エンディングまで無理やり進めようとしたら、更新は早くなったけど出来が格段に落ちた気がします。気のせいだと思いたい。
さあ、次回はエンディングですよ。嘘はつきません。本当にエンディングです。しかし、あと五話ぐらい続くかもしれません。
誰もが、夢の中にいるはずの深夜。ある邸宅の門前で二人の魔術師と一人の黒い聖処女がいた。窓が壊れたまま以外は特徴がない間桐邸の前で。
「ここが間桐臓現、真の名をマキリ・ゾォルケンが住まう場所です。」
「本当にここが……」
「貴方は何度も訪れているようですが、知らない部分もあります。これまでと同じような心構えで入らないように。」
士郎は友人として何度もこの中に入ったことがある。しかし、その中を詳細に知っているかと言われれば、知らないことの方が多い。入ったことのない部屋もある。
今回はそういった所に入り込む。だから、彼の持つ情報はほとんど無意味なのだ。
「それで、犯人はどこにいるの?」
「地下室です。魔術で索敵してみれば、下に魔力を感知しましたので。」
地下室、一般の魔術師が工房にする場所。地面の中である方が地上より霊脈が近いという理由で地下室に作られていたりする工房。
その工房を砦として入り込むというのは、魔術師として当然だ。つまり、彼女らがやろうとしていることは砦崩し。難儀なことである。
「では、入りましょう。いいですか、あくまでも手分けをせずに纏まって行動します。急いでいるわけでもありませんから。
そうですね……リン、貴方が先に行きなさい。」
「なんで私なのよ。」
「前方からの奇襲はまずないからです。後ろは私が対処しますし、横からも同様です。万が一前から来ても、反応が遅れることはないでしょう。
罠があっても貴女なら見抜けるはずです。」
それは正しい判断であり、凛も納得できるものだった。これならばまだ、凛が懸念する捨て駒のような扱いにはならなさそうだ。
「了解したわ。けど、地下室がどこから通じているのかは、分かっているのかしら?」
「ええ、もちろんです。誘導しますので、凛はトラップだけに注意してください。
士郎はいつでも英霊と戦える準備を。あくまで時間稼ぎを目的に、固有結界は発動しないように。」
「分かった。」
それぞれの役割を確認し、三人は敵陣へと侵入する。
正面ドアから入り、その目に映り込んだのはまず暗闇だった。目の前一メートルが見えるかどうか、それだけ暗く、慎重に進まざるを得なかった。
先頭にいる凛は魔術で罠を警戒しながら、ジャンヌの指示通りに中を進んでいく。たまに、中の構造をある程度知っている士郎の助言を聞きながら。
そうしているうちに、地下室への扉へと到着する。
しかし、何か妙だった。いや、全てが妙だと言われれば妙なのだが、何より
普通、魔術師であれば工房または拠点とする場所に、防衛のための障壁や罠が設置されているはずだが、その類が一切ない。
「慎重に扉を開けてください。何があっても大丈夫な様に。」
だから、彼女らはより一層警戒する。扉を触れる、ドアノブを回す、ドアを押す。それらの行為にも、意識を集中する。周りの変化を見逃さず、侵入していく。
けれども、何も起こらない。地下室への階段を降りても、降りきっても。何故なのか、相手にはそれほどの自身があるのか。それとも、ここには何もないのか。
だが、本当に何も無いわけではない。地下室の床、そこには
「っ……これは、ちょっとキツいわね。」
それを覆い尽くすかのような、大量の虫が蠢いていた。人の悪感というものを、無条件で引き出すかのような姿で。
「私が焼却します。貴方達はそのままで。」
二人が歪んだ表情を見せているのに対し、顔色を変えないジャンヌは、それでも邪魔であるのか、指を鳴らすと同時に、今朝のアサシンを焼き尽くした黒い炎を、カーペットのように床に敷き詰める。
それにより虫は苦痛の声を上げながら、死に絶えていく。しかし、
「っ……!避けなさい!」
突如として、ジャンヌの警告が部屋に響きわたる。
次の瞬間、炎の中から突き進む黒い弾丸が飛び出る。それは三人へと踏み込み、手に持つ剣で斬り裂こうとするが、前もった警告のお陰で全員避けることができた。
だが、その奇襲を仕掛けてきた人影をはっきりと目視できるようになった時、士郎と凛は驚愕してしまう。何故ならば、
「セイ……バー……?」
彼らの元サーヴァントであったからだ。
しかし、姿に変化があった。青を基調とした服は無く、代わりに黒を纏い、禍々しい鎧を着て、かつての凛とした姿はなく、周りに圧力をかけるような変貌を遂げてしまった。
さらにはサンバイザーなような物で顔を隠していたが、それでもセイバー以外の何者でも無かった。
「彼女までも配下に置いているとは予想外でした。マキリ・ゾォルケン。」
ジャンヌの視線の先、黒いセイバーが現れた場所に、頭が歪な形になっている老人、間桐臓現がいた。
「呵っ呵っ呵っ。よくぞまあ、儂の仕業じゃと分かったもんだ。」
「こんな事をする化け物は貴方ぐらいしかいませんから。」
「ほう。じゃが、そやつが儂の配下というのはちと誤解じゃ。そやつのマスターは……」
臓現の言葉に続き暗闇から出てきた人物、それは士郎と凛を驚愕させた。何故なら、
「桜⁉︎」
セイバーと同じく、黒の服を纏った後輩だったからだ。
「なるほど、やはりそういうカラクリになっていましたか。
士郎、セイバーは任せました。凛、貴女は彼の援護を。私はあの二人を相手します。」
「ええ。時間稼ぎくらいはできるわ。」
「分かった。けど、アンタ」
「今は桜を殺しません。それだけはご安心を。」
「……その言葉、信じるぞ。」
士郎は不安を残しながらも、セイバーと対峙する。
しかし、彼女に対しても複雑な気持ちであった。昨日まで仲間であったはずなのに、今は完全な敵同士。
彼女の相手になるのかではなく、彼女と敵であらねばならないのか。そんな感情が彼の心を締め付ける。だが、相手はすでに殺気を撒き散らしており、味方を見るような目では無かった。
だから、彼も理解した。せざるを得なかった。けれども、やはり納得はできない。それでも、彼らは戦いを始めてしまう。
その脇で、ジャンヌは臓現と桜に向き合う。
「お久しぶりですね、この虫野郎。」
「お主、随分と口が悪くなったものよのう。この前までは誰であろうと礼儀正しくあろうとしたものを。」
「溜まっていた鬱憤が表に出ただけよ。それに、アンタみたいな外道に礼儀もクソもないわ。
それよりも彼女。……聖杯と言ったところかしら。」
全てを見抜いたかのようなその言葉は、臓現を驚かせる。
「何故それが?」
「以前、彼女の体を調べていましたから。貴方もそれは把握しているはずです。」
「あれだけでか。儂は桜の体を調べられても、何も分からぬようにしていたつもりだった。
いやはや、お主らの魔術はやはり興味深い。」
「おそらく、ソウスケ達によって強制的に聖杯の機能を発動され、燃料である力を求めた結果、寺でセイバーが壊そうとした聖杯を横から掠め取り、現在に至るということでしょう。」
創助、つまり創太の両親の事だ。前に桜が倒れたときに見つけた魔術式から、彼女は予想していた。
「そこまで、理解していたか。」
「ですが、それが何かなんて些細な事。私はあくまでも、貴方に用があるのですから。」
今一歩、ジャンヌ・ダルクは前に出る。憎悪を燃やし、臓現の体を殺気で貫く。
それほどまでに彼女は憤りを感じていた。怒りを纏っていた。
「貴方を殺す。それが私の第一の優先事項よ。」
「待ってください。ジャンヌさん。」
しかし、今まで一言も口を開かなかった桜がそれを止める。
「貴女の真の目的は世界を殺すことなんですよね。」
妖美で、かつおどろおどろしい喋り方は、ジャンヌの激しい物とはまた違った恐怖を他人に味あわせる。
「知ってますよ、私の中でそう望んだこと。ならば、私と同じです。だから、私と手を組めば、確実に目的が達成されます。」
「……話は終わり?」
「はい?」
質問の答えを聞かぬまま、ジャンヌはゆっくり手を上げ、桜に向ける。と同時に、その手の平から作り出された黒炎が桜の頭を潰した。
「その願いにはこの手でっていうのと、アンタも含まれるっていうのが付くのよ。」
「誘いは断ると?」
破壊されたはずの桜の頭はすぐさま回復し、口を動かす。
「ええ。」
「そう、でしたら死んでください。」
言葉に鋭い殺気を乗せ、寺で見た触手でジャンヌを襲おうとするが、
「あら。」
しかしそれは瞬く間に彼女の剣で斬られ、
「貴重な魔力、ありがとね。」
吸収されていく。
「けど、貴女はまだここでは殺さない。
私が殺すのはそこの老人よ。」
「まあ待て。お主、古崖の小僧が死んだのは儂のせいじゃと、思っておるのだろう。」
「そうよ。それ以外に何があるのかしら?」
「考えようによってはな。まず、思い出してみろ。確かに儂が動いて、彼奴は死んだ。じゃが、桜という聖杯が動いた今、儂は動かざるを得んかった。
その原因を作ったのは誰か、小僧の両親じゃ。」
その事実に、ジャンヌは黙り込んでしまう。まるで、それが正論だと受け入れるかのように。
「だから、儂を恨むまえにそいつらを、その一族を恨んだほうが良かろう。」
何も言わない。何も言えない。彼女にとってもその事実は正しいからだ。
「しかし、古崖は相当な実力者揃い。じゃが、儂の手助けが」
「勘違いしているようね。」
だが、言われっぱなしではなかった。
「まずどうして、彼らがそうしたのか。アンタみたいな下衆野郎がいたからよ。
だから、そうした。アンタが表に出てくるように仕向けた。慎重な奴をあぶり出すには、他に方法がありませんから。
ですから、私が彼らを恨む理由には成り得ません。むしろ、恨む気など毛頭ありません。彼らは恩人ですから。それに」
話の途中で彼女は踏み込み、一瞬にして桜の前まで距離を詰め、手を胸に貫通させる。
「まさか、貴様!」
「貴方を殺すのは確定した事よ。」
その手の中には小さな蟲が掴まれていた。それは臓現の本体、老人はただの触覚であった。
「や、やめ」
臓現の懇願も虚しく、蟲は彼女の親指と人差し指の先で押しつぶされる。
そして同時に、老人の体も灰となり、風に吹かれ消えていく。
「そんな事をしなくても、私が殺して差し上げましたのに。」
心臓を抜き取られたはずの桜は、未だに活動を続けていた。
「言ったでしょう。この手で全てを殺すと。
それより、やはり死にませんでしたね。聖杯の影響でしょうか。」
「ええ。私は聖杯がある限り、何度でも生き返ります。」
「そこのセイバーも、アサシンに殺されたと聞きましたが、大方貴方が取り込み、そして、セイバーの内にある非道な一面を表面化したと言ったところでしょう。」
「ふふ、貴女はどこまで勘がいいお方なんでしょう。」
二人の会話、それは殺意がこれまでないほどこもっていた。しかし両者は口以外は全く動かさない。少し手を前に出せば、互いに心臓をもぎ取れるぐらいの近さであるはずなのに。
「ですが、ここは退かせてもらいます。貴女は私を殺す手立てを持っていそうですから。」
「賢明ね。」
桜は冷静に撤退を実行する。今はまだ殺せない。しかし、
「セイバー。」
剣士は主人に名を呼ばれると同時に、戦闘をやめ、彼女の元へ戻る。
ボロボロになっている士郎と凛は何が何やらわからない様子だ。
「私は大聖杯の元へ居ます。ですから皆さん、待ってていますね。」
満面の笑みを残し、桜はセイバーを引き連れて影へと消え去っていく。もうそこには、誰もいなくなる。
「……さて、ここでの目的は達成しました。一旦帰り」
「おい待てよ。」
話を中断させるように、ドスの効いた声で問い詰める。
「何?」
「アンタ、どうしてあんな事をした。」
それは何故臓現を殺したかではなく、何故
桜やセイバーが敵に回ってしまった事実も受け入れがたいものであるが、それでも
「私の指示に従いなさい。」
「どうしてって言ってんだ!」
「従いなさいよという声が聞こえ」
「そんな人間じゃなかったろ!アンタは誰かを思いやって!困っている人を救って!
なのに、なんで人をあんな簡単に殺すんだよ!あいつに、あいつに胸張って顔を合わせられるのかよ!」
「……あいつ?」
あいつ、ここにはもういない創太。彼女の家族のような存在で、人生を共にした人。
それを聞いたジャンヌは苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
「またその話なの?彼はもういない。だから、彼はもう関係ない。そもそも何?人殺しを止めたら彼が帰ってくるの?私がどう振る舞おうと、彼が死んだという事実は変わらない。
だから、私が義理や義務のある行動を取らなくても良い。どうあろうとも、勝手よ。」
「てめぇ!」
「待って、士郎。」
ついには手をあげそうな士郎を、凛は止める。
「貴方が殴るのはいいけれど、その前にはっきりさせておきたい事があるの。
ジャンヌ・ダルク、貴女さっき言ったわよね。セイバーがあんな姿になったのは、自身にある別の一面が表面化したからだって。
ならその理屈で行くと、貴女の中にもその一面があるわけね。それって、
「それに答える必要はありません。」
「あるわ。一時的でも相手のことはある程度知っておかなきゃ、信用できないのよ。」
彼女が考えるに、現世からなのであればまだ信用できる範囲だった。もし、生前から今のような憎しみや怒りを持っていたとすれば、それはジアナ・ドラナリクであった時の行動は裏に何かを持っているかもしれないからだ。
「……生前にこんな感情は持ち合わせていませんでした。殺人は犯してきましだが、殺意を持ってはおらず、むしろ、罪悪感までありました。憎悪や憤怒といったものとも無縁で、負の感情はせめて悲しみぐらいでしょう。」
だから、憎む人も殺したい人もいない。ただ彼女は最後まで聖女の心を持ちながら亡き者になった。
「ですが、
何故ああまでして世界を良い方向に変えようとした人が死ぬのか。何故無関係な人間まで死んでしまうのか。何故人はあんな惨状になる事を気づけずにいるのか。疑問ばかりが浮かんだわ。」
それは人が人である条件の一つ。競争が無ければ堕落していくだけ。彼女も理解してはいた。しかし、納得する気は無かった。
「それら解決されずに時が過ぎた時、私は物事の受け取り方が変化した。メディアから伝わる紛争やテロ、子供の些細な喧嘩までも。もちろん、慈悲という心はありました。けれども同時に、何かドス黒い物も生まれていた。それまで感じたことない感情。私の中に渦巻き、追い出そうとしても留まる。
そして、あの影に呑まれた時理解したわ。それが怒りだと、憎しみなのだと。この感情は今に始まったわけじゃない。あの聖杯によって作り出されたものじゃない。
この黒い感情は真に私の物です。」
凛は理解した。それは悲哀の叫びなのだと。
ここまで事細かに自身の気持ちを明かしたのは、救いを求めているからだ。でなければ、こんな事をしゃべるはずかない。
しかし、その救いは誰にもできない。凛や士郎が何を言おうと、彼女には届かない。
「けどそれじゃあ……!」
「士郎、ちょっと待って。」
「邪魔をするな、遠坂。」
「いいから。」
彼女は士郎を引き寄せ、小声で話をするよう仕草をする。
「今は黙って協力するしかないわ。彼女をなんとかしてやりたいのは分かるけど、聖杯が最優先よ。
幸いあいつは、聖杯を壊すまでは何もしてこない。それに、アンタも桜が心配でしょ。」
「それは……分かった。」
「話は終わりましたか?さっさと帰還して、体を休めてください。明日には決戦が待っているのだから。」
士郎は嫌々ながらも、凛の言葉に従う。けれども、それだけではジャンヌ・ダルクは救えない。
彼がいればという理想論を描きながらも、彼らは進む。
ーー2月15日ーー
丸一日が過ぎ、彼らは柳洞寺、ではなくその奥に進んだ先にある切り立った崖の下にいた。
この一日に何があったでもない、ただ険悪な雰囲気が彼らを包んでいるだけだった。
「ここです。魔術で隠蔽されていますが、注意すれば僅かに見えるはずです。」
「本当だ……。ここに洞窟があるだなんて。」
「この先に霊脈の大源、そして聖杯がいるはずです。」
満月が照らす夜に彼らは聖杯への道に立つ。しかし、今日はやけに月が不気味に見えた。白い光を放っているはずなのに、異常な光景に感じさせる。
「アサシンはもういませんが、奇襲には十分注意を。」
先頭は昨日のように凛だ。しかし、彼女にはある秘策を持っていた。『宝石剣ゼルレッチ』平行世界の魔力を用いる剣。その次に士郎、そしてジャンヌが最後尾で二人を見守り、洞窟の中を進む。
光もなく、目の前すらも見えづらく、足元を気をつけなければなんて事ない石につまづいてしまうほど暗い。
やがて、広い空間に出る。そこは最奥地ではないらしいが、敵がいた。そこには、騎士王が佇んでいる。
「ここで通行止めですか。二人共、手筈通りに。」
二人が戦闘態勢に入ろうとするが、その前にセイバーが口を動かす。
「そこの女、お前は通せと言われている。」
通せと言われた人物、それは
「私の事?」
遠坂凛だった。
「……どうする?」
「先に行きなさい。」
「分かった。」
指名を受けた凛は、セイバーの横を素通りする。聖杯と桜が待つ最深部へと。
「それで、作戦は?」
「私が先行します。貴方はここで待ってください。」
凛が完全に奥へと歩いた事を確認した後、ジャンヌは走り出す。腰に携えた剣に手をかけ、そしてセイバーを間合いに入れた瞬間、
二人の剣は交差し、火花を散らす。
純粋な力のぶつかり合いかと思われたが、ジャンヌの重心はズレて、セイバーを中心として回り、身を翻してセイバーの背中を蹴り、後ろへと回る。
「っ……!」
「まんまと、通してくれましたね。そこの彼は通さないようにして下さいね。」
「アンタ!それどういう事だ!」
「セイバーの相手は貴方一人でして下さい。その間に、私は全てを終わらせておきます。」
嵌められた。そのことにようやく彼は気づく。そもそも、彼女はセイバーを士郎と凛に任せるつもりでおり、聖杯を壊す気であった。予定が狂おうとも、それは変わらない。
「おい、待て!」
奥へと進むジャンヌの後を追おうとも、セイバーによって邪魔される。
こうなってしまえば、戦う他はない。ギルガメッシュをも倒した彼だが、セイバーとは訳は違う。彼女の強さは純粋な白兵戦、遠距離からの攻撃だけでは距離を詰められる。
だから、今回は剣製だけではなく、自身の剣術が試される。ただ作るのではなく、それを扱う力が必要だ。
「けど、行ける。」
しかし、彼には勝算があった。体に残る魔術陣、創太が残した物。三日前は一日保つと言われていたが、奇跡的に今まで効果を発揮していた。これならば、あるいは。
「……行くぞ、セイバー。」
覚悟は決まった。例えかつての仲間であったとしても、彼は斃す。
白黒の双剣を構え、セイバーと対峙する。
「悪いけど、そこを退いてもらう。」