蒼空を夢見たことりの恋話   作:ソウソウ

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 皆さん、初めまして!もしくはお久しぶり(約1年半ぶり)となります!!ソウソウです。

 受験も無事終了を迎え、入学がある4月までは時間に余裕があるので今回新たに書いてみようかと決断に至りました。
 元々似たような設定のものはあったんですが、伏線や展開等を忘れて、書こうにも何も思い出せなかったので一から作り直すことになっちゃいました………。

 ーーーでは、どうぞ!!


1曲目『初めての恋』

 ◇◇◇

 

  音ノ木坂学院。屋上。

 

「好きです」

 

 卒業式当日。

 私は誰もいない屋上で告白すると覚悟を決めていた。

 きっと今の私の顔は真っ赤だ。だけど、はっきりと言えた。噛まずに言えたことに心からひと安心。

 ちらっと彼の顔を伺う。

 

「………」

 

 頬っぺたが真っ赤だ。ふふ、驚いてる。

 口数が少なく、大人びた振る舞いが多く、彼の普段からは滅多に見れない表情にちょっとした満足感を感じた。

 私の心はやけに落ち着いていた。

 

「穂乃果ちゃんが無茶を言った時もいつも最後まで手伝ってくれた。海未ちゃんが一人抱え込まないように見守ってくれた。μ'sの皆を優しく陰から支えてくれた。私が困ってたときも然り気無く助けてくれた。

 そんなあなたが好きです」

 

 彼との出会いは小学三年生の頃。

 その当時のことを彼は覚えていないだろう。私自身もうろ覚えだ。

 でも彼と一緒に同じ時を過ごして、今日まで幼馴染みとして彼の隣に居続けた。

 そして、気づいてしまった。気づかざるを得なかった。

 

 ーーー私は彼に恋をしていたのだと。

 

 彼のふとした仕草に視線を向けたり、彼との会話は必要以上に気持ちがふわふわした。頭を撫でられたその夜は布団の上でニヤニヤしていたぐらいだ。

 ………ママにそう言われた。自覚はない。

 

「あなたが大好きです」

 

 恋をはっきり意識したのは高校二年生。

 同じ学校で同じ目的を持って活動する彼らとμ'sの女の子達とは自然と距離も近くなる。共同で合宿もするくらいだ。

 と、同時に私にある気持ちが芽生えた。

 絵里ちゃんと生徒会の仕事をする二人の姿が絵になっていることに対して、凛ちゃんと仲良くラーメン巡りをしていることに対して、私は羨ましく感じたのだ。

 希ちゃんに相談すると、青春やね!と言われた。からかわれた、と判明したのはちょっと後。

 どうやら………私は嫉妬していた、らしい。

 そのせいで、しばらくの間、羞恥心から彼の顔を直接見れずじまいの日々が続いた。そんな私の様子に彼は不思議そうに首をかしげていた、と穂乃果ちゃんから後日談として聞いた。

 私も女の子なんだ、と痛感した。

 そこから私の一世一代の大勝負が幕を開けた。彼との些細なことも意識するようになった。勿論、μ'sのアイドル活動には支障がないように。ただ………メンバーの皆にはとうの昔からバレている。

 とは言っても普段の生活と殆ど変わらないのが現実であったけど。

 

「………私と」

 

 結局、ラブライブに受験など、色々あって、最終的に告白するのは卒業式の日になってしまった。

 もう後戻りは出来ない。

 でも、私自身それを望んだのだ。

 友達以上の関係になりたいと。

 

 ーーー彼の恋人になりたいと。

 

「………」

 

 賢い彼も分かってる筈だ。これから私が何を言うのか。私のことをはっきりと見ている。

 私は彼の瞳をまっすぐ見つめた。

 

「付き合ってくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 俺は普通の新高校二年生だ。

 距離が近い高校に受験であまり苦労せずに入り、後々期末テストで高校レベルの勉強に苦労するであろうそこら辺の高校生と何ら変わりない。

 

「ねぇ~聞いてる?」

 

 ただ、俺は思う。

 ふとした出来事が己の人生の良き転機になることがある。気付かない人は知らず知らずの内にそれを無駄にして、出来る人はそれらを掴まえてきたのでないのだろうかと。

 無論、そこに正解などは存在しない。あえて言うなら今のそれが正解なのだ。

 けれど、これだけは言いたい。

 今直面しているこの唐突に迫られた選択肢はどちらが正解なのか。てか、なんでこんなことになっているのか聞きたい、神様。

 

「聞いてる。明日こそは途中まで一緒に学校に行くって話だろ」

「えっ!?ほんと!?やったぁ!!………って違うの!全然聞いてないでしょ!!」

「違う?なら、あれか………なんだっけ?」

「もぅ!やっぱり聞いてない!ことりは怒ってます!」

 

 俺の眼前にいるのはぷくっー、と頬を膨らます天使(ことり)

 “南 ことり”。それが彼女の名だ。

 現在、ことりは俺の家のリビングにあるテーブルの俺の向かい側に座っている。因みに俺は数学のワークを解いている作業中。

 こういう風に、昔からよくここで彼女と夕食前のこの時間に世間話をすることが多い。今では恒例となっている。

 とは言っても、ことりが自由に話して俺が適当に相槌を打っていることが多いが。

 

「ことり」

「ん?」

「今日、デザートにプリンあるけど」

「許します!」

 

 ちょろい。口には出さないけど。

 ことりはよく俺の家に居座る。というのも、彼女の家が俺の家の向かいにある為だ。具体的には玄関から玄関まで徒歩5秒。

 また、俺の両親は仕事の都合上、留守にしていることが多い。その為、普段から家にいるのは俺と妹の二人きりなのだが、ことりがそれを察知したらしく「私も一緒に!」ということで、晩飯は三人一緒に食べることになった。いつの間にか。

 彼女の両親も事情は知っており、むしろノリノリで彼女をこちらへ送り出してきている。さらには母親同士が同級生ということもあり、俺の両親が帰ってきても何故かマイホームではなく、ことりの家へとお邪魔していたこともあった。

 本人曰く、「オジャマする訳にはしかないからね!」だそう。ニュアンスがちょっと気になったが、無視した。

 

「で、本題は?」

「むぅー……… 音ノ木坂学院って分かるでしょ?」

「ことり達が通ってる学校名だろ」

「うん。で、そこにソウ君も通ってほしいの」

 

 ソウ君、とは俺のあだ名だ。

 

「………まず、確認な」

 

 すると、小首を傾げることり。

 可愛い。

 

「俺、他の高校に行ってる。しかも新二年生になりたて」

「四月入ったばかりで新しいクラスだもんね」

「それに音ノ木坂って女子校だったはずじゃあ………」

「でも、最近生徒不足が深刻で共学化の話も進んでるらしいんだって。でも、いきなり共学にしちゃうと何かしらの問題が発生してしまうかもってお母さんが言ってた。そこでまずはモデル生としてソウ君が選ばれたって感じだと思うよ」

 

 うん、大体理屈は分かる。分かるけどさ。

 ことりの母親は例の音ノ木坂学院の理事長を務めているのである程度融通が効くのだろう。

 そこに男女共学化の話が舞い込んだ。ご苦労様です、おばさん。ひとまずは共学にあたっての問題点を炙り出す為に幼馴染みでこう言えばあれだけど、信用のある俺に白羽の矢がたった訳なのかな。

 

「でも………息子の一任だけではね………」

「ちゃんとソウ君のお母さんからも了解もらってるよ?」

「あんにゃろう!!」

 

 絶対に即答で答えたに違いない。

 面白そうだと言う、つまらない理由で。こっちははた迷惑だ。

 

「私もソウ君が来てくれるのは嬉しいなぁ~」

「………」

 

 ふわとろボイスで誘惑してくることり。

 もう何年も毎日ってくらい聴いてきたから慣れてきたんだけど。慣れって怖い。

 だが、俺にもまだ行けない理由はある。

 

「ことり」

「うん?」

「俺が“スクールバンド”組んでるのは知ってるだろ?」

「知ってるよ」

 

 そう。俺はスクールバンドと言われる活動に参加している。

 簡単に言えば、スクールアイドルは“女の子”。スクールバンドは“男の子”が夢見るものと言われている。勿論、女子でバンド活動に力をいれる人もいるが。

 

「でも、ソウ君言ってたでしょ。今の高校だと、ドラムとかの設備があまり良くないって」

「………言ったかな」

「言いましたぁ!私、覚えてますぅ!」

 

 おっと、またことりの機嫌が悪い方へ。

 微かにそんな発言をした記憶があるような………ないような………。取り敢えず、過去の自分にバカ野郎と一言。

 

「音ノ木坂は音楽に力入れてるし、ソウ君の満足させられるぐらい機材とかは充実してると思うよ」

「なん………だと………!?」

「えっとぉ………オンプだったかな?それもあるって!」

「オンプじゃなくて、アンプな」

 

 確かに今の機材の質には不満がある。

 だが、楽器類は資金面がとてもじゃないが高い。故にあるだけでもありがたいと思っていたのだが………。

  音ノ木坂学院ではそれらの不満が全てあっさりと解決するかもしれない。

 

「ん?だとしてもさ、俺だけ音ノ木坂に行っても意味ないだろ」

 

 バンドはパートが存在する。

 一人では到底無理だ。因みに俺の所属するバンドは俺の他に三人の男子がいる。

 

「お母さん曰く、既にOKもらってるらしいよ?」

「え?初耳だ………」

 

 俺はテーブルに放置していたスマホへ手を伸ばし、画面をつける。

 そしてバンドのグループにメッセージを通達する。

 

『転校の件について話聞いたやつ挙手!』

 

 数十秒後。

 

『いぇぁぁぁぉぁああああ!!』

『Yes!』

『はい』

 

 うん、知ってた。

 

『何故俺だけに言わない』

『面白そうだからに決まってるぜ!』

『以下同文!』

 

 よし、この二人は学校で処刑だ。

 これは決定事項である。

 

『僕はてっきり蒼真は知っているものかと』

『幼馴染みがいるもんな』

『可愛いこ、いるかな?』

 

 最初の一人は許す。

 後の二人は絶対に許さん。

 

『 音ノ木坂学院は女子校って知ってるのか?』

『勿論だ!!』

『大歓迎だよ!!』

『バンドの練習は?』

『音楽室とかで出来るらしいよ!!』

『加えて、学校までの距離も近いので楽器運びも楽になりますしね』

『そうだねーギターケースはホントに重いよ』

『毎日運ぶとなると楽な方が良いよな!!』

 

 そうか。彼らにとってはそれも考慮に入れないといけないのか。

 俺にとってバンド練習に至って必要な荷物はスティックぐらいだ。その為、持ち運びも楽々。

 

「………う~ん」

 

 頭を抱えだした俺。

 懸念すべき事項は全て取り払われたので、無理矢理にでも何かないのか探している最中だ。

 そこにことりが覗き込んでくる。

 

「………ソウ君~、どうするの?来るの?来ないの?」

「ちょっと待て。まだ、心の準備がーーー」

 

 その時、がちゃり、と物音がした。

 

「あ、ようやく帰ってきたみたい!」

 

 ことりは立ち上がり、玄関の方へとテクテク歩いていく。

 俺は誰が帰ってきたのかは分かっているので座ったまま待機していた。

 しばらくして、リビングに一人の少女が現れた。続いてことりも入ってくる。

 

「兄さん、ただいま」

「あぁ、おかえり」

「ねぇねぇ私には?」

「こと姉もただいま」

「おかえりなさい!!優季ちゃん!!」

 

 優季、とことりが呼んだ少女は俺の妹だ。ことりも普段から可愛がっているようで、本人も満更ではない様子。言葉になかなか出さないのは兄妹共通らしい。

 

「優季ちゃん、これから晩御飯つくるの?」

「うん」

「じゃあ、さくっと作ろうね」

 

 パンパンに膨らんだビニール袋を両手に抱えてキッチンへと二人は入っていった。

 我が家では晩御飯担当は優季。朝と昼は俺が担当している。ことりはそんな優季の手伝いをしている。

 

「ふぅ~………」

 

 一息つく。

 ひとまず晩御飯の準備により、転校の話については後回しのなったのだが………もう外堀は埋められている状況の気がしないでもないのは考えないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

「ごちそうさまでした」

 

 晩御飯が済み、ことりと優季は食器を運んび、シンクで隣に並んで仲良く食器を洗っている。

 俺はそれを横目に壁沿いに設置されたソファに腰を下ろす。そして、何気無くテレビのチャンネルを変えてみた。

 

『続いて、次は最近巷で噂のスクールアイドルについての特集となります!!』

 

 画面では、新人アナウンサーがそう元気よく紹介していた。どうやら、スクールアイドルとやらが世間では流行っているらしい。

 それほど興味はなかったのでポチポチとすぐにチャンネルを切り換える。この時間帯はゴールデンタイムとあって、どの番組も力が入っているように思える。

 数回チャンネル旅行を繰り返す。結局、いつも観るバラエティでいいやと投げ槍気味にリモコンを置いた。

 

「それでソウ君。話の続き」

「やっぱり今答えないと駄目?」

「うん」

 

 食器洗いを終えたのか、キッチンからこちらへと移動し隣に腰を下ろしたことり。

 俺は完全に逃げ場を失った。

 

「………」

「………」

 

 無言が怖い。

 じっと俺達はテレビを見つめている。

 

「あ、プリンがあったんだ」

「っ!!」

 

 本当に分かりやすく、ことりは視線をこちらへと向けた。お菓子好きなことりにとってプリンは至高のデザートだ。

 俺は冷蔵庫へプリンを取りに行こうとソファから立ち上がりーーー

 

「優季、スプーンを用意してくれ」

「………何で?」

「プリン食べるから」

 

 食器を乾燥機に入れていた優季の動きが止まる。自然と俺とことりの視線が優季の方へと。

 

「兄さん、昨日食べてた」

「ん?え?」

 

 嫌な予感。

 

「兄さんが一昨日買ってきたプリンのことなら、昨日食べてた」

「………ソウ君」

 

 背後から凄い不吉な悪寒がする。

 恐る恐る俺は振り返る。ことりの顔は下向き、表情は見えない。

 

「どういうこと………?ソウ君?」

「えっと………食べちゃったみたい」

「つまり………?」

「プリンはまた今度………です………」

 

 少々ビビりながら彼女の様子を見ようと近付く。今までもこの展開とは逢ってきた。

 刹那、バッと彼女が顔を上げた。

 やばい。泣きそうだ。

 

「ソウ君の嘘つき~………!!」

「ごめんって!」

 

 どうにか慰めようと俺は必死。

 そして、俺は言ってしまう。

 

「分かった!!代わりに何かお願い一つ聞いてやるから!!」

 

 ことりがその言葉に反応する。

 

「………ほんと?」

「あ………お、おう」

 

 俺は遅からず気づいてしまった。

 でも、もう遅いのだ。仕方ない。幼馴染みのことりの為に一肌脱いでやろうじゃないか。

 

「じゃあソウ君。私達の学校に来てくれるね♪」

「くっ………分かった」

 

 こうして俺は高校二年生の春。音ノ木坂学院へと転校することが決定した。

 

 ………そしてこれがあの伝説となる物語の幕開けと知るのは随分と先のこと。




『人物紹介』
名前:波大 蒼真 
性別:男
性格:冷静沈着、口数少なめ
担当:バンド ドラム(Dr.)
概要:
 地元の高校に通っていたがこの度幼馴染みとその母親によって女子高にモデル生として転校する不運(幸運)な青年。よく周りの人からは外堀を固められてから決断を迫られるので殆ど強制に近い選択を余儀なくされる。
 家族構成は両親と妹の四人家族。妹は現在中学三年生。住所はことりの家の向かいに位置しており、また家族ぐるみの付き合いがあるので彼女とは子供の頃からとても付き合いが長い。また、穂乃果や海未とは幼馴染みである。
 普段からことりのふわとろボイスを聴いている為か、理性が人一倍強いが本人は無自覚。
 スクールバンドとして活動しており、自身はドラマーとして演奏に励んでいる。音ノ木坂学院では以前の高校より機材の質が上がるということでちょっと浮き浮きしている。


 *メッセージでの『いぇぁぁぁぉああああ!!』に「ぉ」が入っているのは仕様です。誤字ではありません!!
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