〝ザ・ファフニール〟を〝ブランデンブルグ〟から砦に誘い出し、大砲とバリスタで撃ちまくる。耳が痛くなる程の轟音と共に生産職のプレイヤーたちが必死こいて作った弾丸が湯水の如く消費される。金をかけたからと言ってケチって死んでしまえば笑い話にもならない。攻略組ならば誰もが知っている事で、だからこそ金額にして数百万もかけて作った弾丸を躊躇わずに使っていく。
大型の長槍クラスのバリスタの弾丸と成人男性程の質量を持った砲丸が豪雨の如く〝ザ・ファフニール〟に目掛けて降り注ぐ。それらは〝ザ・ファフニール〟の鱗を貫き、砕く。それでも〝ザ・ファフニール〟のHPはようやくゲージが一つ削れた程度。〝ザ・ファフニール〟のHPのゲージ数は10もあり、全てを削るには弾丸の数が足りない。
だからこそ、攻略組でもトップクラスとされているプレイヤーたちがここで動く。
ディアベルの指示でバリスタと大砲が撃つのを止めた瞬間、〝ザ・ファフニール〟が吼えようとしたのか口を開いて息を吸い込む。その瞬間に合わせて砦の城壁の上に陣取っていたシノンが開いた口に炸裂矢を矢継ぎ早に放ち、〝ザ・ファフニール〟の口の中で爆発させる。〝ザ・ファフニール〟の顔が見えなくなる程の大爆発と共にHPのゲージが一気に半分近く削れた。どうやら外が固くても中は柔らかいらしい。
爆発による衝撃で脳が揺れたのかたたらを踏む〝ザ・ファフニール〟。後ろ足の一つに全体重が乗せられたのを見計らい、キリトとアスナが飛び出してソードスキルを叩き込んだ。そしてクリティカルが発生し、ダメージこそ微々たる物だが支えになっている足にダメージを食らった事で体勢を崩して横倒しになる。
横倒しになった時の衝撃で局地的な地震が発生する。だが、この決定的な隙を逃す馬鹿は攻略組には居ない。揺れてバランスが取りにくい地面を蹴って城壁から飛び降りたのはストレア、その手には〝竜殺しの剣〟が握られている。〝竜殺しの剣〟を誰が使うかとなった時に、全員が名前を挙げたのはストレアだった。ストレアは現在の攻略組の中で両手剣使いとして名実ともに最強だ。使用回数が定められた、フロアボス攻略の鍵となる武器を任せるのに相応しい人材は彼女以外にいない。
そして城壁から飛び降りた落下の勢いと〝竜殺しの剣〟の質量、体幹の完全なる把握によって放たれた唐竹割りが、〝ザ・ファフニール〟の片翼を
次に動くのは俺とPoHだ。俺は〝サイズブレード〟を、PoHは短剣というには大振りすぎる短剣を握り、炸裂矢で煙が上がっている顔面に駆け出した。
「ーーーIt's show time」
「ーーー〝
PoHは邪魔な鱗を剥がして斬り刻む。そして俺はユニークスキル〝暗黒剣〟で習得したバトルスキルを発動させながら、
PoHと左右で別れ、無防備な首をひたすらに、返り血を浴びる事も厭わずに斬り続ける。睨んでいた通りに〝ザ・ファフニール〟の異常な耐久は鱗にあるらしく、そこさえ越えることが出来れば並以下ではあるがダメージを与えることが出来た。
首という生物の急所を執拗なまでに攻撃され、〝ザ・ファフニール〟は起き上がろうと足に力を込める。そしてそこをユウキが跳躍と回転を同時に行いながら遠心力で上乗せした一撃を、ヒースクリフが全体重を乗せたシールドによるスマッシュを叩き込んで行動を阻害。
そしてストレアがその足を〝竜殺しの剣〟で切断する。
〝ザ・ファフニール〟は咆哮を上げようとせずに、口から毒々しい色合いの瘴気を漏らしている。情報によるならこれは毒のブレスか。耐毒ポーションを使用したとは言え、まともに喰らえば危ないのは目に見えて分かる。
ブレスを吐こうとした瞬間、キリトとアスナが突進系のソードスキルを使って〝ザ・ファフニール〟の行動を阻害し、虚空から現れたコタローが爆弾を〝ザ・ファフニール〟の眼球に突っ込んで逃げる。流石に巻き込まれるかと思い飛び退くと同時に〝ザ・ファフニール〟の眼球が爆ぜる。そして悲鳴はシノンの炸裂矢によって黙らされる。
ここまでやって削れたゲージはやっと三本。加減は一切無し、道具の消耗も度外視して湯水の如く使っていて、それで三本だ。流石は二十五層のフロアボス、四分の一のクォーターポイントとも言える階層を任される事だけはある。
だが、それでも倒せる存在だ。
鳴り響く銅鑼の音、それはバリスタと大砲の装填が終わった時の合図。銅鑼の音が聞こえたのと同時に〝ザ・ファフニール〟に纏わりついていた全員が全力で城壁まで逃げ、そしてなってから五秒後に離れたことの確認も無しに弾丸と砲丸が再び豪雨と共に降り注いだ。片目を潰されて、足一本と片翼を斬り落とされ、首を斬り刻まれた今の〝ザ・ファフニール〟にはそれから逃げるだけの余力は無い。だが残った目には殺意が漲っている。油断すればあっという間に壊滅まで追い込まれるだけの闘志を未だに秘めている。
それでも、俺たちの勝利は揺るぎない。
弾丸と砲丸の豪雨の中で、〝ザ・ファフニール〟のゲージに麻痺のバッドステータスを表すマークが現れる。バリスタの弾丸に仕込んでいた麻痺毒が効いたようだ。通常のフロアボスは状態異常の耐性が桁外れに高く、なったとしても数瞬程度の時間しか取れない。
だが、〝ザ・ファフニール〟の麻痺は弾丸と砲丸の豪雨が止んでも残っていた。
ユニークスキル〝暗黒剣〟はこれまでソードスキルが一切現れず、バトルスキルのみが習得可能というスキルだった。しかもそのバトルスキルは全てが状態異常に関わるものばかり、完全に搦め手に特化したユニークスキルだったのだ。今回俺が使用した〝衰弱の闇〟の効果は〝30秒間通常攻撃に状態異常耐性の低下の付与〟。回避を気にせずに200回は斬る事が出来たので、今の〝ザ・ファフニール〟の状態異常の耐性は並のモンスターよりも低いだろう。
闘志はある、殺意もある。だが動かないのならば関係ない。
大砲とバリスタの装填の間を俺たちが攻撃し続け、装填が終わったら大砲とバリスタに任せるというループがここに完成した。
正面から戦うよりも嵌め殺した方が楽に決まってるだろぉ!!
と、いうわけで二十五層〝ザ・ファフニール〟攻略完了。簡単過ぎる?それは事前の準備が万全だったから。大砲とバリスタが見つかってなかったら少なく見積もっても10人以上の犠牲者が出てました。
ユニークスキル〝暗黒剣〟の情報開示。ソードスキルは一切無し、状態異常に関わるバトルスキルオンリーという完全搦め手仕様。どこからどう見てもウェーブ大歓喜のユニークスキル。獲得条件はソードスキルを使わずにボスクラスのモンスターの一定数撃破。
次は時間飛ばして四十層辺りから。