Fate/Kaleidoscope   作:リク@物書き初心者

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生きる意味への飢餓

人の命などあまりに軽い、少なくとも彼に言わせればそうだった。

綿や羽のようなもの、脆く儚くすぐに壊れてしまう。

確かに優れた知性体ではあるが、銃弾の一つで下手すれば死ぬ。

ナイフで刺す、ビルから落ちる、毒を飲む、そのようなワンアクションだけでどんな聖人も悪人も生きてはいられない。

それ故に男は思う。人は何のために生まれ、そして死んでいくのだろうかと。そして自分はなぜ生きているのだろうかと。

誠に残念ではあるが人間は死を乗り越えられない。どんな高潔な思想の持ち主でも、悪逆の限りを尽くした人間でも最後には必ず死が全てを握りつぶす。生前の事など関係ない、死ねば全て終わりだ。

そう考えれば、いつ死ぬか、どうやって死ぬか、というのは瑣末な問題のように感じられる。どうせ最終的には死んでしまうのだ。なら若くして自殺しようが、誰かに恨みを持って殺されようがどうだっていい。ただゴールまでの時間が短縮されただけだ。むしろさっさと死んだほうが幸せかもしれない。なぜなら人生という命ある限り永遠に走り続けるレースから解放されて楽になるのだから。現に人間の中にも多く自殺する者はいる。もっとも自ら命を断つことには様々な理由があるだろうが、その多くは現世に絶望した末の結論が死だったのではあるまいか。

なにも早死にだけでなく、老衰した者にも同じことが言えるだろう。ベッドに横たわり満足に動くこともできず、現世に希望もない。そう言った人間にも死は終わりをもたらす。

つまるところ、人というのは死ぬために生きているのだ。決して抗えず、逃げられず、それでも進まなくてはならない。死というゴールへ。逃れられぬ絶対の摂理、生命など最後は塵芥と化す価値なき物。

―――本当にそれで良いのだろうか?

男、アラン・リンドバーグは思う。明らかにおかしいと。

死ぬために生まれてくる、という不可解な現象。どうせ死ぬなら生まれてこなければいい。無から有が生まれても、最後にはまた無が待っている。人に限らずありとあらゆる生命は生まれ、成長し、死ぬという循環の中に留まっている。無駄が多すぎるのは明白だ。

ならば、意味を知りたい。

生命の存在理由。即ち人は、生命は何のために生きているのかという問いに対する答えが欲しい。このあまりに生命に対して醒めきった心を潤したい。

 

 

 

ふと気がつけば自分は血みどろの地獄にいた。

広い草原を月の燐光が照らしている。周囲にあるのは無数の死体。死体と言っても焼け焦げ、肉塊と貸しているのでその表現が正しいかはわからないが。周囲には焦げた匂いと生臭い匂いが漂っている。そして自分の手、全身を覆う修道服には無数の返り血がこびりついている。

この死体の正体は、かつては人間であったものの何らかの原因で人間をやめてしまった者である食屍鬼、グールだ。別名リビングデッドなどとも言われる。

アランはこう言った異端を排除する任を負う聖職者だ。動く死体や魔物といった存在は神聖たる教義に反する、といったところだ。彼はこの任を負ってからずっとこういう化物共を始末してきている。グールやリビングデッドなどは所詮死体が変わった姿にすぎない、この程度なら朝飯前と言ったところだった。現に周囲に山ほどいたソンビはすでにボロ雑巾と化している。

突然背後から音がなった。もっとも常人であれば聞き逃すほどの小さな音であったが訓練を受けた戦闘のプロである彼が気づかぬわけもない。

後ろから一体残っていた死体が背後からアランに襲いかかる。すでに死体は原型を留めておらず体中ボロボロだ。しかし死体は脳の制限がない。通常人間が体を動かす時、どんなに頑張ってもフルで力は使えない。自動で力が限界を超えないよう抑えられるからだ。だが死体にはそれがない。なので人間時代より力が強いだろう。

迫る死体を、だがアランは何ら狼狽する事なく素早く振り返り、死体に右の拳を入れた。死体には穴が空き、呻き声を出したかと思うとそのまますぐに消滅してしまった。アランの両手には刻印が刻まれた手袋が付けられている。これは聖刻であり、この手袋をした状態で不浄なる物に触れると相手が崩れるという神聖な品だ。アランは素手で戦う主義なので以前これを作らせ、あくまで自分の拳で異端を狩る。

改めて周囲に残っている気配がないか全身で察知する。どうやらさっきので全滅したらしい。今回の仕事もこれで終わりだ。

何気なく周囲の風景を見渡す。決して心地よい世界ではない。自分以外に立っているものはおらず、他にあるのはボロボロの死体のみ。見るに堪えない光景だ。そして、この化け物たちは以前は人間だったのだ。

彼は聖職者であり、当然信徒なのだが、彼は熱心な宗教家というわけでもない。元は人の生きる意味を探していた彼が、神にでも縋れば道が見えるだろうか、という甘い期待を寄せて入った世界だった。当然ながら真面目に教義を果たしたところで得られるものは何もなかった。そこから惰性で日々の信仰や訓練を続けていたら、いつのまにやら異端審問の係になっていてこうやって元人間を潰している。

―――やはり人の命などとても軽い

死体などすでに見飽きた。自ら手にかけた人間ももはや両手の指では足りない。何も自分は今まで死体だけを倒してきたわけではない。教会が異端と見なした人間も数多く殺してきたのだ。また死体とて昔は人間だったのだ。それを自分は徹底的に消し去っている。

急に目眩がして膝から崩れ落ちる。足元にあった死体に膝がついてしまうが構っていられない。突如として全身の力が抜けてしまった。何も肉体的な原因ではない。精神的な疲労、即ち絶望だ。どうしようもない虚しさが彼に襲いかかる。人の世の、人の命は花のようにあっけないものだ。そしてやはり疑問を呈せずにはいられない。

どうせ死ぬのに、なぜ生きるのかと

その答えは自分には、人類にはあまりにも遠すぎる。個人によって回答があっても人類という総体とっても共通解は見つけられない。ひょっとするとないのかもしれない。

もはや誰でも良い、誰か納得の行く解を教示してほしい。解などないなら、いっそないと言ってほしい。誰か、誰か、誰か――――

「貴様が我を召喚した者か、聖職者よ」

ふと前方から声がかかる。反射的に俯いていた顔を上げる。死体を残してしまったのかと思ったが明らかに違う威圧的な声。

そこには髑髏の仮面を被り、血に濡れた大剣を持つ騎士がいた。全身を黒い甲冑で覆い静かに佇むその姿は黒騎士か、あるいは死神のようだ。

この場所に不思議とマッチしている、と思った。

不思議と体が動かない。呪術を目の前の男に掛けられたのかと思ったが違う。ただ目の前の何かはひたすらに圧倒的だった。幾つもの修羅場をくぐって来た自分ですら全く動けないほどの威圧。恐らくこの男が剣を振るだけで自分は何の抵抗も許されず死ぬだろう。

髑髏の騎士は彼の様子など気にもせず、荘厳な声で口を開いた。

「幽谷の淵より死を持って参った。暗殺者、ハサン・サッバーハである」




はじめまして、リクです。まずはじめに序章を閲覧頂き誠にありがとうございました。
今回このFate/Kaleidoscopeを書いたのは、沖田総司が登場するSSを書きたいと思ったのがきっかけでした。
「ガチャで引けないならSSで書けばいいじゃない!」
その思考に何故か至った私は設定を書き上げこうして執筆、投稿へとこぎつけることができました。
いやぁ、小説書くのも楽じゃないですね(笑)楽しかったから良いんですが(笑)
まだまだ序章ですしこれからどんどん書いていこうと思います!序章を読んで続きも読んでやろうかな、と考えて下った方はぜひ、ぜひ続きも読んで下さい!そしたら疾走しません多分!(お先真っ暗だから投稿ペースは多分遅いです、申し訳ない)
まだ聖杯戦争は始まってすらいませんが次回くらいから戦闘シーンもありますのでお楽しみに~
あまり長くなってもいけないのでこの辺で締めましょう。
最後にTwitterでいつも絡んでくださる皆さん本当にありがとうございます。特に設定について一緒に考えてくださったみやくもさんには特別な感謝を。
それではまた次回!
リクが食う黄金の林檎の味は苦い。
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