「ーーーよっと」
軽い口調で支給されていた初期装備のアイアンソードを振るい、ウツボカズラのような胴体から触手を生やしている植物系モンスターの〝リトルペネント〟を切り刻む。リアルでも植物というのは存外にしぶとく、それはSAOでも当てはまるようでたった一度や二度刈った程度ではリトルペネントは倒れず、よくもやってくれたと言いたげにヘイトを此方に向けてくる。
だがまぁ、やられるつもりは無く。一度や二度でダメなら死ぬまで繰り返せば良いだけのこと。
胴体から生えている触手を一本一本切り落とし、達磨状態にしてから地面に叩きつけ、アイアンソードを突き立てて一気に引っ張って切り裂き、飛び散る青臭い液体を嗅覚と味覚で堪能しながら、リトルペネントのHPが無くなるまで何度も何度も繰り返す。
HPのゲージが無くなった事でリトルペネントは僅かに身悶えして動かなくなり、ウインドウが経験値とリトルペネントのドロップアイテムである〝リトルペネントの胚珠〟の入手を教えてくれる。
ヒースクリフが持ってきた情報によりアニールブレードを得るためのクエストを受けた俺たちは要求されていた〝リトルペネントの胚珠〟を得る為に村の側にある森にへとリトルペネントを狩りに来ていた。ヒースクリフ曰く、情報などを得るクエストは一度しか受けられないのだが装備やスキルを獲得するクエストは何度でも受けられるらしく、第一層でドロップアイテムを除いて最優であるアニールブレードを得る為に全員でリトルペネントハンティングをする事にしたのだ。
リトルペネントは三つのタイプに分かれているらしく、一つは頭に芽を生やした通常タイプ。一つは芽ではなく花を生やした〝リトルペネントの胚珠〟をドロップする花付きタイプ。最後に芽でも花でもなく、割れると森中からリトルペネントを集める実を付けた実付きタイプ。実付きタイプあたり上手くしてやればレベリングが捗りそうだが俺とヒースクリフは兎も角ユウキとシノンは死にかねないので普通に実付きタイプには気をつけてハントする事になった。
「ーーーふっ!!」
ヒースクリフの戦い方は質素な物だった。盾でリトルペネントの触手を弾き、剣で斬りかかるというもの。花がない、派手さが無い。だがそれ故に堅く、突き崩せない牙城。ガードした事でHPは幾らか削れているが、直撃一切無しでリトルペネントを倒す。
「ーーーヒャッホォイ!!」
「ーーーハァッ!!」
ユウキとシノンの戦い方は目まぐるしい物だった。止まらない、一瞬たりともその場に留まり続ける事なく、走って避けて走って攻撃するというヒットアンドアウェイ。ニ対一という状況を上手く利用してリトルペネントの狙いを絞らせずに纏わりつくように切り刻んでいる。そうして危なげ無くリトルペネントを倒した。
「ふぅ……」
「大っ勝利!!」
「お疲れ、〝索敵〟じゃ引っかからないからちょっと休憩しとくか」
「なら私が見張っているから休んでいると良い」
剣をしまい、自然体に振舞いながらも俺とヒースクリフは〝索敵〟のスキルを使って周囲の警戒を怠らない。ユウキとシノンは疲れたのか、警戒する様子もなく地面に座っているがそれは俺たちとは違うからだろう。
「今〝胚珠〟って幾つ集まったっけ?」
「確か二つね。ウェーブとヒースクリフが花付き倒して速攻でドロップしてたわ……それから花付きが全然出てこないで普通のと実付きがわんさか湧いてる状態よ」
「確か花付きが出るのは確率だったよな?」
「あぁ、β版ではおおよそ1%の確率で花付きが湧く様に設定されていた。仕様上、リトルペネントを倒せば確率が上がるとはいえ下方修正されてるだろうから気長に狩るしか無いな」
「うへぇ〜何匹倒したか覚えてないよ〜」
「私も二十から数えるの止めたわよ……」
「四十二匹倒したな。レベルは三つ上がって6だぜ」
「私は三十五匹狩って今のレベルは5だ」
「なんでそんなに元気なのよ……」
イェーイとダブルピースを決める俺と無言でドヤ顔をかますヒースクリフを見てシノンは頭が痛そうに顔を手で覆っているが、ユウキとシノンもリトルペネントをハントしまくったお陰でレベルが上がってヒースクリフと同じ5レベになっている。
リアル重視で忘れそうになるのだがSAOの世界は
吸ってたタバコが燃え尽きたのを確認して火を消すと、残っていたリトルペネントの死体が消滅する。確認したのだが死体の消滅までにかかる時間は多少のバラツキが見られるものの五分程度だった。時計代わりにちょうど良い。
「よーし、ポーチの補充してまたハントするぞー!!」
「よっしゃぁ!!」
「元気良すぎよ……」
「ダウナー系には辛い物だな」
「そういう貴方も目が生き生きしてるわよ」
モンスターに捕捉されていないのでアイテムボックスから消耗したアイテムを補充し、さらなるアイテムと経験値を求めてモンスターを探す旅に出る。
森の中といえば木が生えていて歩きにくいイメージなのだが、SAOというゲームの世界だからなのか、道の様なものがあったり、武器を振るうのに邪魔にならない程度の広さが確保されてたりする。その道に沿って森の奥へと進んでいると、不意に鼻に着く匂いを感じた。
「なんだこれ、甘ったるいような……」
「スンスン……そんな匂いしないよ?」
「ユウキ、ウェーブの五感を自分のと比べたらダメよ」
「シノン君が毒舌だな」
気になったのでハンドサインで全員に黙っておくように指示を出し、地面に耳を押しつけながら〝索敵〟を使う。〝索敵〟のスキルは熟練度が低い為にまだ範囲が狭く、それよりも五感に頼った方が情報を集められるのだ。今回は少しでも多くの情報が欲しいので同時に使う事にする。
そして分かったのが多くの音ーーーおそらくリトルペネントのーーーがここの先に向かっている事。俺たちの方向からはハントしたからか全く来ないが、それ以外の方向から多くの音が雪崩れ込むように集まっているのだ。
「誰か実を割ったのか?」
考えられるのは誰かが実付きのリトルペネントと対峙し、故意なのか事故なのか知らないが実を割ってしまった事。リトルペネントが集まっている原因は不明だが、分かるのはこの先で誰かが戦っているという事だった。
立ち上がり、振り返ると3人は武器を抜いていた。その目に怯えは無く、闘気に満ち溢れている。
それを確認して迷わずに駆け出す。目指すのはリトルペネントが集まっている場所。アバターのステータスとリアルでの走法をフルに活用し、数百メートル離れていた距離を数十秒で走破して現場にたどり着く。
そこにいたのは数十匹のリトルペネントに囲まれながら孤軍奮闘している黒髪の少年の姿。四方八方からリトルペネントに襲われて触手に殴られながらもその目は諦めていない。
故に身体を地面スレスレまで倒してリトルペネントに囲まれている少年目掛けて走り出す。リトルペネントのヘイトが少年に向けられているからなのか俺の存在は気づかれずに接近に成功、そして隙間を縫うようにして駆け、ついでと言わんばかりにリトルペネントの足の役目をしている触手をすれ違い様に切り刻んで行く。
「ーーーえ?」
「話は後だ、ポーションはあるか?」
少年を襲う触手を切り刻みながら死角をカバーするように背後に立って生命線であるポーションの所持を聞く。
「ま、まだ大丈夫だ」
「そうか。なら、死にたくなかったら諦めるな。俺からはそれだけだ」
諦めこそが人を殺すとは誰が言ったか。実際に彼は諦めなかったからこうして俺が来るまで生きたいられたのだ。
「ーーー勝つぞ」
「ーーーあぁ!!」
俺の言葉に威勢の良い返事を返してくれた少年に頼もしさを感じながら、俺は襲いかかるリトルペネントたちに目掛けてアイアンソードを振るった。
ホルンカの森にてリトルペネントハントが行われているそうです。なお、被害にあったリトルペネントの数は百を超えてます。
ヒースクリフ、システム権限剥奪されても強いらしい。ラスボス属性の奴が弱いわけ無いだろぉ!!
最後に出てきた少年……一体どこのブラッキーなんだ……