話の流れはいよいよ最終決戦です。果たして、どちらが勝つのか。分かり切っているけど、分からないフリをする。
そろそろ次回作の構成を考えなければなりません。一話だけ投稿しておいて、そのまんまの小説があったり、全く別の小説があったり。
オリジナルも良いかもしれませんね。
森でギルガメッシュからの襲撃を受けた俺たちは、なんとか逃れられ衛宮の家までたどり着いた。周りは夕焼けに染まり、カラスの鳴く声が聞こえる。もう夕方時なのだろう。
アーチャーはいつの間にかいなくなっていた。体を現界させる魔力がもう無いのだから、どちらにしてもあの状況から再契約は無理だ。
さて、散々捕らえられていたのだから、そろそろ俺が思っている事を言おう。
「腹ぁ……減った……食いもんを……。」
腹の虫を鳴らしながら、痩せ細った顔で懇願する。
「アンタ、急に気を緩める事を言うわね。」
遠坂は呆れながら言う
「仕方ないだろ。十二時間何も食ってない後に、力を全て使い果たしたんだぞ。」
「そのくせ、すぐに起き上がってなかった?」
「……慣れだ。」
それは、本当に慣れとしか言いようがない。あの地獄の特訓を受ければ、嫌でもそうなる。
「うーむ、そうだな。晩飯の時間も近いし、みんなの分も一緒に作るか。そうなると、冷蔵庫に何があったか……。」
「あ、士郎くん。私、お手伝いさせてもらいます。」
「すみません、ジアナさん。じゃあ、今日の晩御飯は……」
「それなら副菜は……」
二人が晩飯の献立について意見を出し合う。
これは晩飯が楽しみだ。
というのが、二時間前の出来事。
「ぷはぁー!食った食った!」
「普段の二倍は食べてましたね。」
皿に盛られた料理は今や全て無くなっていた。
ちなみにジアナが普段の二倍と言っていたが、割合でいうと出された料理の一割しか食べていない。更には俺の三倍の量を食べていた奴がいたのだ。
それは、誰かといえば……
「……?創太、私の顔に何かついていますか?」
「なんもないけど、セイバー。」
大食い騎士王さんである。
まあ、もう一人いるけど。
「そこ、静粛に!」
ビシッとこの場を仕切ろうとする、遠坂。
晩飯の後は、早速作戦会議らしい。
というか、いつの間にこいつは一緒に戦う前提になってんだ?まあ、いいか。
「次の戦いは最終決戦よ。ここで勝たなきゃ今までやってきた事は無意味になるわ。だから、気を引き締めて。」
最終決戦。その言葉だけでも、空気が緊張の糸で張り詰められる。
もちろんイリヤスフィール以外は全員参加だ。そんな事言うまでもない。
「今回の議題は、あの金ピカよ。」
金ピカ?
「金ピカ……って、遠坂。まさか、ギルガメッシュの事か?」
「……?ええ、それ以外に誰がいるのよ?」
「いや、いないけどさ。あいつが金ピカになったところって、遠坂見たことあったか?」
そう、そうなのだ。
衛宮の言う通り遠坂は、ギルガメッシュがライダースーツを着ているところ以外見たことないはずなのだ。なのに、何故そんな金ピカなんていうあだ名をつけられるのか。
「ないわ。ただ、そんな風に思っただけ。」
その言葉を聞いた瞬間、この場にいる遠坂以外の全員がこう思っただろう。
それだけで、金ピカって言えるのかよ!
この遠坂凛と言う人間は、直感スキルでも持っているのであろうか。
「話を戻すわ。あいつは柳洞寺にいる。今回の聖杯の降霊場所はあそこしかないって前々から睨んでた。そこに飛ばしてた使い魔もついさっき潰されたし、十中八九そこにいるでしょうね。」
「場所を先に確保すれば、聖杯の器であるイリヤスフィールはそこに向かわざるを得ない、と言う事でしょうか。」
遠坂の説明に、ジアナが付け加える。
「ええ、そうね。でも逆に言えば、時はこっちが選べる。今すぐは、士郎も創太も疲れているだろうから、無理だし。あっちから出向かない限りは、明日までには……」
「残念だが、時間は残されてない。」
俺は遠坂が提示した選択肢をバッサリ切り捨てる。
「実はな、一度この家にギルガメッシュが来たんだ。運が悪いことに、イリヤスフィールが居る時にな。いや、それを狙って来たんだろうが……。
とにかく、その時に逃げるために聖杯の力を置いていった。そうすれば、追ってくる理由も少なくなると思ってな。」
「つまり、聖杯はもう敵の手にある、と?」
セイバーの問いに、俺は深く頷く。
「仕様がなかった、とは言わない。もっと他に方法があったかもしれない。だから、ここで謝らせてくれ。
聖杯を明け渡した事、本当にすまなかった。」
深々と頭を床に擦り付けるまで下げる。
「謝るのはまだ早いわよ。そんなの、負けてから言うことよ。今は顔を上げて良い案を出してちょうだい。」
「……ああ、分かった。」
そうだ。遠坂の言う通り、こんな罪悪感を拭う行動をするよりは、現状を改善するべきだった。我ながらなんて無駄な事をしていたのだろうか。
……ただ、遠坂が聖杯の力を置いて行くなんてどうのこうのと言っている気掛かりなんだが、ま、いいか。
「話を逸らして、悪かったな。遠坂、ギルガメッシュの事については?」
「全ての宝具の原典を所持していて、それをいつでも自由に取り出せる倉庫も持ち歩いている。だから、どんなサーヴァントであれ勝つことは不可能。今分かっているのは、こんな所。
で良かったかしら、ジアナ?」
「はい。更には、こちらがどんな策を持ち込もうと、彼はそれ以上の千里眼と力でねじ伏せます。
凛のバックアップを受けたセイバーならば、あるいは。ですが確実ではありません。」
遠坂と契約したセイバーでも勝てないのか。
「他に方法はあるのか?」
ダメ元ではあるが、ジアナに対抗策があるか訊いてみる。
「あるにはあります。しかし、それ単体であれば対抗はできません。」
「単体は無理……セイバー、お前の宝具はあと何回打てそうだ?」
マスターがポンコツの衛宮から優秀な遠坂に移ったんだ。流石に一回があるかないか、ではないだろう。
「二回はなんとか。しかし、二回目を打てば、私は魔力切れで消えてしまいます。」
二回目は本当の最終手段か。ジアナの言う対抗策と組み合わせるには心もとない。
「今の手札では、流石に厳しいか。」
「なら、ギルガメッシュにはまずセイバーが相手をしてもらう。勝つんじゃなくて、時間稼ぎなら大丈夫のはずよ。」
「他の四人は聖杯を担当か。」
それもそれで不安が少し残る。
「なあ、ギルガメッシュはそれで良いとして、聖杯自体はどうなるんだ?あれって確か、器がないといけないんじゃないか?」
衛宮は思いついたように問いを投げかける。
「本来ならイリヤスフィールが器だけれど、聖杯の力は取り出されている。けど器自体は、魔術師なら誰でも良いはずよ。」
この街に魔術師はそう多くはない。ましてや、そのほとんどがここに集結している。残っているのは……
「まさか、あいつが。」
「そのまさかよ。慎二の他にはいないわ。」
「けど、慎二は魔術師じゃないだろ。間桐の血筋は衰えていったって。」
たしかにあいつは魔術を使えない。けれどもだ、衛宮。
「でも、魔術回路はある。閉じていても聖杯を入れられれば、無理矢理にでも開かれだろうな。そうなれば、不完全だとしても聖杯は完成され、どんなものになるかは想像もつかない。」
果たして、そんなことをされて慎二の体は持つんだろうか。いや、生きたまま地獄を味合わされるのだろうか。想像しただけでも、身震いがする。
「それに、あれは
「イリヤスフィール、今何がどういうものだって———!」
今まで一言も喋らなかったイリヤスフィールが、衝撃の真実を明かす。
「だから、聖杯は歪んでいるって言ったのよ。
「ゾロアスター教の悪魔がなんで聖杯に関わってるのよ。」
「アンリマユは名前だけよ。正体はただの一般人。けど、それによって聖杯が別の物に染められたのは確かよ。」
そこからは、イリヤスフィールの説明が続いた。あれが殺戮しか生み出さない物に化したとか、所有者の願望を捻じ曲げて捉えてしまうとか。
とにかく、ヤバイものらしい。
「つまり、誰が何を願っても人を殺す以外は何もしないと?」
「ええ。十年前の大災害もそれが原因ね。」
こうなってくると、今回の聖杯がどんなものになるのか、想像すらできなくなってきた。不完全で悪に歪んだ聖杯か。
「となると、慎二を助けながらも聖杯を破壊するのは、相当な労力がいるわね。セイバーはギルガメッシュと戦ってもらわなきゃだし。」
皆が頭を抱え込む。
あのワカメを助けるのは、決定事項なのか。まあ、反対はしない。そもそも俺も助ける気だったし。
「じゃあセイバーは正門からしか入れないからそうしてもらうとして、残りの私たちは横から塀を越えて、直接聖杯に行くしかないわね。」
「しかし、聖杯はどうするのですか?慎二君を助け出せたとしても、聖杯を破壊しなくては意味がありませんし、私たちだけでなんとか出来るようなものでもないでしょう。」
呪いの願望機を破壊するなんてのは、対城宝具を使わないと無理だろう。それには魔力が必要だ。遠坂はセイバーの分を持ってもらわないといけない。衛宮は心細いし、俺とジアナを合わせても……
「なあ、一つ言っていいか。」
八方塞がりになりそうな所に、衛宮が意見を出す。
「これはあくまでも勘だが、セイバーじゃギルガメッシュを倒せないと思うんだ。」
それが事実ならば、俺たちを絶望の底に落としかねない言葉だ。
セイバーは何も言わず、ただジッと衛宮の話を聞く。彼女も薄々気づいていたのだろうか。
「あいつの力は"個"としてじゃなくて、"数"として強いんだ。兵士ではなく、軍隊としての強さ。更には、宝具の原典となるものを全て保持している。だから、ギルガメッシュにはサーヴァントである限り勝てない。」
はっきりと、セイバーをギルガメッシュと戦わせるのは無謀だと言い切る
「……それで?他に良い案はあるのか。」
だからと言って、作戦を変える理由にはならない。勝てなくとも、時間稼ぎにはなる。その間に聖杯を壊せば勝ちだ。
衛宮は俺の質問に対して、どの答えを出すかを迷い、そして決めた。
「俺がやる。」
出た。またこれだ。
いつも、いつも自身を顧みずに無責任なことを言い出す。
「アーチャーの使った魔術を使えば、俺でもギルガメッシュと対抗できる。いや、その魔術だからこそあいつに有効なんだ。」
けど、今回は違った。
しっかりとした理由があり、自分を知り、相手を把握し、相性を考えた作戦だった。
「でも、あんな魔術使えるの?士郎の魔力量じゃ無理よ。そこの二人みたいに、簡単に魔力譲歩をできるっていうなら、別の話だけど。」
「それならば、以前に士郎君とセイバーに施した
「いいや、ダメだ。」
俺は、ジアナの提案を却下する。
「お前の負担が多すぎる。わざわざお前の魔力を衛宮に魔力に合わせて変換しなきゃならない。それをずっとはさせられない。
それに、ジアナには他の事をやってもらう。」
「なら、創太が士郎の魔力タンクになるっていうの?」
「いいや。それよりももっと良い方法がある。それはだな……」
ーーーーー
場所は変わって、衛宮の自室。畳と障子に囲まれ、俺の現代風な部屋とは全く別物だ。特に変わった物があるわけではなく、強いて言えば机があるくらい。
この部屋には今、衛宮と俺の二人しかいない。
「創太、一体何をするつもりだ?」
「だから、さっき言ったろ。お前の体をちょいと弄るだけだ。」
言っておくが、ナニをドウするなんていう展開には絶対にならない。そんな腐った事になってしまえば、俺は自殺するね。いち早く、即座に、その様子を見たやつらも巻き添えにして。
「それだけじゃ、分かるわけないだろ。」
「はいはい。だったら、一から説明してやる。
まず、今のお前には魔力も技術も足りない。そんな奴があんな固有結界を使えるはずがない。」
俺は使えたけど、あれは例外だ。基盤は相手に任せているだけで、自分はちょっと手を加えただけだ。
「もし魔力だけ与えても、俺にそこまで魔力量があるわけでもないから、すぐにそれは尽きる。
そこでだ。古崖の十八番である力の魔術をお前に伝授する。」
「今からか?そんな急に新しい魔術を覚えろって言われても。」
伝授ってのは語弊がある言い方だったかな。少し格好つけすぎたかもしれん。
「悪い悪い。埋め込むって言った方が良かったかもしれないな。古崖の魔術ってのは、力をより効率良く扱うってのも入ってる。その魔術陣を俺の魔力を使ってお前の体に埋め込む。」
「けど、それって上手く行くのか?セイバーの時は、他人の魔力を取り込む事は通常では無理とか言って、俺自身の魔力を動かした筈だよな?」
「そうだ。けどお前ならば、いや俺とお前ならば、上手くできる。」
衛宮は首をかしげる。俺の言った意味がよく分からないという様子だ。
「俺とジアナが、お前とセイバーとのパスを繋げる時があっただろ?あの時に違和感を感じたんだ。まるで、
「そうだったのか。
……となると、俺の体はキャスターの言う通り、魔術に対して全く抵抗が無いことになるのか。」
俺の言葉に対して肩を落としてしまう。どうやら、自身の未熟さに対して、落ち込んでいるのだろう。
だが、それに関しては訂正させてもらおう。
「いや、俺が言っているのは衛宮は俺に対して心から信頼しているということだ。
普通はどんなに親しい相手に身を任せようとしても、どこか疑っている部分がある。だから、他人に魔術を使われる時は抵抗してしまうんだ。けれども、お前に対してはそれが無い。」
俺とジアナを例にすれば、魔力補給ならまだしも、他の魔術は若干の隔たりが感じられる。
これは、普通の人ならば正常な事。外部からの侵入に対して、どうしても抵抗するのは人間の本能だ。
「言っとくけど、お前が俺に強化をしようとしてもそんな風にはならないからな。お前が異例なんだ。
とにかく、それを利用して、俺の魔力を衛宮の体に送り込み、魔術陣を作る。」
話を少し強引に進め、戦いの準備をしようとする。
衛宮が何故異例になったのか、なんてのを説明している暇はないし、そもそも俺が考えているのは推測だ。その推測というのは、十年前だ。あれが原因だと俺は予想している。
俺に対してだと、同じ現象が起きない理由はそもそも俺とこいつでは境遇が似ているようで違う。全てを失った者と、一部を失った者。何も残っていないあいつと、少しは残されているけれど、亡くなった人が浮き彫りに出る俺とでは、心境が違いすぎる。
「……分かった。なら、俺は何をすれば良いんだ?」
「背中をこっちに向けてくれ。後は以前のように抵抗せず、リラックスしてくれ。」
衛宮は俺の言う通りに背中を向ける。
「これでいいか?」
「ああ、十分だ。」
背に手の平を当て、集中する。
前と似ているようで、全く違う状況。ジアナのサポートはないし、やる事は違う。衛宮の魔力を外から動かすのではなく、俺の魔力を送り、遠隔操作で陣を作る。
以前のように、衛宮の魔力を使えれば良かったのだが、あいにく俺の力の魔力でしかこの陣は書けない。他の、ましてや衛宮の剣に特化した魔力では相性が悪すぎる。
「行くぞ……
その一言で世界が変わる。
感覚が外ではなく、内に向けられる。
腕を伝い、衛宮の中に入っていく。
一つ一つ、丁寧に。
魔力という媒介を使い、体の中に創り上げていく。
効率良く魔力を創り上げ、効率良く
その途中、ノイズが走る。見たことがあるような光景が目に移る。
誰かの声が聞こえる。
生きろ、生きろと。
それは懇願ではなく、脅迫に近かった。
自分は死んだのだから、お前は生きなけれならない、と。
一分か、十分か、それとも一時間か。
一瞬なのか、永遠なのか。
時間の感覚が分からない。
けれども、俺はいつのまにか目を開けていた。
儀式は……完了した。
「……ふぅ、終わった。気分はどうだ?」
緊張の糸が解かれる。
儀式の最中に何か覗き見た気がする。それは
「んー、変わらない……いや、少し体が軽くなった気がする。」
「だったら成功だ。次第に馴染んでいくと思うから、ギルガメッシュと戦う時はかなり体の調子が良くなっている筈だ。」
今はまだ、陣が衛宮の魔力に合わせようとしている段階だ。本調子になれば、固有結界だって発動できる……と思う。
「本来なら二時間しか効果が続かないが、お前の場合一日は保つだろう。もしかしたら三日かもしれないけれど、それ以上は流石に無理だと思ってくれ。」
「いいや、あいつと戦う時だけで十分だ。」
「まあ、そうだろな。
そうそう、お前に渡しておく物がある。」
右のポケットに手を突っ込み、あるものを取り出す。それは赤い宝石だった。
「それ、遠坂のじゃないか。」
「ああ。それも一番デカイらしいぞ。」
なんでも親の形見だとか。
譲ってくれと頼んだ時は拒否されたが、二週間前ぐらいにアーチャーがセイバーに襲われた時、俺が助けてやった事を理由に譲ってもらった。
今更だとは思っていたけど、案外すんなりと通った。
「なんでそんな物を。」
「これ、アーチャーも持ってたんだ。」
「アーチャーも?けど、あいつ……そうか。」
察したか。
「どうやら、これが媒介で呼び出されたみたいだ。だからじゃないけど、これはお前が持ってた方がいい。」
遠坂もアーチャーが同じ物を持っていた事を知っていたようだ。
さっき、あいつは拒否したと言ったが、それは衛宮がアーチャーと同じ道を辿るのではないか、と危惧もしたらしい。けど、俺が助けてやった事を言った後に、もしそうなったとしても今回みたいに答えは得られるだろうと説得したのだ。
「最終手段ぐらいは持ってた方が良いだろ?」
「……ああ、ありがたく受け取るよ。」
俺から宝石を受け取った衛宮は、それをポケットに入れる。
さあ、準備は整った。あとは乗り込むだけだ。