「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」
「そ、そうなのか?一応わかっているつもりだったんだが……」
シャルル達が転校してから数日、この学校では土曜日も授業があるが午後は自由時間になっており、折角だからといつものメンバー+シャルルでISの特訓をしようとアリーナに集まっていた。ちなみに俺は普段はウェイトや走り込みをやってる。
んでさっき一夏がシャルルと手合わせをして惨敗し、ああしてレクチャーを受けてるという訳だ。
「うーん、知識として知ってるって感じかな。さっき僕と戦ったときもほとんど間合いを詰められなかったよね?」
「うっ……、確かに。『
「一夏のISは近接格闘オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと勝てないよ」
こうして聞いてると、結構的確なレクチャーだな。まあ、あの二人に比べたらな……。
「ふん。私のアドバイスをちゃんと聞かないからだ」
「あんなにわかりやすく教えてやったのに、なによ」
この二人は所謂感覚派らしく、一夏から聞いただけでも耳が痛くなるようなものばかりだ。まあ、俺もどっちかというと感覚派だから、あまり大きなことは言えんが。
「そういえば、龍輝も近接型だったよね?いつもどう戦ってるのか、参考までに聞かせてもらえないかな?」
「俺か?俺は―――」
「ダメよデュノア、コイツのは参考にならないから」
答えようとした瞬間に凰が横やりを入れてきた。
「凰の言う通りだ。相手の攻撃は避けない
「……どこからツッコめばいいの?」
ぐぬぬ、確かに一般的な戦い方ではないと自覚はしてるが……篠ノ之の奴め、そこまで言わなくても。
あとシャルルが信じられないものを見るような目で見てるけど、俺は本当にこれしかできんからなあ。
「あはは……でも、俺は龍輝の戦い方はスゴいと思うぜ」
「そうですわ。生半可な覚悟と度胸では、ISでプロレスなんてできませんもの」
二人のフォローが身に染みるぜ。一夏とセシリアの二人には晩飯を奢ってやろう。
「そうだ!龍輝とも手合わせしてみろよ」
「えええ⁉」
「俺は別に構わねーぜ。久々に色々試したいからな」
ここ最近、テクニックの練習が出来てないからな。ここらで復習と実践をしておきたい。
「早くやろーぜ。体が冷えちまう」
「わ、わかったよ……」
返事を返してすぐ展開を終える辺り、さすが代表候補生といったところか。俺なんて最近ようやくパッと呼び出せるようになったってのに。
「シャルルー、頑張れよー!」
「龍輝さーん!ファイトー、ですわ!」
声援があるとやる気が出るな。それに比べて……。
「ねえ、どっちが勝つか賭けない?」
「いいだろう。今回は負けんぞ」
お前ら、最初とキャラ変わってないか?つーか賭けるな。あとその感じ、今回が初めてじゃねーな。
「それじゃあ、行くよ!」
「おっしゃ、来い!」
ファイティングポーズをとって、いざ尋常に―――
「齊藤龍輝!」
勝負しようとした瞬間、アリーナに大きめの声が響いた。そのせいでつんのめって転びそうになったじゃないか。
「ねえ、ちょっとアレ……」
「ウソっ、ドイツの第三世代機だ」
「まだトライアル段階だって聞いてたけど……」
急にアリーナ内もざわめきだした。俺は邪魔した不届きものを確認しようと声の主に視線を移す。
「…………」
そこにいたのはあのプロレスをバカにしたドイツのちっこい奴、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。名前間違ってないよね?
「齊藤、私と戦え」
いきなりだなあ。
「悪いが先約がある。あとにしろ」
「貴様の都合など知らん。今すぐ私と戦え」
こういうタイプ一番困るわー。ジムでスパーやるときだって先約を優先するのに、礼儀がなってないな。
「貴様のせいで、教官は変わってしまった。だから、私は貴様を―――貴様を許さん!」
めんどくせええええ!てかそれ、俺のせいじゃないだろ!織斑先生がプロレスを擁護するなんて、逆にこっちがビックリしたわ!
「言い分は分かった。だがさっきも言った通り先約がある。また次の機会にしてくれ」
「ふん。ならば―――戦わざるを得ないようにしてやる!」
と言った次の瞬間、肩に搭載されたバカでっかい砲台が火を噴いた。
「!」
ドゴオ!
「なっ!?」
「えっ!?」
「てめえ……痛ってえじゃねえか!」
危ねえ。力入れるのが遅れてたらヤバかったぜ。結構な衝撃だったからな、十メートルくらい後退させられちまった。
「馬鹿な……リボルバーカノンの直撃を受けて立っているだと!?」
ラウラの奴、なんか動揺してるみたいだな。余程自信があったのか。まあ確かに、ジムの先輩の膝蹴り位には痛かったけど。
「鍛えてるからな」
この学園に来てからもトレーニングは毎日欠かさずやっている。じゃなきゃレスラーは勤まらん。
「いや、あれもう鍛えてるとかの域越えてるよね?」
「だって、龍輝だし」
「この程度じゃもう驚かないわよ」
「安心しろデュノア、すぐ慣れる」
「流石龍輝さんですわ!」
何かシャルルも驚いて、一夏たちがなだめてるみたいだけど、まあいいか。
『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』
突然スピーカーから声が響く。まあ騒ぎを聞いて駆けつけた教員だろう。
「チッ……ふん。今日は引いてやる」
流石に教員に逆らうのはまずいと思ったのか、ラウラはあっさりと去っていった。いや、あの性格で教員の言うことに従うか?まあないだろうな。
「龍輝、本当に大丈夫なの?」
「ハッ!あんなの屁でもないわ」
とはいうものの、結構痛かったけどな。つかあの砲台、リボルバーカノンだとぉ、男心をくすぐる名前しやがって……正直羨ましいぞ!
「なんか手合わせする気分じゃなくなったな。今日はもう上がろうぜ」
「う、うん。そうだね、何だか変に疲れたよ……」
無理もないか。まだ転校して来て数日だし。しかし困ったな、この後トレーニングに誘うつもりだったんだが、疲れてるのでは無理強いもできん。ほど良く関係が築けて、且つ時間がある今日が最適だと思ったのだが。まあ後で様子見て、ダメだったらまた今度にするか。
「えっと……じゃあ、先に行って着替えて部屋に戻ってて」
「OK。んじゃ一夏、行くぞ」
「ああ。じゃあシャルル、またあとでな」
しかし腹が減った。今日は何を食おうかな。
―――
――
―
「「大浴場?」」
「はい。今月下旬から使えるようになります。時間帯別ですと色々問題が起きそうなので、週に二回の使用日を設けることにしました」
ちょうど着替えが終わったころ山田先生が更衣室まできて大浴場が使えるようになったと教えてくれた。何でもようやくタイムテーブルだか何だかの組み直しが終わったとか。時間かかりすぎじゃね?
「まあでも、風呂に入れるってのはいいなあ」
そう俺が呟いた横で、一夏が山田先生の手を握り感謝を述べていた。この学校来てからシャワーしか浴びてなかったから、久しぶりにゆったりと浸かりて~な~。
「……一夏?龍輝?何してるの」
「お、シャルルか」
そうこうしてるうちにシャルルがやってきた。……なんか怒ってるような。気のせいか?
「喜べシャルル。今月下旬から大浴場が使えるらしいぞ!」
「そう」
うーん、反応が冷たいな。何かしたっけ?
「ああ、そういえば織斑くんにはもう一件用事があるんです。書いてほしい書類があるので職員室まで来てもらえますか?」
大変だな。俺には特に用事ないみたいだし、シャルルもなんか怒ってるし、早々に退散するとしますか。
「じゃあ俺先部屋戻るわ」
「おう。じゃあまた食堂でな」
さて、部屋に戻って食前のトレーニングでもしますか。
◇
「いやー、ついやりすぎちゃったなー」ホカホカ
食前だから軽く済ますつもりだったのに。今月末からとはいえ風呂が使える喜びで浮かれてたせいかな?まだ体が火照ってるぜ。
「一夏ー、シャルルー。飯いこーぜー」コンコン
そんなわけで腹が減った俺は、晩飯に誘うために一夏達の部屋の前までやってきたのだった。ちなみにセシリアはあとで合流するってさ。
「ん?開いてる」ガチャリ
ドアを開けて中に入ったが、誰もいない……鍵を閉めないとは、不用心だな。
「あれ?龍輝」
「よお。今戻ったのか」
先に行こうか考えてるうちに一夏が戻ってきた。どうやら先生の用事で今までかかってたようだ。
「シャルルは?」
「シャワーじゃないか?というかお前、凄い汗だな」
言われてみれば、確かにシャワーの水音がするな。俺もシャワー浴びてくればよかったか。
「そういえば、昨日ボディーソープが切れてるって言ってたな。龍輝、ちょっと取ってくれないか?クローゼットに入ってるから」
「おう。えーっと―――」ゴソゴソ
よく考えてみれば、人のクローゼット漁るのってあんまりよくないんじゃ……まあいいか。お、あった。
「ほいよ」ポイ
「サンキュ」ガチャリ
一夏は俺が投げた替えのボディーソープを受け取ると、洗面所のドアを開け中に入って行った。うーん、シャルルのシャワーが終わるまで待つかな。いやでも体冷えるしな、風邪ひいちまう。……先行っていいか訊いてみるか。
「一夏ー、先に飯行って、いい、か……」
洗面所のドアを開け中を覗き込ん―――
「た、たつ……き……?」
「え、えーと……」
「……どういう状況?」
―――覗き込むと、一夏とどこか見覚えのある容姿の女子が立ち尽くしていた……どちらさま?