闘争こそ、我が日常也て   作:鎌鼬

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創世の女神・8

 

 

こちらを殺さんと振られる片手剣を〝宵闇の剣〟と〝煌翼の剣〟で捌く。〝ホロウ・ウェーブ〟は感情的に剣を振っているように見えて、剣筋自体は機械的。ただ最短距離で急所を狙い振るわれる。それは数日前の俺の剣ーーーちょうど闇堕ちしていた頃の剣だった。

 

 

成る程(〝観察眼〟)

 

 

〝ホロウ・ウェーブ〟の様子がおかしい理由がそれで分かった。どうやら俺が闇堕ちしている頃の俺をインストールしたらのだろう。人で無しと、畜生だと自虐していた頃の俺の精神は今考えても異常としか言えなかった。俺の場合はダウナー系だったが〝ホロウ・ウェーブ〟は逆のアップ系らしい。

 

 

「なんだよ……なんだよこれ……!!気持ち悪いぞイライラする……!!頭の中がグチャグチャなのに妙に冴え渡って吐き気がする!!なんで……なんで()()()()()()()()()()ァァァァアッ!?」

 

「丁度お前がパクってる頃の俺は自分とお前を殺したくて仕方が無かったからな、その影響じゃ無いか?」

 

 

首目掛けて振るわれる切り払いを弾き、返す刀で心臓へ突きを放つ。しかし一歩引かれたことで距離が出来、突きを剣の柄で弾くのと同時に幹竹割りを防がれる。

 

 

俺は基本的に二刀流で戦っているが、それは手数が多くなるからという理由で一刀流で戦えない訳ではない。そもそも二刀流が強いという根拠自体が存在しないのだ。二刀流だろうが一刀流だろうが強い奴は強いのだから。

 

 

「考え無しに最新の俺を真似たお前が悪い。〝ホロウ・ストレア〟みたいに俺に気を配っていたら真似たらいけないと分かっただろうにな」

 

「五月蝿え!!俺の声で!!耳障りな事を抜かすんじゃねぇ!!」

 

 

正面から〝色絶ち〟で気配隠密を施しながら切り掛かってくるのを〝宵闇の剣〟と〝煌翼の剣〟を交差させて防ぎ、押し合いの状態になる。

 

 

〝色絶ち〟を正面から使う事で認識され難くし、驚愕による硬直を狙おうとしたのは悪くないが相手が悪い。そもそも〝色絶ち〟は呼吸を読む事で生物が視界に入っても認識し切れない無意識の領域に入り込む技法だ。初見、あるいは〝色絶ち〟の仕組みを知らなければ必殺に成り得る技法。しかしネタバレされれば対応される。要するに無意識の領域を意識するか、呼吸を読ませなければ良いだけの話なのだから。キリト辺りならそれは面倒だと言って見えなくなった瞬間に無意識の領域を斬るがそれは反応速度オバケのあいつだから取れる手段だ。

 

 

〝ホロウ・ウェーブ(お前)〟の声?何言ってるんだが、それはウェーブ()の声だろうが?」

 

「違う!!俺はウェーブだ!!〝ホロウ・ウェーブ〟なんかじゃない!!」

 

「いいや、違わないね。カーディナルが五十層の為に作ったAI。中途半端に既存のプレイヤーをコピーして作られたドッペルゲンガー。そして欠片も成長しようとしない欠落品(デッドコピー)……それがお前だよ」

 

 

一度目は気持ち悪かったと、二度目と三度目は殺したいからと見下して処理をしてきた〝ホロウ・ウェーブ〟であるが流石に四度目で一番酷かった頃の俺を真似てまでウェーブ()になろうとしてくると尊敬の念を覚える。

 

 

なので戦うべき敵として、俺になろうとして真似しかしない愚者に向けて俺から教授をしてやる。

 

 

「そもそも、大前提からしてお前は終わってるんだよ。〝ホロウ・ウェーブ〟(お前)ウェーブ()に成りたがっている。だけどウェーブ()ウェーブ()に成りたいとは欠片も思っていない。分かるか?〝ホロウ・ウェーブ〟(お前)ウェーブ()に成ろうと考えた瞬間からウェーブ()に成るなんて不可能だったんだよ」

 

「アァァァーーーアァァァァァァァァァ(〝剣術:斬鉄剣〟)!?!?」

 

 

元から不安定な精神状態に、俺からの教授でパンクしたのか〝ホロウ・ウェーブ〟は錯乱状態になりながら剣を振るう。そんな状態でありながら剣速は衰えるどころか加速し、全てが斬鉄剣で急所を狙っている辺り技術は完全にコピーされている。防御したとしても、そのまま斬られるという必殺の乱撃。カーディナルの観察能力に感嘆しながら、

 

 

で、それがどうした(〝修練:受け流し〟)?」

 

 

その全てを受け流す。斬鉄剣、堅い物を斬る事に特化した太刀筋であろうと刃物である以上は刃が当たらなければ斬る事が出来ない。振るわれる剣の腹に剣を当てて流せば斬られる事なく受け流しは可能になる。ヒースクリフ辺りならば当たり前のように出来る事だ。

 

 

「それにだ、俺が真似して満足してる様な奴に見えるか?()()()()()()()()()()()

 

 

確かに〝ホロウ・ウェーブ〟の剣と技術は間違いなく俺が使っているそのもの。しかし練度が低過ぎる。

 

 

例えば一週間剣を振った奴の太刀筋と一年剣を振った奴の太刀筋は同じだろうか。そんなことは無い、間違いなく後者の方が圧倒的に鋭い。例え前者が天才だと言われる人間で、後者が凡夫だと言われる人間だとしてもだ。技術は突き詰めれば練度が全てだ。長い時間をかけて、積み重ねて研鑽するもの。努力しない天才よりも努力する凡夫の方が強い。

 

 

その点で言えば〝ホロウ・ウェーブ〟は努力しない天才に当てはまる。カーディナルというインチキで俺が使っている技術を習得しているが使い慣れている、極めているという程に反復をしていない。だから軽いと感じるし、咄嗟でそれが使えないし、応用なんて思い付かない。

 

 

「以上、終わりだ」

 

 

言いたいことは言い終わった、故に殺す。改善するまで待ってやる義理はこちらには無いのだから。放たれた振り下ろしを受け流さずに半身で避け、地面に刀身が沈んだのを確認して柄を足で押さえて〝宵闇の剣〟で首を狙う。

 

 

「アーーー」

 

 

終わったと気が付いたのか〝ホロウ・ウェーブ〟から聞こえたのは間抜けな声。避けなければ死ぬというのに剣を手放そうとしてないから避けられない。

 

 

「アァーーー」

 

 

空の手がピクリと動くがもう遅い。刀を抜こうとしても間に合わない。腕を盾にしたところでそれごと斬る。

 

 

勝ったと確信し、次の〝ホロウ・ストレア〟に意識を向けようとしてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーアァァァァァァァァァ(〝過剰光顕現〟)!!!」

 

 

首を斬り落とすはずだった一閃は、〝ホロウ・ウェーブ〟身体から立ち上る()()()()()()()()()

 

 

 






ホロ波フルボッコ。いくら技術が使えようとも熟練してなければ熟練者相手には負けるっていう。なんでも取り込む天才よりも、一を磨き続けた凡夫の方が強いって事を言いたかった。

ウェーブはホロ波をここで初めて敵と認識。ここまで真似するなんてスゲーなって思いながらレクチャー、だけど敵だから改善されるまで待つ義理なんて無いんだよ!!
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