蒼真と特に関わりがなさそうなのでスルーなのです。
ーーーでは、どうぞ!!
◇◇◇
蒼真の家、リビング。
「そういえばふと気になったけどさ」
俺はそう切り出した。
反応したことりが宿題の手を止め、こちらへと視線をあげる。
「ことり達ってアイドル研究部に入ってないのか?」
「え?」
「え?」
「………そういう部活ってあるの!?」
「あったと思うけどな………今日の仕事中に部活動の一覧表を見る機会があってな、その時にそこにアイドル研究部があったからお前たちはどうしてんだろうなぁって思ってたから」
因みに俺は数日前に生徒会に所属することになった。採用理由は男がいた方が何かと共学に向けての準備がしやすいからというシンプルなもの。
別な理由としては藍斗の副会長と喋るチャンスを伺うためでもある。とは言え、副会長の東絛さんとはそんな親密な仲でもないので現状は厳しい。
ーーーが、今は別の用件だ。てっきり俺はことり達はアイドル活動を部活動として動いていると思っていたがそうではないらしい。
「………初耳だよ、ソウ君」
「そうか………その様子だと海未も気付いてないのか。珍しいな」
「あれ?でも、穂乃果ちゃんが申請出来なかったって言ってたような………」
「まだ一年生組が入ってない時に新たに設立しようとしたなら話は違ってくる。部活を設立するためには五人以上必要だからそのせいで穂乃果の申請が通らなかったかもしれない」
「あ、そうかも」
「早めにしておけよ」
ことりは小さく頷く。
何気無い会話。ことりと俺は特に疑問に思うことなく終了した。
だが、次の日、俺は予想を斜め行く報告をことりから受けることになる。
◇◇◇
ーーー翌日。
音ノ木坂学院、中庭。
「何?ストーカー?」
そしてお弁当の卵焼きをパクリ。
よし、上手く出来てるな。これなら、優季にも文句は言われないだろ。
で、返答したのはことり。
「ストーカーっていうよりかはね………視線を感じるの」
「犯人の心当たりは………ないか」
台詞の途中でことりが首をふったので否定の方向へ持っていく。
でも、視線を感じるのは危険な傾向かな。その辺りも考慮しておく必要があるのを確認すべきだった。
確かにμ'sの人気が向上するのは万歳だが、逆に今まで見えてこなかった問題も浮き出てくる可能性があるのは失念していた。
「というよりも、蒼君!!私が一番怒ってるのはポテトを食べられたことだよ!!」
これは穂乃果の文句。
どうやら昨日の放課後にファーストフード店に寄った際にそのストーカーにポテトを隙間を塗られて奪われたらしい。
ふと見ると、気になることが。
「そう言えば穂乃果、その怪我はどうした?」
「あ、これ?これはねーーー」
穂乃果曰く、彼女の額にある絆創膏もストーカー関連のせいらしい。昨日の朝練終わりにストーカーを捕まえようと追いかけて転んだ時に怪我したからだそう。俺はその朝練には参加していなかった。
「僕もその時見ましたけど、それほど体格が大きくはなかったです」
代わりに朝練のサポートしてたのはバンドのベースを務める彼。
名を“桐山光”。
眼鏡をかけて、真面目な雰囲気を醸し出しているがこれは背の低いのを気にして大人の威厳を出したいから、らしい。
「私が見たときはサングラスもかけてたよ!!」
「多分、女の子の可能性が高いかと」
「なら、音ノ木坂の生徒でもあるかもしれんのか」
「そもそもその人は私達のことをあまり良くは思ってないようで………」
「というと?」
俺の隣の海未が話に入る。
「解散しろ、だとかプロ意識がなってないだとか色々言われまして………」
「………ストーカーってよりかはクレーマーに近いな」
「私のポテトが盗られた時の話だよ!!あぁぁぁぁポテト食べたいよ!!」
「穂乃果、うるさい。奢ってやるから静かにしてろ」
「やった!!」
「あ、なら、私も~」
「なんでことりも………」
「いいでしょ?」
「あぁ………いいけど………」
ポテトを奢るぐらいなら、ことりが増えても特に問題はないけど。ことりの周りから謎の執念さが醸し出しているのは気のせいだろうか。
「ちょっと良いですか?」
「なんだ、光?」
「僕、犯人が分かったかもしれないんです。任せてもらってもいいですか?」
「分かった」
なら、今回の件、俺はパスで。
こういうのは光の得意分野だ。
「ん?」
俺は空を見上げた。
ぽつり、ぽつり、と水滴が肌を濡らす。
「降ってきたね………」
「………」
最近は梅雨の時期なので、雨が降るのは別に変なことではない。
でも、この時の俺は何か不吉な予感に心を震わせていたのだった。
◇◇◇
蒼真の家、リビング。
「犯人は部長………部長?」
「うん」
ことりの事後報告につい俺はおうむ返しとなってしまった。だって、部長だぞ。
………関係ないか。
一連の騒動の詳細は以下の通りだ。
まず、犯人の正体は数日前、俺とことりの話題に上がったあのアイドル研究部の唯一の部員でもある女子生徒だったのだ。
名は“矢澤にこ”。アイドル研究部部長。
動機はμ'sのアイドル活動を嫉妬したからだそうだ。ただ、単純な嫉妬からではなく、そうなったのには深い理由があるそうで。
「これは副会長さんから聞いた話なんだけどね………」
ことりはそう告げる。
副会長の東絛さんはどうやら彼女の昔の事情を知っていたらしく教えてもらえた、とのこと。
矢澤さんも一年生の頃、アイドルグループを結成してたのだ。仲間とも練習を重ね、ライブも何度かこなした。
それも長くは続かなかった。矢澤さん自身は本気でアイドルの頂点を目指そうと日々厳しい練習を強いてきた。それに仲間達は付いていけなかったのだ。その子達は純粋に趣味の範囲としてアイドル活動をしたかっただけで、一人一人矢澤さんのやり方から離れていった。
そして………独りになった。
誰も一緒にステージに立ってくれる者はおらず、孤独感を身に纏うライブはもはや彼女の理想とするアイドル像とはかけ離れていた。故に矢澤さんは静かにスクールアイドルを止めることを決意した。
それでも、スクールアイドル自体は大好きな彼女にとって完全に手離すことは出来なかった。結局選んだ結末はアイドル研究部の部長として黙って居続けることだった。
「そんな中、私達μ'sが出てきた」
勿論、矢澤さんは新たなスクールアイドルが結成された噂はすぐ耳にすることになる。
矢澤さんはほんの軽い気持ちであの日、観に行ったのだろう。そして、ことり達のファーストライブを間近に見て感じた。
決してダンスだとか歌の技術は高くはない。だけど、彼女達のステージに佇むその姿は美しく、私の憧れるステージの象徴でもあるんだと。だから、素人でもあることり達に出来て自分に出来ないことに対して嫉妬せざるを得なかった、と。
これはことり曰く、東絛さんの予想だそうで。
「だけど、素直に年下相手にグループに入れてくれなんて言えるわけもなく、自分と相談しあった結果ああいう風にちょっかいを出すことになってしまった………と」
「う、うん………そういうことになるかも………ね」
「デジャブを感じるのは気のせいだろうか」
「あはは………」
ことりも密かに感じていたのだろう。完全に苦笑いになっている。
「でも、ここまで分かれば後はどうその人と付き合っていくかだけだな」
「あ、そのことなんだけど穂乃果ちゃんが提案した作戦で行こうかなって」
「大体予想できるけど………作戦とは?」
「初めて海未ちゃんと遊んだ時と同じようにするんだって」
「海未と初めて?」
と、なると結構昔の思い出になるな。
「あれか」
場所は公園。
子供の俺とことりと穂乃果三人で遊んでいた時の話だ。確か、かくれんぼでもしてたかな。
ふと、木の影に人がいたのに穂乃果が気づく。他でもない、その人こそが海未だ。
海未の恥ずかしがりやの性格は子供の時からも全開で今となって普通に会話しているが、そこまで至るのには随分と時間がかかった。
まだ初対面でないその時は隠れて俺達のことを伺っていたようだが、発見した幼い頃の穂乃果は容赦なく海未を俺達の前へと引っ張り出したはず。ある意味、それが穂乃果の強みでもあるのだけれど。
そしてーーー
『見つけたぁ!!』
大声で叫んだのかな?穂乃果はかくれんぼの鬼の役目を全力で全うしただけなのだが、海未にとってはその一言は転機だったかもしれない。
だって、ちょうどその後からなのだ。海未が俺達三人の親友の輪の中に入るようになったのは。
「あの時の海未ちゃん、可愛かったよね~♪」
「それは知らんが、今回も同じことをするとなると………」
ちょっと無理があるのでは?
俺はそれ以上、口にしなかった。
「むぅ~」
そして、何故だ、ことりよ。
そんな不機嫌にならなくても良いだろうに。
◇◇◇
秋葉原、ゲームセンター。
「なんでこうなった?」
「知らないわよ」
「的確な答え、ありがとう真姫ちゃん」
隣には真姫。少し向こう先のUFOキャッチャーでは凛と穂乃果が楽しそうに遊んでいる。そして眼前のダンスゲームでは矢澤さんと花陽ちゃんがスコア対戦している最中だ。
残りの海未とことりは観戦中。
「よっしぁ!!」
「はぁ………はぁ………」
曲が終わったようだ。
ガッツポーズを決める矢澤さんとは対照的に肩で息をしている花陽ちゃん。てか、明らかにアイドルとは思えない喜びようのツインテールだな。
あ、そう言えば数日前にμ'sに“矢澤にこ”が正式に加入した。穂乃果の「実は元から入ってました!!」作戦が成功したようで本人も部長としてより一層アイドル活動に励むらしい。
俺達バンドメンバーとも軽い顔合わせのようなこともした。曲作りに関わることになるかもしれないし、お互い友達になっておいても損はないだろう。
その時矢澤さんに挨拶代わりにーー
『にっこにっこにー!!あなたのハートににこにこにー!!笑顔届ける矢澤にこにー!!にこにーって覚えてラブにこ♪』
もうどんな雰囲気だっかは想像にお任せするが、取り合えず俺と光、藍斗の思考が停止したのは覚えている。例外はいたが。
そして、忘れそうになるが矢澤さんは一番の上級生、つまり三年生であるのだ。その威厳はあまりないが。
「何か言った、ソウマ?」
「んや、何も言ってない」
「あ、そう。なら、いいわ。記録はちゃんと録ったわね?」
「あぁ」
「なら、次よ!」
「あれ?穂乃果ちゃんは?」
「凛もいないわね」
ばしっ、と指差すにこ。
とは言え、次の人である穂乃果と凛の姿は見えず現れる様子もない。探すのにもあの二人のことだ、めんどくさいに決まっている。
俺は黙って画面の得点を手元にあるメモ帳に記入。見ての通り、得点係です。
「あの二人はどこ行ったのよ!?」
花陽は今までのメンバーの平均点よりかは点数が低い。体力面にもう少し強化が必要だ。
にこはやはり高得点だ。普段からアイドル魂に火が点いてる彼女に言わせれば自慢にもならないだろうけど。
そもそも俺が何故得点を測っているのかと問われれば、リーダーを決める為と答える。どうやらμ'sのリーダーは誰なのか、と言う疑問が昨日の生徒会からの取材を引き金に浮上してきたようで、それを解決しようと現在、この案が実行されている最中なのだ。
因みにこのダンス対決は第二ラウンド。第一ラウンドはカラオケ対決だそうで藍斗と光が得点担当として連行されていた。
んで、今度は俺が選手交替とばかりに連行。親交を深めることも目的であるため、別に嫌ではないけど。
俺に近寄る一人の影。
「ところで蒼真はこんな所にいても良いのですか?」
「ん、海未か。まだあいつらから連絡がないし、大丈夫だ。きっと」
「なら、いいのですが」
今頃、学校では軽音部の取材という名目で東絛さんが藍斗達に話を聞きに行っているはずだ。ただ、今日の予定は個人のインタビューだけらしく明日から本格的に撮影が始まると説明された。
男だけの軽音部は注目度が高く、特集として組まれるのだ。ありがた迷惑だが俺達のことを知ってもらえる良い機会でもある。
そして、一発目に俺がインタビューされて終わったので早めに解放されている。
今頃は藍斗が緊張で声が震えながら東絛さんの質問に答えている頃だろう。
「所で蒼真は誰がリーダーにふさわしいと思いますか?」
「………そうだな。一年生組はないとして、海未は人前に立って皆を引っ張るとかそういうのはあまり向かないだろ?」
「えぇ……自分で言うのもあれですけど、そうですね」
「ことりも副リーダーでぴったりだと思う。後は穂乃果と矢澤さんか」
「はい」
「もう海未なら言わなくても分かるだろ?」
「ですね」
優しく微笑む海未。
どうやら海未もこのリーダー争いの結末は予想できてるらしい。というのも、必然とリーダーとなる者は風格を無意識に出しているからだ。
きっと本人も分かってないだろうが、それでいい。必死になって前へと進めばよい。自然とそういう奴の隣にはいつも仲間がいる。今のμ'sのように。
「あっ!!見つけたわよ!!早くやりなさい!!」
「えぇー、今いいとこなのにゃー」
「あぁ!?凛ちゃん、見て!!」
「にゃ!?惜しい!!」
「分かったから早く!!」
「にこちゃ~ん、そう言わずにちょっとだけ~」
「引っ付くな!!」
………。
「やっぱりさっきの撤回しようかな」
「私も同じこと考えてました」
『人物紹介』
名前:桐山 光
性別:男
性格:超真面目
担当:バンド ベース(Ba.)
概要:
蒼真、藍斗とバンドを組んでいる。ベース担当。藍斗とは小学校からの付き合いである。
ある日は眼鏡をかけたり、ある日はコンタクトとその日任せの本人だが、背が低いことをコンプレックスと感じており口調は丁寧語にしたりして大人として見られようとしている。
にこのことは加入する前からの知り合い。きっかけは光自身がちょっとした好奇心でアイドル研究部を尋ねたことから。
μ'sのメンバーの中では、特ににこと花陽の二人とよく話す。内容は主にアイドル談義。
*光のヒロイン、どうしよう………