インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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また、かなりの期間が空いてしまいました、謹んでお詫び申し上げます。

あと今回ではまだ決着が付きません。一体何ヶ月かかってるんだって話ですよね……。

でも!納得できる出来だったからこれでよし!


第五十一話 伊仏決着!

会場内は熱狂の渦に取り込まれていた。それもそのはず、今大会のメインイベントで登場した謎のマシン、その正体がまさかのあの男、かつての日本プロレス界においてその名を轟かせた一人、風間龍輔その人だったのだから。

 

「悪ふざけが過ぎんぞテメエ」

 

場外からリング内へと戻った矢杉が風間へと憎らしげに口元を歪ませながらそう言った。

 

「すまんな、からかうつもりは無かったんだ。だがこのほうが盛り上がるだろ?」

「チッ!出てくんなら最初から素顔で来いやこの野郎!」

 

舌打ちをして、憎らしげな視線を向ける矢杉に対し、風間は笑みを崩さず佇んでいる。

今にも飛びかかりそうな雰囲気であるが、そんな矢杉をアルフが制す。

 

「まあ落ち着けヤスギ。願ってもない状況じゃないか」

「願ってもないだぁ?」

「ああ。大衆の眼前で、あのカザマを血の海に沈めれば、オレ達は名は更に売れ渡るぜ?」

 

アルフの言葉になる程、と頷いた矢杉は大人しく引き下がる。

 

「血の海に沈める、か。人気者は辛いね」

「あぁっ?!ほざいてんじゃねえぞ!」

 

と思ったら、再度沸騰した矢杉が突っかかろうとするが、今度はレフェリーに止められる。

 

「コーナーに戻れ矢杉!それとレオも、今試合権があるのは風魔とアルフだ!」

「チッ!おいアルフ!あの澄ました顔をボコボコにしてやれ!」

 

レフェリーに注意され、睨みを効かせながら下がる矢杉。

 

「分かっているさ。だが、それよりオレは……」

 

そう言ったアルフの視線は、目の前の風間ではなく、コーナーに下がったレオに向けられていた。

 

「あのフランス野郎を蹴り壊したくて、たまんねえのよ!」

「っ!?」

 

言うが早いか、アルフは風間を無視し、コーナーのレオ目指し駆け出そうとした。だが!

 

「っ!?」

 

まるで金縛りにあったかのように、踏み出そうとした足はマットから離れず、ブワッと汗がアルフの全身から吹き出した。

 

「おいおい。無視なんて、つれないことすんなよ」

 

おどけた様子で風間はそう言ったが、発せられているプレッシャーは、重くアルフへと伸し掛かっている。

 

(これが1年以上リングを離れていたレスラーのプレッシャーかよ……冗談にもほどがあるぜ)

 

胸の内で毒突き、アップライトに構える。眉根をひそませながらも笑みを浮かべるが、その表情は重い。

 

「ほう、イイ面になったじゃないか」

「へっ、ぬかせ」

 

ピリピリとした空気がリング上、会場全体を包み込み、それを感じてか観客達は固唾を呑んで二人の動向を見守る。

 

「……」

「……シィッ!!」

 

張り詰めた空気の中、先に動いたのはアルフ。一気にステップインで近づくと、鋭いインサイドローキックを放つ。

狙いは脹脛。命中すれば機動力を削げ、躱されたとしても流れを掴む事が出来る。

 

「ぅおっ」

(なっ!?)

 

意外にもローキックは命中した。だが、その感触にアルフは眉根を歪める。

 

(何だ今のは……だが、ここで畳み掛けねばやられる!)

 

そのままの勢いでアルフは更に追撃のナックルパートを放つ。

風間は腕を上げて防ぐが、本命がまだ控えていた。

 

「シイィヤッ!!」

 

素早くスイッチして放たれたハイキックが、風間の顎目掛けて発射された。

至近距離から、ほぼ垂直に近い角度で放たれたその蹴りは視界の外から飛んでくる。

 

(もらった!)

 

ガキィッ!!

 

激しい衝突音がリング上に響く。手応えあり、そうアルフが感じ取った瞬間!

 

「おいっしょお!」

「なあっ!?」

 

アルフの視界が一転した!

風間はアルフの蹴り足を受け止めると、そのまま組み付いて高々と抱え上げ、勢いよくボディスラムでマットに叩き付けた!

 

「ガアッ!?」

 

更に風間は間髪入れずに近くのロープに足をかけ、それを踏み台にして跳躍。アルフの喉元へとギロチンドロップを落とす!

 

「グハッ!」

「ほいっと。レフェリー、カウント!」

 

足を抱えてピンの体勢。レフェリーがカウントを数えるが、アルフはツーで返す。

 

「ほら立ちな」

「ぐぅ……」

 

風間はアルフの頭を掴んで立ち上がらせると、自分のコーナーに引っ張っていきもたれ掛からせる。

 

「交代だ。カッコいいとこ見せてきな」

「ああ」

 

そして待機していたレオとタッチ。コーナーに下がった風間に代わり、レオがリングへと入る。

 

「フンッ!」

「グァッ!?」

 

リングインしたレオは、コーナーに据え付けられたアルフにエルボーを叩き込む。

そのまま首を取り、ハーフハッチで捕らえるとリング中央へと投げ捨てる。

 

「ウグッ!?」

 

しかしそこで追撃に行かず、仁王立ちのままアルフが立ち上がるのを待つ。

 

「クッソ……いちいち癪に障る野郎だぜ」

「……ふん」

 

アルフは立ち上がると再びアップライトに構え、それに対応するようにレオもゴキリと指を鳴らし、レスリングの構えを取る。

試合はまだまだこれから。

 

 

マシンがマスクを脱ぎ捨て、その正体が明らかとなった瞬間、会場内はざわめきと歓声に包まれた。

 

「あ、やっぱり風間さんだったんだ」

「まあ、何となくそう思っていたけどね」

「雰囲気で丸わかりだな」

「お約束といえばお約束だけどな」

 

IS学園の面々も、やっぱりといった感想を抱いていたようで、特に騒ぎもせず、苦笑いを浮かべていた。……が。

 

「ま、まさかマシンの正体が風間さんだったとは……!」

「全然気が付きませんでしたわっ!」

 

ラウラとセシリアの2名は本気で驚いているようで、目を見開きながら固まっていた。

 

「アンタたちねぇ……」

「あはは……」

 

それを見た鈴は呆れ顔を浮かべ、シャルは苦笑いしたが、リング上でマシン―――風間と交代してレオが入ってくると、再びリングへと視線を向ける。

 

「お、ここで交代か」

「あのレオというマスクマン、見た目の派手さに反して、隙のない堅実な動きをしている……一体何者なんだ?」

 

箒の言う通り、ここまでのレオの動きに派手なところはなく、ほとんどエルボーやサブミッションのみで試合を組み立てている。

しかし、そこに塩気はなく、逆にだからこその試合巧者ぶりが見て取れる。

シャルもレオの正体に疑問を持っていたが、それ以上に気になることがあった。

 

(確かにあのレオって人、相当巧いレスラーなんだろうけど……うん、やっぱり知ってる感じがする。フランス出身って言ってたし、もしかして僕、会っているのかな?)

 

一体カール・レオとは何者なのか。まるで既知のような雰囲気を持つ彼に、シャルは不思議な感覚を覚えながら、彼の試合を見守る。

 

(……違う。会ったことがある、なんてものじゃない。もっと近い……まさか)

 

何か確信めいたものを感じ取ったが、それとは関係なく試合は進む。

 

 

互いに構えて対峙するレオとアルフ。ジリジリとリングを回りながら、隙を伺う。

 

(チクショウ、隙がねえ……下手に打ち込めば捕らえられる。ここはカウンターを狙うか?)

 

先の事もあり、慎重に動くアルフ。だが、知将故の思考の深さが今この瞬間では仇となった!

 

「フッ!」

『先に動いたのはレオだ!アルフ目掛けて突っ込んでくる!』

 

レオの瞬発力は凄まじく、ヘビー級とは思えないスピードでアルフへと組みにかかる。

しかし、そんなことはアルフも織り込み済み。

 

(へっ、しびれを切らしたか。覚悟すればカウンター打たれても大丈夫だと思ってるんだろうが、生憎とそういう相手は慣れてんだよ!)

 

アルフは突っ込んでくるレオ目掛け、左の膝を突き出す。タイミングはバッチリ。アルフの脳裏には、膝が顔面に突き刺さりダウンするレオの姿が浮かび上がった程。

 

『甘いな』

 

しかし!予想していた感触はいつまで立っても伝わってこず、代わりにゾワリとした悪寒がアルフを襲った!

 

「な、んだとぉっ!?」

 

真っ直ぐ向かってきていたはずのレオは、気付けばいつの間にかアルフの右サイドへと回りこんでいた!これにはさしものアルフも度肝を抜かれた。

 

『い、いつの間にか組み付かれているーっ!?』

『アイツ、膝が命中する直前に右へのアウトサイドシングルへと切り替えやがった。あんな芸当ができんのはそうそういねえぜ』

 

気付いたときにはもう遅し。レオは右腕をアルフの右脚へ深く絡め、左腕で腰を抱えると、ぶっこ抜いて後方へ反り投げた!

 

「ディオラッ!!」

「ガアッ!?」

 

更にレオは途中で捻りを加えつつ、アルフを強かにマットへと叩きつけた!

 

『決まった!シングル・レッグ・スープレックスッ!往年の妙技が炸裂した!』

『ピンフォール、サブミッションと、投げた後如何様にも展開出来る。まさに妙技だな』

 

ゲスト解説の川戸の言う通り、レオはそのままピンに行くかと思いきや、アルフの脚を離さずサブミッションを仕掛ける。

 

「グウゥアッ!?」

『アキレス腱固めが極まった!』

 

まるで筋繊維の絞め付けられる音が観客達にも聞こえるかのような極まり具合。

これにはさしものアルフも苦悶の表情を浮かべる。

 

『あれはヤバいな。俺も喰らったことあるが、ホント痛いんだよアレ』

『川戸さんがそこまで言うとは……いかに智将といえども、あそこから抜け出すのは不可能なのか!?』

 

実際その通り、何とか抜け出そうとするが、レオの剛力で締め付けられ、下手に動けば逆に極まってしまう。

ならばとロープに行こうとしても、激痛のせいで力がうまく入らず、まさに八方塞がり!

 

「おらあっ!!」

「グッ!?」

『ここで矢杉がカットに入った!』

 

しかしここで素早く矢杉がカットに入り、レオへとストンピングを落とす。

レオが極めを外してガードした隙に、アルフはリング外へとエスケープ。回復している間は、矢杉がレオを攻め立てる。

 

「オラ立てコラッ!」

 

レオの頭を掴んで無理矢理立ち上がらせ、ナックルパートを打ち込んでいく。

 

「クッ!?ウラァッ!!」

「ぐおっ!?」

『お返しのエルボー!』

 

なんとか隙をついて肘を返すが、その程度で動きを止める矢杉ではなかった!

 

「舐めんなバカヤロウ!!」

「ゴッ!?」

『ヘッドバットオォーっ!!鈍い音がここまで聞こえてきたぁー!!』

 

その一撃で脳が揺れたのか、よろけて膝をつき、頭を押さえるレオ。

そこに、場外にいたアルフから矢杉へと凶器が投げ渡された!

 

 

「これを使え!」

「サンキュー!」

『アルフがリング内へとパイプ椅子を投入!これは危ない!!』

 

矢杉は受け取ったパイプ椅子を大きく振りかぶると、未だ膝をついているレオの背中に向かい、勢いよく振り落とした!

 

ガアァーz_ン!!

 

金属と人体が衝突する鈍く、甲高い音が会場内に木霊する!

 

『ああぁーっ!?あまりの衝撃に、金獅子がダウンしたぁーっ!!』

『クッションないとこでぶっ叩いたぞアイツ』

 

脳が揺れてるところへの凶器攻撃に、さしものレオも耐えれなかったのか、マットにうつ伏せにダウンした。してしまった!

 

「レオっ!?」

 

堪らず風間が飛び込むが、矢杉は風間にもパイプ椅子を突き刺すようにぶつけると、またも思いっきり振り被り、風間の頭部目掛け振り下ろした!!

 

バガアァーz_ン!!

 

『またもや矢杉の凶器攻撃が、今度は風魔へと襲いかかったぁーっ!!』

 

パイプ椅子の座が抜け飛ぶほどの衝撃に、観客席から悲鳴が上がる。

風間はダウンこそしなかったものの、ダメージにより脚が少しふらついている。

矢杉は壊れたパイプ椅子を場外に投げ捨てると、風間の頭を掴み、片脚を大きく振り上げた!

 

「ふんぬっ!」

「がっ!?」

『一本足ヘッドバットが炸裂!パイプ椅子に負けず劣らずの!エゲツない音がしたぞ!!』

 

まるで頭蓋骨が勝ち割れたかのように錯覚した程の衝撃に、悶絶する風間。矢杉はそのまま風間の頭を掴み、場外へと放る。

リング上は再び矢杉とレオに。更に回復したアルフがリングへと戻ってきて、2対1となる。

 

『ここでアルフが復活!レオ、絶体絶命か!?』

「ぅおらっ!」

「セャッ!」

「グォアッ!?」

 

ナックルパートとミドルキックを交互に打ち込まれ、グロッキー状態になったレオを、矢杉が捕らえた。

 

「いくぞっ!アルフッ!」

「OKヤスギッ!」

『これはっ!?今度こそアレが出るのか!?』

「喰らいやがれフランス野郎っ!!」

 

次の瞬間、矢杉がレオをファイヤーマンズキャリーで担ぎ上げた。

そしてアルフへと合図を送ると、アルフはロープへと走り、反動で戻ってくるとその勢いを使ってレオの首へと飛びつく。

そうなれば当然、アルフの体重により重心がレオの頭の方に寄り、それに合わせて矢杉が倒れ込んだ!

 

「「カタコンベ・バスター!!」」

 

必然!二人分の体重、約200kgの重さと加速を乗せて、レオの頭がマットへと突き刺さった!!

 

『決まったぁーっ!?ハングズマンの必殺ツープラトン、カタコンベ・バスター!!』

『デスバレーボムとDDTの合せ技、相変わらずエグいな』

 

ズシン、とレオの巨体がマットに沈む。そのまま試合権のあるアルフがカバーに入り、レフェリーがカウントを数える。

 

「レオッ!」

 

しかしそこは復活した風間がカットに入ったことで事なきを得た。

 

「テメェッ!邪魔すんじゃねえ!」

「ぐっ!?」

『再び矢杉が風間を場外に落とした!レオは依然グロッキー状態、これはピンチだ!!』

 

安来が風間を場外へと連れ出し、リング上ではアルフがレオの頭を掴み、無理矢理に立たせる。

 

「オラッ!オラァッ!」

「グウゥッ!?」

『鋭い膝の連打!これは厳しいっ!!』

 

膝を打ち込まれ、レオの体力は更に削られていく。

そして、ダメージにより下がってきた首をアルフが捕らえた!

 

「息の根を止めてやるぜ」

『ブレーンバスターの体勢、ここで決めるのか!?』

 

アルフはレオを高々と持ち上げる。このまま落とすのかと思いきや、まさかの意外な行動を取った!

 

「そりゃっ!」

「ッ!?」

 

なんと!後方ではなく、逆に前方へと放り投げた!そんなことをすれば当然、レオはマットへと着地し、相対した状態になる。しかしそれこそがアルフの狙い!

 

「ッしまっ!?」

「今更気付いても遅えっ!」

 

閃光一閃。智将が放つ死神の鎌が、金獅子の眼前まで迫っていた!

 

「シィリャアッ!!」

「カッ―――!?」

 

スパンッ!と空気を切り裂くような音が聞こえた次の瞬間、レオはマットへと倒れ伏していた。

 

『き、決まった―――!アルフの必殺、フィアマ・ミステリオッソオォーッ!!』

『ブレーンバスターフェイントからのハイキック。ありゃヤバいな、軌道が見えづらいからガードしにくいぞ』

 

事実、レオはアルフのハイキックをまともに受けてしまい、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。

これはマズイ、とレフェリーが動こうとしたが、それより前にアルフがレオの身体を蹴って引っ繰り返し、踏み付けて押さえる。

 

「ほらレフェリー、ピンの体勢だぜ」

「―――っワ、ワンッ!」

 

言われて慌てて、レフェリーがカウントを数える。

屈辱的な体勢であっても、レオは動かない。動けない。アルフのハイキックを受け、刈り取られた意識はまだ戻らない。

しかし!そんなレオに、まるで暗闇に差し込む一筋の光のように、ある声が聞こえてきた!

それは―――

 

 

アルフのフィアマ・ミステリオッソが決まる少し前、観客席にて試合を観ていたシャルは、あることを考えていた。

 

(思い出した!澄香が言っていた、父さんの二つ名は『肘撃の金獅子(ライオンハート・エルボー)』。そして、あのレオって人も確か……ということは、本当にあの人が……ああっ!?)

 

しかしその瞬間、レオがアルフの狂蹴によりリングへと倒れ伏した!

 

「あ、あの倒れ方はヤバいっ!?」

「マトモに顎に受けてしまった、アレではもう……」

 

周囲が悲観的な雰囲気になる中、彼女もまた悲惨な光景から目を背けようとした。だが!

 

「―――っ!」

「シャル?」

 

視線を再びリングに向けたシャルロットは、意を決したかのように席から立ち上がった!

 

「頑張れぇーっ!!レオォーーッ!!」

 

そして、あらん限りの声援を、レオへと向けて叫んだのだ!!

その声は、想いは、未だ意識の戻らない金獅子の心を、魂を!再び奮い起こすには十分だった!

 

 

「ツゥーッ!」

 

レフェリーが2つ目のカウントを数え、マットを叩いたとき、アルフは自身の勝利を確信していた。

 

(決まったな。あれを受けて、立ち上がれた奴はいねえ。俺達の勝ちだ!)

 

しかし、確信してたが故に、足元の違和感に気付けなかった!

 

「ス―――」

「フンッ!」

「なっ!?」

 

気づいた時にはもう遅い!

復活したレオが踏まれた体勢のまま、自分の両足を絡めてアルフをマットへと引きずり倒し、そのまま関節を極めにかかった!

 

『な、なんとぉーっ!?終わったかに見えた金獅子カール・レオ、ここで起死回生のアンクルホールドだぁぁあっ!!』

『完全に落ちてた筈だったんだけどな、いや凄いな、彼は』

 

ガッチリと足を絡め、渾身の力を込めて足首を捻っていく。

 

「グウオォッ!?」

「アルフ、ギブアップか!?」

「冗、談じゃ……ねえっ!!」

 

アルフは腕の力を使って一気にロープへと近づき、サードロープを掴む。

 

「ブレイクッ!」

「フン」

「こ、この野郎……!」

 

レフェリーの指示に従い、レオは技を解いて立ち上がる。そしてアルフの頭を掴み、立ち上がらせようとしたが、その瞬間アルフがレオの下腹部へとパンチを叩き込んだ!

 

「グッ!?」

「死にぞこないが……とっととくたばりやがれぇっ!!」

 

そのままレオの腕を掴み、ロープへと振り、反動で戻ってきたレオに向けて蹴りを放つ。

 

「フンッ!」

「なあっ!?」

 

しかしレオは既のところで蹴りを躱すと、そのままアルフのバックへと回り、両腕をダブルチキンウイングで固める。

 

『ガッチリハマっている!タイガースープレックスに行くのか!?』

 

だがアルフも腰を落として投げられまいと耐えている。この状態でスープレックスに行くのは難しいだろう。

 

「セイッ!」

「うおっ!?」

 

しかしレオはブリッジで投げず、真下にシットダウンし後方へと倒れ込みながらアルフをマットへと落とした!

 

『オースイ・スープレックスだっ!またもや妙技が炸裂!』

 

そのままブリッジで固めるのかと思いきや、なんとレオはマットを蹴り、ブリッジを返しながら両足をアルフの足へとフックさせ、再びブリッジで固めた!

 

『こ、これはっ!?フランス式回転足折固め、フランサイス・レッグロール・クラッチホールド!!』

『これはキツイな。なにせかつてのフィニッシュの一つだからな』

 

久方ぶりに披露した名技に、かつてのレオの活躍を知る、会場に来ていた往年のプロレスファン達は驚喜の歓声を上げた。

 

「ワンッ!ツゥーッ!」

 

レフェリーがマットを叩き、カウントを進める。ガッチリと抑えられている為、エスケープは困難に見える。

 

「アルフっ!?」

「おっと、行かせねえよ」

 

パートナーの矢杉も、風間に阻まれ助けに迎えない。

 

「スリ―――」

「ウオオオッ!!」

 

しかしそこは意地か、カウントスリー直前で、アルフはレオを跳ね返した。

 

『返した!そう簡単には決めさせはしない!!』

「やりやがったなテメェっ!?」

 

しかし、アルフが立ち上がろうとした瞬間、レオの肘が超低空から突き上げるように襲い掛かってきた!

 

「フンッ!」

「ガハッ!?」

『ガゼルエルボー炸裂っ!!』

 

体制を崩していた為、まともに受けてしまったアルフの頭はかち上げられた。

更にレオは、そのままの流れでアルフの身体を反らせるようにして首を抱える。

 

『リバースDDTか!?』

『いや、これは……』

 

そして、アルフのタイツを掴むと、踏み込んだ勢いでアルフの身体を高々と持ち上げた。

 

「喰らえっ!」

 

レオは途中で首のロックを外すと、自身の体を反転させ、逆の腕の肘をアルフの首元に当て、そのままマットへと落下した!

 

「トリオンフェ・ドロップッ!!」

 

ドゴォオーーンッッ!!!

 

驚愕!アルフがマットに落下したと同時、まるで処刑道具の断頭台のように添えられたレオの重く鋭い肘が、アルフの首を圧し潰した。

 

「ガッ……アッ……!?」

『き、決まったぁーーーっ!!カール・レオのフィニッシュホールド、トリオンフェ・ドロップーーーっ!!』

『別名、凱旋門落とし。恐らく、頭の中も気道もぐちゃぐちゃだろう』

 

アルフをマットに沈めたレオは、そのまま自分の身体を被せて押さえ込む。

 

「ワンッ、ツゥーッ!」

 

レフェリーがカウントを開始しても、アルフはピクリとも動かない。このまま決まるかに思われた。

 

「ス……」

「おおおらあっ!!」

「がっ!?」

 

だが!そこで風間の妨害を振り切った矢杉がカットに入り、レオをアルフの上から退かした。

 

『矢杉のカットが間に合った!!』

「大丈夫かアルフっ!?」

「ガ、ゴフッ!スマン……助かった……」

 

矢杉が声を掛けると、アルフは弱々しい声でそう応えた。

 

「あとは任せろ。お前は少し休んでいな」

「あ、ああ……」

 

そして、自軍コーナーに引っ張っていくとタッチロープを掴んでアルフの身体を触り、試合権を交代するとアルフと入れ替わりで、再びリングへと入る。

 

「悪い、レオ。抑えきれなかった」

「気にするな、カザマ」

 

そしてレオも自軍のコーナーへ戻り、コーナーサイドに戻った風間とタッチをする。

 

「すまないが、俺もそろそろ限界みたいだ……あとは、任せた……」

「ああ、任せろ。それとな……」

 

交代でリングに戻った風間は、レオへと振り返らずに続けて言った。

 

「お前の勇姿、あの娘もしっかりと見ていたと思うぜ」

「……そうか」

 

それを聞くと、レオは一言だけそう言って、リングの下へと降り、膝を付いた。

そのマスクの下で、口元を緩ませていたのに気付いたのは、極僅かの人数だけだった。

そして、再びリングの上では、アルフの代わりに入った矢杉と、レオと交代した風間が相対していた。

 

『さあ、リング上では限界を迎えた二人に代わり、アンデッドガイ・矢杉と、ミスター・スープレックス・風魔が、静かに向き合っております』

『間には思いっきり火花散ってるけどな』

 

リング上の二人は、ゆっくりとリングを回りながら、お互いの出方を伺う。

 

「……俺はテメエが嫌いだ」

「……」

「リングを一時的とはいえ降りた後も、プロレスファンが望んでいるのはテメエのような正統派ばかり。特にこのご時世になって、団体の数が減ってからはな。そのせいで、俺みてえなデスマッチレスラーの肩身は狭くなっちまった」

 

ゴキリ、と矢杉は指を鳴らす。

 

「だがな、俺はその程度で折れはしない。途中で出会ったアルフと共に生き残った団体に乗り込み、正統派の連中相手に暴れまわった」

 

「だがな」と一拍置き、矢杉は更に続けた。

 

「どれだけ倒そうと、どれだけタイトルを獲ろうと、満たされることはなかった。何故なら!どれだけ闘っても、血を流しても、観客の眼には、常にテメエが写っていたんだからな!!」

 

そこまで言うと、矢杉はフッと笑った。

 

「だがな、そんな惨めな日々も終わりだ。今日、このリングで、俺はお前を沈めて、名実共にトップに立つ!!」

「……ほう」

「さあ始めようぜ!テメエと俺の、最高の舞台をな!!」

「いいぜ矢杉。いい闘志だ……」

 

今度は風間が静かに笑い、矢杉へと向かって言い放った!

 

「勝てるもんなら勝ってみろ!俺の首を獲れるもんなら、獲ってみやがれ!」

「ほざきやがれ!!」

 

正統派として上に君臨した男と、邪道の道を歩み、成り上がった男の、最後の舞台が、今始まる!

さあ、観客共、ここから先、瞬き一つ分も見逃すな!




次回でフィニッシュ!!
文字数は今回より少なくなる予定です。

あと、感想は随時募集しています!
ついでにファンアートも募集してますので、描いて頂けましたら、↓にお願い致します。

@Suplexlove

次回を執筆する原動力になりますので、ドシドシ送ってください!
お願いします!何でもはしませんから!

それではまた次回!!
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