インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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第三話 ルームメイト?

「……」

「な……!?」

 

俺は寮の自室(二人部屋)で荷物の整理をしていた筈なのに……何で。

 

「何であなたが、この部屋にいますの!?」

 

何で俺の目の前に、あの高飛車お嬢がいるんだ?

 

「何でって、ここは俺の部屋だからな」

「ここはわたくしの部屋ですわ!ってまさか!?」

 

……ああ、そう言う事か。

 

「わたくしのルームメイトって……あなたですの!?」

「そうみたいだな」

 

正直面倒くさい。……が、文句を言っても仕方がない。とりあえず荷物の整理を続けよう。

 

「さ、最悪ですわ。急に二人部屋に変更になったことは我慢できるとしても、よりにもよって……」

「心配せんでも何もしやしねーよ。それに一ヶ月すれば部屋移っから」

 

そう、たった一ヶ月の我慢だ。

 

「そうですの?……まあ一ヶ月くらいなら……」

 

意外だな。一ヶ月でも我慢できんとでも言うかと思ったぞ。

 

「ところで、俺の衣類はどこにしまえばいい?」

「そんなの、その辺の床にでも置いておけばいいのでは?」

 

窓側のベッドに腰かけながらセシリアが言った。どうやら窓側(そっち)がアイツのスペースらしい。まあ、元から手前側にするつもりだったしな。

しかし床に置けとは……。そういう訳にはいかんよ、しわくちゃになるし。

 

「俺の分のクローゼットはないのか?」

「お生憎様、この部屋のクローゼットは全て、わたくしの衣服でいっぱいですの」

 

まあ女子は服が多いとか聞くし、さっきの言い方じゃ元々はコイツの一人部屋だったみたいだしな。

 

「わかった。俺の分はベッドの下にでもしまうとするよ」

「あら?随分と物分かりがいいんですのね」

 

こういうのは反抗すると余計に面倒くさくなる。早めに切り上げるのが一番だ。

衣服をベッドの下にしまい、残りの荷物の整理を進める。といっても、残りのはトレーニング器具だから、気を付けないとな。

 

「他の決まりも決めておいた方がいいですわね。まずシャワーですが―――」

 

段ボールの包装を解き、中に入っていた荷物を取り出す。複数のパーツに分けられてる為、組み立てないといけない。必要な工具は同梱されてたのですぐ取り掛かることができる。

構造自体は簡単なため、組み立てはすぐ終わった。

 

「……ふう」

「―――に決め……聞いてますの?」

 

一息ついてるとセシリアが訊いてきた。

 

「ああすまん。聞いてなかった」

「あ、あなた!またしてもわたくしを馬鹿にしてますの!?」

 

してねーよ。とセシリアに返答しつつバーベルシャフトとダンベルシャフトの包装を解き、床に置く。取り付けるプレートは小分けにされており、開けるのに一苦労だ。プレートラックを先にベッドの頭の横に設置し、開けた端からプレートを掛けておく。ベンチをベッドの横に移動すれば、終了だ。

整理を始めて一時間ちょっと。……ようやく終わった。段ボールは纏めて端っこに置いておいたので、明日にでも捨てておこう。

 

「随分と時間が掛かりましたわね」

「荷物が荷物だからな」

 

どうやら終わるまで待っててくれたらしい。律儀な奴だ。

 

「で、何の話?」

「この部屋の決まりですわ!シャワーはわたくしが使いますから、貴方はそこの水道で体を洗いなさい。それから雑用は全てあなたがすること。それから―――」

 

何と滅茶苦茶な。っと、もうこんな時間か。あと少しで晩飯に行かなきゃいけないが、その前に軽く汗を流すとしよう。

シャフトをベンチにセットし、プレートを通していく。とりあえず90スタートでいいか。

ダンベルは後ででいいか。

後はトレーニング着に着替えてっと。

 

「あ、あなた!何故いきなり服を脱いでますの!?」

 

あ。素で忘れてた。まあ着替えなんてすぐ終わるし気にせんでええか。

 

「やっぱりわたくしを襲うつもりでしたのね!このケダモノ!あなたなんかにわたくしが―――」

 

すっかり自分の世界に入っている。とっくに着替えは終わっているのに……。埒が明かないし、無視して始めよう。

まずはウォームアップだ。ヒンズースクワット、プッシュアップと基本のメニューをこなす。

終わったらすぐベンチに横になり、ベンチプレスを開始。ちなみにセシリアはそっぽを向いてぶつぶつと何やらつぶやいてるせいか、俺のやってることに気付いてない。

90を10回上げたら、すぐ重さを変える。今度は100だ。

インターバルを置き、1セット目を開始する。今度は5回上げてシャフトを戻す。これを後2セット。晩飯前だし、時間もないからこれくらいで十分だ。

 

「―――何をやってますの?」

 

不意に声をかけられた。どうやらセシリアが正気に戻ったらしい。インターバル中だからよかったものの。セット中だったらびっくりして落としてたかもな。

 

「見りゃわかんだろ。食前のトレーニングだ」

「トレーニングって……わたくしの部屋で暑苦しいことしないでくださいまし!」

「一ヶ月だけとはいえ、ここは俺の部屋でもある。わかったら話しかけるな。トレーニングの邪魔だ」

「―――っ!?」

 

見るからに怒っている。面倒くさいなあ。だがあと2セットだけ、すぐ終わる。それまで耐えててもらおう。

 

――――――

 

「…ふっ!…ふっ!」

「……」

「ふっ……ぬん!」ガシャン

 

最後のセットが終わり、トレーニングは無事終了した。セシリアが大人しいくらい静かだったのが気になるが、まあいいだろう。

時間はちょうど午後六時を少し過ぎた頃だ。さっさと片付けて飯に行こう。

 

「終わりました?」

「ああ」

 

どうやら俺が終わるのを待ってたらしい。正直、さっさと飯に行きたい。着替えるのめんどいし、このままでいいか。

 

「少しお話が」

「わりい。飯食いに行くから後にしてくれ」

 

セシリアの口を遮って部屋を飛び出す。すまんが腹減ってるんだ。

 

「え?ちょっと!」

「オマエも早く食いに行った方がいいぞー」

 

一応の忠告をして走り去る。つい、あばよとっつぁ~ん。と言いたくなってしまった。まあ一緒に飯行ってもよかったんだが、正直気まずいしな。

 

「あ、龍輝君だ!」「本当だ!」「アレ部屋着?」「いい体してるね~♪」

 

……やべえ。他の女子の事がすっかり抜け落ちてた。どうしよう。

そうだ、一夏を誘おう。そうすれば少しは気が楽になるかも。

そう思い一夏の部屋の近くに来たが、なにやら様子がおかしい。野次馬が発生しており、これ以上近づくことができない。

俺には気づいてないみたいだし、仕方ない。一人で食いに行こう。

 

 

「ふん!…ふん!」

 

晩飯を終え部屋に戻った俺は今、ダンベルを上げている。

正直気の休まらない晩飯だった。トレーニング着のままで行ったせいか、視線が酷く突き刺さった。何故か一夏は来ないし……。

仕方ないので飯をかっ込んでさっさとすまし、部屋に戻ってトレーニングをしてるという訳だ。

 

「お……らァ!」ガタン

 

上げ終えたダンベルを床に置く。重量は25kg。今の俺ではまだまだキツイ。

 

「ハァ…ハァ…次は…」

 

間髪置かず次の準備をする。幸運なことに、今セシリアは部屋にいない。大方大浴場にでも言ってるのだろう。ああいうのは風呂好きと相場が決まってるからな。

戻ってくる前にシャワーを浴びたいが、次の種目が終わるまでは浴びれん。

集中して、さっさと終わそう。

 

「しゃあッ!」

 

次の種目はダンベルフライ。気を抜くと肩を痛めるから注意せねば。

 

「ふん!…ふ…ん!……ッらァ!」

 

順調に進み、最後のセットも終わった。すっかり汗だくだ。

 

「ハァ…ハァ……」

 

片づけてシャワーに向かおうとしたが、肝心なことを忘れていた。

 

「プロテイン…飲まないと……」

 

あらかじめ作っておいてよかった。ちょうどいい感じに混ざって飲みやすくなってる。

俺はプロテインを一息に飲み干し、軽くすすいで流し台に置き、そのままシャワーに向かった。

 

「ああ~気持ちいい~」

 

熱いシャワーが疲れた体に染み渡る。おっと、あんまりゆっくりしてセシリアが戻ってきたら面倒だ、もう出るとしよう。

 

「ふぃ~」ガチャ

「やっぱりお風呂は……え?」ガチャ

 

……いや大丈夫だ。シャワー室の中でパンツだけは履いたから見えてない筈。え?そういう問題じゃない?

 

「い、い……!」

 

ヤバい。俺の直感がヤバいと告げている。しかし防ぐと反射的に反撃しそうだから、我慢して受けないと。

 

「イヤアアアアアアアアアアアアア!!?」バシーン

 

……いひゃい。

 

 

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