インフィニット・レスリング   作:D-ケンタ

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第六話 試合開始

ワーワー キャー

 

(……ああ)

 

この感じ、久しぶりだ。以前MMAユースの試合に出た時と同じだ。

 

「あなた!ふざけてますの!?」

 

感傷に浸ってたらいきなりセシリアが叫んできた。もう少し浸らせろよ。

 

「ふざけてねーよ」

「嘘おっしゃい!!なんですのその恰好?それに、どうして専用機ではなく、訓練機の打鉄を展開してますの!?」

 

分かり切ったこと聞くなあ。さっき山田先生にも説明したのにもう一度せなあかんのか。

 

「こっちのが好みだからだよ。それにレスラーが上半身出して何がわr」

「何ですのその理由?わたくしを馬鹿にしてるとしか思えませんわ!?」

 

最後まで言わせろよ。

 

「もういいですわ。あなたのそのふざけた態度、わたくしが正して差し上げます!」

 

態度って、少なくともお前よりマシだと思うぞ。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

「御託は言い。来い!」

 

 

開始早々、セシリアはビットを展開し龍輝の回りを取り囲んだ。俺もそうだったけど、ああされると厄介だ。

そんな状況だというのに、当の龍輝は地面に仁王立ちで立ったまま、動こうとしない。

 

「あいつ、なんで飛ばないんだ?」

 

まだ慣れてないとか?いや、稼働時間は俺とほとんど変わらないはず。

 

『ああーっと齊藤選手、開始早々、セシリア選手自慢のBT兵器「ブルー・ティアーズ」に取り囲まれたーっ!!』

 

実況がどんどんノリノリになってるし。

 

『しかし全く動じていない!ビットに目もくれず、セシリア選手を見据えているー!』

 

ホントにどうするつもりなんだ?迂闊に接近しようとすれば蜂の巣にされるし、見た感じ遠距離武器を装備してるようには見えないし。

 

『おっと、痺れを切らしたか先に動いたのはセシリア選手!四基のビットから放たれた光線が、齊藤選手に降り注ぐーっ!!』

 

俺の時よりも攻撃が苛烈になってる気がする。巻き上がった土煙のせいでモニターからでは、龍輝がどうなったか確認はとれない。

あれだけ激しかったら逆に避けやすかったりするのかな?

 

「煙が晴れてきたな」

 

箒の言葉通り、モニターの向こうがだんだん鮮明になってきた。

 

「なっ!?」

「はぁっ!?」

「ええ!?」

『何ぃーっ!?』

 

煙の晴れた先には、さっきまでと変わらぬ位置で、変わらず仁王立ちをしている龍輝の姿があった。

 

「もしかして、当たってなかったのか?」

「いや、あの弾幕の中でそれは考えにくい」

 

そうだよな。ビットの銃口が龍輝に向いてるのは確実だったし、ある程度外れたとしても何発かは当たるだろうし……分からん。

 

『な、なんと齊藤選手、あの弾幕がなんともなかったかのように平然と立っているー!!』

 

実況の人も驚きを隠せてないようだ。それはそうだよな、いくらシールドや装甲があるからと言っても、衝撃はすさまじいからな。実際凄かったし。

 

「いったい、何をしたんだ?」

 

 

「あ、あなた、一体何をしましたの?」

「何も」

 

セシリアの問いに正直に答える。

 

「嘘おっしゃい!ブルー・ティアーズの一斉射を受けて、平然としているなんてありえませんわ!」

 

嘘って言われても、本当に何もしてないんだから仕方ない。

 

「はいはい。それで、もう終わりか?」

「はい?」

「終わりなら、今度はこっちから行くぞ!」

 

そう言い終わるや否や、目標に向かって歩を進める。捕らえるにしても、ある程度近づかないとな。

 

「ち、近づかないで!ブルー・ティアーズ!!」

 

再度ビットが俺に向かって光線を撃ってきた。俺はその光線を真正面から受ける。

視界の端でゲージみたいなのが減っていくが、気にせず歩を進める。

 

『なんと齊藤選手、ビットによる攻撃を避けようともせず、真正面から受け止めたあーー!!』

「ま、また……。何故避けませんの!?」

 

何故って言われてもなあ。

 

「……これ邪魔だな」

 

バキンバキン ポイ

 

ふう、すっきりした。

 

『これはどういうことだ?齊藤選手、打鉄の両肩部のシールドと腰部のアーマーをもぎ取って無造作に投げ捨てたー!!何を考えてるんだあーー!?』

 

正直盾とかに頼るのは嫌なんだよな。ホントならIS(こんなもの)だってつけたくない。

 

「よ……っと!」ダァン

 

ある程度近づいたため、地面を思いっきり蹴って跳躍して目標に接近する。セシリアは唖然としてるのか混乱しているのか、動いてない。

 

『これ!?齊藤選手、セシリア選手ではなく、4基のビットの内の1基に向かって跳躍ッ!!』

「まず一つ」

 

捕らえたビットを脇で挟み、骨を立てるようにして締め上げる。数秒と経たず、ビットは圧し折れて爆発した。ちょっと痛い。

 

『齊藤選手、先程の織斑選手とは違い、ビットを切るのではなく圧し折ることで破壊したあー!!』

『かけ方からみて、アレはヘッドロックだな。基本的なプロレス技の一つだ』

『成程……って織斑先生!?何故解説席に!?』

 

何やってんだあの人。まあいい。

これが俺の闘い方だ。女に手は上げない。だから武装を狙った。武装を破壊して、戦闘能力を奪うようにすれば、女に手を上げることなく闘える。

 

「残り3……いや4か?」

 

ビットの残りが3つとライフル1丁だから、合ってるな。

 

「よし、次!」

「くっ!?この!」

 

再度ビットの弾幕が張られる。が、そんなものなんの障害にもならない。

ゲージはガンガン減っていってるけど。

 

『攻撃を避けるどころか、その中を駆け抜けるその姿、まるでブレーキの壊れたダンプカーのようです!』

 

実況も大分ノってきてるな。あとそれはスタン・ハンセンの代名詞だ。

 

「二つ目っと!」

 

2基目を捕らえて膝に叩きつける。さっきもそうだったが、ISを装着してるせいで、前腕部が長くなってるからやりづらい。

 

『バックブリーカーだな。元々は腰にダメージを与える技だ』

 

……。

 

「こ、これ以上やらせませんわ!?」ジャキン

「ぬ?」

 

アイツ、ライフルを構えやがったか。だが、その程度で止められるとは思うなよ。

 

「喰らいなさい!」

 

ライフルの銃口から放たれたレーザーが一直線に向かってくる。ビットよりも強力そうだが、やることは変わらん。真正面から受けるだけだ。

 

ドゴォ

 

「ぐぅっ!?」ズザザ

 

おいおいなんて威力だ、衝撃で体が後ろに圧されたぞ。

腰を落として構えてたのに、以外に重い一撃してやがる。

 

『ライフルの一撃に思わず後ずさった齊藤選手。流石にこれは耐えれなかったか!?』

 

ゲージがガクンと減りやがった。ISはダメージを受ける度にバリアー?のエネルギーを消費していって、なくなったら負けとかいうふざけた構造してやがるから、これ以上受けるのは危険だろうな。

 

「流石に堪えたようですわね。どうですの?今謝れば醜態を晒ずに済みますわよ?」

 

……だがな。

 

「フン」

「っ!?」

 

プロレスっていうのは……。

 

「そんな水鉄砲、いくら喰らおうがへでもねーぜ!」

 

ピンチから本番なんだよ!!

 

「っ!?生意気ですわ!!」ジャコン

「!」

 

ズガァーン

 

また撃ってきやがった!衝撃で一部の装甲が弾け飛んだ。

何か鉄の味がする。口の中が切れたか。

 

「ペッ効かねーつってんだろォ!!」ダッ

 

血を吐き出しセシリアに向かってダッシュ。一気に距離を縮めないとこのままじゃ勝ち目はない。

 

「ち、近づかないでいただけませんこと!?」ビシュウ

「ガアっ!?」

 

しまった……もろ顔面に受けちまった。体が投げ出され、妙な浮遊感の後、地面に叩きつけられた。

 

 

『一気に距離を詰める作戦に出た齊藤選手でしたが、セシリア選手のレーザーライフルをもろに貰いダウン!脳震盪でも起こしたのか、全く動きません!?』

「……」

 

見に来いっていうから一応見に来たけど、滅茶苦茶ね。あの人。

闘い方が全く理論的じゃない。ただでさえISの稼働時間や操作技術で差があるのに、専用機よりもスペックは遥かに劣る訓練機で、しかも全く回避をしないなんて、自殺願望でもあるのかとしか思えない。おまけに飛行はせず、歩行と跳躍だけで移動、接近している。……まあ、それでBT兵器を二基も破壊したのだから、よくやった方か……。

でももう終わり。見ただけでわかる、あのレーザーライフルの威力は馬鹿にならないと言う事は。それを防御もせず、真正面から直撃を喰らったのだから。

 

「……時間の無駄だった……」

 

プロレスの力を魅せるとかいうからどんなものかと思ったけど、ただ馬鹿をやっただけじゃない。

そう思いながら私はアリーナに背を向け、体を出口に向けた。

 

ワアァァァ

 

「?」

 

さっきまで静かだったアリーナに、また歓声が起こった。試合終了のアナウンスは鳴ってない筈……。

 

「まさか……!」

 

振り向きアリーナの中央を見た時、私は驚愕した。

 

 

彼が、立ち上がろうとしていた。

 

 

「何で……!」

 

もう機体はボロボロ。彼自身ももう限界のはずだ。確かにISには絶対防御がある。とはいえ、あれほどのダメージをすべてシャットアウトはできない。

それなのに、彼はまだ戦意を失ってはいない。

辺りからは「もういい」「十分頑張った」等の声が聞こえるが、そんなものは届いてないだろう。

何が彼をそこまで駆り立てるの?

 

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