闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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創世の女神・4

 

 

馬鹿デカイ人型のモンスターの出現。タイミングを考えればあれが五十層のフロアボスだろう。目視出来る限りでは女性特有の身体付きで、長い髪の毛が生きているのか好き勝手に動き回っている。あんな巨大なサイズのモンスターは初めて見た。何せ、()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

揺れが収まり、フロアボスは上半身を起こしたままで動きを止める。何かしているのかと思えば特に動いている様子は見られない。フロアボスの行動が全く読めないが動かないというのならチャンスだ。ウインドウを操作し、攻略組の全員にフロアボスであろうモンスターの外見情報を伝える。

 

 

返事を流し読みしていると、防衛戦に参加したプレイヤーから〝アルゲート〟を囲んでいたモンスターがフロアボスの出現と同時に引いていると情報があった。引いた先はフロアボスのいる方向、フロアボスが何か指示を出して引かせたと思われる。

 

 

街の様子を見下ろせばNPCたちはフロアボスの出現に半ばパニック状態になり、攻略組のプレイヤーたちはフロアボスが出現した事が嬉しいのか上半身裸になりながらよく分からない踊りを踊っていた。何やってるんだこいつらと思ったが考えてみればいつもの事だった。

 

 

「ーーーHey brother」

 

 

恐怖で錯乱しているNPCに癒されつつ、狂喜で発狂している攻略組に戦慄しているとPoHが俺と同じようにパルクールの要領で屋上まで登ってくる。何かと思えばフードの下からでも分かるとても良い笑顔で肩を叩きながらサムズアップし、

 

 

「Was it fun yesterday?」

 

「ファッキュー」

 

 

巫山戯た事を言ってくれたのでノータイムで屋上から突き落とす。一番高い建物を選んだので屋上から地面までは30メートルはあるのだがPoHはケラケラと笑いながら慌てる事なく着地した。それを追いかけるように屋上から飛び降りる。

 

 

「ったく、なんでどいつもこいつも似たような事しか言わないんだよ」

 

「そりゃああのCrazy girlsがヤッたとなれば誰だって似たような反応するだろうよ」

 

「ところでお前は誰から聞いたんだ?」

 

「シュピーゲル。Barに行ったらばったり出くわしてな……ヤバかったぜ?こう、絶望と絶望と絶望を混ぜ合わせて蒸留して、濃い部分を掻き集めてさらに蒸留させたような目をしてやがった」

 

「……会ったら土下座しとこう」

 

 

基本人でなしのPoHがそこまで評価するあたり、今のシュピーゲルはガチでヤバそうだ。シノンが選んで俺は悪く無いはずなのに罪悪感しか感じられない。

 

 

秒単位で十数件送られてくるメッセージを流し読みしながら現状の把握に努める。どうも城壁周辺にはモンスターの姿は見えないらしく、すべてがフロアボスの元に向かったようだ。一旦兵力を集中させてから一気に攻めてくるつもりなのだろう。

 

 

無論、俺たちに息つく暇を与えないようにしながら。

 

 

「気付いてるか?」

 

「あぁ、()()()()()

 

 

PoHとその場から飛び退いて数瞬後に足場だった地面が爆ぜた。上がる砂埃の中から巨大なムカデのモンスターが5匹現れる。どうやらこいつら、城壁を迂回する為に穴を掘って来たようだ。

 

 

しかもこの場だけでは無いらしい。飛び交うメッセージを確認すれば街のあちこちにモンスターが侵入しているらしい。坑道を掘るとか人間からしてみれば古典的な戦略だが、〝アルゲート〟のように籠城している拠点を攻めるのには効果的だ。

 

 

「もぐらかよこいつら」

 

「でもまぁ効果的だ。NPCは混乱してるぜ?」

 

 

NPCは下から攻められるとは思っていなかったのか恐怖で錯乱状態。攻略組からしたら多少は驚きはあるだろうが経験値とアイテムが向こうから来てくれたと嬉々として戦うに違いない。事実、メッセージでは既にモンスターを倒したという報告が何件か来ている。

 

 

「任せて良いか?ユウキとシノンが心配だ」

 

「良いぜ、任された。さっさとCrazy girlsを迎えに行ってこいロリコン色男」

 

「ハッハッハ……後で玉潰す」

 

 

合流したらPoHの壊れた股間を再起不能にする事を誓い、この場を任せてユウキとシノンがいるであろう宿屋に向かう。メッセージを見れば2人からの物は無く、新たなモンスターの侵入を報せる物ばかりだ。メッセージの報告と脳内の〝アルゲート〟の地図を重ね合わせて2人がいる宿屋の辺りにモンスターの出現の報告が無いと分かったが、まだ見つかっていないだけで現れているかもしれない。

 

 

迷路のように入り組んだ路地を建物の上を走る事で無視して真っ直ぐに最短距離を行く。途中で何度かモンスターが暴れてNPCが犠牲になっている場面を目撃したが、それは攻略組や兵士のNPCが駆け付けていたので無視することにする。

 

 

そして宿屋の前に辿り着いた時ーーーそこにあったのは剣山のように全身から矢を生やしてその状態でまだ生きて痛みにのたうち回っているヘビのモンスター、そして全身を切り刻まれて四肢が皮一枚でなんとか繋がっている達磨状態で放置されている猿のモンスターの群れだった。その猟奇的な現場を見て、どうしてこんな状況になっているのか一瞬で理解する。

 

 

「ーーー全く、人が良い夢を見ていたっていうのに」

 

「ーーー邪魔してくれるんじゃ無いわよ」

 

 

要するに目覚めが悪かったのだと。彼女たちの言動から良い夢を見ていて、それをモンスターによって起こされてしまったから八つ当たりでこうなったのだと分かってしまう。

 

 

生きながらにして築かれた屍山血河の頂上で、彼女たちは苛立ちを隠そうともせずに堂々とモンスターを見下す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ーーー折角不知火と人前では言えないようなハードなプレイに勤しむ夢を見れてたのに……!!」」

 

「口閉じる前にまずは服を着ようか」

 

 

寝起きですぐに八つ当たりをしたからか、全裸で武器を構えているユウキとシノンが居た。

 

 

 






モンスターによる〝アルゲート〟攻略作戦開始。まずは無警戒な地面からの強襲。NPCでは犠牲者は出たけど攻略組はまだ大丈夫。

Crazy girls、全裸でモンスターを倒すの巻。ヤッて寝てて、着替える間も無くモンスターがやって来たから仕方ないね。なおモンスターたちは死んでもおかしく無い状態であえて生かされている模様。

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