今回は短めッス。すんません。
以上ッス
その戦いは宣言通りの結果に終わった。
一撃。
たった一撃で、綺礼は壁に沈む。
当然と言えば当然であった。英霊を相手に短時間だけだとしても圧倒するその力を持ってすれば、どれだけ強くとも人の身の領域を超えていない者が相手であるなら、一瞬で勝負は着く。
「息は……まだある、か。」
創太は神父の手首に指を当て、生死の確認をする。息はあると言ったものの、意識は無い。本来ならば死んでいてもおかしくない一撃を喰らっておきながら、その程度で済んだのは幸か不幸か。
「そいつに甘さを残さない方が良いわ。死んでも死に切れない奴だから。」
自身の師を殺せ。淡白とした声で凛ははっきりと言う。いや、もう既に彼女にとっては殺すべき敵なのだろう。
「どうせ、こいつは聖杯が無くなったら死ぬ。放っておいても、結果は変わらない。」
「どういう意味よ。」
「俺もさっき知った。言峰の体を調べたら聖杯と繋がっていた。どっちにしろ、俺は殺す気はない。」
創太の注意は完全に綺礼から無くなっていた。その目に映るは聖杯のみ。
「さっさと行くぞ。聖杯を壊せば全て終わりだ。」
「ええ。そうね……」
凛は綺礼を気にしながらも、創太の後をついて行く。
「あ、そうそう。ちょいと手を貸せ。」
「……?何かしら急に。」
疑問に思いながらも彼女は創太の言葉に従い、手の平を見せるように差し出す。
「ほいこれ。宝石の分はこれで返したからな。」
創太が凛に渡した物、それは刻印の入った石だった。
「ちょっと、訳の分からないモノを渡さないでよ。」
「前にも俺が使ってただろ?魔力要らずで、いつでも魔術を発動できる道具だ。それには転移の魔術が入っている。事前に場所を登録しておけば、そこへ瞬間移動できる。対象は二人がギリギリだ。
あとは……分かるな?」
その石は保険であった。凛が慎二を助け出す時にどうしても魔力が足りなくなった時の為の物。また、ほんの僅かな可能性だが、失敗した時の為でもある。
「ええ、ありがとう。できれば、使わずに済んでほしいけどね。」
「それが一番良い。
さ、行くぞ。いつあれが起動するか分からないんだからな。」
二人は塀を登り、それぞれの場所に着く。最後の戦いを始めるために。
=====
創太と綺礼の戦いに対して、こちらは一筋縄ではいかなかった。
門前でのアサシンとジアナの戦いは、ほぼ互角だった。数ではジアナが上ではあるものの、アサシンの技によって防がれる。何百という読み合いを続けながらも、戦いは衰えを知らなかった。
「なんともまあ激しい聖女だ。神に仕える身にしては、少し茶目っ気がありすぎではないか?」
「意味のない挑発はしない方が良いですよ……!」
アサシンの余裕のある喋りは、撃ち合いの中で幾度となく行われる。
下から攻める彼女にとって、段上のアサシンを相手にするのは不利であった。強度を重点としたその剣を多少力任せながらも、相手の剣撃の比較的弱い部分を的確に入れてはいるものの、斬る事に特化した刀を巧く使い力をいなすその技と、高低差の有利を得ているアサシンには今一歩届かない。
これでは同じことの繰り返し。であれば、打開策は必須。
「たああっ!」
ジアナは自身の剣をアサシンの刀に当て、逸らされる前に押し込む。
「むっ!」
もちろんそれだけでは、身を翻されて受け流される。さらには、背中にカウンターを貰うというオマケまでついてくるだろう。そうなる前に、彼女はアサシンの動きを読み、重心が動く方向を見極め、刀に当てていた剣をその方向に力を入れ、吹っ飛ばす。
「条件が五分になりましたね。」
よって、二人は並ぶ。
道を塞いでいたアサシンを横に移動させれば、ジアナは上へと登れる。しかし、彼女はあくまでも彼より高い位置に陣取らなかった。下手に登れば、アサシンがセイバーに襲うかもしれないからだ。セイバーに無駄な消費はされられない。
「確かに。だが、それだけで勝てるとでも。」
「もちろん思ってませんよ。」
互いに睨み合い、牽制し合う。アサシンはゆっくりと階段を下り、ジアナもそれに続く。踊り場まで下りた時、二人は止まる。足場が平らで安定した場所。
「しかし先程の戦いは、私が地の利を僅かながら得ていたにも関わらず互角であった。その差を無くせばそなたが勝つやもしれん。」
侍は背を向けながらも、相手を捉えるような構えを見せる。刀の柄を頭の横まで引き、刃を天に向ける。
それは、佐々木小次郎の秘技を名乗った技。アサシンは宝具を放とうとしている。
「これが無ければの話だがな。」
言葉に絶対の自信を混ぜながら、確信の笑みを浮かべる。
「あまりそれに固執しすぎると、痛い目にあいますよ。」
「忠告はありがたいが、なにぶんこれしか無いものでな。」
ジアナは剣を中段に構え、アサシンの必殺に対抗しえる物を準備する。
「……
魔力を変化させる特異な魔術。変化先の性質は時間。ありとあらゆる物に影響し、変化をもたらせる物。思いのままに操れればとてつもない強さを得られるが、その分修得する難易度も極めて高い。
「行くぞ……!」
アサシンが一歩踏み込むと、周りの空間が歪み出す。刃先が三つにブレて、次第にそれは大きくなる。
多重次元屈折現象、今起きている事はそれに近い。
三人のアサシンが別々の方向から斬りかかる。回避は不可能。防御するにしても三つ同時などできるはずもなかった。
「秘剣・燕返し!」
まさに必殺。これを出されればタダでは済まない。相手が普通の人間であればの話だが。
「
ジアナの動きが一段と疾くなる。単にスピードを上げたのではない。自身の時間を速くしているのだ。
本来、その魔術は衛宮の性を持つ者が到達した魔術。衛宮切嗣も使っていたそれを、ジアナは見よう見真似で魔術を行使する。
「ふっ!」
周りの時間を置き去りにするような動きで、まずは一つ目の剣撃を落とし、神速の如き切り返しで、二つ目の剣撃を落とす。
連撃であるはずのその攻撃は、ほぼ同時に近い。アサシンの魔剣に負けずも劣らない。一見そう思われるが、違った。
残り一つの斬撃。それはジアナにとって遠いものだった。二連続ならまだしも、三つ目はどうあがいても防げない。ほぼ同時とは言え、切り返しには僅かに時間が掛かる。仮に叩き落としても、
だからこそ、最初から三つ目は避ける事にしていた。
「っ……!」
アサシンは驚きながらも見惚れてしまう。空を舞うその蝶を。
彼の斬撃は二つを叩き落とされ、残り一つになっていた。であれば避ける合間は生まれる。その隙間を彼女は通っただけ。
簡単に聞こえるが、実際は攻撃から回避に素早く移る事は簡単ではない。体にかかる力を無駄無く動かすのは相当な技術が必要だ。
「これで——斬る!」
遅れて出てきた三つ目の斬撃。それはアサシンの体を容易く斬る。
本来ならば、時間操作という事を行えば抑止力により身体に負担が掛かる。しかし、彼女には問題なかった。彼女自身が抑止力の一端なのだから。
「……行け。」
体を斬られようと彼は立つ。直立不動で余計な声など出さずに。しかし、負けを認める。
「はい。」
彼女達も余計な事は言わずにただ階段を上がる。まだ目的は果たされていない。聖杯の破壊という、すべき事はまだ残っている。
「同じ三度の撃ち合いだというのに負けるとはな。」
ついには誰もいなくなった門前で、彼は月を眺めながらぼやく。
「聖女……いや、ジアナ・ドラナリク。貴殿は無名などではなく、現代を生きる立派な戦士よ。」
侍は光と泡となり消えて行く。魂を聖杯の中身へとそそぐ為に。
実はボツ案があったりなかったり