インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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二年もかかってしまい、申し訳ありません。
とりあえず読んでください。


第五十二話 フィニッシュホールド

「フンッ!」

「ドリャアッ!」

「ディヤァッ!」

「オオラッ!」

 

試合も終盤。リングの上では、二人の男がお互いの体を激しく打ち合っていた。

 

『激しいエルボーとチョップの応酬!!両者一歩も譲りません!!』

「うぉらっ!」

「グゥッ!?」

 

ここで矢杉が流れを変えるためか、首を掴んで膝蹴りを腹部へと突き刺す。

風間の動きが止まった隙に、矢杉はロープへと走り、勢いをつけて戻ってくるとそのまま風間の顔面を蹴り抜いた!

 

『ランニングのフロントハイーーっ!!』

「やりやがったな……お返しだっ!」

 

蹴り飛ばされた風間はそのままロープへと体重をかけ、反動を利用し勢いを乗せたエルボーを矢杉へと叩き込む!

 

「ぐっ!?舐めんじゃねえ!!」

 

然し、度重なるハードコアマッチで鍛え上げられた矢杉の身体は揺るがず、すかさず風間の腹筋に前蹴りを突き刺す。

更に下がった首を抱えると、反対の腕を振った勢いで横方向にスピン!当然風間の首にも回転の力が加えられる!

 

「うおっ!?」

『首へのドラゴンスクリュー!?これは危険だーっ!?』

 

それだけでは終わらない。矢杉は素早く立ち上がるとダウンしたままの風間の首にニードロップで追撃を仕掛ける。

 

「ぐはっ!?」

「ふん!レフェリー!」

 

そしてそのまま抑え込んでレフェリーを呼ぶが、カウントが始まる前に風間のブリッジによって跳ね飛ばされる。

 

「ちぃっ!?なら!」

 

矢杉は立ち上がる最中の風間を捕まえると、首をひねり上げてから自分の体重の勢いも乗せてマットに叩きつける。

 

「まだまだあっ!」

 

矢杉は止まらず、倒れた風間の上体を起こすと彼の首をその太い腕で絞め上げる。

 

『今度はスリーパー!徹底的に首を狙っているぞ!』

 

数多のタフガイ達を絞め落としてきた魔のスリーパーが風間を襲う。ギリギリと食い込む音が観客達にも聞こえてくるかのようにガッチリと嵌っている。

然し……!

 

「おいおいマジかよ……!?」

 

有利な状況にもかかわらず、矢杉の表情には焦りが見える。そしてその直後、驚くべきことが起こった!

 

『ま、まさか!?あの状態から立ち上がったー!?』

 

首を絞められながら、なんと風間は何でもないかのように立ち上がったのだ!更にそのまま首に巻かれている矢杉の腕を掴むと前方へと投げ捨てた。

 

「があっ!?」

『なんと!一本背負いで反撃だー!首へのダメージはないのか!?』

 

矢杉を投げ捨て、仁王立ちで首をゴキリと鳴らす風間。その様子を立ち上がりながら眺める矢杉は、まるで信じられないものでも見るような目をしていた。

 

「生憎、俺の首はワイヤーでの絞首刑にも耐えれるんだ。とはいえ、気を抜いたら危なかったけどな」

「化け物かよ、巫山戯ろ」

 

風間が話す衝撃の情報を聞き、矢杉は不敵な笑みを浮かべながらも額に嫌な汗が流れるのを感じていた。

然し、その程度で腰が引ける矢杉ではない。何故なら矢杉が今まで戦ってきた相手も、常人では想像もつかない化け物揃いだったからだ。

ある時はグリズリーの首をへし折ったアラスカの山男を投げ倒した。ある時はその身一つで水深200mに潜る元漁師を絞め落とした。アメリカでやった、現役死刑囚の殺人鬼とのチェーンデスマッチでは逆にそいつを血の海に沈めた。

その戦いの中で鍛え上げられた矢杉の心が、魂が、身体が叫んでいた。眼の前の相手を叩き潰せと。

その声に応えるように、矢杉は一気に風間どの距離を詰めると、喉元目掛けて強力なエルボーを叩き込む。

ジャストミートしたはずだが、風間は身じろぎもせずに受け止めると、逆にエルボーで顎をかち上げる。

 

「がっ!?」

 

顎を撃ち抜かれたことで矢杉の膝から力がガクッと抜ける。

そして完全にマットに沈む前に、風間は矢杉の身体を担ぎ上げると、軽くジャンプしてその場にシットダウン!自身の肩に矢杉の腹を強かに打ち付ける。

 

「ぐぼぁっ!?」

「まだまだこれから!」

 

腹部を抑える矢杉を無理やり立たせてバックを取る。

 

(スープレックスか!?今の状態では堪えられん。受け身に専念してダメージを減らす!)

 

そう思考を巡らす矢杉の身体を、風間が高々と跳ね上げる。然し、大方の予想を裏切ってスープレックスには行かず、空中で矢杉の身体を横に捻る。そしてまたしても矢杉の腹を、今度は立てた片膝へと打ち付けた!

 

「があっ!?」

『ストマックブロック炸裂!』

『意表を突かれるからな。見た目以上に効いてるはずだ』

 

悶絶する矢杉を仰向けにし、片足を取って抑え込む。

 

「ワンッ!ツーッ!」

 

レフェリーのカウントが進む。だが矢杉は意地で跳ね返す。

ならばと風間は矢杉の頭を掴み立ち上がらせ、ファイヤーマンズキャリーで担ぎ上げると、自分は仰向けに倒れながら両膝を立てて矢杉の腹部を打ち付ける。

 

「ごっ……!?」

 

度重なる腹攻めに流石の矢杉も堪らず腹を抱えて蹲る。

 

『プリンスズ・スロウン!珍しい技が出ました!』

 

風間はそこで止まらず、ニュートラルコーナートップに登ると、観客達に向けて手を叩いてアピールする。

 

「よっしゃいくぞー!!」

 

ワアアアーーッ!!

 

沸き起こる歓声を受け、風間は未だ仰向けに倒れたままの矢杉目掛けて飛び上がった!

 

「おいっしょーっ!!」

「ぐぶあっ!?」

 

自身の体重と落下の勢いを乗せたエルボードロップが矢杉の腹筋を貫く。

まるで胃が破裂したかのような痛みに悶える矢杉を再び抑え込む。

 

「ワンッ!ツーッ!」

 

度重なる腹部への攻撃により、身体に力が入らなくなった矢杉は意識ははっきりしているものの、奥歯を砕けんばかりに噛み締めて返そうとするものの、身体は言うことを聞かない。

そしてレフェリーが3つ目のカウントを数えようとしたところで、飛び込んできた何者かがそれを妨害した。

 

「アルフっ!?」

「させるかよ……!」

 

先のダメージから回復したアルフがカットに入ったのだ!

しかし、完全には回復しきっていないようで、脂汗を流しながら肩で息をしている様子からもそれは見て取れる。

それでもアルフは不敵な笑みを浮かべ、風間を立ち上がらせると首相撲の体勢から膝蹴りを連続で叩き込む。

 

「オラァッ!!」

『鋭い膝が風魔を襲う!』

 

身長差もあり、アルフの膝は風間のボディへと吸い込まれるように突き刺さっていく。

間違いなくクリーンヒットしている感触はある。然しアルフは全身にえも言えぬ悪寒が走っているのを感じた。

 

「っ!?」ガッ

 

そしてその予感を証明するかのように、それまで順調に突き刺さっていたアルフの膝は、いとも簡単に風間に捉えられた。

 

「ば、馬鹿な……!」

「おいっしょおっ!!」

 

そしてなんと!アルフはそのまま後方に反り投げられた!

 

「何、だとおおっ!?」

『全くダメージは無いのか風魔!?』

 

周囲を驚愕させながらアルフを投げ飛ばした風間は、コーナーに叩きつけられダウンしたアルフに追撃するためゆっくりと歩を進める。その姿には、圧倒的な強者のオーラが溢れ出していた。

 

 

すっかりこのSS内では影の薄いIS学園組。その面々の空気は周囲の観客達に比べて静かなものだ。

 

「……ねえ、何あれ?」

 

鈴が誰にと言わずに問い掛けた。

 

「……まあ、風間さんだしな……?」

「いやあんだけ首攻められてて平然としてるのおかしいでしょ!?ていうか絞首刑に耐えられるって何?!どこぞの死刑囚じゃないのよ!?」

 

投げやり気味の一夏の答えに、鈴は更にヒートアップしていき捲し立てる。しかしそれを咎めようとする者はいない。何故なら全員同じ気持ちであるからだ。

 

「まあ確かに……。というかあの膝を受けてもいとも簡単に反撃できるとか……」

「私が見た限りではガードしていた様子はない。あの人の身体は鋼でできているのか……どうなのだ?セシリア、ラウラ」

 

シャルと箒も同じ気持ちらしい。数日とはいえ風間の近くで彼を見ていた二人に尋ねると、二人は視線をリングから離さないまま答えた。

 

「……正直な話、わたくし達も風間さんのことはよく分かっていないのです」

「だが、風間さんのトレーニングを断片的だが見たことはある」

「っ!?そ、それは一体どんな……?」

 

全員が固唾を飲んで二人の言葉を待つ。

 

「先程の展開を見たとおり、風間さんの首は常人離れした強度を誇っています。それこそ縄やワイヤーで絞められても平気なほどに」

「前に私のシュヴァルツェア・レーゲンのワイヤーブレードで絞めてくれと頼まれたことがある。嫁達が大丈夫と言っていた為、50%ほどで絞めたのだが……」

 

一拍おいて、ラウラが続きを話すと、一夏達は驚愕のあまり目を見開くことになった。

 

「あの人は仁王立ちで平然としながら、もっときつくしろと言ったのだ。言われるがまま私は出力を上げ、遂には100%で絞めたのだが……風間さんには全く効かなかったようで、鼻歌を歌いながらワイヤーを引き千切られたよ」

「それだけではありませんわ。風間さんのブリッジはヘビー級のヒップドロップも軽々と受け止められます。その衝撃は少なく見積もっても200kg以上……」

 

一夏達は絶句した。もし本当にそんなことができるとするならば、それはもうファンタジーの域だ。

 

「嘘だろ!?それもはや人間じゃねえだろ!?」

「気持ちは分かりますが、事実ですわ」

「それに風間さん曰く、世界にはこれくらい遊び代わりにやっているレスラーもいるらしい……世界は広いな」

 

この瞬間、一夏達の気持ちは一つになった。

 

((((レスラーって化け物しかいないのか!?))))

 

彼らの思いをよそに、試合は進んでいく。

 

 

アルフを投げ飛ばした風間は、そのままアルフを場外に落とし、再び矢杉へと近づいていく。

 

「舐め、んじゃねえっ!!」

「っ!?」

 

だがこの僅かな時間でダメージを回復させた矢杉は勢いよく立ち上がると同時に風間の顎めがけて頭突きをブチかました!

 

「ドォラァッ!!」

「ぐおっ!?」

 

更に追撃で左の掌底フックを叩き込むと、今度は右手で風間の頭を掴み、片足を振り上げて勢いを乗せた頭突きを叩き込む!

 

『一本足ヘッドバットが炸裂!鈍い音がここまで届いてくるー!』

「まだまだ!」

 

矢杉の勢いは止まらず、そのまま風間の頭を引き落とし胴体をクラッチすると全身のバネで勢いよく頭上へと持ち上げた!

 

「シィィヤッ!!」

「ごぉっ!?」

『渾身のパワーボムが決まったー!』

 

マットに強かに叩きつけられ、流石の風間も苦悶の表情を浮かべる。しかし、矢杉が抑え込みレフェリーがカウントを数え始めようとすると、そこは許さず跳ね返す!

 

「まだまだぁっ!」

 

だが矢杉は風間の髪を掴み立ち上がらせると、背中にエルボーを一撃落としてからコーナーまで連れていき、担ぎ上げてコーナートップに座らせる。

そして自分もコーナーに上ると、風間の首を捉えてトップロープを足場に立ち上がる。

 

「テメエら見とけこの野郎!!」

 

観客にアピールし、矢杉はトップロープを蹴って跳び、自分の体重を乗せて脇に抱えた風間の頭部をマットへと叩きつけた!

 

「ガっ!?」

『何ということだーっ!?これは危険すぎるーっ!?』

『アイツだから大丈夫だけど、あれ下手すりゃ死ぬぜ』

 

雪崩式のDDTでマットに垂直に突き刺された風間はそのまま重力に従いマットへと倒れ込む。

 

『徹底した首攻め!しかし風魔の首の強靭さは知っている筈、何故こうまで首を狙うのか!?』

『そりゃアイツがハードコアレスラーだからだろうな。奴らは対戦相手が自信を持っている部位を集中して狙う』

『成る程!では今矢杉は自分のプライドにかけて風魔の首を文字通り刈り取りにいっているというわけですか!』

 

確かに風間の首は常軌を逸した鍛錬により常識離れした強靭さを誇る。しかし先程から徹底した矢杉の首攻めには流石に堪えたのだろう。

この好機を、この男が逃すはずがない。

 

「お寝んねにゃまだ早えぞ」

 

ゆらりと立ち上がり、矢杉はゆっくりと風間に近づくと再び立ち上がらせる。

 

「手間取らせてくれたな……コイツで仕舞えだ!!」

 

矢杉は立ち上がせた風間の腕を捻り、後ろ手に極めると片腕で抑えながら反対の脇の下からもう片方の腕を通して風間の顔面を鷲掴む。

 

『これは!?矢杉の必殺技(フィニッシュホールド)の体勢!!』

「とくと喰らいやがれっ!!」

 

右足を振り上げ、完全に拘束された状態の風間の脚を刈りながら自身も倒れ込んだ!!

 

「レイジ・オブ―――カムイ!!」

 

悲鳴の入り混じった歓声が沸き起こる。まるで鉄球がぶつかるような音がしたとさえ錯覚する。

リングのど真ん中、片腕を極められ受け身のとりようがない体勢で後頭部から叩きつけられたのだ。そのダメージは想像に難くない。

 

『い、決まった!!数多のレスラーを屠ってきた必殺技、レイジ・オブ・カムイ!!』

『生では初めて見たが、ありゃエグいな。後頭部から真っ逆さまだぞ』

 

更には徹底した首攻めにより多少なりともダメージが蓄積していたこともあり、風間はうめき声も挙げずにリングに横たわった。

叩きつけた側の矢杉はそのまま覆いかぶさるように抑え込み、呆然としていたレフェリーもそれを見てカウントを開始する。

 

「わ、ワンッ!」

 

ピクリとも返そうとしない風間の様子に、矢杉は内心笑みを浮かべていた。

 

「ツーッ!」

 

後一秒。たった一秒経てば終わる。

しかしそう思った、思ってしまった瞬間、矢杉の背中に衝撃が奔り、抑えを解いてしまった!

 

『ここはやらせない!レオがカットに入りました!』

「て、テメエっ!?」

 

邪魔をされ、頭に血が上った矢杉は下からレオを蹴り飛ばしてから立ち上がると、レオの頭部にナックルパートを叩き込む!

 

「グッ!?フンッ!」

「がァっ!?」

 

だが矢杉も消耗していたためか、反撃のエルボーを受け膝をついてしまい、主導権をレオに握られてしまう。

レオはさらに矢杉へと攻撃を加えていくが、今度はアルフがリングへと戻り、矢杉を救出する。

 

「オラァッ!」

「ウグッ!?」

「ヤスギ、大丈夫か?」

「すまねえ、助かった……」

 

アルフの肩を借りて立ち上がった矢杉は片手でレオの首を抑えながら、もう片腕で強烈なアッパーを繰り出す。

 

「ガハッ!?」

「オマケだっ!」

 

更にアルフが前蹴りを突き刺し、レオは腹部を押さえながらそれでも反撃のヘッドバットを繰り出す。

 

「グォッ!?」

「ハァ、ハァ……カザマ!!」

 

突如、レオが彼の名前を叫ぶ。その様子を見て矢杉は鼻を鳴らした。

己の必殺技をまともに食らったのだ。まだ起きる筈がないと。

 

「―――ったく、もう少し寝かせろ」

 

その声に矢杉が振り向いた瞬間、顔面を衝撃が襲い、そのまま場外へと投げ飛ばされた。

 

「ヤスギ!?」

 

驚くアルフの隙を逃さず、やられていたお返しとばかりにレオがエルボーを叩き込む。

 

「グッ!?」

「行くぞレオ!」

「D'accord!」

 

風間の掛け声に合わせ、二人はアルフを両サイドから捕らえると、反対側のロープへと勢いよく振る。

 

「「セィヤッ!!」」

「ガハッ!?」

 

そして反動で戻ってきたアルフ目掛け、二人同時のトラースキックを叩き込んだ!

 

『息の合った反撃!コンビネーションに陰りなしという姿を見せてくれます!』

「カザマ!!」

「オーケー!」

 

今度は風間がレオの掛け声に合わせて動く。

倒れたアルフの頭を掴んで起き上がらせると、胴体をクラッチして勢いよく頭上へと抱え上げた。

 

「来い!」

「いくぞ!」

『こ、この体勢はーっ!?』

 

コーナへと上ったレオに向けて合図すると、レオはコーナートップから跳び、抱え上げられたアルフ向けて飛んでいく。

そしてレオが腕をアルフに巻きつけると同時に、風間がアルフをリングへと叩きつけた!

 

「「モンブラン・アヴァランチャーッ!!」」

 

アルフの肉体が激しくバウンドする。パワーボムとネックブリーカードロップの合体技、その威力は想像に固くない。

 

『で、出たーっ!!ヨーロッパ最高峰、モンブランの大雪崩ーっ!!』

『往年のファンには堪らんだろうな』

「アルフっ!?」

 

矢杉飛び込むようにしてリングに戻ってくるが、時既に遅し。レオがアルフを場外へ落とし、自身もリング外へと出る。

リング上は再び風間と矢杉が対峙する光景となっていた。

 

「テメエっ!」

 

矢杉が腕を振るう。風間はその腕を捉えるとカウンターで投げ飛ばした。

 

「がぁっ!?」

『フロントスープレックス炸裂!鮮やかです!』

 

投げた直後、素早く立ち上がると矢杉の頭を掴んで立ち上がらせ、両手首を掴むと脇をくぐり、そのまま反り投げてブリッジで固めた!

 

『ダブルリストロック・スープレックス!!カウントが入るーっ!』

「ワンッ!ツーッ!」

「―――ぜぇりゃぁっ!?」

 

しかしカウントツーで矢杉が跳ね返す。まだ決めさせないと、意地で跳ね返す。

再び風間が矢杉を立たせる。だが矢杉はその手を振り払った!

 

「うらぁっ!!」

「ぐっ!?」

 

フォームも滅茶苦茶ながら左右のフック、更にはバックハンドブローを叩き込む。

流石の風間もグラつくが、逆にそのまま回転し、お返しのローリングエルボーを食らわせた!

 

「がぁっ―――!?」

 

顎を撃ち抜かれ、矢杉の意識が一瞬途切れた隙を逃さず、風間はフィニッシュへの体勢を整える。

 

「ふんっ!」

『この体勢は―――っ!!』

 

矢杉の頭を抱えた後、両腕をくの字になるように自身の腕を背中側に通してクラッチを組む。

この構えに入った瞬間、観客席がざわつき始めた。

 

「ヤスギッ!?」

「行かせるかっ!」

 

場外では相棒の危機に駆けつけようとするアルフを、レオが抑えていた。これで邪魔は入らない。

風間は踏み込みながら腰を落とすと、全身のバネを使い一気に矢杉の身体を跳ね上げ、そのまま後方へ反っていく。

その光景はまさしく、人間風車と呼ぶに相応しい。

 

「デイィィィィイヤっ!!」

 

美しく弧を描きながら矢杉をマットへ叩きつけ、ブリッジの姿勢を崩さずに固める。

 

「―――ワンッ!」

 

レフェリーがマットを叩きながらカウントを数え始める。

 

「「「「「ツーッ!」」」」」

 

場内の観客全員が声を揃える。

後、一秒。

 

「……スリーッ!!」

 

3つ目のカウントが終わった瞬間、甲高いゴングの音と観客達の歓声が会場全体に響き渡った。

 

『決まったぁぁーーっ!!長き死闘を制し、風魔龍輔が復帰戦を勝利で飾りましたぁーっ!!最後は必殺、ダブルアーム・スープレックスでの見事なスリーカウント!!技のキレに衰えなしっ!!』

 

テクニックの攻防、熾烈な技の応酬、そして激しい意地と意地のぶつかり合いを制した男は、ブリッジを解いて立ち上がり、右の拳を突き上げて観客達に応えた。

その瞬間、より大きな歓声が沸き起こったことは、言うまでもないだろう。

 

―――メインイベント This is Pro-WRESTLING!!

 

●アルフ・C・ディケージ&矢杉一成 45分38秒 ダブルアーム・スープレックス・ホールド 風魔龍輔&カール・レオ○




次回、フィナーレ
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