お久し、眠い……。流石にもうそろそろ投稿しなきゃ失踪したって思われそうと思って書ききろうとしたら、徹夜で眠いです。別に、サッカーの試合観てたわけじゃないんだからね!
誤字ってたらすんまんせん。というか、いつも誤字ってますけど。
次回、エピローグ(嘘)
月明かりが照らす血塗れの境内。その中には死体のような何かと、仁王立ちしたギルガメッシュ。災厄が去ったその場所は瓦礫が積まれ、勝者だけが残っているかのように見えた。しかし、その他に戦う意思を持つ者が二人いた。
「我の一撃を防ぐ愚者が誰かと思えば貴様か、セイバー!」
全てを薙ぎ払うような災厄を起こした英雄王は嬉々とした表情で、自身の宝具を受け止めた人物を見据える。
その人物、セイバーは士郎の前で聖剣を振り下ろしている。つまり、残り二回しか出せない宝具を使用したという事。士郎を守るためだけに。
「雑種では物足りんと思っていたところだ。加減したとは言え、我の宝具を受け、そして耐えた。
やはり貴様の方がよっぽど楽しめる。そこにくたばっている奴らよりはな。」
敵はセイバーだけを見続ける。
死体には、創太とジアナにはもう興味がない。今は目の前にいる女だけが重要だと、そう言いたげな顔で。
「っ……!」
その言動に怒りを爆発させようとする士郎。しかし、
「待ってください、シロウ。」
セイバーが静止を掛ける。
「彼らはまだ生きています。無闇に動いて二人を巻き込んではなりません。」
「……ああ、分かってる。悪い、少し動揺しすぎた。」
自身の冷静さを欠いた行動を自覚した士郎は、一つ大きく深呼吸をする。
「セイバー、行ってくれ。」
「なっ……!シロウ!
——いいえ。元からそう決めていましたね。」
セイバーの役割、それは聖杯の破壊以外にもう一つあった。一度だけ士郎を死の淵から救う事だ。だから、今の今まで彼女は姿を現さずにいた。
けれども、ギルガメッシュと戦う事は彼女の役割に含まれていない。
「ああ、あいつは俺が相手する。」
セイバーは己が元主の覚悟を確認した後、
「ご武運を。」
と一言添え、英雄王の横を通りすぎる。
「正気か貴様?ただ一つの勝機を逃すとはな。」
英雄王は再び門を開く。
「さっさと終わらせてやろう、雑種。」
「構成材質、解明——」
そして、士郎もギルガメッシュが繰り出す宝具を解析し始める。しかし、それだけではやはり敵を倒しきれない事は理解していた。どれだけ全力を出そうと、効率良く剣を複製しようと、彼の無数にある財宝には届かない。
せめて、せめてアーチャーのような固有結界が作れれば。
そんなただの理想論を、彼は思い描いてしまう。
「
それでも、死なない程度には武器を用意する事は出来る。
「——憑依経験、共感完了。」
だから、今は出来る事だけをするのみ。
「——
時間稼ぎくらいは、
「——
そんな幻想は、
「なっ!」
打ち砕かれてしまう。
士郎の作る投影品は、次々と真作に打ち破られていく。互いに触れ、そしてオリジナルだけが残る。彼にさえ理由は分からなかった。しかし、それだけでは止まらず、死の雨は彼に襲う。
投影に全神経を集中していた士郎に避ける余裕などなく、故に死を待つのみ。かつて創太が幾度となく味わった時間、それを彼は共有してしまう。
まだだ、まだだ。けれども、足りない。
何かを掴もうとするが、今のままでは決して掴めないと自覚する。
士郎の中で二つの思考が渦巻いていく。
もう、彼の命は終わるにも関わらず。
「——心を……形に……!」
ある一人の男がいなければの話だが。
「
詠唱が唱えられたと同時に、士郎を守るように藍色の液体が現れ、ギルガメッシュの宝具を次々と飲み込んでいく。よって彼の死は免れる。
一体誰がそんなことをしたのか。その答えは簡単だった。
「創太……!」
士郎の視線の先には、血塗れながらも手を伸ばした創太がいた。そう、士郎を助けたのは彼だ。
魔力を振り絞り、魔方陣も、上塗りする固有結界も無いはずであるのに限定的な固有結界を発動したのだ。
「………い……な。」
聞こえるか聞こえないか分からないほどのかすかな声を、創太は口からこぼす。当然、士郎にもギルガメッシュにも声はほとんど聞こえない。
「とう……こ……わる……」
「え——?」
今度は僅かにだが、その声が衛宮の耳に届いた。それでも言葉は明確に伝わってはいなかった。
「っ……投影に、こだわるな……!」
次ははっきりと、ここにいる誰もが、創太の怒声のような声を聞いた。
しかし、内容は分からなかった。士郎は自身の本領が投影だと、それしかない思っている。けれども、創太の言うその本領にこだわるなという事には理解できなかった。
「耳につく煩い
「っ……!」
ギルガメッシュがうっとおしいハエを見るかのような目で創太を睨みつけると、門から朱い槍が翔ぶ。ランサーが使っていたあの『ゲイボルク』。しかし、狙いは創太ではなく、未だに意識を失っているジアナであった。
それに気づいたと同時に、創太は走る。ボロボロになり、傷も少なくなく、魔力も底を尽きた体であったとしても。彼女を助けるために。そして、
「あがっ……!」
間に合った。ジアナの体に呪いの朱槍が突き刺さる事は無かった。だが、代わりに創太の背中へとそれが突き刺さる。治癒など効かない呪いの傷を刻まれてしまう。
「ふん。道化なぞ庇わなければ、痛手を負うことはなかったろうに。親子共々、つくづくその阿保具合には呆れるわ。」
「てめぇ——!」
そう仕向けたのはギルガメッシュ自身だ。であるのに、薄笑いを浮かべながら見下すようなその顔は、ただ愉悦を感じているだけだ。
士郎は親友を馬鹿にするような言動に怒りを覚える。けれども、心のどこかでは落ち着けと気持ちを抑えようとする。
しかし、体は怒りの激流によって動いていく。あいつを倒せ、あいつを斃せ、と。
その体を唯一止めるものがあった。
「衛宮!」
背中に槍が刺さろうとも、まだ大声で叫ぶ創太だ。
「アーチャーみたいな……固有結界を作るな!
お前の剣は……心は……お前の中に……あ……る。」
それでも、彼の意識はギリギリであったのか、言いたいだけの事を言って、気を失ってしまう。
「心は……俺の中に……。そうか、そうだよな。」
しかし、彼の考えは士郎に伝わった。
先ほどの怒りはどこかへと忘れ去られ、士郎の心は冷静になっていく。
「何を勘違いしてたんだ。俺の本領は剣を作ることじゃない。」
ようやく彼は気付く。自身の真の才能に。
「そんな複雑な事、俺には出来ない。
俺に出来る事、それは
心を形にする事だったんだ。」
最初に彼は、アーチャーが使う固有結界を作ろうとしていた。しかし、そんな事は不可能。なぜなら士郎とアーチャーは
固有結界とはつまり心象世界、始めから自分の中にある物。創太もそうであった。今思えば、彼は心を形にと何度も言っていた。それに何故気づかなかったのかと、自分自身に呆れる。
「——
以前目にしたアーチャーのように手を胸に添え、詠唱していく。しかし、それとは違っていた。士郎の口にした言葉には彼のように悲壮感はなく、どこか前向きな雰囲気があった。
「ただで好き勝手できると思うなよ、雑種!」
けれども、英雄王の数十数百という宝具によって、結界の展開が邪魔されようとしてる。
「——
対して士郎は、詠唱しながらもその宝具の投影品を作り出す。しかも、今までよりも速く、一瞬で、まるで敵が財の中から取り出したと同時だと思われるほど。
「っ……!小癪な!」
射出した武器を全て撃ち落とされたギルガメッシュは、ある二本の宝具を取り出す。数ある財から厳選されたそれは、『蜻蛉切』と『ヴァジュランダ』。エクスカリバーのような神造兵器ではないものの、数ある一級品である事は間違いない。
『蜻蛉切』は、とんぼがその刃に触れただけで真っ二つになり、その切れ味の良さから付けられた槍。そして、『ヴァジュランダ』は別名雷の牙とも呼ばれ、その一振りで雷を起こし、さらには神をも殺した剣だ。
その二本が士郎へと翔ぶ。士郎にとってそれは構造を把握し、投影するまでの時間がかかりすぎる一流の物。出来たとしても、やっとのことでそんな無駄な魔力を使えなかった。
「——
だからこそ、その二本は『干渉・莫耶』で十分であった。
士郎は双剣を手に持ち、飛んでくる宝具をいなす。
例えどれだけの逸話があり、恐ろしい能力を持つ宝具だとしても、担い手がいなければ、何の変哲もない武器には変わりない。
「
「おのれーッ‼︎」
ギルガメッシュの怒りは次第に大きくなっていく。次々と自分の真作が模造品に敗れていくことが気に食わなかった。
だから、今度は厳選した宝具を何十にも展開する。敵を倒すべく。
その一方で周りにも変化があった。正確に言えば士郎の周りだ。地面に火が燃え上がり、士郎を囲む。これはアーチャーが固有結界を発動する前兆と全く同じだ。
「——
今までとは段違いの質を持った宝具が翔ぶ。
「
しかし、士郎は花びらの盾で防ぐ。
「——
詠唱は最後の詰めに入る。
彼の心象世界の真名。
それが今、解放される——!
「“
世界が豹変する。
炎が走り、地面は焼け、空も焼かれ、剣が無数に存在する世界が広がる。
アーチャーと似て非なるそれは、まだ機械的なものでは無い。暁の中で生まれたそれは始まりを意味するかのよう。
同時に、彼の中にある魔術回路が全て開かれる。限界だと思っていた筈の壁が取り除かれ、全ての力が解放される。
「固有結界……!それが貴様の能力か!」
「驚く事はない。これは全て偽物だ。
お前の言う取るに足らない存在だ。」
この世界の担い手が片腕を広げる。すると、呼応するかのように無数の剣は抜かれ、宙に浮く。
「だがな、偽物が本当に敵わない、なんて道理はない。
お前が本物ならば、俺は悉く凌駕して、その存在を叩き落とそう。」
一歩、前に出る。
彼に眼に移るは、千の財を保持しサーヴァント。
「行くぞ、英雄王——武器の貯蔵は十分か。」
それに対抗しうる奥の手が、今ここに現界する。
「は——思い上がったな、雑種!」
敵は門を開き、無数の宝具を展開する。
士郎は駆ける。その手に、贋作を手繰り寄せながら。
二つの剣群がぶつかる。力は互角。互いに同一の武具を射出し、破壊しあう。そして、二人の縮まったその時、
「——っ!」
戦いは遠距離の撃ち合いから、近距離の斬り合いになる。
するとどうだろう。
これは、創太のように身体能力を極限にまで上昇させたからではなく、相性からくる結果だ。
ギルガメッシュの
さらに、士郎は宝具の持ち主の技術までも模倣している。戦士としての経験がないギルガメッシュならば、身体能力の差を埋めるどころか超えてしまっている。
これならば士郎が勝つ、そう思われるだろうが、
「——調子に……」
英雄王はそう甘くはない。
彼には見えていた。ギルガメッシュが何かを取り出そうとしていた事を。
直感する。
それを出させてはいけない。
だから、腕を斬り落とそうとする。
疾く、捷く。
しかし、一歩遅かった。
「乗るな!」
「っ——!」
ギルガメッシュは
先程も使った彼の宝具。全てを圧倒的に潰す、あの災害。
同時に、士郎はその余波に飛ばされる。体制は即座に立て直すが、迂闊には近づけなくなってしまう。あの剣に、殺されてしまうかもしれないからだ。
「贋作者ごときに、これを出さずに得ないということか。
先は興が乗った故に見せてやったが、本来ならば、貴様のような雑魚に真名まで晒すなどセイバーに顔向けできんからな。」
来る。セイバーが持つ聖剣以上の一撃が、士郎を襲おうとしている。
「冥土の土産だ。こいつの名を教えてやろう。本来、こいつは無銘なのだが……強いて言うならば、乖離剣エア、それが貴様を死に晒してくれる剣の名だ。」
敵は、大きく腕を引き、石柱のような剣に魔力を集める。剣は空を斬り裂きながら、回る。さらには、固有結界までも巻き込んで行く。
「っ——!」
士郎は、乖離剣の構造を読み取ろうとするが、結果はさっきと同じ。他の剣を集めて対抗しようにも、盾にすらならない。それ程までに、あれは別格だった。
もう手段は……
「……まだあるんだな。」
一つ残されていた。
地面に描かれた魔方陣。それを使えば、あの宝具の力を読み取ることができるかもしれない。そうすれば、自ずとあの剣の構造も分かるはずだ。
だとしても、魔力が足りない。いくら古崖の魔術で魔力の消費量が減ったとしても、士郎自身の魔力量が増えたわけではない。更には固有結界に魔力を割かれすぎた。今の彼が持つ残魔力では、ギルガメッシュの宝具を投影する事は不可能だ。
だから、彼はある物を手にする。創太が渡してくれた凛の赤い宝石。それには多大な魔力が詰まっており、無茶な投影でも一回だけ可能にしてくれる量がある。
出来るかは分からない。けれども、やる価値はある。
「
宝石を持った手を大きく引き、宝具が持つ力を解析する。地面に展開された陣と、創太から受け取った陣を同調させ、相手の全てを読み取る。
すると、彼を手助けするかのように、地面の魔方陣は光り出す。
「ぐっ……!」
だが、身の丈に合わない事だったのか、彼の魔力回路はすでにオーバヒート状態寸前であった。
体中の傷から血が吹き出し、それを塞ごうと暴走した刃が傷から飛び出してくる。そして、ゆっくりと、士郎の体は異形の物と化していく。
けれども着実に、彼の手にはギルガメッシュの宝具らしき物が現れてくる。
「っ……はあっ……はあっ……
そして、彼は投影しきった。
「貴様……!そこまでして
英雄王は自身を模倣され、宝具を似せた粗悪品を見せられ、激怒する。
「良いだろう!ならば、望み通り互いの宝具を撃ち合おうではないか。結果は見えているがな!」
彼のいう通り、それらがぶつかる時、真作が勝つ事は決まっていた。士郎が創った模造品は明らかにツギハギだらけのもので、オリジナルには程遠い。だと言うのに、真作と交えるのであれば、一瞬にして破壊されてしまう。
「死してなお拝せよ!」
ギルガメッシュは宝具のを放つ準備を終えて、真名解放を行おうとする。
世界を斬り裂くその剣は、どんな災害よりも恐ろしい魔力の嵐を創造し、すでに士郎の固有結界を無き物にしていた。
「
真名の一文字一文字を口する度に、宝具が纏う災厄は大きくなる。
何がどうあっても、それには絶対に勝てない。そう思わせるものであった。
そして、
「——
ギルガメッシュが突き出した宝具は更に肥大化した魔力を纏い、敵をこの世から消し去ろうとする。
「っ……!」
だが、彼は驚いていた。士郎のその姿に。
士郎は英雄王が宝具を放ったように、その手に持った剣の切っ先を真っ直ぐ、敵に向けていた。だがしかし、士郎は真名解放もしておらず、投影したエアに一欠片の魔力も込めていなかった。
故に、彼は攻撃などしていない。これからその準備をするのだから。
「……
慣れない詠唱をした士郎は、英雄王の宝具を投影した剣で受け止める。
「っ!」
しかし、先も言った通り、それはツギハギだらけの物。本物を受けて、ただで済むはずがない。
何の策もなければだが。
「っ……貴様ーーッ!」
英雄王は二度目と驚愕と共に、怒号を見せる。
何故なら、士郎が腕を引きながら、ギルガメッシュが放った魔力の嵐を贋作に吸収したからだ。それは彼にとって自分の物が奪われたも同然の事。あくまでも、その投影品は災厄の受け皿でしかなかった。
そして、今度は士郎の攻撃であった。まるでギルガメッシュを映すかのように、彼は宝具を構え、石柱を回転させ、それを制御化に置く。
まるで、真の担い手のように。
「ふっ……!」
士郎は翔ける。ギルガメッシュへと一直線に。
「許さんぞーーっ!雑種ーーっ!」
怒り狂った英雄王は門を展開し、いくつもの宝具を出すも、全て避けられる。
もう士郎にとってそれは、驚異ですらなかった。
「返すぞ——!」
「っ……!」
宝具の雨を駆け抜け、一瞬にしてギルガメッシュの懐に入った士郎。そうなれば、もう相手に為すすべはない。
「
石柱を下から一気に撃ち上げ、台風を引き起こす。
敵の体を四散という表現が生温いほど斬り裂き、欠けら一つ残そうとしなかった。
これまで、士郎を襲おうとした災害が、今度は敵を斃す武器となった瞬間だった。
ギルガメッシュがどれほどの姿に変形しようとも、その嵐は治らない。
しかし、徐々に、徐々にだが、士郎の腕にもダメージが蓄積される。贋作とは言え、力自体は真作と同じだ。その反動は大きい。
そして、彼の腕が限界を迎えようとした瞬間、嵐は去る。
もう敵の姿は無い。
戦いは決着を迎え、士郎の勝利が証明されるだ。
「ぐっ……!」
けれども、その本人はボロボロであった。ふらふらとおぼつかない足で立とうも、行ったり来たりを繰り返し今にも倒れそうであった。
そして、バランスを崩し、倒れようとしていたが、
「よっと。」
誰かに体を支えられる。
「……創太?」
それは、意識を失っていたはずの創太だった。
「おっす、衛宮。そんでもってお疲れ。最後のは凄かったな。アイツの剣を投影しちまうとはな。」
「ああ、創太こそ。お前の支援が無かったら今頃死んでたよ。」
緊張が一気に解けた二人は、互いに健闘し合う。
「そんな事ねえよ。俺なんか時間稼ぎぐらいにしかならなかった。」
「けど、最後の投影とトドメだけは、俺一人じゃどうにもならなかった。創太とジアナさんが魔方陣を通じて、俺に力と情報を分け与えてくれたおかげだよ。」
実のところ、士郎の最後の投影からのトドメまでは全て、創太が考え出した策だった。投影品を受け皿とし、本物の攻撃を受け止め、そして、放つ。更に、本来構造まで把握できないエアを投影できたのは、ひとえに創太とジアナのおかげであった。
気を失っていたように見せかけて、二人は陣を再構成させ、念話により、士郎に策を伝えていた。
そんな事を士郎一人でやろうとすれば、もちろん
「だってよ、もう一人の立役者さん。」
そして、創太の後ろからある人物が現れる。それはジアナだ。
「そんな事はありません。あの陣は敵に知られており、無意味な物でしたから。」
「ジアナさん、謙虚にならなくて良いんです。ここにいる全員がいなければ、あいつには勝てませんでしたから。」
「本当にそうだったのかな……」
士郎の最後の言葉に、何か思うところがあるような言い方をする創太。しかし、そんな事を悟らせないように、話を逸らす。
「……さて、見てみろ。どうやらあちらさんも終わったようだぞ。」
創太の指差す場所、そこには慎二に肩を貸しながら歩くボロボロの凛と、さらにそれを支えるセイバーがいた。
「無事か、遠坂、慎二!っ……!」
士郎は立ち上がろうとするも、すぐにバランスを崩してしまう。
「私達は大丈夫よ。怪我はないし、聖杯は破壊した。おまけに慎二も無事引き摺り出した。……こっちとしては、アンタの方が心配よ。」
「安心しな、遠坂。こいつは人の心配できるくらいは無事だ。」
ちょっとは自分の心配しろ。それが士郎を除いた全員の気持ちだった。
「あと、はいこれ。」
「これ……転移魔術の……」
「そっ、最後に助けられたわ。借りを作るのは嫌いだけど、ありがとう。」
「おう。ならその貸し、今返してもらおうかな。ジアナ、ちょっと変わってくれ。」
創太はジアナに衛宮の体を預けた後、慎二の前に立つ。
「ちょっとそいつの頰をこっちに向けてくれ。」
「……こう?」
「そうそう、そんでもって首が折れないように支えて……」
意識のない事を良いことに、慎二の体を好き勝手にする二人。
「こんな感じかしら?」
「良いぞ。……ふぅ。」
準備ができた創太は一呼吸を置き、構える。そして、
「このクソ馬鹿野郎!」
思いっきり、慎二の顔を殴る。
「前から嫌いだ嫌いだと思ってたけど!こんな事をするぐらい落ちぶれてんじゃねえよ!
勝手に暴走して!殺すなんて平気で使いやがって!前はこんなんじゃなかっただろうよ!
少なくとも、もっと真っ直ぐで!筋が通ってて!人を見下そうとも!嫌味を言いやがろうとも!
他人のことをしっかりと見極められていた奴で!ちゃんと人の事を思ってやれる奴だっただろうが!」
創太は言いたいだけ言った後、また一呼吸を置き、落ち着く。
「これだけかな。よし、スッキリした!かえ……ろ……」
そして、彼もバランスを崩し、
「おっと……大丈夫ですか?」
ジアナに支えられた。
「……悪いジアナ。やること全部やりきったから、少し気が抜けちまった。
衛宮は?」
「彼ならセイバーに任せています。だからもう帰りましょう。」
「そうだな。」
そうして、皆帰ろうとする。しかし、ここに残ろうとする者が一人。
「セイバー?」
「シロウ、私は帰れません。」
サーヴァントであるセイバーだった。
「私はサーヴァント。この戦争限りの仮初めの命。ですから、もう私はここにいる理由も、役目もありません。」
「セイバー……」
セイバーの手を取ろうとする士郎。しかし、
「衛宮。」
創太がそれを止める。
「……そうだよな。セイバーが決めた事だもんな。」
士郎はセイバーからゆっくりと離れ、向き合う。
「シロウ、貴方の剣となり戦えた事、誇りに思う。」
「ああ。俺もセイバーと一緒に戦えた事、嬉しかったよ。」
別れの挨拶を済ませ、士郎は背を向ける。
「……別れの挨拶は済んだな。そんじゃあ、帰るぞ。」
全員が門へ歩く、帰路につき、戦いの場から去ろうとする。
こうして、第五次聖杯戦争は終幕を迎える
「っ!みんな、後ろ!」
筈だった。
士郎たちが後ろを振り向けば、突き飛ばされているジアナと、
「ぐっ……ごはっ!」
背中から黒い何かを突き刺された創太がいた。
ここにいる全員が戦慄する。
決戦など、始まってすらいなかったのだ。