インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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第十八話 昼飯って、地獄の一種だっけ?

「……どういうことだ」

「ん?」

「あん?」

 

授業が終わって昼休み、俺達は一夏の誘いで屋上で昼飯にすることにした。食堂で食った方がおかわり的な意味で楽だが、たまにはいいだろう。セシリアもどうやら今日は弁当作ってたみたいだし。ガクガクブルブル

 

「天気がいいから屋上で食べるって話だっただろ?」

「そうではなくてだな……!」

 

篠ノ之の奴、何をブツブツ言ってんだ?こっちは腹が減ってるんだが。

 

「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきたばっかりで右も左もわからないだろうし」

「そ、それはそうだが……」

 

ちなみにこの屋上には俺、一夏、セシリア、篠ノ之、凰にシャルルの6人とそこそこの人数が集まっている。ちなみにもれなく全員が弁当持参だ。

 

「終わったか?ならはよ食おーぜ。昼休み終わっちまうぞ?」

「わるいわるい」

「ぐぬぬ……」

 

やれやれやっと食えるか。当の篠ノ之は何か納得いかないって表情だが、見なかったことにしよう。

 

「いっただっきまーす!」

 

パカ。と食堂で作ってもらった弁当を広げ、箸をのばす。うーん相変わらず美味い。視界の端で凰が一夏にタッパーを投げてるけど、食べ物で遊ばん方がいいぞ。罰が当たる。

 

「ね、ねえ龍輝」

「どした?」

「それって、全部龍輝の?」

 

食ってたらシャルルが声をかけてきた。何を当たり前のことを聞くんだろう?

 

「いぐざくとりー」

「そ、そうなんだ……ていうか何で英語?」

 

今ちょっと引いただろ。

 

「やはり訊いたか」

「そりゃあ、あれ見たらな」

「賭けにもならないわね」

 

おいそこの三人。聞こえてるぞ。

 

「龍輝さん、よろしければわたくしのサンドイッチもいかがですか」

 

……来たか。ある種の無間地獄が。

 

「あ、ありがとう。頂くよ」

「遠慮せずたくさん食べてくださいね。今回もいっぱい作ってきましたから」

 

ぐぅ、その眼差しは反則だ。こりゃ後ろに控えてるバスケットの中身全部食わないといかんだろうな。ハハ、腹いっぱいになりそうだ。

……グハッ!

 

「ええと、今更だけど本当に僕が同席してよかったのかな?」

 

俺が天国と地獄を同時に味わってる時にシャルルがそんなことを言ってきた。コイツほんと遠慮深いな。

 

「いやいや、男子同士仲良くしようぜ。色々不便もあるだろうが、協力してやっていこう。分からないことがあったら何でも聞いてくれ。―――IS以外で」

「一夏の言う通りだ。困ったときはお互いさま、俺に出来ることがあったら言ってくれ。―――IS以外で」

「アンタらはもうちょっと勉強しなさいよ」

「してるって。多すぎるんだよ、覚えることが」

「俺はそもそも肉体派だ」コフッ

 

だからって勉強しない理由にはならんからな。ちなみに俺はたまにセシリアやのほほんに見てもらってる。のほほん曰く「いざとなったらたっつんにはプロレスがあるからー」。これは諦められてるんだろうか?

 

「ありがとう。二人とも優しいんだね」

 

うーん、シャルルに女装させたら違和感なさそうだな。ついそう思ってしまう笑顔だ。ややひきつってたが。

 

「いや、まあ、これからどっちかがルームメイトになるだろうし」

「どっちが一緒になるんだろうなー」モグモグゴハッ

 

い、いかん……弁当と交互に食べて誤魔化そうとしたのが逆効果だったとは……!?

 

「どうした?腹でも痛いのか?」

「何でもない……気にするな……」

 

他の奴らを巻き込むわけにはいかん。俺が耐えれば済むことだ。

 

「そうか。ところで箒、そろそろ俺の分の弁当をくれるとありがたいんだが―――」

「…………」

 

一夏が篠ノ之から弁当をもらってるみたいだが、そんなこと気にしてる余裕はない。ようやくバスケット四つ目か。あとひーふーみーよー……やめよう、数えるの。

 

「じゃあ、早速……おお!」

 

一夏の感嘆の声が上がり、ついそっちの方に視線を向ける。……おお。

 

「これはすごいな!どれも手が込んでそうだ」

「つ、ついでだついで。あくまで私が食べるために時間をかけただけだ」

 

う、うまそう。セシリアのと違って中身もうまそうだ。おっと、こんなこと考えてたら罰が当たる。主に地元の友達の。

 

「そうだとしても嬉しいぜ。箒、ありがとう」

「ふ、ふん……」

 

知ってるか?こいつらこれで付き合ってないんだぜ。

 

「あれ?箒、何でそっちにから揚げがないんだ?」

「!こ、これは、だな。ええと……」

 

なんかゴニョゴニョ言ってるな。はあ、いいなあ。そっちの弁当。

 

「わ、私はダイエット中なのだ!だから、一品減らしたのだ。文句があるか?」

「文句はないが……別に太ってないだろ」

 

確かに。何で女子ってそんな体重気にすんだろう。

 

「あー、男ってなんでダイエット=太ってるの構図なのかしらね」

「まったくですわ。デリカシーに欠けますわね」

 

女子陣の厳しいお言葉が一夏に突き刺さる。何でだろうな。……バスケット九つ目。

 

「ダイエットねえ……俺には理解できんな。体重増えるならそれに越したことはないだろ?」

「いや、アンタの価値観で語られても―――」

「俺は食っても増えづらい体質だからさ、正直女子が羨ましいよ」

 

ピシッ

 

……なんか亀裂が入る音がしたような。気のせい……ではないよな。

 

「……齊藤、貴様」ゴゴゴ

「龍輝さん、今の発言は……」ゴゴゴ

「全世界の女子を敵に回したわよ」ゴゴゴ

 

……コワイ。こんな率直な感想しか出てこないなんて。

あまりの迫力に一夏はビビってるし、シャルルは震えてるし。

 

「え、えーと……」

「「「……」」」ゴゴゴ

 

やばい。このままでは確実に〇される。何かIS展開してるし。……こうなったら!

 

「逃げるんだよォ!」ダッ

「「「あっ!?」」」

 

三十六計逃げるに如かず!こうなったら逃げるしかない!

……後ろから怒号が聞こえるが、捕まったら……想像したくない。

 

 

結局あの後、授業開始まで逃げ回って、授業終わっても逃げて、放課後も逃げて。逃げて逃げて逃げて逃げて…………。

 

「し、死ぬかと思った―――」ハァハァ

 

どうにか巻いて部屋に逃げ込んだわけだが、正直しばらく動きたくない。まあでも、流石にここまでは来ないだろう。

日課のトレーニングもやらなきゃいけないし、少し休んだら始めよう。走り込みやった様なものだから、軽くでいいか。

 

「まったく。龍輝さんったらどこまで逃げたのかしら―――」ガチャ

 

……Oh my GOD.そういえば一緒の部屋だったZE☆

 

「……龍輝さん」

「よ、よおセシリア。How are you?」

「英語で誤魔化そうとしても無駄ですわ!やっと追い詰めましたわよ―――覚悟はよろしくて?」

 

や、やべえ……滅茶苦茶キレたままだ。入り口側に立ってるから逃げることもできないし、窓から飛び出るのは現実的じゃない。逃げるのは不可能。――――――とりあえず謝ろう。聞き入れてくれるかわからんけど。

 

「ひ、昼の発言については本当にすまなかった。正直、今思うと自分でも無神経過ぎたと思う」ガバッ

「……分かりました。今回は許しますわ。ただし、またあのような発言をしたら……」

「しませんしません!絶対しません!」ペコペコ

 

よかった、許してもらえた。まあ、セシリアに許してもらえたってだけで、他の二人はまだ怒ってるだろうけど。あとで謝っとかないとな。

 

「まったく、龍輝さんのせいで大分汗をかいてしまいましたわ。シャワーを浴びませんと」

「おう、じゃあ先食堂行ってるわ」

「ええ。ではまた後ほど」

 

と言って着替えの準備を始めるセシリア。汗をかいたせいか、制服姿なのに色気がいつもより5割増しに感じる。汗かいた姿ならいつも一緒にトレーニングしてる時に見てるが、それとこれとは話が別。

そういえば、何で一緒にトレーニングしてるんだっけ?確かダイエットがどうのって話だったと思うけど―――

 

「ダイエットなんかしなくても、十分綺麗だろうに」ボソ

「―――」ピク

 

さて、セシリアが浴び始める前にさっさと行くとする「ガシッ」……肩に、何か、プレッシャーが。

 

「セ、セシリア?」ギギギ

「―――今」

 

居間?

 

「今何とおっしゃいましたの?」

「え?」

「今!何と!おっしゃいましたの!」

 

な、なんすかそのすごみ。俺変なこと言ったっけ?えと、さっき言ったのって―――

 

「食堂行ってる……」

「その後のですわ!」

「ダイエットしなくても、十分綺麗だろ……」

 

パアア、と言った擬音が聞こえそうなほど表情がさっきまでとは違って明るくなってきた。

 

「そうですか、綺麗ですか。うふふ」///

 

後ろを向いて何だかくねくねし始めた。何だか知らんが、腹減ったし、飯行こう。

 

「じゃあ、先行ってるな」

「綺麗……龍輝さんがわたくしを……こ、これはチャンスでは!?」///

 

聞いてないっぽいけど、まいっか。飯行こ飯。

 


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