名言を作るのって難しいですね。
今更ながら、この小説は支離滅裂でできています。今回の話を書いてて、そう思いました。
次回は、いよいよオリ主がサシで英霊に戦いを挑みます。果たして結果は⁉︎ヒント、主人公補(ry
黒い空で、俺は宙を漂う。
周りに物はなく、感覚もない。
体は動かせず、ただ時間が過ぎる事だけを待つ。
そこには、何の理由もない。
意思も、行動も、存在すらも。
まるで、死後の世界のよう。
死、その言葉だけで、俺は恐怖する。
嫌だ、嫌だと抵抗しようとするが、何も起きない。
この死から逃げたい。孤独から逃げたい。
何かを掴もうと必死で、腕だけでも動かそうとする。
それすらも意味がないのに、逃げようと俺は……俺は……
そうしていると、突如として光が現れる。
とても暖かく、優しく、何かを与えてくれるような、そんな気がするような……
その光に包まれていると、うっすらと目を開ける感覚を脳が読み取る。まだ視界がボヤけているけれども、少なくとも俺が知っているような場所ではない。体が仰向けになっており、天井しか見えないけど、それだけでも貴族の家、という雰囲気が感じられる。いやでも、見た事あるかもしれない。
やがて、視界もはっきりしてきて、体を起こそうとする。
「……っ!」
しかし、肩から伝わる強烈な痛みのせいで、動けなかった。
「あまり無茶しない方が良いわ。傷は一つしかないとは言え、かなり大きい。しばらくは、安静にするのが賢明ね。」
横から声が聞こえる。そちらの方向を見れば、やはりイリヤスフィールであった。
「……ああ、そうか。逃げ切れたんだな、俺たち。」
「ええ、何とかね。あいつらが、追ってくる可能性は無いとは言えないけど、今すぐではないでしょうね。」
まさか、二度もあのサーヴァントから撒けるとは、思わなかった。一度目はまだしも、二度目は本当に無理だと諦めていたところもあった。けれど、命からがらなんとか……
ふと、体の様子を確認する。俺は、確か大きな怪我を負っていた筈だ。なのに血まみれではない。しかも、怪我をした部分には、丁寧に包帯が巻かれてある。
「これ、お前がやったのか?」
「……大変だったのよ。貴方を引きずりながらも、この城に連れてきて、看病までして。レディにあんな事させるなんて貴方、男として失格よ。」
「ああ、ありがとな。」
イリヤスフィールがなにか文句を言っているが、ここは素直に感謝しておこう。助けられたのは俺で、助けたのは彼女。それは、変わらないのだから。
「何がありがとうなのよ。私は貴方のせいで聖杯の力を失った。つまり、聖杯完成というアインツベルンの悲願を、貴方のわがままのせいで……」
「けど、ああするしかなかった。」
あのサーヴァントから逃げる際に、俺は転移魔術以外にも別の魔術を使っていた。イリヤスフィールの中にある聖杯を物質化するという魔術だ。そして、その聖杯を相手に明け渡した。
よって、俺たちが追われる理由が減った。しかし、ロクでもない事をする可能性は、高まる。間桐が何をするかは分からない。
けれども、やはり……
「俺は死にたくないし、死なせたくなかった。」
死地に向かう二人を止められなかった奴が言うセリフではないが、結局はそれしか理由を言えない。
死というものは感じたくも、見たくもないものだ。例え、その命が短いものであっても、先延ばしぐらいはしたい。
俺がそう言うと、彼女は呆れたのか、同情したのか、これ以上の文句を続ける様子は無かった。
「……なあ、ここはどこなんだ?」
「アインツベルン城よ。」
そうか、あの城なのか。通りで、既視感があるはずだ。
「俺が眠ってからどれくらい時間だった?」
「えっと、今が九時ぐらいだから、大体三時間ってところかしら。」
三時間か、案外短い時間だ。俺の体感だと、半日は寝ていた気がする。
そんな風に、俺が質問をしていると、途中でイリヤスフィールは、ある事を思い出す。
「そういえばだけど、ポケットの中で何か鳴っていたわよ。」
「ポケット?」
その中に、何が入っていただろうか。確か財布ぐらいしか……いや、他にもあった。
右手をふともも辺りに動かし、ポケットの中身を調べる。すると、何か硬いものが手に当たる。それを取り出して、見てみる。
「やっぱり。」
「それ、ケータイっていうものだったかしら。」
「ああ。」
俺が手に持ったのは、二つ折りの携帯だ。肩にかけるでかいものでも、画面が電卓みたいなものでもない。ましてや、タッチ操作などできない普通の携帯だ。
その携帯を開くと、画面に一件の不在着信が映し出される。誰かと思えば、叔父さんからだった。
なんだってあの人から来るんだ?今は聖杯戦争で忙しいのは知っているはずだ。……いや、まさかな。
そう思いながら、電話を掛けてみる。こんな森の奥だというのに圏外ではない事が不思議ではあるが。二回のコールが鳴った後、聞き覚えのある声が、スピーカーから出てくる。
「はい、こちら古崖
「叔父さん、それプライベートの携帯だろ?」
「あ、バレた?」
相も変わらず、おちゃらけた事を言うのは、やはり、俺の父さんの弟である創次叔父さんだった。
この人は古崖の当主であるというのに、あまりそれらしくない人だ。ちなみに、一子相伝である魔術師のはずが、何故兄弟そろって魔術師となっているのかといえば、
「それ前にも言ってたし。」
「まあまあ、別に良いじゃないか。」
良くない。
「さて、おふざけはここまでにして……ジアナちゃんから聞いたよ。戦いをやめたって。」
「……。」
その話題が持ち出された瞬間、俺は黙ってしまう。
まさかと思っていたことが、的中する。そうか、彼女が……。
「それで、何か言いたいことでも?」
「いいや。僕からはないよ。ただ、聞かせたい物がある。」
「聞かせたい物?」
一体、何を聞かせるつもりなのだろうか。
「今から再生するから、ちょっと待っててね。」
再生、つまりそれは録音された音声なのだろうか。……いや、ちょっと待てよ。もし俺が予想したことであればだが、あの人達が出てくるのではないのか?
「待ってくれ!ちょっとだけ時間を……」
「創太。」
俺が心の準備をしようとする前に、声が流れ始める。頼もしくて、懐かしくて、遠くて、そして俺にとって大きな存在である、父さんの声だ。
それを聞いた瞬間、頬に何かがつたう。
「もしものためにこの遺言を残しておく。」
父さんは第四次の時に、自分が死ぬのではないのかと直感していたのだろう。そうでなければ、こんな物を遺しておく必要がない。
「まず、言っておく。これをジアナではなく、お前の叔父である創次に渡した訳は、彼女に心配を掛けたくなかったからだ。」
心配を掛けたくない、か。
あの大災害が起こる前に、彼女を家に居させる為だろう。そうでないと、彼女が付いていくと意地を張ってしまう。
「さて、本題に入ろう。
お前がこの遺言を聞いているという事は、ある壁にぶち当たってしまった時だろう。そして、その壁は死に関連する事なのだろう。
父さんだけがそうなってしまったのか、あるいは母さんもなのかは分からない。けれども、もし死ぬことが怖くなって、前に進めないのであれば、父さんからある一つの言葉を送らせてもらう。
活きろ、と。
的外れな事を言っていたならば、すまん。だが、父さんにはそれぐらいしか思い浮かばなかったんだ。だから……」
「創助さん、それは?」
「ちょっ……シロナ!今、かっこいい事言ってんだから、邪魔しないでくれよ。」
「質問にぐらい答えてくれたっていいじゃない。」
「はぁ。これはな、テープレコーダーって言ってな、声を録音したり、再生したり……」
「そうなの?こんな小さいのに、そんなのができるなんて、まるで魔法みたい。」
「いやそこは、魔法じゃなくて魔術だし、しかもただの機械だし。
じゃなくて、今な、創太にメッセージを送ってるんだよ。だからな……」
「あら、創太なら二階にいるわよ?」
「違う、違う。未来の創太にだな……」
「そうなの?未来の創太ー、元気してるー?母さんは、元気してるー?
ジアナちゃんはどうかしらー?あの子ね、真面目だけど、抜けてる所あるから、創太が支えてあげてね。」
「いや、だから……とにかく、一旦部屋の外に出てくれ。後で説明するから。な?」
「分かったわ。あ、あと、今日の晩御飯は、カレーよ。楽しみにしててね。」
「ああ、楽しみにしておくよ。
……ふう、行ったか。まあ、なんだ。父さんの言いたい事は、だな。
創太にとって大切な物を死ぬ気で守らなきゃ、生きている事にはならないって事だ。
父さんの話は、ここまでだ。こんな当てずっぽうな説教で、創太の考えが変わるかどうかは分からないけど、これだけは言える。
我が息子、創太。あい……」
「愛してるわよ、創太!」
「さ、最後の最後に良いとこを!」
……音声は、ここまでのようで、後は何も聞こえなくなった。
「以上で遺言は終わりだ。確かに伝えたよ。
あと、僕からは何もないからね。蛇足っぽくなるし。今度話をする時は、戦争が終わった後にね。それじゃあ、切るよ。」
「ああ、また。」
叔父さんとの電話もそこで終わり、携帯からはツーツーという音しか聞こえなくなる。
全く、二人とも俺の記憶の中の二人と変わらない。なんていうか締まらないというか、カッコつけというか、マイペースというか。
「……覚悟は、できたのね。」
イリヤスフィールは、電話の内容を敢えて聞かず、別の質問をする。
「ああ。」
その質問に対し、肯定を俺は返す。
いつの間にか、俺の頬にあった涙は無くなっていた。それは、当たり前だ。泣く暇なんてない。俺は活きなければならない。生きるのではなく。
「……服は?」
「そこの机の上に置いてあるわ。」
答えを聞いてすぐに立ち上がり、丁寧に畳んである服を着る。
「怪我は大丈夫なの?」
「少しは痛む。けど、行かなきゃならないからな。これぐらいは我慢だ。」
それに、傷を治す魔術も覚えている。伊達に、あいつからいつもシゴかれてるわけじゃない。
「ありがとな、色々と。二人にもそう伝えてくれ。」
「えっ……?」
彼女は、鳩が豆鉄砲を食らってような顔をする。そりゃあ、隠していたのに、相手にバレていたら驚くだろうが、隣で聞き耳立ててる事ぐらい分かるんだよ。
「俺は行くぞ。お前はここに居た方が良い。んじゃあな!」
俺は返事を聞く間もなく、部屋をすぐさま飛び出て、廊下を走る。すれ違い様に誰かが見えた気もするけど、今は後回しだ。
時間は九時頃。森を抜けて街に着くまで、走って約一時間半。まだ戦いには、間に合うだろう。
走って走って、俺は走る。十年前のように。
あの時は、ただ願っていただけだった。けど、今は違う。
今の俺は守るために走るんだ。
願望ではない。行動のために走る。
あの二人が行く場所、それはもうわかりきっている。教会だ。キャスターも多分そこだ。
ギルガメッシュが寺に居るなら、必然的にキャスターは、別の拠点に移っているはず。その拠点は教会で、セイバーを取り戻すためにあの二人はそこに行っていると、予想を立てる。
走り続けて、一時間半。教会につく。
あれほど走ったが、まだ魔力には余裕がある。不思議なもんだ。城にいた時でさえ、あまり魔力は残っていなかったというのに。
着いてすぐに周りを見てみると、
「いた。」
あの二人と遠坂が一緒にいて、それに対峙するかのようにランサーが足止めをしているところを、発見する。
「悪いが、ここを通すなって命令でな。」
「……士郎君、凛、下がっていてください。ここは、私が。」
互いは槍を構える。しかし、それには天と地ほどの差がある。一方は魔槍で、もう一方は普通の槍。得物だけで言えば、明らかにランサーの方に利がある。
「ええ、分かったわ。ランサーに対抗できるのは、貴女しかいない。士郎、行く……」
「待ってくれ。」
しかし、何も持たない俺が三人の前に出る。
「創太⁉︎」
「創……太……?」
驚きを隠せない三人。
「ちょっと、創太。いきなり出てきてどういうつもり?言いたい事はほかにもあるけど、まず英霊であるランサーに戦いを挑むなんて、一体どういう秘策を持ってきたのかしら。」
「例によって極秘だ。」
「それ答えになってないわよ。」
なんとでも言え。悪いが、これは他の人から受け継いだものなんだ。おいそれと他人に見せられない。
「さて、俺は状況が分からない。敵である遠坂が、衛宮達となんでいるのかとかな。」
大方の予想はつく。アーチャーが側にいない事から、キャスターに盗られたのだろう。そして、仕方なくサーヴァントが不在同士の衛宮達と組んだ。
「けど、それは別にどうでもいい。重要なのは、俺にあいつを任せて、お前らは先に行ってほしいって事だけだ。」
「お前、本気か?」
「本気だ。」
衛宮の問いに、俺は力強く返す。
「それに、これは俺がやらなくちゃならない戦いなんだ。」
「……ジアナさん、遠坂、行こう。」
衛宮は、俺の意見に従ってくれるようだ。
「勝てるのね?」
「過信じゃない限りな。」
「なら、任せたわよ。」
遠坂もしかりだった。
「創太。」
そして、残りの一人は、不安や様々な感情を混じえながら、俺を見る。俺にとっても、彼女にとっても、二人の再開は気まずいものではある。罪悪感やら、不信感やら。けれどもだ。
「お互いに言いたい事はあるけど、また後だ。今は進むだけ。
そうだろ、
しかし、俺はそれを全て吹き飛ばすような言葉を言い放つ。
そしえ彼女は、泣きそうな顔を我慢しながら
「……はい。」
と答え、ランサーを横切り衛宮達と共に教会へと入っていく。
「坊主、面構えが変わったんじゃねえのか?」
三人も素通りさせたランサーは、悪気もなく平然と話をする。
「いいや、そんな事ないと思うけど。
それより良いのか?見逃しても。」
「お前と戦ってた事を口実にすりゃあ良い。
坊主こそ、俺と戦う覚悟は出来てんだろうな。」
「とっくにな。」
出来たから、ここに来ている。
俺は恐怖している。戦いの先に待つ死を。だが、それを乗り越えなければならない。だから、ランサーに戦いに挑んだ。
正直に言えば、戦う相手は誰でも良かった。けれども、彼が相手ならば文句は無い。
「英霊相手はキツイが、こちとら勝算があるからな。」
俺は構える。それは何の形にも当てはまらない、独自の構え。
「ほう、準備万端ってところか。
ならば、その取り損ねた心臓、今度こそ貰い受ける!」
そして、ランサーも槍を構える。右腕を引き、左手を切っ先よりも少し手前側に添える。
「俺は死ぬ気で戦い、そして活きる!」
ここに勝つためではなく、活き抜くための戦いが始まる。