで、なんで負け犬戦犯者がここに来た?まさか二十五層の攻略を邪魔しに来たのか?」

 

「っ!?違う!!ワイらで二十五層を攻略する為にここに来たんや!!知ってるで!!ここであのフロアボスを倒せる武器を作ってるちゅうのは!!それをよこさんかい!!」

 

 

俺が軽く煽ればキバオウはすぐに激情し、虚勢を張り付けて怒鳴って来た。この時点で俺のキバオウに対する評価はゼロを下回ってマイナスに突入している。そもそも自己評価が出来ていない時点でアウトだ。自分に何が出来て、何が出来ないのかを把握していないという時点で攻略組として終わっている。これまではなんとかついて来ていたが、近いうちに脱落するだろうとヒースクリフは予想していた。こんな奴に少しでも期待していた自分が恥ずかしくなる。

 

 

「キバオウ、お前に伝えたはずだぞ?攻略組に所属している全員の採決で〝アインクラッド解放隊〟の攻略組からの除籍が決まったと。ディアベルから伝えたはずだ」

 

「なんでや!!ワイらが何をしたっちゅうねん!!」

 

「中層ギルドを誑かしてフロアボスに挑み、レイドを壊滅させた上に〝ナイトオブナイツ〟に犠牲者を出させた。その上にフロアボスをフィールドに出した……〝ナイトオブナイツ〟が報復行為に走らないだけ有情だと思えよ」

 

「あれは鼠が情報を教えんかったからや!!」

 

「お前らがフロアボスに挑んだ時点で〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟がフロアボスの情報を収集してたんだよ。勝手に先走って余計な事しやがって……面倒ごとの数え役満じゃねえか。お前たち、ひょっとしてゲームをクリアしたく無いのか?」

 

「おんどれぇ……!!」

 

 

歯を食いしばり、額に青筋を浮かべたキバオウはウインドウを出して操作する。そして俺の目の前に〝決闘(デュエル)申請〟と書かれたウインドウが現れる。どうやら血が上ってもそのまま斬りかからない程度の理性はあったらしい。今の俺はグリーンでキバオウもグリーン、もしキレて攻撃すればその瞬間にはキバオウはオレンジになるからな。

 

 

決闘(デュエル)〟とはPVP、つまりプレイヤー対プレイヤーの戦闘のこと。普通ならプレイヤーを攻撃すれば攻撃した方のプレイヤーはオレンジになるのだが〝決闘(デュエル)〟を介して攻撃をした場合にはオレンジにならない。そして〝決闘(デュエル)〟は圏内設定下でも問題なく行う事が出来る。近いうちにPoH辺りがこれを利用して良からぬ事をしそうだ。

 

 

決闘(デュエル)〟には最初に強攻撃を当てた方が勝者の〝初撃決着〟、相手のHPを半分にした方が勝者の〝半減決着〟、相手のHPをゼロにした方が勝者の〝完全決着〟の三種類ある。攻略組でよく見かけるのは上の二つ、最後の〝完全決着〟は今のSAOではそのまま殺しに繋がるので基本的に行われる事はない。キバオウが提示したのはその内の〝半減決着〟だった。

 

 

今は除籍されたとは言えキバオウは攻略組の仲間意識の強さを知っている。仮に誰かが悪意を持って殺されれば、全員が報復行為に走るくらいの仲間意識を持っている。だからか、それとも殺しを忌憚してなのかキバオウはそれを選んで来た。しかも地味にギルド対ギルドの設定になっている。そうなれば〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟対〝アインクラッド解放隊〟の〝決闘(デュエル)〟で行われる。俺しか来ていないと見て数で押せば勝てると考えたのだろう。

 

 

残念ながら、数で俺を倒したければ〝血盟騎士団〟級が100はいるが。しかも隠れているだけで他のやつも来ている。

 

 

しかしそれは指摘しない。気づいていないキバオウが悪いのだ。〝決闘(デュエル)申請〟のYESのボタンを押せばカウントダウンが始まる。

 

 

武器を抜く〝アインクラッド解放隊〟の面々。

 

 

武器を抜かずに自然体で立つ俺。

 

 

そしてカウントダウンがゼロになりーーー〝アインクラッド解放隊〟の中心が爆ぜた。

 

 

「なっーーー」

 

 

予想外の事態に硬直する〝アインクラッド解放隊〟。下手人は鍛冶場の屋根の上に潜んでいたシノン。矢に火薬を仕込んだ炸裂矢を放って爆発させたのだ。〝アインクラッド解放隊〟からすれば予想外なのだろうが、俺たちからすればそれは予想内の事でしかない。固まったキバオウの顔面に膝を叩き込み、仰け反った顔面を掴んで地面に叩きつける。それでHPが七割削れてキバオウは敗北する。

 

 

「よいしょっと!!」

 

「吹っ飛べ!!」

 

 

そしてユウキと、何故かチャイナドレスを着たストレアが武器を振り回して〝アインクラッド解放隊〟を吹き飛ばし、

 

 

「いらっしゃ〜い!!」

 

「なんでオレっちまで……」

 

 

転がされた相手を待ち構えていたシュピーゲルとアルゴが短剣と鉤爪で急所を突いてHPを削るという作業に入っていた。時折、硬直から解放されてユウキとストレアに吹き飛ばされる事を免れる者がいるが、その場合は俺がシュピーゲルとアルゴの方に投げ飛ばしている。

 

 

そして〝決闘(デュエル)〟開始から約2分、〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟の勝利で終わった。

 

 

「誰か!!女性プレイヤー連れてきて!!」

 

「なんでだ?」

 

「こいつらセクハラで黒鉄宮に送るから!!」

 

「おい!!誰か〝マッスルツアー〟に参加してた女性プレイヤー呼んでこい!!」

 

 

〝アインクラッド解放隊〟に攻略を邪魔される可能性を排除する為にセクハラで黒鉄宮に送り込むのも忘れない。

 

 

 






久しぶりのなんでやさんの登場。ウェーブの評価は最低値以下、すでに見限ってる。

決闘と言う名の蹂躙。量が質を凌駕するなどと一体誰が言った?生半可な数だと逆に蹂躙されるのがオチっていう。

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