「ーーー全員集まったようだな?」
夜になり、五十層にあったサロンを借りて開かれるのは毎度お馴染みになっている攻略会議。いつもなら攻略組に参加している代表者全員が集まるのだが、五十層では夜でも夜行性のモンスターが当たり前のように襲って来るために最低限の人員だけで会議を開く事にしたのだ。
集まったのは〝ナイトオブナイツ〟からディアベル、〝血盟騎士団〟からヒースクリフ、〝風魔忍軍〟からコタロー、〝
「それではこれより攻略会議を始める。とは言っても出来ることは現状の確認だけだがな」
「それでもしないよりはマシだと思うけど……確か、〝アルゲート〟も二十五層と同じで圏内設定が解除されているんだよな?」
「あぁ、その上でモンスターが徒党を組んで襲い掛かって来る。私たちが来た時にはネームドボスらしきモンスターが指揮官の真似をしていて驚いた」
「まぁ強さとしてはネームドボスって感じだったけど厄介なのはここのモンスターの気質だな。生きる為とか食べる為とかじゃなくてただ殺す為に殺しに来てる。頭を落としたからって油断してたらそのまま喉を食い千切られかねないぞ?」
「殺意高過ぎやしないですかねえ」
「五十層……ハーフポイントとも言える階層なのだから分からないでも無いがな」
ディアベルとコタローが頭を抱えているのに対してどこか楽しそうにしているヒースクリフを見る限り本当にこいつイかれてるなぁと思うが考えてみたらVRMMOなんてものを作るキチガイだったので今更だなと思い直す。
「何はともあれ、まず先に情報を集めなくてはならない。NPCの話を聞いて確認したところ、この階層には迷宮区が見えなかった。いつもなら主街区からでも見える位置にあるはずなのにだ。つまり何らかのイベントをこなすことで迷宮区が出現するか、」
「元々迷宮区は用意されてなくて、イベントの最後にフロアボスが登場するかってとこだな。というか、モンスターの襲撃に加えて圏内設定の解除とかイベント以外に考えられん」
「後者の方が良いですね。気持ち的に」
「あ〜確かにイベント終わらせてから迷宮区攻略するよりもイベント終了と同時にフロア攻略も終わらせて欲しいなぁ」
迷宮区が存在しない、圏内設定の解除、モンスターの襲撃という並みのプレイヤーならばこの階層から裸足で逃げ出したくなるような三重苦が揃っているがヒースクリフ、コタロー、ディアベルは慌てる事も無くその事実を受け止め、笑いながら話し合っていた。
カーディナルが何を考えているのか分からない。俺たちを絶望させたくてこんな設定を持ち出したのかもしれないが、そうだとしたら残念ながら外れているとしか言えない。攻略組に参加している者の大半はゲーマーなのだ。どんなに鬼畜難易度に設定されていようがクリア出来る道筋が存在しているのなら嬉々としてコントローラーを握るこいつらからすれば今の状況もご褒美でしか無い。
実際、攻略組ではモンスターの襲撃を大量にアイテムと経験値が手に入ると歓迎しているし。
「では街の防衛は〝血盟騎士団〟と〝ナイトオブナイツ〟が、情報の収集と検証は〝風魔忍軍〟と〝
「あぁ」
「了解です」
「異議なぁし」
そして出た結論もいつもと変わらない。〝血盟騎士団〟と〝ナイトオブナイツ〟に街の防衛という仕事が入ったくらいだ。彼らが防衛に参加したのなら襲撃してくるモンスターの大半がネームドボスクラスにならないと街は落とせないだろう。
いつものボス攻略とは違ってパーティーの上限が存在しないので両ギルドのメンバーをフルに投入することが出来るから。〝血盟騎士団〟からは50、〝ナイトオブナイツ〟からは200は出せるはずだ。
「攻略についてはそれで良いな。ストレア君とPoHをここに招いたのは昼間にあったドラゴンの出撃について話を聞かせてもらいたいからなのだが……」
この話題が出る事は予想していた。飛行モンスターを使った空挺強襲をされたのだから当事者を呼んで対策を練りたいと思うのが普通だ。
「は〜い……って言っても私はドラゴン倒してたから詳しくは分からないけど……」
「Dragonを使って乗り込んで来たのは2人だ」
「2人?2匹では無いのか?」
「2人であってる。何せそいつらは俺とウェーブと同じ顔をしてやがったんだからな」
「なっ!?」
ディアベルが驚くのも無理は無い。プレイヤースキンを弄れれば同じ顔にすることが出来るが茅場晶彦の手によってリアルの顔に戻されたせいで同じ顔のプレイヤーは双子でも無い限りは存在しない。それなのに俺とPoHと同じ顔が現れたのだから。
「とは言ってもそいつらはプレイヤーじゃなくてモンスターだった。俺が相手した俺と同じ顔の奴の名前は〝ホロウ・ウェーブ〟、多分PoHの方は〝ホロウ・PoH〟って名前だな。〝ホロウ・ウェーブ〟は俺よりもレベルが20以上は高くて二ヶ月前の俺と同じ太刀筋の剣を振って来た。まぁ俺が二ヶ月前の俺なんかに負けるはずがなく返り討ちにしてやったけどな!!」
「俺も麻痺にして解体してやったぜ!!」
「二ヶ月前とはいえレベル差が20以上あるのに返り討ちにするって……」
「コタロー君、深く考えてはいけない。彼らはキチガイだ」
「ウェーブとPoHが増える……問題児どもが増える……!!」
イェーイとハイタッチをする俺とPoHに対してコタローは頭を抱えてヒースクリフはそれを悟りを開いたような目で諭し、ディアベルは顔を青くして腹を抑えている。中々に温度差が酷い。
「んで俺たちの偽者を片付けて情報でも引っ張り出そうとしたんだがそこで〝ホロウ・ストレア〟がやって来たんだ」
「え、私の偽者もいたの?」
「おう居たぞ。ストレアみたいに軽装じゃなくて全身に鎧着込んでたけどな。で、〝ホロウ・ストレア〟は他にも〝ホロウ・キリト〟と〝ホロウ・ヒースクリフ〟がいるって言ってたな」
「キリト君とヒースクリフさんまで……ッ!!」
「その辺にしておいてやれ、ディアベル君の胃が死んでしまう」
「事実を言っただけなのになぁ……」
本当の事を話しただけなのにディアベルは顔を青から白に変色させて死にそうになっていた。おそらくSAOにおける問題児が増えた事による精神的負担が増える事を考えただけでああなっているのだろう。ディアベルのことを考えるのならこれ以上は話さない方が良いのだろうが話さなくてはならない事だという免罪符があるので構う事なく話す事にする。
ディアベルの胃には犠牲になってもらおう。
「〝ホロウ・キリト〟と〝ホロウ・ヒースクリフ〟の実力は分からないが〝ホロウ・ウェーブ〟と〝ホロウ・PoH〟はレベル差があっても大した事は無かったな。〝ホロウ・ウェーブ〟の方は終始二ヶ月前の俺の真似だけしかしてこなかったから簡単に封殺出来たし、〝ホロウ・PoH〟の方もPoHは普通に処理出来てたし。でも〝ホロウ・ストレア〟は別格だ」
トーンを落として声から遊びを無くす。巫山戯ているのでは無いと伝わったのか、ディアベルも顔は白いままだが姿勢を正す。
「ストレアは見ての通りに軽装、〝ホロウ・ストレア〟は鎧装備。でも〝ホロウ・ストレア〟は鎧を活かして戦っていた。猿真似じゃなくてキチンと鎧を使った戦い方を納めていた。ハッキリ言ってただの猿真似野郎よりも脅威的だぜ」
「ふむ……倒すとなればどのくらいの戦力がいる?」
「俺とPoH、キリトとヒースクリフ4人の内2人が組めば確殺出来るな。それ以外の二つ名持ちなら4人いて互角、後は論外だ。戦わずに逃げることをオススメする」
あの時は最初の方で〝ホロウ・ストレア〟の腕を斬り落とせていたのであのまま俺1人で戦っていても〝ホロウ・ストレア〟は倒す事は出来ただろう。相手が万全の状態で、必ず勝ちたいとなれば最低でもそれくらいは必要だと判断出来る。
「まぁホロウはそれぞれの奴が対処すれば良いと思うぜ。不快だろ?ただ自分を真似されただけの高レベルのモンスターなんてよ」
「確かにそうだな」
「自分を殺せるなんて中々Rareな経験させてくれるじゃねぇか」
「あの、私倒せるか分からないんだけど」
「あぁ、〝ホロウ・ストレア〟は俺がやるから。どうもあいつは俺にご執着らしくてな……腕切り落としたのに動揺するどころか嬉々としてたのには恐怖を覚えたぜ」
「うわ……うわぁ……」
「新たな問題児がぁ……ッ!!」
〝ホロウ・ストレア〟の危険性を伝えるとコタローはドン引き、ディアベルは顔を白から土色に変えて死にそうになっていた。正直、今でもあの時の〝ホロウ・ストレア〟の恍惚とした表情を思い出すだけで寒気がする。
「私、そんな事しないよ?」
「分かってるから絶対にしないでくれマジで本当にお願いします……!!」
仮にストレアがそうなったらと考えた瞬間に腹部に痛みが走ったので考えるのを止めた。
街の防衛しながら攻略の情報集めるよ〜ってのが攻略組の方針。無限湧きのモンスター?いい狩場じゃないのと嬉々として狩りに出掛けます。
攻略組が誇る問題児たちが増えると知ってディアベルはんの胃にダメージが!!凄いぞホロウズ!!存在だけでディアベルはんにダメージを与えてるぞ!!
でも一番危ないのは〝ホロウ・ストレア〟。強さ的な意味でも、性癖的な意味でも。