闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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ディーヴァアンドナイト・5

 

 

「うぅ……穢された……もうお婿に行けない……」

 

「大丈夫大丈夫、婿に行けないのなら嫁に行けば良いじゃ無いか」

 

「お前ってとことん俺の性別無視してくれるな」

 

「だってねぇ?遊べるオモチャがあったら遊ぶだろ?」

 

「人の事オモチャ扱いするなよぉ!!」

 

 

キリトをキリトちゃんにして記録結晶でその勇姿を撮り終え、俺たちは三十九層の主街区〝ノルフレト〟に向かう。キリトちゃん撮影会でキリトの心が深手を負ったがこれは俺の腹いせなのだから仕方ない事だと割り切ってもらわないと困る。そもそも〝決闘(デュエル)〟ふっかけてきたのはあっちなのだから用意するのは当たり前なのだ。

 

 

結論、キリトが悪い。俺は悪く無い。

 

 

「それに心配しなくてもお前の事を狙ってる奴がいるから」

 

「心当たりは……うん」

 

「察しているのならばそれで良し、誰かは言わないさ。だけど男が草食系だったら女が肉食になるから、最終的に捕食される事になるぞ?ソースは俺な」

 

「ウェーブがソースというだけでこれ以上無い程に信じられる。でもユウキとシノンの2人見てると信じるしか無いんだよなぁ」

 

「知ってるか?あいつら、俺を狙って俺の社会的地位を殺しに掛かってるんだぜ?」

 

「恋する乙女怖い」

 

 

何をするわけでも無くブラブラと〝ノルフレト〟をキリトと歩き回る。現在の時間は深夜の2時で店はプレイヤーNPC問わず閉まっている。開いているのは酒場くらいだがそういう気分では無い。四十層の宿に戻ろうと転移門に向かう途中で、歌声が聞こえてきた。

 

 

「ん?歌か、これ?」

 

「マジか、行くぞキリト」

 

「えっ、ちょ!?」

 

 

歌声に気がつくと同時にキリトの首根っこを掴んで声の方向に駆け出す。方向的には転移門広場で、俺ならキリト1人連れても数十秒で着ける。

 

 

そうして転移門広場に辿り着くと、そこには昨日と同じ様にNPCの楽団の演奏に合わせて歌っている〝ウタちゃん〟の姿があった。昨日の様に顔を晒しておらずにフードを被っているがその歌声は昨日と同じで綺麗だった。今日の歌は子守唄を思わせる歌詞で、意識しているのか限界まで抑えられた音量だがNPCの演奏に負ける事なく調和して転移門広場に響いていた。

 

 

流石に真夜中となれば昨日ほどの人だかりは出来ずにプレイヤーとNPC合わせて10に届くかどうかといったところ。だが、その誰もが〝ウタちゃん〟の歌を聴くために足を止めていた。その中には濃い灰色のローブを着込んだアスナの姿も見える。恐らく気分転換か何かで出歩いているところで〝ウタちゃん〟を見つけたのだろう。

 

 

「綺麗な歌だな……」

 

「ホントそうだよ。あそこにアスナがいるから終わってからでも話しかけたらどうだ?」

 

「……アスナが?」

 

「あぁ、あそこでローブを着込んでる奴だ。ギルドの副団長って立場で大変なのにお前の事を気にしてくれてるんだ。たまに話してもバチは当たらないさ」

 

「でも、俺は……」

 

「話さなかったら〝キリトちゃん写真集〜私、こんなの初めて……〜〟をアルゴ経由でアインクラッド中にばら撒く」

 

「分かりました話しますだからその写真集はばら撒かないで下さいホントお願いします……!!」

 

「分かればよろしい」

 

 

若干脅しが入ったがこれは仕方のない事だ。正直、俺と〝決闘(デュエル)〟なんかするよりもアスナと合わせる方がキリトの精神的には良いのだから。本音を言えばそこにユイも入れたいのだが、この時間だしもう眠ってしまってるだろう。キリトはそれを見越して夜にレベリングをしている筈だし。

 

 

そうして数分後に〝ウタちゃん〟の歌は終わった。疎らにされる拍手に頭を下げ、そのまま転移門に向かおうとした〝ウタちゃん〟に近づき、

 

 

「ノーチラスというプレイヤーの事で話がある。三十層まで来てくれ」

 

 

返事も聞かずにそれだけを告げて転移門で三十層の主街区〝アマルフィ〟に向かう。三十層は層の半分が水に覆われた変わり種の階層で、船が無ければまともに動くことが出来ない階層だった。第四層も似た様な階層だったがあそこはその気になれば歩けるだけの地面があった。だが三十層にある地面は殆どが島で徒歩での移動が制限される。

 

 

湖の上に建てられた転移門。水面には夜空に輝く星が映し出されていてロマンチックな雰囲気を醸し出しているが残念ながら俺がここに〝ウタちゃん〟を呼んだのはそんな理由ではない。

 

 

そもそもそんな事をしたらユウキとシノンが怖い。多分アルゴも便乗して何かやらかすだろう。

 

 

〝ウタちゃん〟とノーチラスは何か関係があると踏んでノーチラスをネタにして〝ウタちゃん〟を誘ったのだがその考えは正しかったようだ。俺が転移してから10秒後に、〝ウタちゃん〟がやって来る。

 

 

「……貴方はエー……ノーくんと何の関係があるんですか?」

 

「攻略組仲間ってやつだ。まぁ一度も一緒に戦った事はないけどね。その前に自己紹介だ。俺はウェーブ、ギルド〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟のリーダーをしている」

 

「〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟?……ギルドタグを見せてもらっても良いですか?」

 

「もちろん」

 

 

〝隠蔽〟で隠していたギルドタグを表示して〝ウタちゃん〟に見せる。最前線なら俺たちと偽の〝ラフィンコフィン〟のタグの違いは理解してくれているが中層下層プレイヤーはそんな事を理解していないのでギルドタグを晒したままだと厄介ごとを呼びかねないのだ。前に一度、ギルドタグを晒したまま二十二層を歩いていたら圏内だというのに武装した中層プレイヤーたちに囲まれた事があった。それ以降〝隠蔽〟でギルドタグを隠すようにしている。

 

 

〝ウタちゃん〟は〝笑う棺桶(ラフィン・コフィン)〟と〝ラフィンコフィン〟のギルドタグの違いを理解してくれているらしく、目の部分に指を当てながら確認していた。

 

 

「目がつり目……って事は本当に攻略組の……あ、ごめんなさい!!疑ってしまって!!」

 

「イヤイヤ、警戒して当たり前だ。無警戒でいられるよりもずっと安心出来る」

 

 

慌てて頭を下げる〝ウタちゃん〟の様子がおかしくてつい笑ってしまう。どうも彼女の感性はまともな様で、久しぶりにまともな感性の人間にあった気がするのだ。

 

 

攻略組には良くも悪くもぶっ飛んだ連中しかいないからな。

 

 

「あ、ごめんなさい。私、自己紹介もしないで……私はユナです」

 

 

そう言いながら〝ウタちゃん〟は自分の名前を告げながらフードを外して昨日見た顔を晒してくれた。

 

 

「それでノーくんの事で話があるって……」

 

「あぁ、ちょっとノーチラスと会いたいんだけど連絡取れるか?」

 

 

アスナから聞いたのだがノーチラスは迷宮区の攻略、ほとんど〝血盟騎士団〟の拠点に戻らずに出歩いているらしい。どうにかしてくれと言われたが一度も会っていないのではどうする事も出来ない。呼び出そうにもギルドメッセージは無視されていて期待出来ない。ならばフレンドメッセージはとなるがノーチラスは〝血盟騎士団〟の誰ともフレンド登録をしていなかった。

 

 

なのでノーチラスとフレンド登録をしているであろうユナの事を探していた。今日会えたのは全くの偶然、キリトの弱味も握れたし運が良くて怖すぎるくらいだ。

 

 

「分かりました。多分ノーくんはもう寝てると思うんで明日に朝になってからになりますけど」

 

「おいおい、頼んだのは俺だけどそんなにあっさり信じて良いのか?少し疑ったらどうだ?」

 

「ふふ、私これでも人を見る目はあるんですよ?ウェーブさんは善人じゃない、でも悪人でも無い。そう思ったから信じたんです」

 

「……やれやれ、最近の子供は強かだこと」

 

 

俺のことを信じると言ったユナの目には疑いが一切無い。本気で俺のことを信じていると分かった。ユウキといいシノンといい、最近の子供は強かで少し怖くなってくる……いや、ユウキとシノンのあれは別次元か。

 

 

「んじゃ、明日の12時に〝ジェイレウム〟の転移門で待ってるから……あぁ、そうそう」

 

 

転移門で四十層に移動する直前に、振り返ってユナに一言。

 

 

「歌をありがとう。また聞きたいと思う歌を聞いたのは久しぶりだったよ」

 

 

ユナの歌への感謝を告げて、転移した。

 

 

 






〝キリトちゃん写真集〜私、こんなの初めて……〜〟という写真集がウェーブの手で作られたらしい。攻略組のガチホモ大歓喜の一冊。なお〝血盟騎士団〟の某副団長には無料で進呈されたそうな。

〝ウタちゃん〟のプレイヤーネームがようやく公開。ユナはウェーブが強かだと評価する程の人間らしい。なお、非汚れ系。ユウキチとシノノン?2人はホラ、手遅れだから。

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