--2月2日--
あれから二日経った。昨日は特に変わったことはなく、強いて言えばクラスメイトの後藤がスパイ映画に影響された事と遠坂が休んだことぐらいだ。
そして今俺は、部活の奴らが練習を終えた時間帯を見計らって、夜中の学校に一人でいる。別に七不思議や怪談の正体を確かめている訳ではない。冬だし。……いや、見方を変えればそうなのかもしれないが。
本当の理由は学校に張られてある結界にある。おそらく聖杯戦争の参加者が用意したものだろう。人が集まりやすい所に結界を置き、魂を吸って
しかし、妙だ。ここまで明からさまとなると囮だという可能性がでてくる。
何にせよ、誰が何の目的でこんな事したのかを分かっても、俺は半人前だ。一人では何もできない。だから、今回は一旦帰ることにする。
ちなみに、そいつは遠坂だ。あいつも聖杯戦争の参加者らしく、サーヴァントを使役しているのも確認している。何度か出くわしそうになったが、ギリギリの所で隠密をしている。サーヴァントの方にも気づかれておらず、運が良かったとしか言いようがない。
他にも学校に残っている奴がいる。そいつはきっと、ワカメに思うようにされて、掃除を行い、ついでに他のこともやっておこうというブラウニー妖精に違いない。
さて、今から帰るということを家に居る同居人に連絡するか。
そうとなれば、ズボンのポケットから携帯を取り出し電話をする。
「もしもし、オレオレ、オレだよオレ。」
はたから見れば、いきなり詐欺を実行したかのような言い方。電話の相手は自分の息子ならアイ◯スにでてくるキャラクター全部言えるよね?とか言い出す。俺はそんなもん覚えてねーよ。
「悪い、悪かった。だから、その返しはやめてください。
……ああ、結界は一通り調べたから一旦帰る。……わかってる、無茶はしないから。今までしたことないだろ?はいはい、気をつけて帰るよ。じゃ、切るぞ。」
電話を終えたその直後だった。
外から無数の金属音が聞こえ、俺はすぐさま外を見る。
それは、普段では見れない光景だった。
ぶつかり合う双剣と槍。対峙する赤と青。それは試合なんていう綺麗なものではない。互いが生を賭けて戦う殺し合いだ。
次元が違う。それは、このことを指しているのだろう。
本来ならば、俺はこのまま帰るべきなのだろう。だが、嫌な予感がしていた。今いるのは三階。状況を知る為に降りてもう少し近くに寄るべきだろう。
そう思い、階段から下に降りて、物陰から二人を観察する。
とにかく情報を一つでも多く見つけなくては。見た所、赤い方は遠坂のサーヴァントで青タイツは単独行動みたいだ。
次に、戦う二人の得物を視る。今から行うのは古崖家特有の魔術。高速で動いているが、それは関係ない。あくまでもそれがどういう形をしているのかではなく、どういう
青タイツが持っているのは因果を反転させるものだろう。真名を解放すると同時に結果を作り出し、過程がそれに向かって動いていく。さらに、治癒阻害まで持っているという
だが、本当に厄介なのは赤い方だと感じてしまう。あの双剣は互いに引き合う性質がある。それはかなり扱いづらいものだ。しかし、あれはそれだけではないはずだ。なにかこう、赤い奴と一体化していると言うか……
「……誰だ!」
そんなことを熟考していると青タイツがいきなり叫びだした。一瞬、こちらに気づいたかと思ったが、別の場所を向いていた。そして、そのまま、校舎の中へ入っていった。
目撃者は殺すと言うのが魔術師の常識なのだから、抹殺しに行ったのだらう。そして、この学校には今、三人しか(四……五人?)いないはずだ。俺はここにいて、遠坂は赤い奴と一緒だ。ということは……
まずい!
そう思いながら、走って校舎へと戻る。
頼む、頼むから生きていてくれよ……!
「と言うかなんで校舎に逃げ込んだんだ⁉︎」
学校の廊下は真っ直ぐで、そうなるとスピードで絶対に追いつかれる。そうなるぐらいなら学校の外に出て多少分かれ道がある住宅街の方がマシだろう。
そんなことを考えながら、青タイツが追っている奴を探す。
「見つけた。」
制服姿のあいつは尻餅をついており、敵に睨まれている。青タイツは今にも心臓に槍を突き刺そうとしていた。
このままだと殺される……だけど、策はある!
親の形見を使うことになるし、その策が成功するかは分からない。あいつは確実に生き残るが、下手をすれば俺は死んでしまうだろう。しかし、もう考える余裕はない。
一か八かだがやるしかない!!
そう決心すると青タイツはあいつの心臓に向かって槍を突く。そのままだとあいつは確実に死ぬ。
だがそれは俺が許さなかった。
「えっ?」
誰の声だろうか。驚きに満ちた声。それは当たり前だろう。槍が心臓に穴を開けることは確定したことだった。しかし、それは
俺の腹が空いたことに
「うっ!くっ……!」
腹に激痛が走るがそんなもん知ったこっちゃない。俺はすぐに槍を体全体を使い抱え込むように掴む!
「なっ……!チィッ!」
青タイツが舌打ちをして睨みつけてくる。悪いがすぐ引き抜かれて後ろのやつに襲いかかられると困るんでな。
「衛宮!」
「そ、創太?お前、創太か⁉︎」
どうやら声を掛けられるまで俺が誰だか分からなかったらしい。こんな状況なら仕方がないと言えば仕方ない気もするが……まあ、いい。
「早く……逃げろ!」
「お前を見捨てて、か?そんなことできない!」
「いいから早く!何の為に庇ったのかわからなくなっちまうだろうが!」
「けど……!」
こんな時に衛宮の悪い癖が出てきちまったか。しょうがねえ。ちょっと卑怯だが、言い方を変えてみるか。
「そんなこと言ってんじゃねーよ!お前が生き残らなきゃ俺が
「ッ!!」
この言葉は効果覿面だったらしい。鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。こいつは『救う』という単語を異常に気にしているからな。
「大丈夫だ。俺は死なない。だって俺も……魔法使いだからな。」
「えっ、お前……分かった。絶対に死ぬなよ。」
「あったりめえだ。」
俺が青タイツを抑え、衛宮が逃げたのを確認して、前に意識を向ける。
……あの時、あそこにいたのをバラしちまったな。
「話し合いはもう終わりか?」
「ああ、最後まで待っててくれてありがとな。」
「あれを邪魔するほど無粋な真似はしねーよ。」
そう、こいつは衛宮が逃げるまで何もしなかった。俺から無理矢理得物を引き抜いて、衛宮にもう一度突き刺すことができる実力を持っていながらも。
「さっき死なないって言っちまったけど、もうそろそろ限界かな……。さっきの奴は殺さないでくれよ?」
「ヘッ、そうしたいがマスターの命令なんでな。そいつはできねぇ相談だ。」
やはりそうか。ちょっと期待したんだがな。
俺の指から力が抜ける。体から槍が抜ける。もう意識が保たない……と見せかける。実は、俺は魔力を生命力に変えて存命している。青タイツはそれに気づいていないのか、自身が来たであろう方向を見ると、別の方向に走っていった。赤い奴が来たのだろう。
まずい、本格的に意識が保たなくなってきた……。魔力が底をつきかけていく。あれを発動するのにも魔力がいるっていうのに。
俺、死ぬのか?ああ、死ぬってこんな感じなのかな。でも、でも……
死にたくない。しにたくない。シニタくなイ……!
「顔を見ないと。それぐらいはしなくちゃ……。」
誰かの声が聞こえ、足音が近づいてくる。その二つの主は、同じ奴だろう。顔を見ると遠坂だった。当たり前か。さっきの青タイツを追っかけてくるのなら、ここにくるのは当然だ。
「とお、さか……」
「っ!あなた古崖くん⁉︎」
「たの……む。」
「ごめんなさい、あなたはもう……」
違う、そうじゃないんだ。遠坂。俺の言葉を聞いてくれ。さもないと、手遅れになる!
「まりょ、く。」
「えっ?」
「いいからはやくまりょくを……」
「あなた、まさか!」
ああ、そうだ俺は魔術師だ。だが、
「え、みやを、衛宮を、助けなくちゃ……いけないんだ!」
「……ええ、分かった。魔力をあげるわ。だけど、後で状況をちゃんと説明しなさいよ。」
分かってる。分かってるから早く!
「首のペンダント……そこに」
「そこに魔力を込めればいいのね。」
話が早くて助かる。遠坂は、首にかかっているペンダントに手を当てて魔力を込める。すると、たちまち俺の腹の風穴がみるみる塞がっていく。
「嘘……少ししか流していないのに……!」
そういうものだからな。傷が治ると同時に、段々と意識も回復してくる。そして、腹の傷は完全に塞がる。それと同時にペンダントは弾け、粉々になっていく。
「親の形見だったんだけどな。」
少し惜しい気もしたが、過ぎたものはしょうがない。一時的だが、あいつは助かったんだ。
しかし、まだ少し吐き気がする。
「さて、状況を説明してもらいましょうか?」
そうだった。確かそんな事言ってたな。
「ああ、分かってる。といっても、俺は衛宮をかばって、そしてあいつは逃げた。ただそれだけだ。」
「もっと他に言うことあるでしょ……ってちょっと待って。と言うことはつまり……」
「また、あの青タイツに追われるだろうな。」
「やっぱり話は後!衛宮くんの元に行くわよ!」
「初めからそのつもりだ!!」
学校を後にして、俺たちは衛宮の家へ向かう。
走りながらだが、遠坂と少し話をした。青タイツの方がランサーで、遠坂が従えている方はアーチャーらしい。ランサーのほうは当然っちゃ当然だが、アーチャーのほうは意外だ。双剣を使う
今向かっているのは、衛宮邸。普通の人なら交番とかに行くが、あいつはなんだかんだ言って魔術師だ。そうだとすれば、自分の工房に戻った方が安全だ。遠坂はそんな事考えていないだろうが、自宅に帰っているという推測は賛同してくれた。
途中では、アーチャーと合流した。ランサーは見失ったらしい。
「状況は分かってるよな?」
「もちろんだとも。」
良かった。ここで俺を敵だと判断されたら為す術がない。
そろそろ、衛宮邸の近くだ。そう思っていたら、
一瞬、周りが白に包まれた。
「これってまさか……」
遠坂がそう呟く。それに対して俺は
「その考えは後だ。真相を確かめに行くぞ。」
そう言い返した。
確かにあれは召喚される時の光だ。だが真実は分からない。そう思いながら衛宮邸の塀の近くについた。
そういや、あいつの家はこんな武家屋敷だったな……
「っ……アーチャー、来るぞ‼︎」
「解っている‼︎」
そう言ったアーチャーだったが、塀の向こうからの奇襲に何を驚いたのか、完全に攻撃を受けてしまっている。
「この馬鹿野郎‼︎」
アーチャーがよろける。相手はそんな隙を見逃すはずはなく、二撃目を繰り出そうとしている。俺はそんなことさせまいと、地面に手を置き、学校からここに来るまでに急ピッチで
狙い通り、相手はそれを防ぎ、ダメージは通らなかったものの、アーチャーとの距離を開けられた。
ハ◯レンみたいだと思うかもしれないが、実際にそれを参考にさせてもらった。
「しっかりしなさい、アーチャー‼︎」
まずい、非常にまずい。セイバーは何かしらの影響で弱まっているようだが、地力ではアーチャーを上回っている。しかも、こっちは一発入ってしまっている。何か策を……
と思えば誰かがやってくる。
「待ってくれ、セイバー‼︎」
「シロウ⁉︎何故ここに来たのです!」
どうやら、目的の人物が現れたようだ。
「聖杯戦争がどうとか、マスターがどうとか、こっちは点で解らないんだ。」
衛宮とセイバーと呼ばれた少女は、なにやら言い合っているようだ。
そんな状況を見越したように遠坂が相手方二人に話しかける。
「貴女のマスターもそんな事を言ってるんだし、そろそろ、剣を下げてもらえるかしら?」
「敵である貴女達に下げる剣などない。」
「あら、そっちの主がそう言っているのに?へぇ、セイバーのサーヴァントはマスターに逆らうクラスだったのね。」
おお、煽ってる煽ってる。
それを聞いたセイバーは悔しそうに殺気を解いた。だが敵意はそのままだ。
「さて、こんばんは衛宮くん。」
「えっ、お、お前遠坂⁉︎」
戦いはとりあえず避けられた。今夜はまだまだ長引きそうだ。
はい、と言うわけで第二話でした。
前よりかは長くなっていますが、シンドイ。楽しいっちゃ楽しいんですけどねー。まだまだ序盤も序盤です。
今回書いてて思ったのが、キャラの言動と戦闘シーンが難しい。
キャラの言動はオリ主を入れることによって、状況が少し変わりその結果、あれ?こいつってこの場合どう動くんだろう?とか、あいつをどうにかして別の状況に持っていきたい。とか、そういう悩みが出て来てしまいます。
戦闘シーンに関しては、語彙力がなくて迫力が出せない。ただそれだけ。
展開は大体最後まで作っています(というか序盤と終盤だけ)が、細かいところはその場その場で作っているので後々ボロが出るかもしれません。
主人公の能力がちょいちょい出ていますが次回にその詳細を少しだけ説明します。
次回はロリっ子悪魔がでる所まで行けたらいいな。(切実)