この小説は飛ばし飛ばしでいきますので、アニメ観てないとちょっと理解するのにキツイとこもありますのでお気を付けて。
感想お待ちしてます。
ーーーでは、どうぞ!!
◇◇◇
蒼真の家、リビング。
「………疲れた」
「お疲れさま、ソウ君。皆から質問攻めにあってたね」
「分かってたのなら、助けてくれ」
「それは………ちょっと難しかったかも」
「藍斗は早々に落ち込んで机にダウンしてまうしな………」
藍斗、とは俺のバンドのボーカルを担う奴だ。ちょっとお調子者でもある。
ことりから転校の話をされた数日後のことだ。学校に出向くと、藍斗とは同じクラスに配属され、早速、担任から自己紹介をするように言われた俺達だったが、
『俺の名前は秋野藍斗!!趣味はギターをやってる。これからよろしくたにょむぜ!!』
たにょむ………?
その時、全員が疑問符を浮かべたはずだ。隣の俺は悟った。こいつ、噛みやがったな、と。
その後の俺の自己紹介は何事もなく普通に終わり、休み時間を迎えた。が、藍斗はショックのあまり机に額を打ち付け、動かなくなってしまったのだ。てか、誰もそこには触れようとしない。どうやら色々と察したらしい。で、代わりに俺の机の周りには好奇心に目を光らした女子陣に包囲されている始末。
幼馴染みである穂乃果も地味に混じっていたから後でデコピンしておいた。
「元気すぎる………ほんと」
「あはは………皆があそこまでテンションが高かったのは男の子が教室にいるのが新鮮だったからだと思うよ」
「そうなのか………はっ!!もしかして、これが明日からしばらく続くのか。だとしても慣れないぞ、これは」
「なんか………ごめんね、ソウ君」
「ことりがなんで謝るんだよ」
「えっと………なんとなく?」
どうやら、罪悪感を感じてる様子のことり。音ノ木坂に招待したのは自分で、そのせいで苦労している俺を見て、つい感じてしまったのだろう。
でも、音ノ木坂に転校した利点はちゃんとある。
「ことり」
「ソウ君?」
「俺は転校して良かったと思ってる」
「え?」
「聞いたところどうやら軽音部はあるらしいけど部員が3年生だけ。加えてその3年生全員が既に受験勉強に入ってしまっており、実質第二音楽室はがら空き状態。で、生徒会からは好きに使って良いって許可も出たし、理事長からは卒業した後の進路もある程度は協力するとのこと。結構良いこと尽くしだぞ?」
「そうなの?………なら、良かったんだけど………」
「それに………」
「それに?」
「ことりと一緒に学校に行けるようにもなったしな………」
「っ!!ソウ君………っ!!」
俺はつい目を逸らした。
でも、ことりの反応は横目に見ても嬉しそうだったので良かった。
と、優季がキッチンから出てきた。
「兄さん、こと姉、晩御飯出来たけど………なにこの雰囲気………」
◇◇◇
次の日。蒼真の家、リビング。
「スクールアイドル?」
「うん」
「誰が?ことりがか?」
「うん」
「もしかして………穂乃果達とか?」
「うん」
「ならさ、海未は反対しなかったのか?」
「海未ちゃん最初は反対してたけど、一緒にやってくれるって」
今日もいつもと変わらず、ことりは俺の向かいに座っている。妹はさっき買い物から帰ってきており、今はキッチンに引きこもってる。
冒頭を聞くに、どうやら今日のテーマは「スクールアイドル」というものらしい。
昼間に穂乃果が騒いでいたのもそれが原因のようだ。
「最近そういうスクールアイドルが活躍してるって話はよく耳にするけどな」
「本当?」
「そこで嘘言ってどうするのさ」
「うん。穂乃果ちゃんも言っててね、そのスクールアイドルで廃校を阻止しようとするみたい」
“廃校”。
対象は音ノ木坂学院。共学の線も考慮していたが(その為に俺もいるし)、根本的に生徒数が少ないとどうにもならないようだ。
そもそも音ノ木坂学院に来るメリットは何かと問われれば、特にこれと言える目立つものは存在しないのである。あるとすれば、長年培った歴史ある校舎ぐらいか。
とは言え、その例の穂乃果の母親も音ノ木坂出身であり、また俺の母親も音ノ木坂は母校でもある。無くす訳にはいかない、と考えるのも気持ちは分かる。
「それでことりはどう思ってるんだ?」
「どうって?」
「そのスクールアイドルでことり自身はやっていけるのかどうか」
「うーん………まだ始まったばかりでなんとも言えないけど、そこは穂乃果ちゃんだから大丈夫だと思う」
「………そういうことじゃあ…………まぁいいか」
「ソウ君?」
「ん、気にするな」
ことり本人はやはり気づいていないのだろうか。
それは何かと言えば、時折、ことりは穂乃果や海未に対して思い詰めた表情を浮かべることがあるのだ。本人も無意識らしく特に俺は指摘などしてないが、少し気になる。
まぁそこまで酷くもないのでしばらくは大丈夫そうだと俺は黙っておくことにした。
「それでソウ君、一つお願いがあるんだけど………」
「いいぞ」
「まだ何も言ってないよ!?」
「いや、あそこにミシンがあるってそういうことだろ?」
俺の指差した先にはテーブル。さらにそこにはミシンがポツンとある。大方、自分の家の部屋から持ってきたのだろうか。
「アイドルのライブってなるとやっぱり衣装も必要となってくるのか」
「うん。ちょうど私も衣装作りには興味あったから」
「それでやってみようかなっと。別にここで作業するのには問題ないぞ。優季もテレビ見てるか部屋にいるかだし、俺も特に気にしないから」
「………あのね、ソウ君」
「ん?」
想像してた反応と違う。
あれ、どっかで間違ったかな。
「ここじゃなくて、ソウ君の部屋がいいな~………なんて………」
「俺の部屋?なんで?」
「えっ!?なんでって言われると………落ち着くから?」
なんかそういうことらしい。
俺の部屋はことり専用にそういう効果がついているらしい。よく分からん。
「まぁ………いいけど」
「ありがと!ソウ君!」
笑顔満開のことり。
俺としては少し納得いかないのだが、本人がそれで良いと言ってるなら、何も言わないんだけど。
おっと、優季がキッチンから顔を出した。なんだ、その微妙な視線は。
「晩飯、出来たみたいだな」
「あ、優季ちゃん、私も運ぶの手伝う!」
俺も勿論手伝った。
食卓に並べられたのはハンバーグ。アクセントにチーズが乗せてある。
「では、頂きます!」
◇◇◇
和菓子屋『穂むら』。
「失礼しまーす」
がらがら、と俺は表戸をくぐる。
内部は広い空間に壁沿いに簡素に食事を取れるテーブル席がいくつか。中央奥にはショーウィンドウがあり、そこには食の芸術品と言われる和菓子の数々が存在をアピールしている。
「あら、蒼真君じゃない。珍しいわね」
「ご無沙汰してます、おばさん。今日は穂乃果に呼ばれて来たんですよ」
店番をしていたのは穂乃果の母親だ。
簡単に言えば、俺とことりの幼馴染みである“高坂穂乃果”の実家は駄菓子屋でもあるのだ。
お店自体にもよく俺の妹が穂乃果の妹と遊ぶ為に来るので、何かとお世話になっている。
「あ、そう?穂乃果達ならもう既に部屋にいるから。それはそうと、蒼真君!ちょうど良かったわ。試食してみない?」
「またですか?」
「えぇ。味は保証するわ」
「あ、ならお願いします。帰りにいつものも買いたいのでそれに入れておいてくれれば」
「いつものね、分かったわ。毎回ありがとね」
よくこんなサービス?も、してくれるのでもはや常連と化している。
さて、放課後に家に来いと言われた俺は階段を上がり、廊下を進んだ。
「穂乃果も何かしてください」
「え~、動画見てるから忙しい~」
「それ、何もしてないのと同じだよね、穂乃果ちゃん………」
声が聞こえたが、大体想像つく。
軽く扉をノックすると一人慌てた音がするが、気にせず入る。
「あ、蒼君!遅いよ!」
「練習してたんだ。仕方ないだろ」
ベッドにうつ伏せ状態のまま、パソコンを観ているのが穂乃果。座って、紙に何か書いているのが海未。ことりも海未と同じく作業をしていた。
取り合えず、近くにあった椅子に腰を下ろした。
「んで、話って?」
「うん。蒼君ってスクールバンドやってるでしょ?」
「あぁやってる」
「曲ってどうしてるのかなぁって」
「曲か?コピーしたり、オリジナル作ったりしてるが」
「っ!!そのオリジナルって自分達で作ったってことだよね!?」
異様に食い付いてきた穂乃果。海未とことりも気になるのか視線をこちらへ向けているため、作業が止まっている。
「作詞や作曲とかってどうしてるの!?」
「作詞?作詞は俺がしてる。作曲はちょっと複雑になるけど、一言で言えば皆でしてることになるのかな?」
「蒼真が作詞してるんですか!?」
今度は海未が食い付いてきた。
「え?海未、どうしたの?」
「今度、相談に行っても良いですか?」
「相談って………作詞の?てか、海未がすることになったのか?」
「………はい」
小さく頷き、俯いた海未。
ふと周りを見る。と、言っても二人がニコニコとしていたぐらいだが。
ことりは衣装製作に時間をとられるから作詞は難しい。穂乃果はそもそも出来ないから論外。
消去法で海未となったようなのだが、
「まぁポエムも書いていたしな。ちょうど良いんじゃないのか?」
「何故、蒼真がそれを!?見せたことないはずです!!」
そりゃ勿論、海未の背後の人から。
「はっ!?まさか、ことり!?教えたのですか!?」
「ごめんね、海未ちゃん。つい面白………楽しそうだったから、つい」
「うぅぅ………お嫁にいけません………」
若干ことりの本音が漏れていたけど、当の本人は気づいてないのか、羞恥心のあまり体操座りで引き込もってしまった。
ことりが慌てて近寄るが、しばらくは放置しておくのが吉と判断。
「で、話戻すけど曲がどうしたの」
「あっ!スクールアイドルやるのにね………曲がないの!」
「ふーん」
「興味なし!」
「コピーじゃ駄目なのか?」
「なんとね!多くのグループは自分達で作ってるみたいなんだよ!」
「穂乃果のくせによく知ってるな」
「ふふん!」
今の穂乃果はどや顔だ。
「それは、ついさっき私が言ったことではないですか!」
「うわぁん!海未ちゃん、復活早いよ!」
想像より早かったな。
と、思ったらまた引き込もった。それだけはどうしても言いたかったらしい。
「先に言っておくと、俺らがアイドルの曲作れって言われても無理だぞ」
「え?どうして?」
穂乃果の反応を見るに、どうやらそのつもりだったらしい。
「アイドルとバンドでは曲の路線が違いすぎるし、俺らも既に手一杯だからだ」
「えぇ~1曲だけでも~お願~い」
「1曲だけでいいのか?」
「ふぇ?」
「お前らは廃校を防ぐ為に活動するんだろ?」
「う、うん」
「その1曲だけで活動していくとなると流石に無理があると思うぞ」
「そ、そうかな?」
「そうだ」
穂乃果がちらっとことりを見る。
「その曲だけじゃ………厳しいかも」
「………蒼君~~!!」
穂乃果が涙目ですがり付いてくる。
俺はそれをひらりと避けた。もうお手の物だ。
側からぐへぇ、と女の子からは出ないはずの声が漏れた。すぐにぱっと顔をあげる。相変わらず元気だな、おい。
そして穂乃果は決意を込めたかのように言った。
「ことりちゃん!!」
「うん!!」
すると、ことりは立ち上がり俺の方を向く。
分かった。あれをするつもりだ。
「ソウ君………」
両手を握り、胸に持ってきたことりは潤った瞳を見せて言う。
「おねがぁい!!!」
◇◇◇
蒼真の家、リビング。
「んで、その一年生にお願いすることにしたんだ」
「うん。でも、あまり良い返事は貰えてないかな」
「てか、俺に頼む前から知ってたんなら最初からそうすれば良かったのに」
「何でも穂乃果ちゃんからは“お断りよ!”って言われたみたいで………」
「今の………その人の真似?」
「本物見たことないから分からないけど………多分」
あの日の顛末。
ことりのあの「お願い」は普通の人なら即座に墜ちてしまうほどの破壊力を含むが、俺はもう数えきれないほど遭遇してしまっているので特にダメージはない。
が、あのまま手伝わないって訳にはいかないので妥協案として提案した。
ーーーまずは作曲してくれる人を探そう。そしてファーストライブとやらに間に合わなければ、あくまでその場しのぎとして俺らのバンドから1曲提供させてもらうと。
「ピアノを弾いてる一年生で歌も上手いって穂乃果ちゃんが」
「あーどっかで聴いたことあるような………」
バンドメンバーの誰かが学校でピアノが聴こえるって言ってたような気がする。いつだったかな。まぁいいや。
ひとまずはその一年生に任せてみるしかないようだ。
「それでね、ソウ君。これがライブの衣装にどうかなって」
「ん?………」
これは、衣装の設計図だろうか。
ことりらしいデザインで描いてある。結構クオリティも高そうだ。完全に素人目線だけど。
「良いんじゃない?」
「ほんと!?」
「ことりがこれを着るんだろ………可愛らしいと思うけど」
「可愛い………えへへ」
ふと見ると、ことりは頬に手を当てて、自分の世界へと入ってしまっていた。
改めて、設計図を見た。
うん、やっぱ可愛いけど。でも、これを着るアイドルも大変だなぁと思った。
『人物紹介』
名前:南 ことり
性別:女の子
性格:天然、おっとり
担当:μ's衣装製作
概要:
音ノ木坂学院二年生。蒼真、穂乃果、海未とは幼馴染みの付き合い。趣味はお菓子作りで特技は柔軟。
蒼真とは仲が良く、夕食には彼の家で彼の妹と三人で食べるほどである。どちらの母親からも公認である。
最近の楽しみは彼との夕食前の世間話。特についこの前に彼が音ノ木坂学院に転校してきた為、彼との共通する話題が増えた、とひそかに喜んでいる。最近の悩みは、衣装製作する場所を何処でするか、であり、自分の部屋か彼の部屋かに悩んでいる。彼の部屋でするとなると彼に迷惑なのでは?と気にしていた。結果は見ての通り。
因みにお菓子作りが上達するまでの実験台となってもらったのは蒼真。「ことりのおやつにしちゃうぞ♪」は彼への笑顔で脅迫するシーンから誕生した。
*男のデレはいらねぇ!!!