名古屋決戦――真琴side――   作:スライストマト

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第五話 激昂するクロオニ

「鳴海、犠牲は十八名か?」

「はい、深夜少将……本当に申し訳ございません。私の無能さが原因です」

あの時、隊を分けず一階ずつ慎重に捜索していれば……。

「いや、貴族が二体も待ち伏せていたのは想定外だった。責任は僕にある。君たちはよく生きて戻ってくれた」

 

「申し訳ありません……」

 

いますぐ一人で戻って吸血鬼二体を殺したい。

 

しかし自分一人で戻ってもすぐに殺されるだけだ。

 

部下を死なせてしまった上、仇を討つこともできない自分の無能さが憎かった。

 

「気にするなとは言わない。だが死んでいった仲間たちのためにも、僕らは前を見なくちゃならない」

深夜少将は強く言い切る。そして続ける。

 

「捜索して、グレンの姿はあったか?」

 

「一階については不確定な部分もありますが、二階から五階に中佐の死体はありませんでした。おそらく十三位始祖クローリー・ユースフォードと交戦しているものと思われます」

 

込み上げる悔しさをこらえ、冷静に返す。

 

「ふむ……それで鳴海から見て、市役所の貴族二体はどうだった?」

 

「個体としてはそこまでの強さではないかもしれません。ですが遠距離攻撃の捌き方だけでも連携の巧みさは伝わって来ました。あれに加え十三位始祖と一般吸血鬼を相手取るとなれば大量の犠牲がでてもおかしくはないでしょう」

 

そもそも吸血鬼の貴族を複数同時に相手にすること自体、禁忌の一つなのだ。

 

「そうか……ここから見る限り、ホーン・スクルドとチェス・ベルの二体は市役所から動く気はないようだ。クローリー・ユースフォードがいない今なら、奴らを排除できるかもしれない」

 

それは魅力的な提案だった。

たしかに最初から敵の戦力がわかっていれば、倒すことも可能かもしれない。

 

「ですが先の戦闘で相手方がこちらの動きを読んで行動する可能性もあります。危険なのでは?」

 

柊シノアはこの中で最年少の隊長ではあったが、言っていることは正しかった。

 

貴族達が気づかれないように移動し、別角度から奇襲を仕掛けてくる可能性も、クローリーが戻っている可能性もある。

 

また二体のみを相手にするにしても犠牲が出る可能性が高い。

奇襲でない上に鬼呪促進薬も使えない。

地形も人数の生かしにくい建造物内だ。

 

襲撃は心情的には支持しても、戦略的には支持できない。

 

「少将。一瀬中佐はあの建造物内にはいませんでした。ならばここは一瀬中佐との合流を目指すべきではないでしょうか?うまくすれば、クローリー・ユースフォードを挟撃できるかもしれません」

 

「私もそれに賛成です」

 

「わかった。月鬼の組はこれよりグレンの隊を救出に向かう。ここから市役所を迂回してグレンの隊と合流する」

「はっ」

 

返事をすると、月鬼は進軍を開始した。

 

 

 

「どこいったの~?早く出てきなよ~」

 

家々が立ち並ぶ住宅地。前を歩く吸血鬼はそういうと、前方の壁を壊す。

赤髪の短髪、身長は百九十cmくらいだろうか?

貴族の服を身につけ、血を吸うことで赤く染まった剣を持つ姿から、あれが十三位始祖フェリド・バートリーだろう。

 

「近くにグレン達もいるはずだ。一分後に僕と与一君で攻撃を仕掛ける。他の者はそれまでに散開、僕の白虎丸と与一君の月光韻を合図に各個に攻撃するように!同士討ちを避けるため、クローリーの前面には回るな」

 

「了解!」

 

深夜少将の言葉に月鬼の組はクローリーを中心に弧を描くように陣取る。必殺の構えだ。

吸血鬼はなおも前進を続ける。

 

「早く出てこないと、戦うこともできずに死んじゃうよー?それでもいいのかなー?」

 

再び振るった剣によりまたも壁が破壊される。

しかし、そこにも一瀬中佐らの姿はない。

 

「真琴!もう出ようぜ!中佐がやられちまう!」

「そうよ真琴!あれだけ派手に暴れてるってことは、この近くにいるはずなんだから!」

 

焦る鍵山と利香に影響され、奇襲を掛けたくなる。しかしそこで違和感を覚える。

 

中佐が近くにいるのなら、なぜあの吸血鬼はこうもゆっくりと進み、壁をいちいち破壊しているのか?

 

先ほどの市役所の貴族コンビの話から、クローリーが月鬼の組の残党による市役所襲撃を予想したことは間違いない。

それなら次にクローリーを標的とすることを想定しているはずだ。

 

だがいちいち進路の壁を壊していることで、かなり後方に陣取る深夜少将や早乙女からの斜線が通ってしまっている。あまりにも無防備だ。

 

我々月鬼の組が市役所を襲うことを読み、待ち伏せを仕掛けるような狡猾な吸血鬼が、想定される攻撃に対し無防備に背中をさらす……そんなことはあり得ない!

 

「まずい!これは罠だ!引き返せ!」

 

しかし一分は既に経過していた。

遠くから狙い定めた遠距離攻撃が炸裂する。

 

しかし、着弾の寸前、クローリーが振り返きざまに剣を振るうとクローリーの少し前で鬼呪が爆発。

 

発生した煙がクローリーを覆う。

 

「死ね!」

足を止めた鳴海隊と弓を構える相原を除くすべての隊が突撃を仕掛け、煙の中へ入っていく。

 

「真琴!私たちも!」

「いーや、だめだ。利香、中佐は付近にはいない。奇襲は失敗だ。煙が晴れたら奴らの撤退の援護をするぞ」

 

と、その時。煙の中から赤い斬撃が発生し、周囲の壁を破壊する。

鳴海は三叉槍でこれを受け流せたが……

 

「弥生!利香!秀作!鍵山!」

 

残る四人は後方へと吹きとばされる。

駆け寄りたくなる気持ちを抑え、晴れていく煙の中心にいる吸血鬼を見据える。

 

「へぇ……やるじゃないか、君たち。あの攻撃を受けて生きてるなんて」

「当然だ!死ね!」

 

黒髪の少年、百夜優一郎が剣を振るう。

しかしあっさりと弾かれ、体勢を崩したところをクローリーの剣が襲う。

 

「月光韻!皆を守るよ!」

後方から飛んできた鬼呪の鳥が剣にぶつかり爆発をおこす。

それにより百夜優一郎は後方へと弾かれる。

 

「白虎丸、射ってーー。ズドン」

 

さらに続けて放たれた深夜少将の鬼呪の白虎がクローリーを襲うが再び剣で切り払われてしまう。

三発目を期待して相原の方を向くと、相原あい子は肩から血を流し、(うずくま)っていた。

 

「大丈夫か!相原!」

 

相原は頷くと弓を構える。しかし、その先にいたクローリーが消え、相原の背後へと現れる。

 

「まずは君だよ!」

 

「相原ー!」

 

相原は胴体を深々と切られ、倒れる。血液がゆっくりと広がっていく。

 

「てんめぇよくも!」

 

先ほどの切り合いで吹き飛ばされた優一郎は体勢を立て直し、再び剣を構えて突撃する。

 

その横で最初の斬劇で倒された者達が動き始めた。

 

「全員深夜少将の拠点まで後退だ!援護する。百夜二等兵!いくぞ!」

 

「絶対に許さねーぞ!吸血鬼!」

 

全員に後退の指示を出した後、優一郎と共同でクローリーと相対する。

 

三叉槍を振り一合。

あまりの剣の重さに上体が仰け反り、腕が痺れる。

しかし追撃はこない。入れ替わりで前にでた優一郎の攻撃をクローリーが防ぐ。

助けられた……!

 

だが、クローリーの勢いをあえて生かす受けにより、優一郎は前のめりになってしまう。

追撃を入れさせないためにも、二発目を入れる。

 

「死ね!」

 

気合いと共に突き出した三叉槍が弾かれる。

 

さらに優一郎が前屈みの状態から振り向き様に斬劇を放つが、クローリーは片足で飛ぶと、三メートルもの距離をあける。

 

二人で突撃するとかわされ、回り込むようにして後退中の味方へと襲い掛かる。

 

仲間を助けるため振り返り、突撃しようとしてバランスを崩し、よろめく。

しかし隣では鬼呪を(ほとばし)らせながら突撃する優一郎の姿があった。

 

「三葉!」

 

クローリーは三宮三葉へと剣を向け駆ける。

「行かせません!」

割って入った柊シノアが鎌を横凪ぎにする。しかし鎌の射程直前で跳躍したクローリーには当たらない。

そして三宮三葉が振り下ろした斧を身一つ横にずれて交わすと、クローリーは三葉の背後をとる。

三葉は一歩前に進み、月光韻と白虎丸がクローリーに向かう。

 

「あっちにいけー!」

 

クローリーは遠距離からの射撃を上体を反らして交わすと、今度は柊シノアの背後をとる。

 

「赤蛇、吸血鬼を拘束しろ!」

 

秀作の攻撃がクローリーを捉え、鎖が右手を縛る。

これでクローリーをやれる!

 

しかしクローリーは剣を軽く振っただけで鎖を破壊し、柊シノアに剣を振り下ろす。

 

「ばかな……!」

「間に合えーー!」

 

切り上げる百夜の斬劇がクローリーの剣とぶつかり一際大きな金属音が鳴り響く。

 

「よくも相原を殺したな!絶対にゆるさねー!!開け!阿修羅観音!三刀!」

 

優一郎がそういうと三本の刀が優一郎の回りに現れる。

 

自身の振るう刀と合わせ四本の刀を使う。しかしクローリーは刀が近づく度に切り落とし、切り払い、切り上げ、全く隙を見せない。

 

「鬼籍に入るための九つカウントを始めろ!鬼籍王!」

「一……二……三……」

 

君月によって具現化した棺桶から不気味な声が響く。

 

「三葉、シノア。お前らは後退しろ!こいつは強い!」

「ああ任せたぞ!」

百夜優一郎が叫ぶ。

クローリーの攻撃は速すぎる。

眼で追えないものが何人いたところで役には立たないし、すぐ殺されてしまうだろう。

 

「秀作!鍵山、利香、弥生を連れて後退しろ!」

「わかった。死ぬなよ!」

「いいのー?下がらせちゃって。君たち死んじゃうよ?」

クローリーの挑発に百夜優一郎が怒りを顕にし、刀を構え突進する。

「死ぬのは、お前だ!」

優一郎四本の刀に加え与一の月光韻と深夜の白虎丸。

クローリーはそれらの攻撃を自在に受け、さらに反撃を放つ。

それを三叉槍で受ける。

 

「九らえ!」

ここで鬼籍王の能力が完成する。

 

しかしその直前でクローリーは後ろへと跳躍し、能力は発動しない。

 

「ちっ!なんでだ!」

「危ない危ない。だって君、九つカウントって言ったじゃないか。当然その前に引き下がるさ」

「お前!グレンをどうした!」

「あれー?君、あの時新宿で暴走した子でしょ?何だか妙なことになってきたなー」

 

クローリーは優一郎を見て、眼を細める。そして、視線を優一郎の後方へと向ける。

 

「あーーー!!」

背後で利香の悲鳴が聞こえる。

 

「秀作!弥生!」

 

振り替えると、いつの間にか後退中の月鬼の組の側面に現れたホーンが円藤弥生の首をおり、チェスが岩咲秀作の心臓を突き刺していた……。

 

「クローリー様!お怪我は!」

「ないない。チェス、ホーン。そっちの人間達を片付けて」

「はーいっ!」

 

「承知しました」

 

吸血鬼達の余裕さがさらに怒りを刺激する。チェスとホーンだけは絶対に殺してやる……!

 

「ちくしょう!」

「させないよ」

 

駆け寄ろうとするもクローリーに回り込まれ阻まれてしまう。

 

「ならお前からだ……!」

円藤、秀作……!

二人の死への怒りが槍を握る手の力を増す。

体重と感情をこめて三叉槍を袈裟斬りに下ろすが、クローリーは槍の軌道に垂直に剣を切り上げると、すぐに中段に構え直す。……だがこちらは大きく体勢を崩し、次の攻撃を受けられない!

 

端正な顔を崩し獰猛な表情を浮かべたクローリーがすぐさま首を切り落とそうとする。

 

が、優一郎の刀がそれを受ける。

 

続いてクローリーの背後を二条の光が襲うが、クローリーはまたもそれを一凪ぎで爆発させると、そのままチェス、ホーンと交戦中のシノア達へと向かう。

 

「まずい!間に合わない……!」

「もっと力を寄越せ阿修羅丸!!」

 

全力で仲間のもとへと向かうがチェスに利香が切られ、鍵山も刺し殺されてしまう。

鳴海隊は鳴海以外全員が殺されてしまった。

 

長く付き合った戦友達の死にその場に立ち尽くす。

怒りを越えた怒りに支配され動けなくなってしまった。声だけが漏れる。涙が溢れる。

 

「ぐおぉーーーー」

 

そうしている間にも戦闘は続いていた。

柊シノアと三宮三葉はホーンの鞭によって二メートルほど飛ばされ、倒れる。逃げられない。

 

「お前ら、俺の仲間になにするんだーー!」

 

百夜優一郎が雄叫びをあげ、鬼呪を限界まで引き出す。顔に黒い模様が浮き出る。

 

優一郎がホーンの元に到達し刀をふる。

しかしホーンは交わすと、鞭で優一郎の足を絡めとり、宙吊りにする。

さらにチェスが剣を突き出す。優一郎は動けない。

 

「させません!」

 

立ち上がった柊シノアが紫の髪を振り乱し、鎌を振ると、チェスの剣が弾かれる。

 

しかし反動は大きくシノアは再び地面に倒れる。

 

「まずは君たちからかな」

 

「させるか!吸血鬼!お前の相手は俺だ!」

 

シノアと優一郎を殺そうとするクローリーに君月士方が二本の剣を使い切りかかる。

 

クローリーは軽く剣を弾き位置を入れ替えると、君月の二本の剣を簡単にいなしていしまう。

しかし、君月の背後から放たれる早乙女、深夜の遠距離攻撃を切り払いながらなためか、クローリーもまた決め手に欠けていた。

 

そして阿修羅観音により宙を舞う三本の刀がホーンを襲う。二本をチェスが、一本をホーンが払い除けるが、鞭を使うために優一郎の拘束が解かれる。

 

クローリーが一歩下がると、チェス、ホーンの二体もその背後へと移動する。

 

「クローリー様ー!全員殺っちゃいましょうよー!」

 

「うーん……だめ」

 

「どうしてでしょうか?」

 

「あの少年。どうもフェリド君の案件かもしれないんだよねー。殺したら問題になるかも」

 

「私フェリド様は何考えてるかわからないから嫌いです!」

 

「初めて意見が合いましたね」

 

「でもフェリド君といると退屈しないからね。まあ生け捕りならフェリド君も文句は言わないでしょ」

 

「じゃああいつだけ生け捕りで、残りの奴らは殺っちゃいましょう!」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。かまわない」

 

「くそっ!舐めやがって!」

 

「まて優、落ち着け。ここは退却だ。そうですよね?鳴海さん」

 

「いや、この状況から退却できるとは思えない。戦うしかないだろう。俺達以外の者は消耗が激しい。市役所襲撃前の建物まで退却してもらい、その間は深夜少将と与一君と協力して、我々が一対一で奴らを抑える他ない」

 

「ちっ。新宿の時と同じか……」

 

そう言って君月は二本の剣を構える。

 

「殺してやるぞ!吸血鬼!」

 

優一郎はさらに鬼呪を強め、刀を強く握る。

 

「バカ優!それ以上鬼呪を暴走させるな!鬼に乗っ取られるぞ!」

 

「家族を逃がすため、家族の復讐をするためなら、俺は鬼になってもかまわない!」

 

「俺がクローリーをやる。百夜はホーン、君月はチェスをやれ」

すでに仲間は皆逝ってしまった。ならここは俺が捨て石になるべきだろう。

 

「俺の力は黒鬼だ!俺がクローリーをやる!」

 

「だめだ。上官に従え」

そう言うと三叉槍を構え、クローリーを見据える。

 

「会議は終わったかな?そちらから来ないのならこちらから……」

 

「開け!阿修羅観音!」

 

百夜優一郎がホーンへと向かう。

 

ホーンは空中に舞う刀を鞭で払いのけ、優一郎を迎え撃つ。

 

「殺してやるわ!」

 

さらに君月がチェスとぶつかる。二人の使う三本の剣が煌めく。

 

「仲間の恨み。晴らさせてもらうぞ!」

 

「殺したのは僕じゃないのに……」

 

気の抜けたことを言いつつも、クローリーの剣技は冴え渡っている。

何度三叉槍を振るっても全く体勢を崩すことなく、涼しい顔で受け流す。

時折背後からクローリーへ鬼呪が飛んでいくが、やはり簡単にいなしてしまい、隙すら生まれない。

 

「ちっ……」

 

「ほらほら頑張らないと死んじゃうよー!」

 

クローリーが一際強い横凪ぎの一撃を放つ。

三叉槍で受けるが腕に鈍い衝撃が残る。

 

「ほらそこだ!死ね。人間」

 

「鬼刀!真昼の夜!」

 

「なにっ!?」

 

クローリーは鳴海に止めを刺そうとしていた剣を返し、背後に向けて斬劇を放つ。

と、金属音と共にそれが受け止められる。

 

「グレン!」

 

「無事かガキども!鳴海もよくやった!」

 

「うぉー!」

 

一瀬中佐とともに何人もの月鬼の組隊員が現れ、吸血鬼への攻撃を始める。

 

「まずいねー、ここじゃ不利だ。ホーン、チェス一旦退くよ」

 

「承知しました」

 

「はーいっ!」

 

「させるか!」

 

「まて!」

 

しかし吸血鬼は十メートルほど飛び上がると建物の屋根から屋根へと飛び移っていく。

 

深夜と早乙女の遠距離攻撃を弾き、交わして、あっという間に見えなくなってしまった。

 

「一瀬中佐。ご無事でなによりです」

 

「ああ。残ったのはお前らだけか?」

 

剣を鞘に納めつつ、一瀬中佐は問う。

 

「いえ、他の者は拠点まで退却しました」

 

「そいつは良かった!まずは合流しよう。状況を見て、作戦を立てる。それと五士、ご苦労だった」

 

「ああ。幻術を解くぞ」

 

金色の短髪をした男が加えていた煙管を口から外し煙を吹くと、先ほどまで百五十人ほどいた月鬼の組の隊員が減っていき二十名ほどになった。

 

「時雨、美十、付近に吸血鬼は?」

 

「はい、グレン様。こちらにはいませんでした」

 

時雨と呼ばれた黒い長髪の女性は冷たい眼のままそういうと隣の赤髪の女性を見上げる。

 

「こっちもよ」

 

赤髪の女性は時雨の言葉に続け、付近に吸血鬼がいないことを一瀬中佐へと伝えた。

 

「それじゃあ全員移動だ。深夜達と合流後、拠点に移動する。鳴海、案内しろ」

 

「はっ」

 

こうして月鬼の組は再び市庁舎前への拠点へと戻るのだった。




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