インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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入場曲めっちゃ迷った。

あと、ゼロの使い魔とモンハンのクロスを思いついたので、書こうと思ったのですが、資料で使おうと原作を買いに行ったらどこにも置いて無くて軽く絶望しています。
これは一本に集中しろということなのか。

追記
アニメ「旗揚!けものみち」面白いので是非見てください!


第四十四話 積み重ねた想い

―――試合は進み、現在はリングの調整や清掃等のため、10分間の休息時間がとられていた。

この時間では試合が終わった選手によるサイン会が行われており、売店は人の波でごった返していた。

その中にはIS学園の生徒の姿もあったが、それはまた別の話。

そして、休息時間も終わった頃、実況席でも動きがあった。

 

『……えー、ドラゴンピット10周年記念興行Wave the NEW GENERATIONS、早いもので試合数も残り約半数となりました。ここからは私、倉本康夫が御送りします。解説席には風間龍輔選手に代わりまして、ドラゴンピット設立からのメンバーであり、風間選手の友人でもあります藤井雅信選手にお越しいただいております』

『よろしくお願いします。しかし、プロではない自分がここに座るなんて、何か恥ずかしいですね』

『そう謙遜しないでください。聞いた話では、藤井さんは並みのプロ以上の実力だとか』

『ははっ、只人より長くやってるだけなんで……まあ、まだ若い連中には、負ける気はしませんがね』

 

実況席でそのようなやり取りをしているうちに、観客達が段々と席に戻ってきていた。

 

『さて、まもなく後半戦が始まりますが、その前に前半四試合を振り返ってみましょう』

 

―――第一試合は齊藤龍輝VS呉石水穂の異種格闘技戦。お互いプロデビュー戦同士となったこの試合、序盤はプロレスルールを活かした攻めで齊藤が優勢に進めてましたが、中盤呉石が逆襲、打撃と鮮やかな絞め技の連続で攻め立て、このまま絞め落とすかと思われました。

しかし齊藤が奇跡の反撃、カウンターのスープレックスを皮切りに大技を叩き込み、最後はジャーマンスープレックスホールドでピンフォール。見事デビュー戦を勝利で飾りました―――

 

―――第二試合はまたもや新人のデビュー戦。神秘のマスクに素顔を隠したアリス・ザ・ラビットと元グラドルレスラー白木真奈の試合ですが、開始早々まさかの展開。天才的としか呼べない動きでアリスが終始ペースを握り続けます。

後半に差し掛かった辺りで白木が逆襲。強烈な打撃とサブミッションで攻め立て、ストレッチプラムで決めようとしますが、白木のフィニッシュからもアリスは脱出しカウンターで投げ飛ばします。そして起き上がりざまにシャイニングウィザードを叩き込み、最後は変形スピニングボムでフィニッシュ。まさにこれからが楽しみになる試合内容でした―――

 

―――続いての第三試合、関東女子プロレスで今最も勢いのある二人、鈴三谷千春と神山クレア。対するは、ドラゴンピットの若き職人姉妹、黄坂瑠璃・璃々。黄坂姉妹がドラゴンピット仕込みの高いレスリングテクニックで攻めますが、途中場外に落ちてから流れが代わり、鈴三谷・神山組がお返しとばかりに攻め立てます。

しかし功を焦ったのか、神山は得意技のパワーボムを仕掛けるが返され、流れは再び黄坂姉妹に。

息の合ったコンビネーションで攻め続け、最後は姉の瑠璃が鈴三谷にクロスフィックスホールド、妹の璃々が神山にチキンウィングフェイスロックを極め、ダブルタップという結果で試合を終わらせました。基本に忠実なその試合展開は、まさにドラゴンピットの人間といったところでしょう―――

 

―――うって変わって第四試合は迫力のある試合となりました。プロレスリング・ビザールの東条丈士・七村億斗組と、イギリスのジョセフ・ジョンソンとイタリアのシーザー・ゼルビーニの友情タッグの対決。序盤からヘビー級同士らしい激しいぶつかり合いが展開されましたが、途中シーザーが捕まり、東条・七村組のコンビネーションにさらされます。

しかし、トレイン攻撃をシーザーがゼロ戦キックで迎撃するとそのままタッチ、交代してジョセフが出てくると一気に二人を蹴散らし、流れを奪うと試合権のある七村にラッシュ。魔術師の異名は伊達じゃないと言いたいのか、195cm、115kgの巨体からは想像もつかない軽やかな動きで翻弄し、コーナートップに上ると高く跳んでのムーンサルトプレスを敢行、そのままフォールにいくがそこは東条がカット。両軍入り乱れての乱戦が続きますが、最後は体格と経験で勝るジョセフ・シーザー組が七村に得意のツープラトン、ウェイブサンドを決めフィニッシュ。来月行われるタッグタイトルマッチへ向けて勢いをつけたというところでしょう―――

 

『……いやーこうして見ると、前半戦だけでもかなり濃い内容になってますね』

『そうですね。特に第一試合と第二試合はドラゴンピットの新人のデビュー戦ということもあり、注目度が高く感じられました』

『タイプが違う二人だから、余計にな。あいつらは来た頃から知ってますが、まさかデビューしちまうとはね。なんか感慨深いですよ』

 

うんうんと頷きながらそう語る藤井の表情はどこか誇らしげであるが、奥には強者の余裕というものが感じ取れるようであった。

 

『ジム最古参の藤井さんは特にそうですよね。さて、いよいよ後半戦が始まります。後半戦一発目はエキシビジョンマッチ、ドラゴンピットのアイドル・萩原莉緒対、風間龍輔の一番弟子・織斑千冬。一体どのような試合になるのか』

『こりゃ楽しみですねえ』

 

 

前半戦の振り返りをしている頃、控室では一人の人物が緊張感を放ちつつ試合の準備をしていた。

 

「ふぅー……」

 

彼女、織斑千冬はこの後行われるエキシビジョンマッチで、自身の夢でもあるプロレスデビューを果たす。その為試合前に精神を落ち着かせているのだが、その姿が妙な圧を放っているのだ。

 

「ちーちゃん、緊張しすぎだよ」

「仕方ないだろう……子供のころからの夢だったんだ。こうして、プロの舞台に上がるのが」

 

小学生の頃から、まだ師である風間が若手であったころから教えを受け、一時はやむにやまれぬ事情により十年近く離れてしまったが、数日前に奇跡的に再会し、こうして興行に出場させてもらえるのだ。自身の夢が、最高の形で叶えられたのだ。緊張しない者などいない。たとえそれが、世界最強(ブリュンヒルデ)の名を手にした彼女であっても、例外ではない。

 

「そっか……そうだよね」

「8歳の時に弟子入りして12で別れるまでの4年間、その間に教わったのは体力作りと基本中の基本だけ……」

 

「だが」と一旦間をおいてから、彼女はさらに続けて言う。

 

「別れの時、風間さんはこうも言った―――レスリングに特別なテクニックはなく、すべては基本の組み合わせだとな」

「……うん、私も教わったよ。だからこそ基本は大事なんだ、ってね」

「私は、風間さんと別れてから今日までの12年、一日たりとも基本の練習は怠ってはいない。自惚れてはいないが、自負はある……一番弟子としてのな」

 

シューズの紐を固く結び、深く深呼吸をすると千冬はその場から立ち上がり、控え室の扉へ向かう。

 

「直に教わった4年間、一人で只管鍛えた12年、合わせて16年……今日まで、本当に長かった」

 

ガチャリと扉を開け、千冬は束の方に振り返ることなく、真っ直ぐリングへと歩を進める。

 

(風間さん、その集大成を今日、お魅せします)

 

師の想いに報いるため、自身の夢のため、その背中に確固たる覚悟を背負い、かつての少女は舞台へと向かう。

 

 

「いよいよ千冬さんの試合だな」

「ああ」

 

恐らく、IS学園の生徒達にとってはこの試合が一番気になるところであろう。何故なら自分達の担任の教師が試合をするのだ、気にならない筈がない。

 

「でも未だに信じられないわよね。あの千冬さんがプロレスをするなんて」

「アハハ、確かにね」

 

だが、未だにこの状況を信じられないのもまた事実。まあ、それも仕方ないだろう。彼女らにとって、織斑千冬という存在はIS乗りとしてはビッグネームすぎるのだ。

 

『これより、エキシビジョンマッチを行います』

 

リングアナウンサーが試合の始まりを告げる。この瞬間、あれだけざわついていたIS学園の生徒達はぴたりと静かになり、花道へと注意を向ける。

 

 

『青コーナーより―――織斑千冬入場!』

 

(入場曲:『止まらないHa~Ha』矢沢永吉)

 

エキシビジョンのため派手な演出こそないが、入場曲だけでも観客の期待値は上がっていく。

そして、入場ゲートから出てきて花道を歩く姿に、大きな歓声が起こる。

 

『かつて行われたISの世界大会、モンド・グロッソ。その第一回大会で優勝し、世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を獲得したのが彼女、織斑千冬です。しかしここはプロレスの舞台、その称号は何の価値もありません。だが、彼女にはあった!風間龍輔の一番弟子という、最も信頼を置けるバックボーン!それが胸にあるからこそ、彼女の歩む姿はこうも大きく見えるのでしょう!一番弟子というプレッシャー、それすらも跳ね除け、ISの頂点をとったものは、このリングで何を魅せるのか!威風堂々の、リングイーィン!!』

 

静かにリングへと入った千冬はそのまま四方へ礼をすると、青コーナーへと下がって相手の入場を待つ。

 

『赤コーナーより―――萩原莉緒入場!』

 

(入場曲:『ビューティフル・ドリーマー』鳴海杏子)

 

疾走感のある入場曲を背に、入場ゲートから姿を見せたのは、まだ若き女戦士。しかしその眼はしっかりと、リング上の相手を見据えている。

 

『ファイティングプリンセス、端麗な容姿と基本に忠実な戦い方から付いた彼女の異名がそれです。黄坂姉妹に憧れ、ドラゴンピットの門を叩いた女学生は、特別な才はなくとも、根性と負けん気で地獄の練習に必死に食らいつき、昨年にはアマレスの全日本王者にも輝きました。そして今年の春、念願のデビューを果たし、プロのリングへと上がった彼女が、エキシビジョンの舞台で、師である風間の一番弟子という強敵と相対します。姉弟子に対し胸を借りるのか、プロの先輩としての意地を魅せるのか!!気合の雄叫びを上げ、リングに飛び込んだあーあ!!』

 

リングサイドからトップロープを飛び越えリングへと降り立ち、観客へと応える姿は一端のプロレスラーだ。

 

『これより、エキシビジョンマッチ、5分一本勝負を行います!!』

 

ワアアアァァァーーー!!!

 

エキシビジョンというのにこの歓声、それほどまでに期待値が高いのだろう。

 

『青コーナァー。166cm、68kg。IS学園所属、織斑あぁ…千冬ううーー!!』

 

着ていたジムのTシャツを脱ぎ、露わになったその肉体は引き締まっており、観ているものを感嘆させる。

 

『赤コーナァー。158cm、56kg。ドラゴンピット所属、萩原あぁ…莉ぃ緒おおーー!!』

 

小柄な肉体ではあるものの、放つオーラはそれを感じさせない。その視線は、対戦相手をしっかりと見据えている。

 

『特別レフェリー、風間龍輔』

 

オオっ!

 

「ッ!?」

「えっ!?」

 

紹介を受け、レフェリースーツ姿の風間がリングへ上がる。

 

『この試合は、風間さんがレフェリングされるみたいですね』

『一番弟子が試合しますからね。贔屓はしないと思いますが、過保護というかなんというか』

 

風間は二人のボディーチェックをすると、ルールの確認をする。

 

「―――以上だ。二人とも普段の練習の成果を出すように」

「「ハイッ!」」

「よし。コーナーに下がって!」

 

二人をコーナーに下がらせ、周囲をチェックする。

この状況に、両選手は一層緊張感を持ち始めた。

 

(風間さんがレフェリングするとは……束との道場マッチとは違う、ここはプロのリングだ)

 

千冬は一度深呼吸を入れ、身体の緊張を和らげる。

 

(しょっぱい試合はできん!)

 

萩原は一瞬困惑したものの、すぐに頭を切り替えると再び意識を千冬へと向ける。

 

(風間さんの一番弟子、ね。確かに今までで一番の強敵……だけど!)

 

フゥッと呼吸を強く吐き出し、精神を落ち着かせる。

 

(私は私のできることをするだけだ!)

 

リング周囲のチェックを終えた風間が、選手を一瞥してから両腕を上げ、勢いよく振り下ろす。

 

「ファイッ!!」

 

カアァーーーン!!

 

ゴングが鳴り、闘いの火ぶたが斬り落とされると同時に、二人のレスラーはコーナーから勢いよく飛び出した。

 

「フンッ!!」

「ヤアッ!!」

 

そして互いにガッチリと組み合う。

師が見守る中、彼女達はどのような舞台(プロレス)を繰り広げるのだろうか。

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