Fate/Kaleidoscope   作:リク@物書き初心者

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―――そこは世界のどこでもない場所であった。
あらゆる時間と空間を超越した世界。
あらゆる生命はそこにはなく、またあらゆる物体もそこには存在しない。
だが、そこにある男が到達した。
男に言わせれば、その空間は大したことはない。
そこには多くのスクリーンがあり、そこからいろんな世界が見える。
ただただそれだけの話だ。
またそのスクリーンに映った世界を好きに動かせる。
彼は万華鏡だ。彼は観測機だ。
その役割どおりひたすらに世界をスクリーンを通して眺め続ける。


序章
爆死


「ああああああああだめだったああああああああああ」

大声とともに彼女は机に頭を叩きつけた。もし周囲に誰かいたならば間違いなく白い目で見られていたことだろう。

ぐうう、という呻き声を机にキスしたまま漏らす。目尻には若干涙が浮かんでいる。若干ながら嘔吐感も湧いてくる。残念ながら顔を上げる気力は湧いてこない。

苦しい、こんなに苦しい思いをしたのもいつぶりであろうか。ここまで辛い体験をすることは人生のうちでそう多くはあるまい。

今の彼女は座椅子に座ってこたつに足を潜らせ、両手を机の上に投げ出すという少々残念な姿になっていた。傍から見れば居眠りしているか少し大げさに見れば発作を起こしてくたばってしまったかという絵柄だ。

もちろん彼女とて好きでこのような痴態を晒しているのではない。彼女の机の上の右手には通信端末、スマートフォンが握られていた。少し小さめのデザインで一切の無駄のないシンプルなものだ。そしてそれの画面にはある物が映っている。

それはゲームのガチャ画面だった。昨今のソーシャルゲームにおいてガチャというものはそう珍しいものでもなく、むしろどのゲームにおいても効率的に金が集まると導入されている制度だ。確かにガチャシステムはもちろんゲームにもよるのだろうが手軽に、かつ多額の課金をしてもらえるという利点がある。だがそれはあくまで会社側にとってはだ。ユーザーにしてみれば好みのアイテムを得るには多額の金を払わなければならず、運が悪ければ、あるいは運営が極悪な確率を指定していれば課金額は二桁に及ぶ可能性もある。運営にすればいいカモだろうが、その状態に陥ったユーザーにしてみれば笑い話にもならない。

というか、こたつ付きのテーブルにいつまでも顔面を向けている彼女もその被害者であった。

彼女が起動していたゲームは「Fate/grand order」というゲームだ。通称FGOとも呼ばれている。詳しい説明は省略するが、このガチャも例に漏れずガチャを採用しており、これがまた確率が酷いことで有名であった。

そして彼女の端末の画面にはガチャ画面が表示されており、そこには

ピックアップ召喚の名前と共に「沖田総司」というキャラクターが描かれていた。彼女はこの沖田総司を引き当てるほどに七人ほどの諭吉を生贄に捧げたのだ。結果は言うまでもないだろう。いわゆる爆死である。

他の課金ユーザーからすれば彼女の投資額など問題にならないかもしれないが、まだ学生である彼女にとってはこれが精一杯だった。七人の諭吉も彼女にとっては大金、食費も削って得たお金である。

彼女は顔を上げる、というよりそのまま体を仰向けにする。一応ある程度可愛いと言われる程度の彼女の顔は、今は爆死のショックでさながらゾンビか生ける屍といったところだ。サラサラの長い髪も心なしか艶がない。

とりあえず今は何もする気が起きなかった。何気なく時計に目をやるとまだ午後の二時くらいだ。今後の予定について頭を働かせたが、今日はこれからやることもない。つまり暇だった。

そう考えていると何故かとても眠くなってしまった。別段先日遅くまで何かしていたわけでもないし、彼女は生活習慣は割りと良い方だ。あまりこういう風に昼寝がしたくなるということもあまりない。

「・・・寝るか」

しかし起きておいて何かと聞かれれば特にない。ただでさえガチャの代金で通帳の引き落としなんかについて考えると頭が痛くなるのだ。ここは素直に眠気に乗っかって現実逃避と洒落込むとしよう。

彼女がそう決断すると、彼女は更にこたつの奥へと潜り込んだ。こたつの中のほうが温かいので一気に体を潜り込ませる。すると眠気が更に彼女の意識を誘い始める。それを拒むことなく、むしろその誘いに身を任せる。

まぶたを閉じる寸前、世界が歪んだような気がしたが、きっと眠気のせいだろうと決めて彼女は意識を完全に手放した。

 

 

 

それは単なる日常の一節。誰が見ても別段気に留めることはない何気ない人生の一瞬。何ら他愛のない話。この出来事に関わらず世界とは動いていくものだ。

しかしこのくだらない出来事が、因果を結び、運命を紡ぐとはこのとき彼女は知る由もなかった。

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