とりあえず、試合辺は何とか描き切れるように頑張ります。
令和もよろしくお願いします!
「なんというか……」
「すごかった、ね」
風間さん達の好意で、僕たち三人は練習を見学してたんだけど、正直に言って吃驚している。
今の時間は一般向けの練習らしいんだけど、僕の知ってる一般向けと違うような気がする。というか絶対違う。
「……」
箒だけ雰囲気が違うけど。まあ、お姉さんが気になって練習を見学するどころじゃないよね。
ちなみに龍輝や織斑先生を含む練習していた人達は、使ったマットやサンドバッグ、リング等を掃除している。なんでも『道具は大事に』、というのがここの信条で、なるべく自分達で後始末するようにしているんだって。
「にしても広いわね、ここ」
「そうだね。それに設備も充実してるし……こんな立派なジムを建てるなんて、風間さんって凄い人なんだね」
父さんの知り合いというだけでも驚きなのに、ジムを経営して指導までしているなんてね。
後で知ったんだけど、風間さん昔は某団体にフリーランスで参戦して、その団体のチャンピオンベルトを一年以上保持していたほどの実力者らしい。いまいちピンと来ないけど。
「悪い待たせた」
「全然大丈夫だよ。いつもあんな練習を?」
「まあな。夜はもっとやるけどな」
「あれはもっとってレベルじゃねえだろ」
掃除から戻ってきた龍輝に訊くと、さも当然みたいに答えてきた。それに一夏が補足したけど、あれよりって……一体どんなことやってるの……。
「齊藤、姉さんはどこだ?」
「束姉さんなら、明日の試合の打ち合わせで風間さんや織斑先生と話してるからな……まあでも、もうすぐだと思うぞ」
「そうか……」
というか、篠ノ之博士と再会してからの箒の雰囲気が凄い怖いんだけど。
「おう嬢ちゃん達、お疲れさん」
「あ、風間さん。今日はありがとうございました」
龍輝の言う通り、本当にすぐ来たね。その後ろには篠ノ之博士と織斑先生が続いている……横の箒の殺気が凄い怖い。
「飯まだだろ?よかったら食ってかないか?」
「え!?いいの!?」
風間さんの提案に鈴が凄い勢いで食いついた。確かに僕もお腹空いてきたけど……。
「ちょっと鈴、さすがに厚かましいんじゃ」
「若いのが遠慮すんな、大勢で食った方が飯は上手いからな!今から用意するから、できるまで少し待っててくれ」
「ほら、こう言ってることだしご馳走になりましょうよ!」
「もう、分かったよ。すみません、御馳走になります」
そう答えると風間さんは豪快に笑って、僕たちの頭をガシガシと撫でた。鈴は「髪が乱れる!」と言ってるけど、なんだかあったかく感じる。
「じゃあ出来たら呼びに来るから、しばらく
「「はい!」」
「束ちゃんと千冬ちゃんは準備を手伝ってくれ」
「はーい!」
「はいっ!」
そう言って風間さんたちはジムを後にしていった。
一体どんな料理が出てくるんだろう。何にしても、凄い量なんだろうなぁ。龍輝の食事量もあれだけど、確実にそれよりも食べるよね、風間さんたちって。
「ちょ、ちょっと姉さん!?」
風間さんに続いてジムを後にしようとした篠ノ之博士を箒が呼び止めた。
「ごめんね箒ちゃん、お姉ちゃんお手伝いしないといけないから、お話はご飯食べ終わったらね!じゃあ、また後で!」
「あ、ちょ――――――」
若干の申し訳なさそうにそういうと、篠ノ之博士はピュー、という効果音と共に足早に走り去っていった。後には呆然とする箒と何だかいたたまれない空気だけが残って、なんだかすごい気まずいよ。
「…………」
「ま、まあ、なんだ」
「あんま気落とすなよ」
一夏と龍輝がフォローしたけど、あんまし効果はないみたいだ。そりゃそうだよね、何年も行方不明で、久しぶりに再会したっていうのに、あんな感じなんだもんね。
「……齊藤」
「お、おう」
……嫌な予感しかしない。
「サンドバッグを使ってもいいか?」
「あ、うん。たぶん大丈夫だと思うけど」
「少し借りるぞ」
そう言うと箒はスタスタと足早に、サンドバッグのあるスペースまで歩いて行く。ちょっと遅れて慌てて龍輝が後を追い、僕たちもその後に続いて行く。
並んでいるサンドバッグのうちの一つの前に立つと、箒は深く呼吸をして……
「スゥ―――……セィイヤアッ!!」
シュッッバアァ―――ン!!
そのまま全力でサンドバッグを蹴っ飛ばした。すっごい音がした。
「姉さんはっ!いつもっ!いつもっ!!!」
スパーンッ!スパーンッ!スパーーンッ!!
そのまま連続で蹴り込んでいく。よっぽど鬱憤溜まってたんだなぁ。
「いやあ、いい蹴りだな」
「お前から見てもそう思うか?」
「ああ。フォームが綺麗だし、何より軸がまっすぐだ。道理で痛いわけだぜ」
そういえば、龍輝はこの間のタッグリーグの時に箒の打撃を受けてるんだよね。
「へえ、やるじゃない。あたしも借りるわよ」
箒に触発されてか、鈴も別のサンドバッグへと蹴り込もうと構えた。
「あ、そのサンドバッグは」
「っせい!!」
ゴッ
……あれ?何か鈍い音がしたような。
「……―――〜〜〜っっっ!!!???」
直後に鈴が足を押さえて床をゴロゴロと転げ回った。一体何が?
「あーやっちゃったか」
「なあ龍輝、あのサンドバッグって確か」
「ああ。風間さんや翔さんはじめ、プロ専用の特製のやつだ」
特製?……絶対ろくな意味じゃないだろうな。
「なん……なのよ……これ………っ!?」
「大丈夫か?」
「大丈夫か?、じゃないわよっ!硬すぎでしょこれっ!!」
「そりゃそうだ。中身砂鉄だからな」
「はあっ……!?」
砂鉄!?なんでそんなものサンドバッグに入れてるの!?
「んでそれを鉄板で囲って、その上にゴムを巻いてから皮袋に入れてあるからな。骨折しなかっただけでもラッキーだと思っとけ」
「頭おかしいんじゃないのっ!?」
「それは俺も思った」
僕もおかしいと思う。
「そうか?あのブルース・リーだって、鉄板入りのサンドバッグ使ってたらしいけど」
「それとこれとは話が違うと思うよ」
「いやシャル、お前の親父さんもこれ使ってたぞ」
「ウソでしょっ!?」
何やってたの父さん!?化け物の領域に片足ツッコんでない!?
「マジマジ。こう、エルボーとかでズドーンと」
「ええ……」
「まあ、夜練のメンバーって、全員ほぼ人間やめてるような人達ばっかりだったからな」
「いやいや、そんなことないと思うぞ」
多分一夏が言ってることに間違いはないと思う。こんなサンドバッグ常用している人たちが常人であってたまるか。
「なあ齊藤。もしかして姉さんもこれを?」
「いや、束姉さんはあっちの砂鉄だけのやつだ。こいつはトップレベルの人達しか使わないからな」
「いや砂鉄だけでも十分だと思うけど」
なんか、この場所にいると常識が狂いそうだ。
「―――何してますの、皆さん?」
ビクッ!?
「「「「うわぁっ!?」」」」
「おーセシリア、お疲れさん」
「お疲れ様です、龍輝さん」
び、ビックリした。あのサンドバッグの方に意識いってたから全然気づかなかった。
「な、何しに来たのよあんた!」
「何しに来た、とは心外ですわね。お食事の用意が出来ましたから呼びに来ましたのに。その様子では、鈴さんはいらないようですわね」
「あ、アンタねえ……!」
この二人、顔合わせれば喧嘩ばっかりしてるような気がする。
「まあまあ、喧嘩すんな。それよか、もう腹が減って仕方ないぜ」
「正直、俺もそろそろ限界だから、ちょうどよかった」
そういえば姿が見えなかったけど、準備を手伝ってたのかな。……実は僕もそろそろだったり。
「そうと決まれば、さっさと行こうぜ。今日のメニューは何だろうな」
「きっと驚きますわ。風間さん張り切ってましたから」
そのままジムの出入り口に向かう龍輝の腕にセシリアがするりと、それはもう自然な動作で腕を組んで一緒に歩いてった。……あの二人って。
「凄いだろ。アイツらあれで付き合ってないんだぜ」
「何で進展しないんだろうね」
「逆に尊敬するわよね」
「私も見習うべきだろうか……」
ホント何なんだろう。もう疲れてきたよ。
◇
「はふっ!がつっ!んぐ!」
「むぐっ!はむっ!ぬぐっ!」
「ふぬっ!まくっ!なごっ!」
何だろう、この光景。
「いーい食いっぷりだな、三人とも!まだまだいっぱいあるから、じゃんじゃん食え!」
「「「はいっ!!」」」
目の前で龍輝と織斑先生と篠ノ之博士がものすごい勢いで鍋とご飯を食べている。いや龍輝は分かるよ、いつもあんな感じだもん。でも後の二人はキャラが違うでしょ!
「やべーぞシャル!俺等も食わないと、みんな食い尽くされちまうぞ!」
「あ、うん。そうだね」
正直ここに来てから驚きの連続で食欲湧かないよ。
「どうだ嬢ちゃん達?俺特製芋煮鍋の味は?」
「とても美味しいです」
「初めて食べたけど、結構いけるわね!」
「そりゃよかった!はっはっは!」
確かに美味しい。ソイソースベースのスープと具材のうまみが上手く調和してて、なんだろう、あったかい味がする。
「おかわりもいっぱいあるから、じゃんじゃん食えよ!」
「いや、あの三人と一緒にしないで」
鈴、口ではそう言ってるけど、その手はすでにおかわりしようと鍋に手がのびているよ。
「ほいよシャル、このくらいでいいか?」
「うん。ありがとう一夏」
と言いつつ僕もおかわりしちゃってたり……だって美味しいんだもん!
「そういえば風間さん、確か今日でしたよね?あいつが合宿から帰ってくるの」
「ああ。もうすぐ着く頃だとは思うんだが、遅いな」
「大方寄り道でもしてるんだろ」と言いつつまた鍋に手を伸ばす風間さん。あいつって誰の事を言ってるんだろう?
「龍輝が私の帰りを気にするなんて……もしかして寂しかったの?」
「冗談言わんでください。誰があんなじゃじゃ馬―――」
……どうしたんだろう?急に龍輝が食べる手を止めて凍り付いた。というか今の声、誰の?
「へえ、じゃじゃ馬ねえ……アンタも言うようになったわね」
「え、あ、お――――――」
ギギギ、とまるでさびた歯車のような音が聞こえるような感じで龍輝が恐る恐る振り向き、僕たちもそれに続いて声の主に視線を向ける。
キリっと整った顔立ち、服の上からでも分かる抜群なプロポーション、菖蒲色の髪の毛をサイドテールでまとめた女の子がそこに立っていた。
((((((……え、誰))))))
「おーおかえり」
「合宿お疲れ様」
「ただいまパパ、ママ」
パパ、ママってことはもしかして……風間さん達の娘ってこと?
「お、お前、いつの間に帰って」
「今しがたよ。まったく、数ヵ月ぶりに会う幼馴染みに対して、何か言うことはないの?」
幼馴染み?そういえば前に龍輝がそんなこと言っていたような……
「んなもんねーよ!大体、数ヵ月って言っても3ヶ月しか経ってないだろうが!」
「あっそ。まああんたに気の利いたことを言えってのが無理な話だったわね」
あの龍輝があんなに動揺するなんて、初めて見たかもしれない。
「ところで、この人達は?」
「ああ、龍輝の担任の先生とクラスメイト達だ。ほら、挨拶しなさい」
「はじめまして、
「一言余計だ!」
これは、なんというか……同じ幼馴染でも箒や鈴とはまた違った感じの人だなぁ。
「織斑千冬だ。こいつらの担任をやっている」
「ああ!もしかしてパパが酔うといっつも話してた『自慢の一番弟子』の!」
「ふえっ!?」///
わー、織斑先生顔真っ赤ー。
「そうだぞー、千冬ちゃんはすごいぞー。なんたって世界一になったんだからな」
「か、かか風間さん!?」
「へー」
こんな狼狽えてる織斑先生も初めて見たけど、それより澄香、さん?だっけ、反応薄くない?というか織斑先生のこと知らなかったのかな?
あと篠ノ之博士が凄いむくれてるけど。
「むー!私だって風間さんの弟子なのにー!」
「そうむんつけるな!束ちゃんも、俺の大事な弟子だからさ」
「っ!」パアァ
あ、笑顔になった。こんなこと言っちゃあれだろうけど、ちょろーい。
「んんっ!わたくしはセシリア・オルコット。龍輝さんの『人生のパートナー』を務めております」
「私はラウラ・ボーデヴィッヒ。言っておくが、
また火花散らしてるよこの二人。
「ふーん。まあ安心しなさい、私はコイツの事なんも思ってないから」
「はんっ!お前に好かれてるなんて想像するだけで吐き気するわ」
と龍輝が言ってすぐ彼女の拳骨が飛んできた。その一撃で龍輝は沈黙してしまい、テーブルに突っ伏した。
まあ、今のは自業自得、かな。
「僕はシャルロット・デュノア。ええっと、澄香さん、だっけ?」
「澄香でいいわ、同い年だろうし。デュノアってことはあんたがデュノアさんの娘?」
あ、もう伝わってるんだ。
「う、うん(未だにちょっと信じられないけどね、父さんがここに通ってたって)……」
「『
「何その二つ名!?父さん何やってるの!?」
もう父さんのことが分からなくなってきたよ。僕が知ってる父さんってなんかこう、もっと冷めた感じだったのに。
「まあそんなことはいいわ。同じレスラーの娘同士、仲良くしましょうシャルロット」
「あ、うん、よろしくね。僕のこともシャルでいいよ、澄香」
「よろしく、シャル!」
なんか気になる一言があったけど、もう気にしてたら僕の頭と胃がもたないから、スルーしよう。
「あたしは凰鈴音よ」
「篠ノ之箒だ」
「鈴音と箒ね、よろしく」
「ちなみに箒ちゃんは私の妹なんだよ!スミちゃん!」
「へえー、そうなんだ」
「……」
今度は無難に済んでよかった。
これ以上僕の胃が痛くなりそうになくて、少し安心かな
「俺で最後か。俺は織斑一夏、龍輝の友達だ。よろしくな」
「フーム……」
澄香が今度は一夏の顔をじっと覗き込むように見ている。……嫌な予感がする。
「な、何?」
「15点」
「え?」
「顔はまあまあだけど、変に余計な気を使って怒らせそう。あと単純に好みじゃない」
おぅっふ。やっぱり予感的中しちゃったよ。しかもちょっと当たってるし。
「あ、アンタねえ!」
「いきなり何を言ってるのだ!」
まあ当然と言っちゃ当然だけど、一夏があんまりなことを言われたので鈴と箒が食って掛かった。
「いや、だって本当のことだし。何か男らしくないっつうか、そういうのはちょっとね」
「「はあっ!?」」
「二人とも落ち着けって。俺は何とも思ってないから」
一夏がそういうけど、もうこれは止まらないだろう。ここまで火ついちゃったら、ね。
「じゃああんたはどんなのが良いって言うのよ!?」
「私?私はやっぱり―――」
そういって澄香は鈴の質問に対して、
「パパみたいな男の人がタイプ!というかパパが世界でいちばんカッコいいし!」
「「……は?」」
風間さんに抱き着きながら答えた。あ、そうか。だから一夏に反応しなかったんだ、確かニュースになっていた筈なのにね。
「はっはっは!そう言ってくれると親冥利に尽きるよ」
「私、結婚するならパパとがいいな~」
あ~成程。つまり澄香は……ファザコンって事か。
「……澄香?」
その一言で、さっきまで騒がしかったこの空間が一気に凍り付いたような気がした。その原因の一言を発したのは、風間さんの奥さんのあやねさんだ。周囲にはさっきまでの優しい雰囲気はなく、とてつもなく冷たい殺気を纏っている。
「なぁにママ?」
「いつも言ってるでしょ?パパはママの物だから澄香とは結婚できないって」
「ふーんだ!そんなのどうとだってしてやるもん!パパだって、若い娘の方がいいよね?」
「あっはっは、参ったなこりゃ!」
いや笑ってる場合じゃないでしょ!どうすんのこの空気!
「どうやら『オシオキ』が必要の様ね……!」
「年増のヒステリーは醜いだけだよ?」
そう言って二人はものすごい殺気を纏いながら表に出ていった。
そのあとは、聞こえてきた凄まじい音と屋内まで届いてくる殺気に、もう食事どころじゃなかった。ただ、そんな中でも食事の手を緩めない風間さんと篠々之博士、あと復活した龍輝を見て、これがここの日常なのか、と思った。
キャラプロフィール
名前―風間澄香(かざま すみか)
年齢―16
誕生日―5月5日
身長―159cm
体重―××kg
スリーサイズ-B:90/W:56/H:85
風間龍輔と風間あやねの娘。歯に衣着せぬ性格で、思ったことはズバッと言う。ISに興味がなく、父親と離れたくないという理由から地元の高校に進学。学校では、竹を割ったような性格と母親譲りの容姿とプロポーション、運動能力のおかげで人気者である。
レスリングに関しては天性の才能を持ち、父親仕込みのテクニックも相まって、その実力はトップクラス。本人にプロレスラーとしてデビューする気はなく、夢はお嫁さん。
ちなみにファザコンなため、しょっちゅう母親と喧嘩しているが父親がらみでなければその仲は良好。
龍輝のことは単なる幼馴染としか思っておらず、逆にセシリアとラウラを応援している。