蒼空を夢見たことりの恋話   作:ソウソウ

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 お待たせしました!!
 風邪を引いたやら引っ越しに時間とったやら色々ありましたが、どうにか合間を塗って執筆いたしました(モンハンしてたなんて言えない)。
 今後の更新は四月中はイベントが結構満載で出来るかどうか怪しいですが、よろしくお願いします。

 ーーーでは、どうぞ!!


3曲目『ファーストライブ』

 ◇◇◇

 

 蒼真の家、二階のある部屋。

 

「………」

 

 ギシッ、と物音がした。

 部屋の扉がゆっくりと開き、何者かが気配を殺して入る。

 辺りを軽く見渡し、奥のベッドを見つめた。広げられた布団の真ん中の膨らみが誰かが寝ていることを主張する。

 

「ソウ君、起きて~」

 

 その布団をそっと揺らすのはことり。

 ゆっくりと布団がもぞもぞと動きだす。勿論、寝ているのは蒼真だ。

 起きたばかりの蒼真は上半身を起こし、ばっちりことりと目が合う。

 

「ことり………?朝から何事?」

 

 時計をチラ見。まだ五時半前だ。

 いつもなら六時に起床する。

 

「あのね、朝練に来てほしくて」

「朝練?」

「海未ちゃんがやるって言い出して」

「あ~納得。で、なんで俺まで?」

 

 朝練をやるのは立派な心掛け。だが、正直それに巻き込まれたくない、しんどいのは勘弁とばかりに蒼真は明らかに不満な表情。

 ことりも申し訳なさそうになる。

 

「………タイムを測るんだけど、そのせいで海未ちゃんが練習出来なくて。ソウ君が代わりをしてくれたらなぁって穂乃果ちゃんが呟いてて………それで」

「………それだけでいいのか?」

「え?う、うん」

「なら、準備する」

 

 蒼真は立ち上がる。

 

「朝御飯に優季の弁当も作らないといけないから、待ってもらうけどいいか?」

「私も手伝うよ?」

「ありがと。先に下に行っといてくれ」

「分かった。ソウ君は?」

「着替える」

「あっ………」

 

 ぽっと、赤く頬を染めることり。

 蒼真はそれに気付かずにジャージを取り出そうと、棚を探っていた。

 焦る気持ちを落ち着かせたことりは部屋を出ようとドアノブに手をかけて、

 

「あ、そういえば」

「うん?」

 

 ことりは振り返る。

 

「おはよう、ことり」

「………うん!おはよう、ソウ君!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 蒼真の家、リビング。

 

「で、何でここなんだ………」

「?何か言いましたか?」

「んや、気にするな。もう諦めた」

「何をですか………??」

 

 今日は珍しく海未がリビングにいる。

 というか、俺が帰ってきた時には既にテーブルに資料らしき用紙を広げて、片手にはシャーペンと作詞準備万端とばかりに作業をしようとしていたのだ。

 どうやって家に侵入したんだ、と思ったがキッチンから優季がカップを運んできた。間違いなく犯人はこいつだ。

 中身は紅茶のようだ。優季は然り気無くテーブルへと置く。

 

「ありがとうございます、優季」

「いえ、どうぞごゆっくりしてください」

 

 軽く会釈をして引き戻る優季。

 その姿はまるで喫茶店の店員。いやいや、大人の対応過ぎるでしょ。あの風格で中学三年生って言われても違和感しかないのだが。

 

「穂乃果にも見習ってもらいたいほど良い子ですね」

「それは言っちゃダメなやつ」

 

 あのぐうたら和菓子娘は年中無休の頻度でやらかしてるから、優季と比較すら出来ないだろう。

 てか、身近に手本になる人物もいるというのにあの始末だ。救いようがないのはまさにこれ。

 因みにその人物とは名を“高坂雪穂”と言い、名字から想像つくが穂乃果の妹である。優季と同じ中学三年生。性格は姉と正反対で真面目で礼儀正しい女の子だ。

 そういえば、『穂むら』を尋ねた時には見かけなかったが店の奥にでも居たのだろうか。

 

「で、歌詞の方は順調?」

「それが………」

 

 俺が海未の書いている紙を見ると、殆ど真っ白だ。海未にとっては初挑戦で行き当たりばったりの作詞なので、手詰まってしまうのも必然となってしまう。

 気持ちはとても分かる。過去の俺も同じ目に遭っているからだ。

 仕方ない。秘伝の奥義を授けよう。上から目線なのは仕方ない(二回目)のだ。

 

「俺の場合だとな」

「はい」

「まず、テーマを決めるんだ」

「テーマ………ですか」

「聴く人に何を伝えるか、何を知ってほしいのか。探してみればテーマに出来るものは幾らでもあるぞ。その中でもよく見るのはやっぱり“感謝”とか“出会い”とか、かな」

「なるほど………」

「曲によっちゃ、それがそのまま曲名になったりもする」

「………」

 

 思考に没頭する海未。

 これはしばらく時間を与えた方が良いかな、と判断する。優季にも俺が見ておくから自分の用事をしてこい、と合図を送った。

 昔から海未はこうやって考え込んでしまう癖があるのは優季も知っている。

 優季は小さく頷き頷き、二階へと上がっていく。俺はソファへと移動。

 

「テーマ………やはり………でしょうか………いや………」

 

 ふと紙と睨み合いをする海未を眺める。

 長く青みがかかったような髪。綺麗に伸びた睫毛。黄金色に輝く瞳。

 俗に言う撫子の美少女だ。ことりも余裕で美少女の類いに入るが、海未はまた違った可愛さを兼ね持つ。

 アイドルとしての素質は十分だ。

 が、ことりから聞いた話だと、まだアイドル活動をするのに羞恥心が勝ってしまうようだ。てか、衣装の特にスカートについて短くするな、派手な色使いは嫌だ、とか色々と言われたらしい。

 俺は視線をテレビへ戻す。

 

「………愛………はぅ!!」

「海未、どうした?」

「なな、なんでもありません!!」

「ん?」

 

 ーーー数分後。

 

「決まりました!」

「お!決まったか」

 

 暇すぎて、チャンネル旅行してると立ち上がった海未はそう宣言した。

 途中、表情が変わったり、頬を赤らめたりと百面相みたいになっていたのは面白かったけど。

 

「はい。“始まり”をテーマにしようかと」

「“始まり”………なるほど。今のお前らにはぴったりだな」

 

 海未は小さく頷く。

 アイドルとして、廃校を阻止する活動の第一歩としての意気込みを海未は作詞に込めると決めたのだ。

 

「んで、そこからは手当たり次第に言葉を抜き出していく。そして、歌のイメージに合わせて歌詞を並べたり変えていったりするのが俺のやり方」

「それが蒼真の作詞………今回は真似しても良いですか?」

「別に構わんよ。これからもずっと」

「ありがとうございます」

 

 そこから海未は黙りこんでしまった。

 俺も邪魔しては悪いので、大人しくテレビでも見ておく。

 

「ーーーただいま~」

 

 ん、声が聞こえた。誰か来たようだ。

 正体を確認しようと上半身を持ち上げた俺が見たのは、

 

「海未ちゃん、作詞してるの?」

「っ!?ことり!?」

 

 海未の肩から顔を出して覗くことりの姿だ。海未の仰天ぶりからことりの気配にまったく気付いていなかったらしい。

 ことりの視線を辿った海未は即座に紙を胸元へと隠した。ことりが不満そうに頬を膨らませる。

 

「むぅー海未ちゃんのけち」

「いくらことりでもまだ見せられません!」

「まだ?ってことは完成したら見せてくれるの?」

「くっ………」

「というよりも、ソウ君には見られてもいいんだ」

「蒼真は最初から手伝ってくれているので平気なんです!!」

 

 なんか険悪な雰囲気。

 ただ単に海未が恥ずかしかっているのが原因か。けど、ことりの態度がいつもよりも機嫌悪そう。なら、他にも原因があるのかな。

 てか一度も海未の書いた歌詞の中身を見てないのだが。

 取り合えず、止めるか。

 

「ことりもほどほどにな。羞恥心を制覇する海未と違って、流石に俺でも途中のものを見られるのは恥ずかしい」

「………分かった。ところで、優季ちゃんはいる?」

「優季なら二階だ」

 

 渋々な様子のことりは二階へと上がっていく。

 ことりの姿が完全に消えたと同時に海未が大きなため息を吐いた。

 

「って!“羞恥心を制覇”とはどういうことですか!?」

「ん?そんなこと言ったか?」

「………もういいです」

 

 すんなりと諦めたか。

 これ以上続けると一方的にからかわれると分かってるからこその判断なんだろうけど、俺としては若干の不完全燃焼。

 

「そういえば、海未もご飯食べてく?優季に言えば、用意してもらえるけど」

「そこまでお世話になるわけには………こんな時間ですし、もう帰ることにします」

 

 と、海未は荷物を纏め出した。

 海未が一緒だと優季がとても喜ぶんだけど本人が乗り気じゃないと無理には言えないか。

 玄関まで送ることにした。

 

「家まで送ろうか?」

「いえ、大丈夫です。蒼真はそれよりもことりの相手をしてやってください」

「どういうことだよ」

「そういうことです」

 

 そう言い残し、海未は出ていった。

 ことりの相手はずっとしてるんだけどな。私ちゃんと分かってますから感の海未。さっきの仕返しかな。

 まぁいつも通りで構わんだろと、リビングに戻ると俺はあることに気づく。

 

「海未のやつ、忘れてるな」

 

 テーブルに一枚の紙があった。

 俺はそれを手に取り、何気なく中身を読んでみると衝撃の事実を知ってしまう。

 中身はライブに向けての練習内容だった。ただ男の俺から見てもキツイというレベルを越えてそうなのだが。

 

「………アイドルって大変なんだな」

 

 俺はそう結論付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 蒼真の家、リビング。

 

「それでね、アイドルはやっぱり続けようかなって私は思うの」

 

 ことりはそう告げた。

 今日の放課後、彼女達“μ's”の初ライブが行われた(グループ名は学校に設置した投票BOXからだそう)。俺もバンドの方でライブほどではないが公開練習のような感じで部活をアピールしていたので、彼女達のライブを観に行けたのは途中からだ。

 結果は………まぁ良くない。

 講堂に入ると、まず観客席が目に入るが殆どは空席だったのだ。見渡せば、一番前にポツンと後輩二人がいたぐらい。あ、後ろでコソコソしてた奴もいた。

 ライブの中身は技術面で言うとお手上げ状態なのだが、俺でもはっきり言って彼女達のダンスは上手いとは言えなかった。けれど、観客を虜にする魅力的な何かはあった。

 暫くして曲も終盤を迎えた。

 俺は入り口近くの壁に背中を預けながら見ていた。

 因みに踊っている曲は例の一年生に作曲してもらったそうで相当のクオリティになっている。数日前に俺も聴かせてもらったが、あれは到底普通の人では作り得ない代物だ。羨ましいレベル。

 ………話が逸れそうだ。戻す。

 やがて曲が止んだその時パラパラと拍手音が響く中、俺は彼女達の表情を見ていた。

 やり遂げた、そんな印象だ。

 その後は然り気無く俺は講堂を後にする。途中、副会長と遭遇したが難なくやり過ごした。ふと思ったが、あの人は俺と同じオーラがする。

 

「わざわざ俺に言うってことは不安にでもなったのか?」

「うん。アイドルを続けたいって気持ちは変わらないつもりだったんだけど………」

「生徒会長に言われたから………か?」

 

 ことりは頷く。肯定の意を示す。

 どうやら俺が去った後、すれ違い様に生徒会長が観客席前へと現れたようだ。

 その際、厳しいことを浴びせられたようで。勿論、穂乃果が負けじと言い返したらしいけども。その内容がちょっと問題で。

 

「ここを満員って………講堂は確か結構広かったよな?随分と賭けに出たもんで………」

「あはは………でも、私も穂乃果ちゃんと同じこと思ってるよ?」

「なぁ俺が言うのもあれだけど、相当の覚悟と努力が必要だぞ?それに例え懸命にそれらをこなしても中には報われない人だっている。ことり、お前はそれでも最後までやり遂げるって言うのか?」

「うん」

 

 ことりの瞳は真っ直ぐ俺を見つめる。

 

「即答か」

「私だけじゃない。穂乃果ちゃんに海未ちゃん、それにソウ君もいる。私が最後まで頑張れるには十分すぎる理由だと思うの」

「………そうか」

 

 俺は立ち上がると、ソファに移動する。

 不思議そうに視線を追いかけてきたことりに俺はポンポンと隣を叩いた。意図を察したことりは俺の隣へと移動し、腰かける。

 

「大人しくしてろよ」

「えっーーー」

 

 俺は優しくことりの背中へ両手を回した。できる限り余計な力を加えず、ことりを抱き締めた。

 ことりはやはり動揺を隠せず、暴れだしそうになるがすぐにじっとするようになった。

 

「ソ、ソウ君?」

「お前はいっつも自分の意見を後回しにして我慢するからな。 そのせいでμ'sのメンバーの中では一歩引いて見守るのもことりの役割となるはずだ」

「そう………なのかな………」

「あぁ。どっちにしろーーー」

「っ!?」

 

 抱き締めるのを解除し、ことりの両肩へ掌を置く。

 

「絶対に俺にだけは他人の迷惑になるからって理由で隠し事をするなよ。いいな、正直に何でも言うんだ。日頃の成果とかだけじゃなく愚痴に泣き言とかも含めて」

 

 ーーーこれは俺自身への決意の締め付けでもある。

 何故ならことりは俺にとって家族のような存在だ。だからこそ彼女の悲しむ姿は見たくない。その為なら、己を犠牲にしてでも果す覚悟はあるつもり。

 故にこうして、ことり本人に告げることで後戻り出来なくしている。唐突だっただろうからことりも困惑しているだろうが、俺だって何故このタイミングなのか分からない。

 言葉に詰まった俺はつい視線を下へ向けてしまった。

 

「………ソウ君?」

「………約束だ、ことり」

「う、うん。分かったけど………」

「もし破った時はそうだな………罰ゲームでもするか」

「罰ゲーム!?」

「内容は………その時決めよう。その方がスリルがある」

「そうだねーーーでも!」

 

 ことりの目付きが変わったことに気を取られ、次の瞬間の俺の反応が遅れてしまう。

 気づけば、俺の頬にはことりの掌がそっと添えられていた。ことりの顔が至近距離へ接近してくる。

 

「さっきの約束はソウ君にだって言えることなんだよ?だ・か・ら!勿論、約束はソウ君にも有効だよね?」

「はぁ………仕方ない。片方だけってのも不公平だしな」

「よし!これでお返し完了っと」

 

 ことりは満足そうに微笑む。

 掌は下ろしたが、ことりの顔は近いままだ。

 

「ねぇソウ君」

「何?」

 

 これで彼女が少しでも余計な重圧を感じずにアイドル活動をしていければ、俺の不安は万事解決なのだがそうあっさりと行くかはまだ断定できない。

 ただ、それはことりにとっての俺に対する不安と同じみたいで、俺もバンド活動等において注意しないといけないのか。

 なら、具体的にすべきことは?

 と、思考を巡らすけど今の所何も対策しようがないので、結局は無駄事だと思わざるを得ない。でも、つい考えてしまう。どうすれば解決できるか。俗に言う悪循環だ。

 ことりから呼ばれたのはその時だ。そして、次の一言で俺は救われることになる。

 

「私達きっと似た者同士なんだね」

 

 ことりにとっては何気無い言葉。

 それは俺にとっては過ちを正してくれる魔法の言葉へと変貌する。

 ーーーさっきも俺が言ったじゃないか。悩みごとも隠し事も全て一人で抱え込まないでって。

 

「そうだな。きっと、どっちかの性格が移ったんだ」

「むぅ、元々似てたと思いますー」

「どっちでもいいだろ」

「そうだけどなんか不満に感じる」

 

 この後はいつもの日常へと戻っていく。

 いつも通りの毎日。唯一違うのは二人の間に芽生えた小さな約束。

 

 




『人物紹介』
名前:波大 優季 
性別:女
性格:口数少なめ、のんびり、マイペース
担当:なし
概要:
 蒼真の妹、中学三年生。兄と姉同士が幼馴染みの関係から妹同士の雪穂とはよく一緒に遊ぶ仲。雪穂からはよく天然マイペース過ぎると言われる。
 蒼真のことを他人が居るときは「兄さん」と呼ぶのだが、二人きりの時は「おにぃ」と呼ぶ恥ずかしがり屋。
 蒼真の幼馴染みの穂乃果とことりはそれぞれ「穂乃姉」「こと姉」だが、海未だけは本人がとても人生の先輩として尊敬しており、敬意を表して「海未姉様」と呼ぶ。 



*最後、よく分からんことになりましたぁ!
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