インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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最新話の更新、話の流れに従い、第二十一話の内容を一部変更しました。


第四十二話 天才登場!

選手控室の一室にて、試合会場の様子を映したモニターを見ながら、心に炎を灯し闘志を滾らせている人物がいた。

 

「流石たっくん、風間さん譲りの熱い戦いだね~」

 

第二試合に出場する、アリス・ザ・ラビットこと篠ノ之束である。そしてもう一人……。

 

「そんなのんきにしてていいのか?デビュー戦だというのにあの盛り上がり様、喰われるかもしれんぞ?」

 

エキシビジョンとはいえ、同じくプロデビュー戦を行う織斑千冬が尋ねる。ここでいう喰われるとは、今回の興行での話題、観客の熱といったものを持っていかれるということである。同じ日にデビューとはいえ、自分より後に弟子入りした、いわば後輩にそんなことをされれば、先輩としての立場がない。

 

「あはは、ちーちゃん面白いこと言うね」

「フッ、確かにつまらないことを言ってしまったな」

 

しかし、束は笑って一蹴し、千冬も驚くことなくそれを認める。

 

ワアアアァァァ!!

 

「そろそろ終わるな」

「だね。さて、と」ギュッ

 

手に持っていたマスクを被ってから座っていた椅子から立ち上がり、控室の扉を開ける。

 

「行ってくるよ、ちーちゃん」

「ああ……魅せて来いよ」

 

その言葉に、束は親指をぐっと上げて応え、控室を後にした。

 

 

ザワザワ

 

第一試合が終わり、興奮した熱が冷め止まない観客たちは、次の試合を今か今かと待ち望んでいた。

 

「はあぁ~……龍輝くんすごかったぁ~」

「本当、あそこから逆転するなんて、かっこよすぎるよ……」

「いや~魅せてくれるね、たっつん~」

 

この三人も、先の試合の熱にやられてしまった口で、本音を除いた二人は半分惚けている。

 

「次の試合は、たっつんの先輩のデビュー戦か~、どんな試合をするんだろう~?」

 

第二試合は他団体の新人レスラーと、龍輝の先輩であるアリス・ザ・ラビットの試合。パンフレットにはレスラーのプロフィールや経歴が簡単にであるが載っている。例えば対戦相手である白木(しらき)真奈(まな)については身長、体重、得意技まで乗っているが、アリスの欄には何も載っていない。全てが不明と書かれているのだ。覆面レスラーでのデビューというだけで特別なのに、更にこのような扱いとくれば観客の興味は必然と彼女に向く。

 

『これより、第ニ試合を行います』

 

さあ始まるぞ!待ち焦がれた舞台で、彼女は一体どのように魅せてくれるのだろうか!

 

 

(姉さん……)

 

篠ノ之箒、彼女の心中は昨夜に比べて落ち着いてはいたが、それでも未だ自身の姉である、篠ノ之束への疑問は尽きていなかった。

 

(あなたは一体、何に魅せられてプロレスへの道を志したのか、今日の試合で答えると言っていた)

 

束は言葉では語ろうとはしなかった。天災の頭脳をもってしても、言葉での説明は難しかったのか、あるいは……。

 

(私にはあなたの考えは解らない。なぜあんなことをして、何故今プロレスなのか……その答えが、この試合にあるというのなら、私は―――)

『これより、第ニ試合を行います』

 

試合の開始が告げられる。時は、来た。

 

 

『青コーナーより―――アリス・ザ・ラビット入場!』

 

(入場曲:『スターダストクルセイダース』菅野祐吾)

 

会場の緊張を煽るようなBGMと、それに合わせてレーザーが飛び交い、入場を演出する。

 

『マスクを被り、正体を隠してのデビュー……何も珍しいことではありません。しかし!これから姿を表す彼女は、身長、体重、実力の一切が不明、全てがヴェールに包まれています!不思議の国に迷い込んだ少女の冒険譚は、夢物語という結末でしたが、此度の物語は、決して夢ではありません!』

 

そしてライトが一際大きく輝き花道を照らした時、飛び交うレーザーをその身に受けて、秘匿されていた存在がその身を露わにする。

 

『神秘のヴェールに包まれし、不思議の国からの使者は、そのマスクの下で何を思うのか!?周囲には目もくれず、その視線の先にあるのはリングのみ!今日この日、その神秘の一端を我々に魅せつけるのか!?おっと駆け出した!その勢いのまま、跳びこんでリングイーィン!!白ウサギは今、四角いジャングルに降り立ったーぁっ!!』

 

まるで本物のウサギのような身軽さで、花道を駆け抜けて一跳びでトップロープを超えリングに飛び込む。その一連の動きだけで観客の関心はさらに彼女へと集まる。

 

『赤コーナーより―――白木真奈入場』

 

(入場曲:『信じる仲間とともに』佐藤直紀)

 

低く、静かな輝きと、スモークが立ち込める。

 

『昨年末、あるニュースが世間を飛び交いました。グラビアアイドル、白木真奈のプロレス参戦……芸能界はもとより、プロレス界にも激震が走り、多くの関係者が彼女に問いました。何故プロレスなのか、何故今なのか!IS―――インフィニット・ストラトスが開発されてからというもの、プロレス界の火は下火に差し掛かっているのに何故!?それは、彼女は知っていたからだ!プロレスは、その程度で挫かれたりはしないと!!』

 

レーザーがスモークを切り裂き、ライトが瞬くと花道にその姿はあった。

 

『想像を絶する厳しさがありました。しかし彼女は、そのすべてを跳ね除け、自らの信じた道を進み続けてきた!華麗な芸能界時代と比べ、泥臭く闘う姿を批判する者もいます!だからこそ私はこう思います!今の彼女の、この泥臭い姿こそ、真の美しき姿であると!自分の歩んだ道は正しかったと、間違いではなかったと、このリングの上で、証明してみせろっ!!』

 

リングの中へと踏み込むその迷いなき姿は、新人とは言え一端のプロレスラーであると認識させた。

一度リングに上がれば、それまでの経歴や実績など関係ない。今この時間、この場におけることがすべて。

 

『これより、第二試合、20分一本勝負を行います!!』

 

ワアアアァァァーーー!!!

 

第一試合に負けず劣らずの歓声が会場を揺らす。

 

『青コーナァー。身長、体重不明。ドラゴンピット所属、アリス・ザ……ラビィットオオーー!!』

 

四角いジャングルに飛び込んだ白ウサギは、人の首刈る獰猛な牙を持つのか。

 

『赤コーナァー。157cm、65kg。ワルキュリア所属、白木……真ぁ奈ああーー!!』

 

美しき戦乙女は、この舞台で輝きを魅せるのか。

 

『レフェリー、和田史郎』

 

レフェリーがボディチェックを終え、二人をコーナーに下がらせる。一触即発のピリピリとした空気がリング上に充満し、開始のゴングを、今か今かと待ち望む。

 

「ファイッ!」

 

カアァーーーン!!

 

それは、ゴングと同時に爆発した。

 

「せぃやあああっ!」

「ッ!?」

 

ゴングと同時に白木が奇襲し、まともにエルボーをもらってしまう。

 

『おっと白木の奇襲で始まりました。最初からペースを握りたいといったところですかね』

『だろうな。相手の正体が不明だから、何してくるかわからんからな』

 

実況席で冷静に解説をしている時、白木は連続エルボーから次のムーブに移る。

 

「ふん!」

 

アリスの体をロープに押し付けてから反対のロープに振り、自身も追走していく。ロープに持たれた瞬間にぶち当たり、場外に叩き落とすのが狙いだ。

 

「ほいっと」

「なっ!?」

 

しかしその目論みは、 アリスのとんでもない行動により破られる事となる。

何とアリスは、ロープに降られた勢いそのままにトップロープに跳び乗り後方に反りながら飛んだのだ。それを見た白木は状況が読み込めず、追走の勢いを止められずにロープに突っ込んだ。

 

『これは凄い!トップロープからバク宙で白木選手の後方に着地した!』

『アイツは宇宙人か』

「タァッ!」

 

そして白木の振り向きざまに、頭部へ跳び付き後方へ勢いよく反り、頭からマットに叩きつけてそのまま抑え込む。

 

「ワン、ツー」

「うぁあ!」バッ

 

しかしそこは返す。意表を突かれたとはいえ、そこまですぐ決まってしまうほどやわではない。

 

『まさかの跳び付きウラカン・ラナ!何というバネだ!』

『これで流れ持っていったな。いや流石だね』

 

風間の言う通り、今の一連の動きで会場の空気、試合の流れは全てアリスが掻っ攫っていった。

 

「こ、コイツ……!」

「ふっふーん」

 

膝に手をつきながら立ち上がる白木から距離を取り、華麗なステップを踏みながらアリスは待ち構える。

 

(さあ、ここからがショウタイムだよ!)

 

まだ彼女の舞台(試合)は始まったばかりだ。

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