オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
書きたいのに書けない。忙しくて書けない。最終回の構図まで、全てあるのに。なんなら、次回作の構想まであります。

前回と今回と次回は、一回に纏められると思っていたら色々書いてしまい、長くなってしまいました。


黒き者

 いつもの居間、いつものテーブル、いつもの座布団、彼を囲う物は何一つ変わらない。だというのにそれらを纏う空気は異常なものだった。自身のテリトリー(住まう場所)であるはずなのに、くつろぐ事も落ち着く事さえもできない状況で、士郎と凛はジャンヌ・ダルクに今までの経緯を説明していた。

 アーチャーの生存と犠牲、間桐桜の行方不明、真のアサシンであるハサンからの襲撃、そして、それによるセイバーの脱落、一字一句を気をつけ、あくまでも客観的に話す。そうしなければならないと、士郎の中の何かが警告していた。

 

「そして、体を休めていた時に再度の襲撃があったと。」

「はい、そのあとはジア……ジャンヌさんの知っている通りです。」

「こっぴどくやられて、何にもできなかった訳ですか。」

 

 ジャンヌは横目で凛を見る。お前は特にそうだったと言いたげに。

 

「……ええ、そうよ。特に私はね。」

「自覚はあるみたいですね。

 ですが、こんな事ならば助けた意味はないかもしれません。」

 

 呆れたように、彼女は無駄足だったと言い放つ。

 

「それ、どういう意味かしら?」

「言葉のままです。貴女は元々話になりませんが、彼ならば英霊と戦えると思ってましたけど、先の戦闘から私の思い違いだったようです。

 まあ、身代わりくらいにはなるでしょう。」

 

 辛辣な発言ではあるが、事実でもある。故に、凛と士郎は何も言い返せなかった。

 

「次は私の番ですね。

 あの影飲み込まれてからどうなったのか、その説明をさせてもらいます。」

 

 あの後、彼女に一体何があったのか。どうやって生き返り、この場に戻ってきたのか。それは士郎達にとって大きな疑問だ。

 その理由が明らかになる。

 

「あの影、聖杯に飲み込まれてから、私とソウタは影に侵食されつつありました。抵抗はしていたものの、それも時間の問題でした。

 もうどうにもならないという状況でしたけど、ある二つの出来事が私に機会を与えました。

 一つはソウタが私の体を押し、影の外へと出そうとしたこと。もう一つは影の外からアーチャーが私の体を引きずり出したこと。

 これらにより、私は影から脱出し、生を得ました。」

 

 その話から、二人の犠牲の上に彼女が生きているという事実があった。

 

「つまり、創太はもう……」

 

 アーチャーはそもそもどう転んでも、現代には残る事はない。しかし、創太は今を生きていた人。

 その創太が、友人が死を迎えてしまった事は、士郎にとって大きな衝撃だった。

 

「貴方の想像通りよ。」

 

 ジャンヌははっきりと、冷酷に、けれども、どこか悲しげに肯定する。

 

「……それから私は、まともに歩けなかった体を休める為に身を隠しながら、一目の少ない場所を確保し、一晩を過ごしました。

 その後はここへ向かい、先の通りになります。」

「なるほど……アンタがどうやってここまで来たかは分かった。けれども、一つ質問。

 アンタ、あの影のことを聖杯って呼んだわよね。それ、本当なの?聖杯はセイバーが破壊したはずよ。」

 

 凛は冷静に、解決すべき疑問の答えを聞き出す。しかし、その内にあるものは仲間の死に対する動揺だった。

 彼女とて鬼では無い。けれども、あの状態からでは助からないと元々覚悟していた。だから死んだという情報は、凛にとってそれほど絶望的なものではない。

 

「ええ、本当です。あれは紛れもなく聖杯そのもの。しかし器自体は他に移り変わっていますね。」

「器が他に……それが何かは?」

「見当はついています。しかし、ここからは取引です。タダで塩を送るなんて馬鹿はしませんから。」

 

 今は協力関係ではない。むしろ敵同士であると、彼女は告げる。

 

「その取引っていうのは?」

「私は情報を渡す。代わりに貴方達はこちらに指示に従う。といっても目的自体は一緒ですから、今までと大差ないかもしれませんね。」

「目的っていうのは、聖杯の破壊っていう事ね?」

「その通りです。」

 

 確かに、凛達にとっても聖杯の破壊はやるべき事の一つだ。ジャンヌにとっても、家族を奪った聖杯は憎むべき物。

 しかし、凛は彼女の言葉には妙に引っかかるところがあった。それが何かは、まだ分からない。

 

「どうですか?貴女達にとっても、悪い条件ではないでしょう。指示も、私が常に後ろで見るだけにはならないようにするつもりです。」

「……情報っていうのは、どこまで渡してくれるのかしら?」

「敵が誰かと、その戦力です。あとは拠点ぐらいですね。」

 

 もし彼女の言葉を全て鵜呑みにするのであれば、妥当と言えるだろう。むしろ、本当に今まで通りだ。

 ただ、怪しい部分はある。一つ一つ挙げるならばキリがないが、強いて一つ言えば彼女自身だ。

 態度、言動、雰囲気、あらゆる点において、かつての彼女の面影が全く見当たらない。そんな彼女を信頼して良いのだろうか。

 

「私からも質問を一つ。良いかしら?」

 

 だが、その結論を出す前に、今まで黙っていたイリヤスフィールが口を開く。

 

「驚きました。てっきり貴女は傍観を決め込んでいると思っていました。」

「そういうのは要らないわ。私が求めているのは、質問に答えてくれるかどうかよ。」

 

 元聖杯の少女は強気で、危険人物に立ち向かう。周りの二人からすれば、背筋が凍るどころではない。

 

「……そうでしたね。貴女の話、聞いてあげても良いでしょう。」

 

 しかしそれは、杞憂に過ぎなかった。

 

「なら訊くわ。

 貴女の目的がシロウ達と一緒だと言ったけど、完全に一致しているわけでもないばすよ。別に真の目的がある。そうよね?」

 

 けれども、イリヤスフィールはまた二人の冷や汗を流させるような発言をする。

 

「だとしたら?」

「あるかないか、それだけを答えなさい。内容までを説明しろとは言わないわ。」

 

 彼女はこんな質問をしているが、この場にいる全員はその回答を理解している。

 ジャンヌ・ダルクが聖杯の破壊以外に何かしらの目的を持っていることは明らかだ。そして、イリヤスフィールはその内容すらも予想が付いている。

 凛もそう考えていたが、いつもの強気な姿勢を、威圧感を放つジャンヌに見せることはできなかった。

 

「……この世全てを殺す事よ。私の真の目的はね。」

 

 彼女の答え、それは生きとし生ける者全てを敵に回しかねない物だった。

 

「だってそうじゃない!世界は彼を殺した!全ての物はそうなるようにした!どいつもこいつも!不確定要素(どうでもいい奴)だからって理由で!

 だから私は全てを壊す!神であろうが、悪魔であろうが、英雄であろうがね!

 もちろん、貴女達も例外じゃないわ。彼を見捨てたんですからね。聖杯を破壊した後、真っ先に殺してあげるわ。」

 

 彼女の発言はとても狂気染みており、殺意を持った物だ。全てを殺すそうとする意思はまるで、あの聖杯のようだった。そのはずなのに、どこか悲壮感や後悔があった。

 いずれにせよ、どの選択をとろうが、彼女は敵になる身。彼女の本音を聞いてしまえば、協力も何もないだろう。

実際に、遠坂は完全に警戒している。

今ここで殺される。そう直感していた。

 

「さて、そろそろ訊きましょう。

 こんな私に協力する気はありますか?」

 

 ない。それが当然の答えの筈だ。

 

「……俺はある。」

 

 だが、当然を幾度となく拒む者は、協力を承諾する。

 

「ちょっ……士郎!」

「悪い、遠坂。けど、今ここで断れば、何もできずに終わると思うから。」

 

 馬鹿げた回答ではある。けれどもジャンヌ・ダルクにとって軽視はできない。衛宮士郎という男は、理にかなっていない事をしながらも、最終的に良い結果を残している。

 今回もそうなるのであれば、彼女にとって脅威だ。

 いや、()()()()()のためなら、そちらの方が良いのだろうか。

 

「……そうですか。ならば二人はどうしますか?」

 

 呆れた物言いで、他の者にも答えを訊く。

 

「だったら、私も一緒に行ってやるわ。」

「私は敵地に乗り込む気は無い。けど、それ以外の協力ならさせてもらうわ。」

 

 凛は前衛的に、イリヤスフィールはあくまでも後衛として協力する意思を見せる。

 

「契約成立、ですね。なら、私も情報を開示しましょう。まずは、この状況を作り出した犯人からです。

 結論から言うと間桐臓現、それが元凶の人物。」

 

 その名を聞いた瞬間、士郎とイリヤスフィールが反応する。特に士郎は怒りを持ち始める。

 

「それって、まさか……」

「ええ。貴方には以前にも話しましたね。桜に潜んでいるあいつと同じです。」

「嘘、あの子に……⁉︎」

 

 桜という名前が出された時に、今度は凛が動揺してまう。

 

「凛、貴女と彼女に何の関係があるかは知りませんが、要件だけを伝えておきます。」

 

 しかし、それを無視するかのように話は続く。

 

「犯人の本拠地はおそらく、間桐家です。戦力としてはアサシンがいたのですが、先程斃したので除外します。後は、寺で見た影にも注意してください。あれはゾォルケンの支配下に置かれているはずです。

 他にはいないでしょうが、警戒するに越した事はありません。

 以上でこちらの情報は全てです。」

 

 淡々とした説明はこれで終わる。

 

「さて、次は私の指示に従ってもらいます。今夜の十二時に敵地へと向かいます。それまでにここの正門へ集まってください。では、話は終わりです。」

 

 もう用は済んだ。

 そう言ったかのように、言いたい事だけを言って立ち上がり、部屋から出ようとする。

 

「待ってくれ。」

 

 しかし、士郎のその一言で彼女は止まる。

 

「本当にアンタは、復讐のためだけに動くのか?」

「……私にはそれしかありませんから。」

 

 再び彼女は外に出ようとし、そして、扉を閉める。

 それだけの事で、部屋に張られていた緊張の糸は一気に解ける。

 

「はあぁ……」

 

 安堵からか、凛の口からは溜息が漏れる。

 

「士郎。」

 

 だが、その彼女からは文句あるようで、議論はまだ続くようだ。

 

「なんだよ遠坂。あれ以外にもう方法はないだろ。」

「確かにそうよ。私たちだけじゃ何もできない。だから、ジャンヌ・ダルクと協力するしかなかった。

 けど、あんな即答するなんてどういう事?あいつは今までのあいつじゃない。士郎の考えている事はできないわよ。」

 

 凛は嫌というほど士郎の事を見てきた。自身よりも他人を救おうというその姿勢を。

 だからこそ、彼の思考を見透かしていた。あのジャンヌ・ダルクを、ジアナ・ドラナリクを救おうとするその考えを。

 

「できる保証が無いのは理解してる。あの人は俺が何を言っても無駄だ。

 でも、協力の件を抜きにしても、彼女は放ってはおけない。」

 

 それが衛宮士郎という人なのだ。

 

「……勝手にしなさい。何をしても無駄だとは思うけどね。」

「ああ。そうさせてもらう。」

 

 凛との話が終わると、士郎はすぐに立ち上がる。早速、ジャンヌの説得に行くつもりなのだろうか。

 

「待って、シロウ。」

 

 しかし、イリヤスフィールがその足を止めようとする。

 

「彼女を説得するなら、一番最初にこの言葉を言っておいて。

 ソウタは活きる事を選んだ。だから、貴女もせめて、人を殺すような事はしないで、とね。」

「あ、ああ。分かった。」

 

 伝言を預かった士郎であったが、その返答はどこかぎこちない物だった。なぜかと言えば、

 

「でも、まずは朝食にしないか?」

 

 全員がまだ何も食べていない事を気にしていたからだ。

 

「……そうね。昨日の夜から何にも食べてないし、腹を膨らませた方が良さそうね。」

「私もお腹が空いたわ。」

「分かった、用意してくる。」

 

 全員の意見を聞いた後、士郎は朝食のためにキッチンへと歩く。

 

「あ、私も手伝うわ。」

「ありがとう、遠坂。けど……」

「いいの、いいの。お世話になりっぱなしは流石にね。」

 

 その言葉は、普段の生活からもあるが、真の理由は戦闘面においてだった。士郎にあまり負担はかけられないということから、手伝いを申し出た。

 

「そうか?」

「そうなの。さ、早く用意しましょ。」

 

 士郎は戸惑いながらも、彼女と共に調理をしていく。といっても簡単な作業なので、すぐに終わる。

 しかし、凛はある事に疑問を持つ。

 

「ねえ。なんで()()()用意してるのよ。」

 

 凛が考えていたのは、士郎、自分、イリヤスフィールの三人での朝食だ。しかし、四人目がいるというのは、明らかにジャンヌのこと。

 それを用意したのは、もちろん士郎しかいない。

 

「これが終わったら、説得しに行こうと思ってる。少なくとも、朝食ぐらい、一緒にな。」

「……さっきあんな事言ったし、何も言う気はないわ。けど、もしそうなった場合、気まずくならないようにしてよね。」

「う、善処します……。」

 

 ーーーーー

 

 どこまでも、どこまでも澄み渡る青き空。雲は太陽の光を邪魔しない程度に揺らぎ、冬というはずなのにどこか暖かい空気があった。

 しかし、それに似合わない者が一人。黒を纏った服装と色素が抜け切った銀髪、人形のように生気がない白い肌、そして、光が灯らず、どこまでも深く、吸い込まれてしまいそうな金眼を持ち合わせていた。

 ジャンヌ・ダルク。かつて聖女とまで言われた彼女は、ドス黒い感情を胸に押し込めて、屋根の上に立ち、この冬木の街を眺めていた。

 

「ジャンヌ。」

 

 自身の真名を呼ばれて、目線だけを向ける。そこには、次に懸念すべきである対象、衛宮士郎が立っていた。

 確認をしただけで、またすぐ目線を街に戻す。今はまだ、気にする必要のない者だからだ。

 

「なあ、一緒に飯を食べないか?」

 

 ——また突拍子も無いことを。

 それは彼女がある程度予想していた範囲内のことだった。彼がまだ仲間意識を持っている甘ちゃんであるならば、彼女にとって有利に働くことかもしれない。だが、気に食わないというのはある。

 だから、無視を突き通そうとする。

 

「……分かってる、仲間じゃないって言いたいんだろ。利害が一致しただけの敵同士。」

 

 ——分かっているわけがない。間違っても敵と同じ屋根の下で食事は言わない。

 口では言わないが、ジャンヌは彼に様々な悪態をついていた。しかし、言うだけ無駄なので心の中だけである。

 けれども、だからと言って黙っているだけで彼は説得を止めるのだろうか。このまま延々としゃべり続けるのだろうか。それでは彼女にとって、色々と不都合だ。

 ならば、と思い口を開けようとした瞬間、

 

「そういえば、伝言がある。」

 

 引っかかる事を言われる。

 伝言というのがどういう内容なのか。いや、そもそも誰の伝言なのか。彼女にとって、理解出来ない物だ。

 

「イリヤからだ。」

 

 その名前は予想外だった。

 何がきっかけでそういう心境になったかすらも分からない。確かに、創太との関係は多少良くも見える。だが、結局は創太だ。元従者のようなジャンヌに、何かしらの感情を持っているとは思えない。

 様々な考えを巡らせるが、その答えを出す前に先に士郎が喋り出す。

 

「あいつは、創太は生きる事を選んだ。だからアンタも、できる限り人殺しのような道は選ぶな。」

 

 何か、違和感が拭い切れない言葉だ。

 士郎がイリヤスフィールの伝言を勘違いしているのか、それとも彼女自身が間違っているのか。いや、間違っているならそもそもそんな言葉は使わない筈。

 

「俺はこの言葉を全て分かっているわけじゃない。けれど、半分は分かる。

 創太が、アンタの行動をどう思うかだ。」

 

 ——ああ、やはり彼は勘違いをしている。

 

「あいつはアンタが意味のない殺戮をして欲しくないと思っている。死に際なのに、それでも生きていて欲しいと思った理由はそんな物じゃない筈だ。だから、」

「貴方。」

 

 これ以上は我慢できなかった。

 彼女の耳に、()()()()()をするような発言を入れたくないがため、ついに士郎の話を遮る。

 

「何か勘違いをしているようだから言っておくけど、私は私が行うべき事だと心の底から思うから行っているだけ。

 だからそれが人殺しだろうと、正義に反しようと貫き続ける。」

「けど……!」

「もう貴方の言葉を聞く気はありません。もしそれでも続けるというのであれば……ここで協定を断ち切ります。」

 

 士郎の体中を突き刺す邪悪とも呼べる殺気が、ジャンヌから出される。

 それだけで彼は動くことは愚か、口を動かす事すらままならない。

 

「私としては構いませんよ。ただ、私を撃退したとしても、桜がどうなるか。」

 

 間桐桜。彼にとってとても親しい後輩。その名前を出されると、彼は表情を一変させた。

 目の前の彼女を助けたいが、大事な後輩も助けたい。しかし、黒い気に中てられながらも、即答した。

 

「わかり……ました。今回は、引きます。」

「今回?」

「はい。けれど、まだ諦めたわけじゃない。」

 

 確固とした表情でそう言って屋根を降り、家の中へと戻る。

 今回は、と言うことは次回もあると言いたいのだろうか。何度言われても彼女自身は無駄だと思ってしまう。

 

「……彼がいないのに、一体どうしたらいいのよ。もう死んだっていうのに、思うも何もないじゃない。」

 

 誰もいなくなった屋根上で、彼女は空にぼやく。とても悲哀に、誰かに懇願するように。

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