「へっくちっ!!!」
廃れた街に、少年のくしゃみが響く。
先の山から早数時間、街にたどり着いた少年が見たのは人一人としていない廃れた街だった。たどり着いた時には、生存者が居るかもしれないと街中を歩き回ったが、もはやそれも諦めた。民家の中にも、シェルターの中にも誰一人として見つけることができなかったからだ。最初は落胆していた少年だが、すぐに気持ちを切り替え、今は食料探しに奔走していた。
「おじゃましまーす、、、」
少しばかり大きなマーケット、比喩的大きな破損も見受けられず、少年はゆっくり扉を開ける。中は静まり返っている。少し不気味に思いながらも、少年は探索を開始した。
「うえ~、、、くさってる」
肉や野菜などは腐ってしまい全滅している。上辺の物を退け、奥も見てみるがやはり一緒だった。そして少年は思い出す。仮に肉や野菜が食べられる状態であったとしても、調理ができない、と。そそくさとその場を去る少年。顔は少し赤い
「お菓子~、お菓子はないかな~」
先ほどの失敗など知ったこっちゃない。誰も見ていないのだ。少年は、かつては子供達と、それに引っ張られる親達で賑わったであろうお菓子売り場にやってきた。
物色する少年。その腕の中に、次々と食べられるであろう袋菓子やキャンディーなどが溜まっていく。その顔はだらしなく歪んでいる。少年はお菓子が大好きだ。昔、少年がまだ戦場ではなく研究所に居た頃、どんなに辛い実験でも職員がたまにくれるご褒美の飴玉で我慢できた程に。
大量に抱えられるお菓子。その職員がいたら怒られて全て取り上げられただろう。だがそんな存在もここには居ない。少年にとっては正に、地獄の中のオアシスなのだ。
「う~ん。たいりょうたいりょう!」
探索を終えた少年は満足気に頷く。足元には大量のお菓子、お菓子、お菓子。まさに子供の夢とでも言えるその光景。少年はゆっくりと、その場に腰を下ろした。
「、、、、、」
少年はふと、側にある窓を覗く。強く地面を叩く様に降る雨。その音は、マーケット内にも響いている。少年は雨が嫌いだった。匂いが分かりづらくなるからだ。不意に、雨と血の匂いが少年の鼻に入り、顔を顰める。
「、、、くさい」
少年は雨と血が染み込み異臭を放つ自らのコートを見る。防弾、防刃性に優れ、体温も逃がしにくい構造のそれは、今の少年には欠かせない物。だが少年はなんの躊躇もなく脱ぐ。マーケット内は温かいのだ。態々異臭を放つ物を着る必要もないと思ったのだろう。黒のコートから現れたカールスラント軍の軍服。どこか威圧感があった姿も、歳相応に落ち着いた。
「ふ~、、、よし、たべよ!」
少年は一息つくと、視線を大量のお菓子に戻し、どれから食べるか悩む。そして、少年は気付いていない。自分に近づく影の姿に。