言いたい事はありますが、それは作品全体としての後書きで書きますので、今回からは、ノベルゲームにおいて各endの条件があったらこんなんだろうな、という物を書いておきます。
作者のトークショーを楽しみに
Hell end条件
・初回時限定。それ以外はギャラリーでのみ観覧可能。
セイバーの一撃、それは重く疾い。故に士郎にとっては必殺を意味する。手に持つ双剣で衝撃を受け流そうとも、流しきれない。
更には、何度も干将・莫耶をその黒の聖剣で弾き飛ばされ、その度に投影していく。このままでは士郎が魔力切れか、それともその前に一撃が入るか、不利でしかない状況だ。
だがしかし、それは彼が思い描いていた構図。彼女の周りを翔ぶ無数の双剣。それは激化する戦いに比例して増加されていく。
「
互いに引き合い、彼女を襲い、幾度と弾かれようとも力は衰えることを知らずに、彼の斬撃と合わさる。
「———
むしろ、数が徐々に増えていき、スピードも上がっていく。それ故に、セイバーは対応しきれなくなる。
「———
士郎の持ち得る全ての力を出し切る、彼の力さえも利用して。それでも、彼女に届くかどうか。
「———
かつての
三対の双剣という枠を超えて無限にまで増加する連撃。それが全方位からなのであれば、厄介どころではない。
「———
そして、干将・莫耶が文字通りセイバーの周りを全て埋めつくした時、技は完成される。
魔法でも使わなければ、回避など不可能。防御などすれば、たちまち餌食にされてしまう。
——だが、まだ荒かった。これならば、彼女は全てを破壊する。
「
元々は知名度が高すぎるその剣を不可視にするためだったが、この状況を対処するのであれば、範囲、威力共に十分。
「
嵐の名を口にした瞬間、体を捻り回転斬りを繰り出す。風と剣、二つの刃は全ての干将・莫耶を破壊する。しかし、彼の攻撃はまだ終わっていない。その夫婦剣の中に、士郎が握っていたものなど一つもなく、すでに彼は距離を開けていた。
「その心臓……貰い受ける!」
本来ならば、その真名解放は槍を構えながら行う。しかし、士郎は朱槍を矢に変えて、弓の弦につがえていた。
その矛先を真っ直ぐに、セイバーへと向けて。
「
矢から指を離した途端、それは神速の勢いでセイバーに翔ぶ。かつて傷を負わせ、呪いにより蝕んだその
彼女が避けようと弾き返そうと、槍は結果に進み続ける。それでも、どちらかの行動を取らなければならない。
「っ……!」
セイバーが取ったのは回避。以前と同じ選択ではあるが、結果は異なり脇腹を掠っただけとなった。朱槍の軌道は、本家のような不自然はなく、緩やかに曲がっただけだった。投影できたとはいえ、完全ではなかったのか。
しかし、油断してはならない。その性質上、槍は心臓を穿つまで進む事をやめない。だから、
「はあっ!」
方向を変え、なおも進み続ける後ろからの朱槍を叩き落とす。
槍は再び動き続ける。
地面に落ちようともそれは翔び、セイバーの頰を薄く斬り、またも向きを変えて心臓を狙う。
この槍をどうするか、それはもう一つしかない。バラバラになるまで砕く。
だが、忘れてはならない。彼自身も攻撃してくる事を。
「
士郎の手にあるは、かつても投影した『カリバーン』。騎士王が正道ではない戦いをした事で、失われてしまった剣。しかし、彼女の持つ『エクスカリバー』には絶対に届かないもの。
今それを投影したのは、かつての自分を取り戻して欲しいという表れか。
朱槍と共に、士郎は動き出す。同時攻撃を行うために、例えどちらも防がれようとも、次には槍は動き鋭い一閃を放つ。それに剣を当てるのは至難ではある。
「
更に、彼は何かをしようとする。
周りが少しずつ焼け、炎が走る。
「
その現象はまるであの心象世界を作り出すかのよう。しかし、走るまでの間に展開するにはあまりにも短い。
たった四の言で、大規模な結界が発動するはずがない。けれども、すでに彼は互いの間合いに入った。その瞬間、
「
二十七の宝具がセイバーを取り囲む。彼の魔術回路と同じ数のそれは、まともに当たればセイバーであろうとも一撃で致命傷を負うほどの威力。
先ほどのような、干将・莫耶のように剣を振るうだけで飛ばされるほどヤワではない。
だから、今度は圧倒的なまでの力で粉砕する。
「はあああっ!!」
彼女の咆哮と共に、全身から黒く、そして純粋な魔力が噴出される。魔術や宝具などという手間のかかることはせず、大量の魔力量に物を言わせた力技で、全てを吹き飛ばす。
「くっ……まだ……だ!」
けれども、士郎の持つ選定の剣と朱槍は動く。
魔力放出により、僅かながらもセイバーの隙はできた。このチャンスを逃すわけにはいかない。
槍による一閃が先行し、後に剣の一撃がでる。二段構えによる連続攻撃ならば、今のセイバーに届くか。
しかし、
「っ……!」
一閃は体を横にズラす事で避けられた。しかし、それは無理やりで彼女の体制がほぼ崩れかかっており、しかもまだ一撃が残っている。
これならば、
「なっ……!」
だが、腕を掴まれてしまう。隙など無視して、ただ一歩、力強く踏み込んだだけで。
ここで士郎は、完全なる無防備になってしまう。セイバーは片方の手を残し、聖剣を構えている。
それを振り切られててしまえば、いやもう、振り切ろうとしていた。士郎を真っ二つにしようと。
「……ここに結果を示せ!」
だが、ここで事前に打っておいた布石が効力を発揮する。今まで何度もセイバーの心臓を狙っていた朱槍が、ついに本気を出す。
「うぐっ!」
一時的に、朱槍が真作と同等となる。
それにより、突如として槍は
これまで槍は性能を強制的に下げられていた。すぐに、心臓を狙おうとすると、以前のように急所を外されてしまうからだ。だから、タイミングを見計らい、ここぞというところまで性能を隠し持っていた。いや、そうせざるを得なかった。
「あがっ……!」
それでも、セイバーは動く。爪のように尖った手甲で士郎の腹を貫いた。
士郎は何故だと思い、彼は槍の刺さった場所を見た。それは
ならば、最後の手段を使うしかない。本当の意味で最後の捨て身の一手。
「はあっはあっ……
口を曲げて、風前のともし火になろうとも、投影品を作り上げる。彼の知りうる最高の火力を持ったあれを。
無銘であるのに、『エア』と呼ばれる原初の宝具を。掴まれた腕が手にする。
投影されたと同時に、石柱は回り出す。以前はツギハギだらけで自身で宝具を発動できなかったはずなのに、それは自らで世界を切り裂く。
それに気づいたセイバーは離れようとするが、士郎のもう片方が腹に刺さった彼女の腕を掴む。
『エア』は嵐を起こし、洞窟ごと崩壊させるような勢いだった。しかし、何故急にそんな事ができたのか。そもそも、士郎の技量では例え
———止まるな。
それを一瞬とはいえ、真にまで近づいたのは何かがおかしい。
———止まるな。止まるな。
この荒れ狂う災害を彼が引き起こしていることも。
———止まるな、とまるな、止まるな。
もし、推測するならば、それは
———とまるな、トまるな、トマルナ!トマルナ!
限界を超えてしまったとしか言いようがない。
「
解放した瞬間、洞窟内を昼間以上に照らす光が包む。轟音と熱が二人を襲い、とてつもない爆発が起こる。
これを受ければ、相手が誰であろうとも生き残る事はない。そう断定できるほどの超高威力だった。
それなのに煙の中で立つ影が一つ、衛宮士郎がいた。
触れれば倒れそうなほど、傷とダメージを負い、それでも二本の足で立っていた。
セイバーはもういない。真の意味で魔力に霧散してしまった。
これで、邪魔者はいなくなった。
「く……がっ……!」
けれども、前に進む力もない。体中の至る所から剣が生え、人間とは思えない化け物となってしまう。これが
どちらにせよ、目の前にある影に呑まれてしまうのだから、もう意味は無い。
ーーーーー
洞窟の最奥地、二つの死体が転がり、ジャンヌ・ダルクがそこに佇んでいた。
結果から言って聖杯の破壊はできなかった。いや、しなかった。彼女にある魔が差したからだ。
「聖杯を壊す前に、聖杯に世界を壊してもらおうだなんて、ほんと馬鹿げているわね。
この手で、とか言っておいて他人まかせだなんて。」
周りは既に聖杯の泥、いや激流の黒き川に成れ果てており、世界を滅ぼそうと外へと流れ込んでいた。聖女ジャンヌはそれを望んでしまった。
しかし、彼女には後悔などなかった。むしろこれで良かったなどとさえ、思えていた。
誰もいなくなれば、それこそ自身が何者であろうと関係ない。胸の内にある感情も無意味になる。例え、正義の味方がいようとも聖人君子がいようとも、無に帰してしまえば、悪という概念もなくなる。
何も悩まなくていい。何も考えなくていい。それが、一番良い選択。
「けど、やはりアンタはこの手で壊す。地上が呑まれつくされた時、私はここに戻る。」
だが、彼女の憎悪という名の炎が燃え尽きる事はない。時間が心を擦り切りようとも、摩耗させようと。
影に呑まれて、流されようとも。彼女の物語は終わることはない。
=====
ああ、あれから幾らの時間が経っただろうか。
一日か、一ヶ月か、一年か、十年か、あるいはそれ以上か。
寿命が尽きる事はなく、願望すらも持たなくなった。
ただあるのは欲望のみ。殺したいという一点、ただそれだけが頭を支配しようとする。
抵抗なんてバカバカしくて、してられない。もう無意味なのだから。
最初はここから出たいという事も思っていた。でも、その理由すらも、何が大事だったかも、誰とどこで何をしたかも覚えていない。
ただただ、泥の中を漂う。もう慣れてしまった。
けれども、今でも何かを思い出そうとする。思い出さなければいけないと、俺の中で躍起になる。
それでも、やっぱり、もうどうでもいい。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手!」
そんな中で誰かが俺を呼ぶ。
こんなハズレ英雄を引くとは、運のない奴だ。そもそも俺は英雄ですらない。何の伝説も持たないのに。
……伝説?なんで持ってないって分かるんだ?
まあいいか。呼ばれたからには応じるしかないだろう。それぐらいはできる。
どうせ、聖杯戦争なんかに呼ばれたんだろう。聖杯なんて俺はどうでもいいけど、やる事はやるさ。
……聖杯、戦争。懐かしいような、怖いような。
いや、今はいいか。
召喚には応えるだけ応えてやろう。
そう思った瞬間、泥の中を急激な速度で体が進む。それを抜け切った時、俺は外へ出たのだと確認する。
さて、建前上言っておくか。
「サーヴァント、
一応聞こう、お前が運のつきたマスターか?」
なんであろうとも、もういい。俺は諦めた。サーヴァントになろうとも、抑止力になろうとも、この身が死んでも構わない。
だから、さっさと縁を切ってほしいものだ。全てを絶望した俺に付き合わせるわけにはいかないのだから。