ハーフポイント
「ーーーさて諸君、準備はいいかね?」
ヒースクリフが確認を取ると、全員が頷いた。
1月1日、新年を迎えた今日より五十層攻略が開始される。参加メンバーは俺とヒースクリフ、ユウキ、シノン、ストレア、アスナ、キリトの7人だけ。全百層あるアインクラッドのちょうど半分である五十層というハーフポイントと言える階層だから何が起こるか分からないのだ。クォーターポイントであった二十五層のようなキチガイ染みた設定がされているかもしれないので、
「それにしてももう五十層か……なんか感慨深いな」
「でもまだ半分なんだよ?」
「それは認識の違いってやつだな。俺はもう半分なのかって思ってる」
「あ〜、ウェーブってばこの世界に凄い喜んでたからね」
「流石は戦闘一家が生み出した最新鋭のキチガイね」
「慕ってくれている2人からキチガイ認定された気持ちはどうだね?」
「凄く傷付きました。ストレア、ちょっと癒して」
「良いよ〜」
ユウキとシノンからキチガイ認定されたのを理由にストレアにハグされながら頭を撫でてもらう。人にもよるだろうが他人の体温を感じるだけで気持ちが落ち着くのが分かる。それに加えてストレアの豊満ボディを感じられるので役得以外の何でも無い。
「このオッパイお化けが……ッ!!」
「ねぇねぇどんな気持ち?ウェーブに胸枕出来ないって思い知らされてどんな気持ち?」
「フッフッフッ……いつまでもツルペタだと思うなよオッパイお化けぇ!!ボクだって成長してるんだよ!!それをここで証明する!!キャストオフ……ッ!!」
そういうとユウキは装備を全て脱ぎ捨てて下に着ていたレオタードのようなインナーを曝け出す。大体のインナーは身体のラインがハッキリしているので、それで自分の胸の成長を知らしめたいんだろうが……うん。
「背中?」
「胸だよぉ!?」
起伏はあるが緩やかで、ストレアと比べればどうしても真っ平らにしか見えない。リアルからサイズを教えられ続けているので多少は成長していると分かるが、それでもストレアの胸に比べたらぺったんこなのだ。
「フフッ、ザマァ無いわねぺったんこ」
「おん?喧嘩売ってるの?ぺったんこシノンさん?買うよ?言い値で買うよ?」
「上等よ…ッ!!こっちを向きなさい!!」
「向いてるよぉ!?」
「ねぇウェーブ、こういうのをなんて言うんだっけ?」
「どんぐりの背比べとか五十歩百歩とかだな」
シノンがユウキの胸を背中ネタで煽っているが教えられたサイズはほとんど変わらなかったはずだ。2人のやり取りを見てキリトは大爆笑し、アスナは顔を手で覆っている。
俺の声が聞こえたのかユウキが射殺さんばかりの眼光で睨み、シノンが番えた矢をこちらに向けて来る。理不尽だと思わずに俺が悪いので素直に両手を挙げて降参の意を示すと2人から殺意は消えた。
「ふむ、良い具合に緊張がほぐれたところで行くとしようか」
そしてヒースクリフの言葉に従い、階段を登って五十層へ向かった。
階段を登り、扉を開いて五十層に到着した時、視界に映ったのは差し当たりの無い平原だった。到着した瞬間にネームドボスの群れの中に出るとか期待していたのだが肩透かしも良いところだ。だが嗅覚は物騒な臭いを捉えていた。
生臭い鉄のような臭い、血の臭い。
ここから遠く離れた場所から、普通では考えられないくらいの血の臭いを感じ取った。
「臭いな……どこかでモンスターが縄張り争いでもしていたのか? ?」
「……待って、何よあれ」
「どうした?」
シノンが信じられないものを見たように頭を抑えている。シノンが向いている方向には数キロ先に主街区らしき街があるように見える。高い壁でぐるりと周囲を囲んでいるように見えるが、〝射撃〟の強化オプションの〝鷹の目〟による視力強化で別の物が見えているのだろう。
「えっと……なんて言ったらいいのか……」
「時間はあるから落ち着いてくれよ」
「はい、ヒッヒッフーヒッヒッフー」
「それってお産の時のやつじゃ……」
「キリトは熟練度カンストしてるよな?」
「殺すぞ?」
ユウキのボケに対してキリトにパスすると、額に青筋を浮かべながら〝
そして二、三分ほど時間をかけて、シノンは落ち着きを取り戻して見えたものを言葉にしてくれた。
「モンスターが編隊を組んで主街区を襲っているわ……」
ゲーム内でハッピーニューイヤーと同時に五十層攻略開始。攻略組の新年の抱負はかやひこを殴る。
ユウキチとシノノン、ストレアというオッパイお化けに挑むものの胸囲の格差社会により敗北。ストレアがバスト無双過ぎる。
五十層というハーフポイントで殺意が充填できて作者はとても嬉しいです。