「はあ~……」
IS学園校舎の屋上の手すりに体を預け、葵は憂鬱な顔をしながら大きく溜息をついた。
告白大会が終わった後、急に煙幕が葵達を覆った瞬間、葵はその混乱に乗じISを展開しステルスモードにして会場から抜け出し、IS学園屋上に来ていた。
今日は学園祭の為、屋上は立ち入り禁止区域に指定されている為周りには誰もいない。一人になりたかった葵には好都合であり、その誰もいない屋上で葵は一人大きく溜息をついていた。
(……はあ、本当に何やってるんだろ。裕也の件はともかく、弾とはもっと時間掛けていくつもりだったのに)
そして葵は弾の前で好きだと言おうとした自分の姿を思い浮かべると
「あああああああああ!!!! 一体私は何を!」
顔を赤くしながら両手を頭に抱えて、両膝を地面に着けながら葵は少し前の自分の行動に激しく後悔していた。
(なにあれ! 私何やってんの! 何で私弾に本気で告白しようとしたの!? いや、そりゃあ私弾の事好きだけど……今はまだ本気でそう思ってたわけじゃないのに!)
もはや何度目になるのかわからない程、葵は告白大会の出来事を思い出す度に己の行動が恥ずかしくて悶え苦しんでいた。
「あああああ~~~~! いや本当に何で私あんな事やったの! ああくぞ! 絶対裕也のせいだ! あいつが……女の私に本気で告白なんかしたから、私もなんか女として恋愛意識しちゃったんだ! それにこの学園祭というシチュエーションが悪いんだ! 学園祭で告白という、こう恋愛脳になっちゃうシチュエーションのせいで!」
裕也に告白され、女として裕也の気持ちを振った葵は、その後流されるかのように弾に告白しようとしたことに後悔していた。
「しかも言おうとしたら……心でなく、体が拒否して言葉が出なくなるなんて。頭では弾と付き合ったら良い未来に繋がるとか思ってたのになあ。その後裕也や一夏見たら……頭が本当に真っ白になって言葉も考える事出来なくなって、結局……また弾に助けられちゃったし。……本当に、私何やってるんだろう」
しばらく羞恥で悶えた葵だが、
「……ま、でもこれでもう弾と私がそんな関係になる事はなくなったわね」
力無くぼそりと呟いた。この呟きも誰にも聞かれず、風に乗って消えると葵は思っていた。
「おや? そのわりにはほっとしている顔に見えるけど私の気のせいかな?」
「きゃああ!」
誰にもいないと思っていたが、突然隣から合いの手を入れられ葵は驚いて声がした方を向くと、
「か、会長!」
そこには手すりに体を預け、笑みを浮かべている楯無の姿があった。
「会長! い、何時からそこに!」
「わりと最初から。君があの会場から逃げた後、君のIS反応追ってここに来たし。葵君は全く気が付いてなかったけどね」
驚く葵に、楯無は扇子を広げながらにこやかに言った。広げた扇子には「悩める少女」の文字が書かれていた。
「ああああああ!」
今までの動作を全て見られていたと知った葵は、先程までとは違う意味で頭を抱えて羞恥で悶え苦しんでいく。そんな様子を楯無は笑みを浮かべながら眺めていく。
そして悶えすぎて肩で息をする葵に、
「ねえ葵君。聞いてもいいかな。どうして、あの時……五反田君にあんな事言おうとしたのかな」
先程までとは違う声色で楯無は葵に聞いた。
(来た! …まあそりゃあ聞くわよね。あの告白大会は、私が三人とも振るために会長が用意してくれたみたいなものだし……それなのに私が弾に告白しようとしたから)
楯無の質問が冗談とかでなく真面目に聞いていると理解した葵は、
「あの場の空気とノリで」
嘘偽りなく正直に答えることにした。しかし、
「ふーん、そう。せっかく私が君のために用意したあれを、君は空気とノリでぶち壊そうとしたんだ」
(ですよねー)
笑顔のままだが、口の端や目で楯無が怒っている事を葵は理解した。
「いや会長の好意は理解してますよ。……大勢の前で告白されたり振ったりしなければいけないとか、見世物のような事を強要されましたけどね」
若干のジト目をしながら葵は会長に嫌味を言うも、
「でも、今の君には必要な事だったでしょ」
その嫌味はニヤっと笑う楯無に一蹴された。
「あの雑誌が発売されてから、テレビでもネットでも一夏君や葵君、他あの5人で恋愛論争が沸き起こり、その影響で焦りを感じた裕也君達が暴走起こしちゃったものね。それ抜きでも葵君、君は可愛いんだから男性ファン多いからいずれ裕也君以外でも、元男とかIS国家代表でも俺は諦めない! 好きです! と言いだすのが出てくるの時間の問題だと思ってたし」
「……会長、何簪を無視して私を国家代表と言ってるんです。問題発言ですよそれ」
「……だって簪ちゃん、興味ないんだもんそういうの。って、問題はそこじゃないでしょ。そういう連中から牽制するためにも、ああいった公式の場で葵君に好意を持っている男を振り、はっきりと今は恋愛とか考えられませんと言える環境を与えたのに。それが五反田君に告白しようとするから驚いちゃったわよ」
「う……申し訳ありません」
「……しかも空気とノリでいおうとか。葵君、軽率な行動は身を破滅させるわよ」
「……はい」
楯無に怒られ、どんどん身を小さくしていく葵。
「そして私が本当に怒っているのは葵君、君が本気で好きだからという理由で五反田君に告白しようとしたわけじゃないからよ」
「いや、それは……はい、そうですね。弾とは……打算があって告白しようとしました。好意が無い訳じゃないですし、お互い一緒にいたら本当に心から好きになっていくと思ったりしました」
「……なんでそんな事しようとしたの? しかも打算あってなんて……、いや君がそれをしようとした理由はわかるけど、はっきり言ってそれは間違っているわよ。だって」
手すりから体を離した楯無は、体ごと葵の方を向き、
「一夏君と親友のままいたいから、五反田君と付き合いたいなんて」
どこか悲しい顔をしながらも、楯無は強い口調で葵に言い放った。
「……」
無言のままの葵だが、そこに浮かべている表情が楯無の言葉の真実を証明していた。
「君と一夏君が10年来の幼馴染みであり、親友であることは君が入学してからの一夏君との様子から見て誰もが理解しているわよ。IS学園に入学し、周りが女子しかいなくて、どう接していいのかわからなかった一夏君はとても居心地が悪かったのは皆見てて知っている。そんな中、君が入学してから一夏君はとても楽しそうに笑顔を浮かべるようになった。作り笑いでなく、心からの笑顔を。君が来てから、彼の精神は大きく救われた」
「……それは私も同じですけどね。島根にいた時の事を思うと、箒と鈴でも私は女子と接するのが少し怖かった。一夏がいたから、私は自然に振舞う事が出来た。そして一夏が仲介してくれたおかげで、セシリア達とも、クラスの皆とも仲良くなれた」
「君も一夏君も、お互いの存在があって成り立っているものね。完全に心を許せる親友同士だから、か。でも、君は女の子になってしまった。そして女の子になったからある問題を抱えてしまった。そしてそれは、君と一夏君が親友同士だから問題となっている。それは」
「……一夏が誰かと付き合った場合、私は一夏の親友のままにいられないから」
楯無が続きを言う前に、顔を伏した葵が力無く呟いた。
「今はまだいいんです。私が女になって日が浅いですし、一夏も私を表面上は男時代のまま接してくれてますから。ただ、一夏って昔からモテるんですよね。今も幼馴染みの箒を始め、多くの子が一夏が好きで、男女の関係になろうとしている。将来誰を一夏が恋人にするかわかりませんけど、恋人にするなら箒か鈴がいいなあと思ってます。この二人なら……例え私が一夏と仲良くしていても許してくれる気がしますから」
「君の最大の悩みがそれね。一夏君が誰と恋人関係になろうがいいけど、君としては一番の親友の一夏君とは仲良くこのままでいたい。でも……恋人が自分とは違う異性と凄く仲良くされたら、大抵の場合……浮気と思われるものね。で、似たような理由で葵君は」
「はい、弾と恋人関係になろうとしたのはそういうのもあるのは否定しません。親友同士としての関係を間近で見てきた弾なら、一夏と親友のままでいても理解してくれるかなあ思ったりしました。勿論、それだけで弾を恋人にしたいと思ったわけじゃありません。もっと別な理由もありました」
―――へえ、お前結構男らしいじゃん―――
葵の脳裏に、弾と初めてあった光景がよぎっていく。
入学直後、違う小学校から来た生徒数人が、一夏と葵をホモカップル扱いしたことがあった。入学した女子の誰よりも可愛いと言われた葵と、その葵と仲が良い一夏はからかいの対象とされていた。ある日一夏が用事があって先に帰った後、教室に残っている葵に「よお奥さん、旦那は何処に行った?」「奥さんおいて旦那は別の男に走ったか」とからかってくる連中がいたが……1分後には全員床に倒れ殴られた個所を抑えながら激痛で泣きじゃくっていた。
それを冷めた目で眺めていた葵だが、
「へえ、お前結構男らしいじゃん」
後ろから声を掛けられ、振り向くとそこに笑みを浮かべているクラスメイトがいた。
「なんだよ、俺が強いからか?」
「違う違う、お前こいつら殴ってた時『俺はともかく、一夏も馬鹿にしたのは許せない!』とか言ってただろ。親友の為に怒るお前を見て、そう思ったんだよ。自分の事よりも、友が貶されたから怒る。熱い奴だなお前って」
そう言って弾は葵に手を差し出すと、
「俺は五反田弾っていうんだ」
笑顔を浮かべながら自己紹介を始めて行った。
そしてそれ以降、弾は葵と一夏にとって中学で出来た一番の友達となった。
「弾は男の頃から私に偏見を抱かず接してくれましたし、女になってからも色々フォローしてくれました。その度に私は助けられ、弾の事を意識したりしました」
「でも、結局はそれは同性が同性に抱く親愛の友情の枠を出なかった、かな?」
「はい、それを……告白直前で気付かされ、弾にも察しされて遠まわしに振られましたよ」
楯無の指摘に、葵は力無く答えて項垂れて行った。自分の気持ちが、結局は恋ではなく親愛に過ぎなかった事を改めて理解したからだ。
「結局の所、私ってまだ男を本当の意味で異性として好きになれないんですよね」
「……だから私がそのためにあんな場を用意したのに」
「いや本当にすみませんでした」
「でもさあ葵君、君は裕也君に告白された時顔真っ赤だったよ。あれは?」
「……好きになれないは別にしても、あそこまで好きですと言われたら意識しないなんて出来ないですし、好きと思われてるのは素直に嬉しかったんです。……想いにはこたえられませんけど」
「そっか。……よし、私もそろそろ時間ないから此処を離れるけど、最後に一言言うのと質問させてね」
「一言と質問?」
なんだろうと思う葵に、楯無は扇子を広げながら口を隠して言った。
「君は一夏君と親友のままでいたいようだけど、君が考えていた計画は最初から破綻するのが目に見えてたから今回の君の暴走は、本当に結果オーライだったよ。そして質問だけど素直に答えてね。さっき君は男を本当の意味で異性として好きになれないと言ったけど、そんな君にとって、恋人とはどんな存在だと思う。思ったのをそのまま言葉に出してね」
「恋人とは……」
楯無の言った破綻するとはどういうことなのかが気になったが、楯無の聞きたいのは質問の恋人とは何かというもの。思ったのを言葉に出せというから、葵は思い浮かべた言葉をそのまま口に出すことにした。
「そうですね。誰よりも、その人の事について想いを抱いて、一緒にいたら心がやすらぐ存在なんじゃないですか?」
「ふふ、はっはは!」
「何で笑うんです!」
真剣に答えたのに、答えを聞いた瞬間笑い出した楯無に葵は不満を込めて睨んだ。葵から睨まれても、楯無は笑いながら笑みを浮かべると、葵に向かって言った。
「最初から答え出てるじゃない」
「よ、お帰り」
「……葵、ここにいたのか」
告白大会終了後、学園祭の閉会式が始まっても姿を現さなかった葵。携帯にも繋がらずどこにいるのかと思っていたが、ずっと部屋にいたのかよ。
「……だってよ、あんなことあったのに皆の前で姿出すの恥ずかしいじゃん」
「お前がいないせいで、俺が皆から色々言われたり聞かれたり大変だったんだぞ!」
裕也と小鳥遊さんと別れ、一組に戻った俺に待っていたのは
「告白見てたよー! 一夏君、素直になりなよ」「告白でなくライバル宣言って……」
「青崎さん何処に行ったか知らない?」等々、クラスの皆からの質問攻めだった。
箒達からも聞かれたが、皆「葵の奴……様子が変だった」と葵の事が気になっていたようで、姿を見せない葵を心配していた。
その後葵がいないままメイド&執事喫茶は学園祭終了まで続いたのだが……。
「しかし……あんなに頑張ったのに俺達一組は2位だったなんて」
学園祭終了後、楯無さんの結果発表に一組の皆全員優勝する自信があった。あれだけのお客さんが来て、売り上げも物凄くあったのだから優勝したと思っていたからだ。しかし、
「それでは今回の学園祭で最も売り上げが高かったのは……漫画研究部です!」
この楯無さんの言葉を聞き、全員驚愕した。
「……え~二位の1年1組が行ったメイド喫茶も大変売り上げが高かったのですが、その2位から数十万も差を付けて漫画研究部が優勝を果たしました。一部の外国人の方々が大量買いしたのが大きいようです。では漫画研究部部長、更識簪さんどうぞ前に」
会長に呼ばれ、一人の少女が壇上に上がっていく。眼鏡をかけている可愛い子で、なにやら眠そうな目をしているが……え、更識って事は、もしかして楯無さんの妹?
更識さんが壇上に上がると、楯無さんが嬉しそうな顔をしながら、
「いやあさすが簪ちゃん! 優勝おめでとう!」
完全に会長という立場を忘れて、更識さんに笑顔でトロフィーを渡していく。
「では優勝した簪ちゃんに聞きましょう! 優勝に向けて努力した点はなんでしょう!」
「……あのメイドさんと軍人さん、そして中年のおじさんに感謝してます。三人だけで売り上げの数割買ってくれましたから。まあ何よりも我が漫研の妄想力の勝利と言っておきましょう」
そう言ってドヤ顔で両手でトロフィーを持ちあげて、更識さんは会場の皆に誇らしげに見せびらかしていった。
ちなみに漫研がどのような本を描いて出したのか後で見てみたが……主に俺と葵(男)やらシャル(男)とラウラ、シャル(男)とラウラ(男)のなんというか……その場で破りたくなるような内容の本ばかりであった。
そんな本描かれて売られ、売り上げ一位になられたとか……正直俺は物凄く納得がいかない。
「ははは、さすが簪さんだな。今年の夏のお祭りで壁サークルだっただけのことはある」
「? なんだその壁サークルって?」
「お前が知らなくても良い世界だよ」
俺の疑問に、葵は何故か遠い目をして答えをはぐらかした。まあ、何故か俺も知らなくて良い世界な気がしたので、追及するのは止めた。
「…はあ、とにかく今日は色々あって疲れたんだ。悪いが一夏、俺もう寝るから」
そう言って、葵はベット上で横になり、こちらに背を向けた。
……まあ、今日は色々あったからな。少し一人になりたいんだろう。
そう思い、俺は一旦部屋から出る事にした。少し図書室にでも行って、葵が寝るまで時間潰してこよう。そう思って図書室に向かって歩いていく俺だが、道中俺はある考えが頭の中を占めるようになった。
さっき部屋に戻った葵は、何時も通りだった。そう、何時も通り。俺と軽口を叩く、昔ながらの親友。
そう、本当に昔通りに、口調も男のままで葵は俺に話かけていた。
部屋での葵は、行動から口調まで昔とほぼ変わらない。
自室では葵は素で過ごしたいから、と前言っていて、俺はそういうもんかと思っていたのだが、
「どっちが本当のお前なんだ、葵……」
口から勝手に、俺の疑問の声が漏れて行った。
「なあ織斑、お前あの告白大会で葵に喧嘩売ってたけどよ、実際の所お前本当に葵の事好きじゃないのか? 異性として意識ないのか?」
「お前本当にしつこいな、ねえよ。俺もあいつも、そんなのはねえよ」
用が済んだからと言って帰ろうとした裕也と小鳥遊さんだったが、道場から出る前に裕也は振り返り、もう何度目かもわからない質問を俺にし、同じ答えを俺は返した。
「大体、何でそんなにお前は俺が葵に惚れた事にしたいんだ?」
「いや逆に聞くが、男だったら葵に惚れない要素ないだろ。今回俺は葵の事を諦める為にここに来たようなもんだが、葵を目にしたらやっぱり諦めきれず駄目と承知でも可能性を掛けて告白したんだぞ。……言っちゃなんだが俺この先葵よりも良い女性に出会える自信無い」
「それは大袈裟じゃないか?」
「そう感じるお前が異常なんだよ! まずあのルックス! 葵よりも可愛い奴を探す方が難しいだろうが!」
「確かに葵以上っていないな。同等なら俺の周りにいるけど」
「死ねこのハーレム野郎! しかもルックスだけならまだしも、葵って家事全般得意だろ! あんな家庭的な子今時いないぞ!」
それを言ったら箒とかも料理は出来るが……そういや他の家事スキルは知らないか。
「そして基本優しいし困った奴がいたら手を貸すお人好しだし、話や趣味も男に合わしてくれるし。それに葵はそこらの女子よりも元男が信じられない位女の子らしいからな」
は?
「女の子らしい? 葵が?」
何を言ってんだこいつ?
「あいつ普段は猫被って女の子口調だけど、根っこは変わらず男のままだろ? そりゃ菓子作りとかは女の子趣味だけど。島根にいた頃もあいつお前等には男のような口調や態度で接してたんじゃないのか?」
なんせ久しぶりに再会した葵は、俺と箒に昔と変わらない口調で話しかけたせいで千冬姉に殴られてたからな。基本根っこの部分は変わってないもんな。普段は猫被ってるが、部屋では昔のまんまだし。
しかし、次の裕也の台詞に俺は衝撃を受けた。
「はあ、何を言ってるんだ織斑? 猫被っている? それに男みたいな口調や態度? そんな事されたの一回も俺は無いぞ?」
え?
「私もそうだね。普段は勿論、葵は戦闘訓練中でも口調が男っぽくなったなんて無かったよ。出雲技研の職員さん達と話している時の葵は、まるで妹みたいな気がする位女の子な雰囲気出してたね。だから皆葵の事可愛がるようになったってのもあるかな」
裕也に続き、小鳥遊さんも葵の事を女の子らしいと言っているけど……え、どういうことだ?
だってあいつ、俺と久しぶりに会った時は昔と変わってなかったのに……女の子らしくないから千冬姉に矯正されてたんじゃ?
なのに話を聞くと葵は……もう昔から中身が女の子みたいな態度で裕也達と接してた?
あれ、そういや葵って何時から千冬姉から殴られなくなったんだっけ?
確かこっち来てから少し経って、千冬姉に殴られたくないから女口調にしたとか言ってたけど、その日を境に殴られなくなったな。よく考えたら……長年の習慣をそんな簡単にやろうと思って矯正なんでできるか?
黙り込んだ俺を裕也と小鳥遊さんは訝しんだが、
「ま、織斑は昔の葵のイメージが強すぎるからそんな事思ってるんだろ。だから忠告するが……そのイメージがなくなったら、お前確実に葵に惚れるぜ」
早くそうなれと言っているような顔をしながら裕也は、俺にそんな予言をした。
おまけ
学園祭終了後数日経ったある日
「シャルロット。お前宛に国際便が届いているぞ」
「あ、本当だ。誰からだろ……って、これお父さんから!?」
「何! 浮気して出来た娘を男装させて世界を騙しシャルロットを一夏に近づけて籠絡を仕向けた男からの荷物だと!」
「……ラウラ、大体あっているけど籠絡は違うからね。でも一体何で急に僕に?」
「待っていろシャルロット、爆発物の可能性が無いか私が確かめる」
「……無いよそんなの。大体なんで僕を爆殺する理由があるのさ。とりあえず開けてみるよ」
「まてシャルロット! まだ危険が無いか確認が」
「だから大丈夫だって。ん? 中に手紙と……服が入ってるね」
「シャルロット、手紙には何て書いてあるのだ?」
「何だろ一体? え~となになに『すまなかったシャルロット』ってええ! 何でお父さんいきなり謝ってるの?」
「シャルロット、続きを頼む」
「う、うん『私の立場上、私はお前に表立って娘として接する事は出来ない。だが私はお前の事は大切な娘だと思っている』……お父さん、僕の事そんな風に思ってくれてるんだ」
「よかったなシャルロット」
「うんラウラ! 『しかし立場上私はお前に対し辛く当たるしか出来なかった。そして私はお前を第二の男性操縦者としてお前を日本に送り込んだが……その重責でまさかお前がそのような道を歩んでしまったとは……』」
「道? 何のことだそれは?」
「いや僕にもわからないよ『だが私はお前の事は応援する。いや妻がいながらお前の母さんに手を出すような男に応援されても嬉しくないかもしれんが、お前に対し理解者がいる事を知って欲しい。お前が男性として生きる事を私は応援しよう』はあああ! なんだよそれ!」
「シャルロット! お前男になりたかったのか!?」
「なわけないでしょ!ええ! 何がどういう訳でそうなってんの?『学園祭に私はこっそり来ていて、学校生活を送っているお前の姿を見てきた。そこで私が見たのは、お前が男になって、ドイツのラウラ君と仲良くしている本だった』ってそれ漫研の!? 何見てんの父さん!?『最初は半信半疑だったが、お前が₍いるクラスを見てみたら、お前が男装して働いている姿が見えた。そしてお前がラウラ君と仲良く抱き合っている姿を見て確信した。この本に書かれている事は間違いないのだと』間違いだらけだよ!」
「もしかして、抱き合ったというのはあの時クラリッサが来ていた時の事じゃないのか?」
「『恋の形は千差万別。私はお前とラウラ君との仲を応援している。二人で幸せになってくれ。ああそうそう、中に入っている服は私からのささやかなプレゼントだ。それを着て私に写真を送って欲しい。お前の晴れ姿を少しでも早く見たくてな。二学期が終わったらこっちに帰って来なさい。私が一緒にドイツに行って、ラウラ君との交際を説得しにいく。では最後に、愛してるよシャルロット』……な、何なのこれ。どっから否定したらいいの?」
「シャルロット、中に入っている服だが……タキシードとドレスが入ってるのだが」
「……これウエディングドレスじゃないかな」
「これを着ないといかんのか?」
「いいよ着なくて!」
学園祭終了です。
気が付いたら物凄く恋愛関係が濃い話になってしまいました。
当初はもっとあっさり風味で終らせるつもりでしたが、今後TSキャラが絡む恋愛話なんて書く機会あるかわかりませんから、ならばと思い思いっきり趣味で書いてみました。
感想で色々指摘され、反省する箇所が多く残る事となりました。
次機会があれば、反省点は改善しもっと読みやすい展開にしたいなと思ってます。
さてさて、物語が大きく動き出しましたが次はキャノンボール・ファスト飛ばしてタッグトーナメントに進めたいと思ってます。そしてそれを最終章とする予定にしています。
タッグトーナメント、一体一夏は誰と組むのか、葵は誰と組むのか。そしてハブられるのは誰なのか(笑)
ようやく満を持して簪さんが暴れられるのもタッグトーナメントからですので、期待して待っててください。