名古屋決戦――真琴side――   作:スライストマト

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第三話 指導者のホウコク

地下を出ると、ちょうど楠木らが走ってきていた。しかし数が少ない。九人しかいないのだ。十六人いたはずなのに……

「楠木! 任務は?」

「完遂した。鳴海もだな。全員無事か?」

「ああ。相原や深夜少将の姿が見えないようだが……」

「相原の隊と深夜少将、それと早乙女与一はあそこの電波塔にいる。相原が遠距離攻撃できるからな。相原の部下は護衛さ」

「そうか。ならいいが」

両隊が合流した後は、他の隊と共に電波塔の下で合流することになっていた。狙撃できる者が塔の上から交戦中の他の隊を援護するためだ。

「ここから電波塔まではかなり距離がある。我々も消耗したしそちらもしただろう。ここからは歩いていこう。」

「そうしよう」

楠木は首肯すると歩き始めた。それに習い、みな走るのをやめた。

「移動までの間は情報交換といこう。新入り達はどういう様子だ? ちゃんと役には立ったのか?」

その問いに黒髪の少年、百夜優一郎がムッとした表情を浮かべる。それを隊長の紫髪の少女、柊シノアがなだめているようだった。

「ああ、それもそうだな。これから先一緒に作戦行動するだろうから話しておいて損はないか」

そうして楠木英太郎は自分達の隊がどのように貴族と交戦したかについて語りだした。

 

 

 

「時間だ。進むぞ。全員鬼呪促進薬を飲め」

相原あい子の凛とした声に鬼呪促進薬を飲むと、十四名の月鬼達は緑道広場の吸血鬼を殲滅すべく、走り出した。

楠木、相原、柊シノアが並んで走っていると、横で百夜優一郎が並走を始める

「相原。俺の力は黒鬼だ。先陣を切って敵の強さを図るから、援護を頼む」

「よし、許可する。相原隊は一般吸血鬼を受けもつ。ルカル・ウェスカーは楠木・柊隊に任せる」

「了解!」

揃った返事が終わると、優一郎がぐんぐんと速度を上げていく。そして相原はその場でとまり弓を構え、他の隊員達は優一郎に続いていく。

 

「ばか優、先行しすぎだ!」

いつの間にか並んでいた赤い短髪の双刀使い、黒鬼装備の君月士方はそういうと速度をあげる。

「誰も殺させない!」

先行する百夜優一郎が次次と一般吸血鬼を殺していき、雁の群れのように突き進む柊、楠木、相原部隊。

 

その先には頬のこけた、黒いシルクハットと貴族の服に身を包んだ吸血鬼の姿があった。

標的のルカル・ウェスカーだ。

「剣よ……血を吸え……ほぉ。驚いたな。人間か」

「そうだ。吸血鬼。お前はここで死ね!」

百夜優一郎はそういうと刀を構えて跳躍する。

優一郎が体重を込めて刀を振り下ろした。

 

しかし吸血鬼は片手で持った剣で受け、払うと、優一郎は後ろ向きに飛ばされてしまう。

「死ね吸血鬼!」

君月士方が双刀を構えて続く。

間断なく続けて二本の刀を振るうが一つの刀を縦横無尽に振るうルカルに押さえ込まれてしまう。

そしてついに片方の剣を払われ、体勢を崩してしまう。

 

「君が死ね。人間」

「天字竜!君月を守れ!」

後ろから飛び出した金髪のツインテールの少女、三宮三葉が地面に向けて大斧を振るうと二体の鬼が実体化しルカルに襲い掛かる。

 

「ほぉ」

しかしルカルは一撃で二体の鬼を切り払うと、爆発が生じて三葉と君月が吹き飛ばされる。

 

「終わりです!」

振り払った直後、左側から柊シノアが鎌で攻撃を仕掛ける。

剣では絶対に受けきれないタイミングであったがルカルは素手でシノアの鎌を止めてしまう。

シノアはすぐに引き戻そうとするもののルカルは指で挟んだだけで鎌を固定してしまっており、動けない。

 

楠木達は救援に向かおうとするものの一般吸血鬼が戦略的に動くため、うまく動けないでいた。

 

「まずい……」

「英太郎!あそこにいる吸血鬼が指揮をしているようだ!やつを叩こう!」

「そうだな。相原!これから俺の隊で一般吸血鬼の指揮系統を壊すからその間柊隊に一般吸血鬼を近づけないように頼む!」

「おうわかった!」

 

部下の言葉を受け相原に指示をだすと、楠木隊は一体、また一体と敵を倒し副官の吸血鬼を捉える。

 

「んん?エスター、大丈夫か?」

「問題ありません。ルカル様御武運を!」

エスターと呼ばれた吸血鬼が一歩下がると入れ替わりに他の吸血鬼たちが前へとでる。

「楠木!」

「ああ、ここを押すしかない」

 

そうして一般吸血鬼に切りかかろうとした刹那目の前のエスターらの体が爆発した。

電波塔からの狙撃が成功したらしい。

「なにが起こった……」

動揺した一般吸血鬼を一閃、倒して振り替えるとルカルウェスカーもまたかなりのダメージを追ったようだ。

 

シルクハットは消え目も片方しか開いてない。

綺麗に仕立てあげられていた貴族用の服はボロボロになり、あちこちから鬼呪による黒煙が発生している。

こちらが深夜少将によるものだとすると、先ほどエスターらを一撃で殺したのは早乙女与一の狙撃のようだ。

 

茶髪の癖っ毛で気の弱そうな雰囲気から頼りないと考えていたが、助けられた。

 

「忌々しい人間どもが……」

つづいて相原の矢が足にささり、君月が双刀を使って突撃する。

しかしルカルはその状態でなおも君月を押し返す。

だがその時間はルカルに決定的な隙を生んだ。

 

「おとなしく死ね!」

気付かれないよう背後に回り込んだ優一郎が突撃し、振り返ったルカルの胸を深々とえぐる。

吸血鬼特有の治癒能力は鬼の呪いにより発動しない。

 

「バカ……な……人間ごときに」

地面に膝をついたルカルの心臓へと相原の矢があたり、ルカルは消えてなくなった。

名古屋電波塔からはひっきりなしに攻撃がつづいている。

方向からすると植物園を狙ったものだろうか。予定通りだった。

「よし全員無事だな!私の隊は電波塔に向かう。お前たちは楠木を隊長として地下のメル・ステファノ討伐に参加しろ」

「了解」

そして向かう途中、すでにメル・ステファノの討伐に成功した鳴海・加藤隊と合流したのだった。

 

 

 

「つうわけでこいつらは十五位の始祖を抑えられるだけの力がある。お前らよりも役に立つかもな」

「ぬかせ」

戦闘の詳細を語る楠木の話は信じ難いが、事実だとすれば新人離れした実力があることは確かだろう。

「着いたな。近くで見ると高いな」

楠木の気の抜けた発言にほっとしつつ、時間を確認すると、討伐終了予定時刻からは五分が経っていた。

かなりの人数がすでに集まっているようだった。

「なあ楠木。討伐を終えた班はここにいるんだよな?」

「ああ。そのはずだ、でも……」

そこにはこうした厳しい任務の経験が最も豊富な、絶対にここにいるはずの人物……一瀬中佐の姿がなかった。

 




お読みいただき、ありがとうございました。
次話からは一日一話くらいのペースで、七話完結予定です。
引き続き読んでいただければ幸いです。
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