霊夢達がこの世界に来て3日が経った。
俺はカバンを片手に玄関の扉を開ける。
「それじゃあ咲夜。霊夢と魔理沙を頼めるか?」
「大丈夫よ。綾斗こそ気を付けてね」
この日、俺は休日が終わり、学校に行かねばならなかった。
(一応、ゲームは置いてきたから、俺が帰って来るまでは大丈夫だろう。)
「んじゃ、行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい。」
△▲△▲
「綾斗ーー!」
通学路を歩いていると、後ろから声を掛けられ、後ろを振り向く。
「やあ、和也(かずや)。朝から早いね」
「いつもの時間帯だがな…」
声の主は、クラスメイトの『皇 和也(すめらぎ かずや)』。
和也とは、通学路が同じという理由で、いつも一緒に登校している。
「それはそうと、綾斗。頼みたい事があるんだが」
「内容によるが…何だ?」
「実は…今度のテニスの練習試合に来てくれないか?」
和也は、運動神経が良いので、それを生かすためテニス部に入っている。
「また唐突だな。何かあったのか?」
「メンバーが2人、体調不良で出られなくなったんだよ。頼れるのお前しかいないんだよ!」
確か、テニス部のメンバーは8人だったはず…。試合にはシングルス3人 ダブルス2回で4人。合計7人必要になる。
2人出られなくなったから、俺が出ることで7人になるのか。
「練習試合はいつだ?」
「明後日だな。今日は木曜日だから土曜日に練習試合がある。」
(なら、大丈夫かな。)
「…和也には借りがたくさんあるし、練習試合出るよ。」
「よっしゃ!」
OKすると、和也は拳を握って喜んだ。
「でも、俺、テニスは2年ぐらいやっていないぞ。」
「それなら、今日から部活に来てくれ。ラケットもシューズも貸す。」
「それなら助かるよ。」
と、ここで学校に着いた。
和也はB組。俺はA組なので教室前で別れる。
☆☆★★
ガラガラ(教室のドアを開ける音)
教室のドアを開けて、俺は自分の机に腰を下ろす。
「綾斗、おはよ~」
「おはよう、桜花(おうか)。」
教室に入り、声を掛けてきたのは『如月 桜花(きさらぎ おうか)』。
幼稚園から、ずっと一緒にいる幼なじみだ。
「さっそだけど、課題見せて~」
「今日もやってきてないのか…。
…………はいよ。」
俺はカバンからノートを取りだして、桜花に渡す。
「いつもありがとね~」
「別にいいよ。でも、三時間目までには返してね。」
「うん!ちゃんと返すよ~!」
桜花は俺のノートを手に、自分の机に着いて、ノートを写し始めた。
桜花は、水泳で全国大会の上位に入るぐらいの実力がある。しかし、その分、勉強が疎かになってしまった。
そこで、彼女は勉強を疎かにしない為に、俺に勉強を教わりに来たり、ノートを提供させることにしたのだ。
(頼ってくれるのは嬉しいけど…ノートぐらい、自分で取って欲しいな。)
と、思っていると、3人目の友人が現れた。
「おっす!綾斗!」
「やあ、隼人(はやと)。」
話し掛けて来たのは、『西園寺 隼人(さいおんじ はやと)』。
隼人とは、高校1年の時に仲良くなって、いつもたわいもない話をよくする仲になった。
「やっと昨日、《東方紺珠伝》を手に入れてプレイしたけど、やっぱ1発クリアできなかったぜ」
「それは残念だね。」
俺が東方について興味を持ち始めたのは、実は隼人からの影響である。
「…それにしても、綾斗。お前疲れていないか?」
「そうかな?」
「ああ。この連休に一体何があったんだよ?」
この連休にあったこと…。
思わず、霊夢達の事を言いそうになったが、こいつにバレるとマズイ。
「この連休、徹夜でゲームしてからね。きっとそうだと思うよ」
「なんだぁ、そう言うことか~」
ここで、チャイムが鳴り、生徒全員が席に着く。少ししてから担任の先生が入ってくる。
ここからは普通通りに行こう。
☆★☆★
それからは、特に何か起きることもなく、放課後になった。
「いや~、綾斗が助っ人として来てくれるのはありがたいぜ。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。」
テニスの練習を終えて、和也と一緒に帰宅路につく。
「それにしても、綾斗の零〇ドロップショットは、今も健在だったな。」
「結構、あれは腕が痛くなるけどね」
たわいもない話を、和也としていると、分かれ道に出た。
ここからは、別々の帰宅路である。
「んじゃ、また明日。」
「また明日。」
和也と分かれて、道のりに沿って歩く。
ここから家まで、10分ぐらいだ。
「東雲 綾斗さん、ですね?」
5分ぐらい歩いていると、脇道から刀を持った少女が現れた。少女の肩には白い物体がふわふわと浮かんでいる。
その姿は、ある東方projectのキャラを思い出せた。
(今度は妖夢か…。 )
「はい。そうですけど…何か用ですか?」
「貴方を殺せば、幻想郷に帰れると言われました。」
おいおい…誰だよそんな事言った奴…
とにかく、どう言う事か事情を聞いてみないと分からないな。
「なので、ここで死んでください」
次の瞬間、俺は走り出していた。
「話し合いなんでできるかー!!」
妖夢の目は、マジの目だった。俺を殺すと言う目。
話し合いは出来ないと感じ、俺は逃げ出すことを決断した。
「早く、家に戻らないと!」タッタッ!
家になら、霊夢も魔理沙も咲夜もいる!
あいつらなら、妖夢と話しが出来るのではないかと考えた。
「逃がしはしません!」
しかし、妖夢は空に浮かび上がり、先回りをしてきた。そして、刀を俺に向ける。
「安心してください、痛みは一瞬です」
「気にしているのはその事じゃないんだけどね…。」
マズイ…。逃げる事がキツイとなると、もう手段がない。
「覚悟!!」
妖夢が刀を降り下ろす。
「俺には…まだやることがあるんだ!!」パシッ!
「なっ!?」
刀が降り下ろされた瞬間、俺は真剣白羽取りをしていた。
結果は成功……だが、刀を手で掴んだ為、手からは血が溢れていた。
「どりゃあああああああああああああああああああああああ!!」
「ぐっ…!?」
俺は妖夢が怯んだ隙に、妖夢の腹にパンチを食らわして気絶させた。
「………………………………」
「はあ…はあ……」ポタ…ポタ…
危なかった。もし、真剣白羽取りが失敗していたら、手からの出血だけじゃすまなかった。
(一応、家に連れて行ってやるか…)
俺は気絶した妖夢を連れて我が家に向かった。
☆★☆☆
「お帰りなさい綾斗…?背中に背負っているのは、魂魄 妖夢かしら?それにその手の傷…」
「ちょっと、妖夢に首を飛ばされそうになっただけだ…。なぁに、少し経てば楽になるさ」
咲夜にそう言って、妖夢を居間に運ぶ。
俺は手を消毒した後、妖夢が起きたら、説明を頼む。と言い残し台所に向かった。今日は俺が晩御飯を作る番だ。
(手の傷もあるし…簡単なものを作るか…)
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晩御飯を食べ終えて、片付けてをしていると、咲夜が時を止めて、俺の前に現れた。
「どうした咲夜?」
「妖夢に説明が終わったから、それを伝えに来ただけよ」
「次に俺を見ても斬りかからないかな…?」
「それは大丈夫よ。霊夢と魔理沙の説明を聞いて落ち着いたみたいだから。」
それは良かった。ここで襲われたら、もう終わりだからな。
「あ…あの……」
ふと、声のした方を見ると、妖夢が申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「私は部屋の掃除でもしてくるわ」パッ!
(時を止める能力っていいなあ…)
咲夜が気を利かせてくれた。
後でお礼を言わないとな。
「あの…綾斗さん。
先ほどは、本当にスミマセンでした!」
と言いながら妖夢は頭を下げる。
妖夢と共に半霊も頭を下げるように見えた。
「お詫びに、私に出来ることなら何でもします!でないと私の気がおさまらないんです!」
「妖夢、今回の件は気にしなくていいよ。結果、俺は生きているんだし、間違いは誰でもあるよ。」
それと、と言って言葉を繋ぐ。
「女の子が簡単に『何でもします。』って言っちゃ駄目だぞ。」
「しかし…!」
妖夢の視線は俺の両手に注がれる。
白羽取りをした時に、俺の手がケガした事を気にしているようだ。
「俺が良いと言っているんだから、良いんだよ。」
「…分かりました。」
ようやく納得してくれたか。
「後、妖夢の部屋は霊夢と魔理沙の部屋の隣だから」
「私も、住んで良いんですか?」
「行くとこないだろ?家は空き部屋だけはあるから、自由に使っていいぞ」
そう説明すると、妖夢は表情を輝かせた。
(やっぱ、妖夢も普通に可愛いな…。)
次の日曜日には、妖夢も連れて外に出掛けて見るか。きっと霊夢達と同じくらい驚くだろうな…。