IS~女の子になった幼馴染   作:ハルナガレ

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女子会 男子会 (前篇)

「最近、一夏から見られてるんだけど」

 

「え?」

 

「どういうことなのだ。それは?」

 

「一夏さんが葵さんをよからぬ目で見ている、という事ですの?」

 

 

「も、もしかして一夏が葵を」

 

「あ~違うから違うから。何かそういう類のものじゃなくて、私の動き? 行動? みたいなのを注視しているような感じなのよね。大体シャルロットが思っているような感じで一夏が見ていたら、このメンバーに相談したりしないわよ

 

 学園祭以降、一夏の様子が少しおかしい。どうおかしいかというと、なんというか……俺を観察しているような気がする。最初は気のせいかと思っていたが、流石に2週間以上も視線を感じていたら気のせいではないだろう。

 IS戦で俺の動きを観察しているとかならわかるが、朝起きて身支度の準備している時、教室で誰かと話している時や勉強している時、廊下歩いている時や厨房借りて料理している時等々、後ろから一夏の視線を感じてくる。さりげなく後ろを振り向いたら、一夏も自然を装って俺から視線を外すが、バレバレなんだよ。

 そして……さっきは皆にはああ言ったけど、一夏って俺達の部屋にいる時は胸や尻ガン見している時があるんだよな。これは流石に箒達には言えないから黙っているけど。しかし同室になってからたまに見られてるなあとか思っていたが、最近はその頻度多すぎなんだよなあ。……すまん一夏、俺もちょっとエロい気持ち入ってる視線はその……意識してしまうんでそういう気持ちで見るの止めてくれ。

 それらの奇行が影響しているのか、放課後のIS訓練も一夏は今一つ集中できて無く、よく千冬さんや会長に怒られているし、剣道の練習の時も俺や箒からは勿論、部長からも一本をよく取られて負けが続いている。

 俺はこのままでは不味いと思い、一夏抜きでちょっと相談したい事があると言って俺は何時ものメンバーをカフェテラスに読んで最近の悩みを明かすことにしたのだが……

 

「……」

 

「……」

 ……箒と鈴、何でお前達俺の話聞いた瞬間黙って目を逸らした。

 

「ねえ箒、鈴。黙っているけどどうした訳?」

 

「葵! い、いや何でもないぞ。そうだな、確かにここ最近の一夏は今一つ集中力に欠けていると私も思っていた」

 

「……」

 俺が箒と鈴に話題を振ったら、箒は少しキョドりながら答えるが、鈴の方は黙ったままだ。

 

「ねえ鈴、鈴はどう思う?」

 

「……」

 鈴に再度尋ねるも、鈴は黙ったままだ。

……いや、これは鈴は何か考え事しているのか、俺の声が聞こえていないようだ。さっきから黙って妙に神妙な顔してるし、何を考えてるんだろう?

 

「ちょっと鈴さん、どうして黙ってますの?」

 黙っている鈴を見かねたのか、セシリアが鈴の体を揺らしながら尋ねる。数回体を揺さぶれた後、突然鈴は立ち上がり、

 

「よし、女子会を開くわよ!」

 先程までとは違い、凛とした顔をしながら俺達にそう宣言した。

 

「はあ? 鈴急に何言ってるの? 今までの話から何で急に女子会やろうという話になるのよ?」

 

「? そもそもなんだその女子会とやらは?」

 

「え~っと、確か前テレビで言ってたけど……女子力を高める集まりだったかな?」

 

「あ~シャルロット、そういうのもあるけど、この場合は単に女子だけで集まってわいわい話し合おうって意味で良いわよ」

 

「で、また言うけど何でそんなのやるわけ?」

 俺は再度呆れ混じりに鈴に尋ねた。俺の相談がどうして女子会に結びつくんだ?

 俺の疑問は他の皆も同じだったようで、皆疑問を持った顔をしながら鈴に視線が集まっていく。その視線を受け止めた鈴はニヤって笑うと、

 

「あたし前々から思っていたのよ。このメンバーで集まるようになって半年経ったけど、何か今一つお互いが打ち解けあって無いなあって。そりゃ一夏を巡ってあたし達ライバル同士だから、たまにお互いを牽制しあったりするし」

 

「ねえ鈴、その一夏を巡るライバル同士って私も入ってるの?」

 

「でもね、なんかそれって勿体ないなあと思うのよ。せっかくISではお互い高め合えそうな連中が揃ってるのに、なんか上辺だけの関係で終らせるみたいのって」

 俺の疑問は、華麗に鈴からスルーされた。……いや、まあいいけど。

 しかし、いきなりな鈴の女子会発言だが、その後に続く鈴の言葉は少し考えさせられる。確かに俺がここに来た時、鈴、セシリアとラウラは少し微妙な関係だった。ほとんど思い付きでいった弁当作戦が意外に上手く行って、その結果お互いの苦手意識みたいなのは徐々に薄れてはいった。まああの作戦は俺がセシリアに料理を教えるという予想外な事もあったが、それでセシリアとも仲良くなれたからいいか。セシリアの料理に対するあまりの考え方の違いのせいで改善は諦めようかなと思ったりもしたけど。

 でも最近じゃシャルロットとラウラは本当に仲の良い親友同士だし、なんだかんだで鈴とセシリアも憎まれ口叩きながらも顔は楽しそうに笑っている。箒は同室の鷹月さんとは仲が良いみたいだし、鷹月さん繋がりで臨海学校以降は谷本さんやのほほんさんとも仲良くなってたりしている。あ、箒の場合は今の話題とはすこし違うか。

 でも鈴が言うほど、もうこのメンバーで集まっても関係がいびつとかそう思わないんだが? いや、これは俺がそう思っているだけで、皆はそう思って無いのか? もしかして、これが最初から女だった者と、途中からチェンジした者の考え方の違いか?

 俺がそう思案している間も、鈴の発言は続いていく。

 

「だからこの際、学園という場所からも解放され、お互い言いたい事とか言い合う場が必要だとあたしは思うのよ。それも一夏という、好きな異性がいない場が! 大抵の場合このメンバーが揃ってる時って一夏もいるじゃない。そうすると一夏がいるから話せない事ってあるわよね。葵の相談も、これ一夏絡みだから皆少し複雑でしょ。葵は違うとか言っているけど、それでも一夏が自分でなく他の女を見てるのよ」

 

「あのねえ鈴。私と一夏の間でそういうのは無いとはっきり学園祭で言ったんだけど」

 

「でも葵、一夏が葵をストーカーしだしたのはその学園祭が終わった後じゃない。関係無いとは言わせないわよ」

 

「う……」

 くそ、確かにそうなんだよな。学園祭以降一夏の奇行が始まったんだし。内心俺だってそれが原因の一部なのかもしれないと思ったりもしたけど……なんかあの告白大会は関係ない気がするんだけどな。

 

「確かに一夏って学園祭以降少しおかしいよね。一夏がおかしくなったのは葵が原因だと僕も思うよ」

 

「わたくしも前後の状況考えたら葵さんが何かしたとしか思えませんわね」

 

「あの告白大会が嫁を変えたというのか」

 あれ、何かシャルロットとセシリア、ラウラがちょっと嫌な視線で俺を見つめだしたんだが。いやちょっと待ってくれ!

 

「だからあ! あれは関係ないと私はわかるの! 裕也は弾はともかく、一夏はあの時は私が思ってた通りに動いてくれたから、あれは純粋に今まで通りの親友として発言してくれたんだと私にはわかるの!」

 ここで誤解されたら堪らないので、俺は少し口調を強くしてシャルロット達の疑問に反論した。変な疑惑もたれ、暴れられるのはまっぴらごめんだ。

 

「ご、ごめん。僕達が悪かったから葵ちょっと落ち着いて!」

 俺の主張に、シャルロットが少し慌てながら煽れを宥める。周りを見ると周囲にいた生徒達が何事かと俺を見つめている。う、いかん。少し熱くなりすぎたか。

 

「ふむ、確かに鈴の言う通りお互い言い合う場というのは良いと私は思う。葵がやったあの告白大会、一夏以外のあの二人の事は私も詳しく聞きたいしな」

 うお、なんだよ箒いきなり! あの雑誌が出てから学園祭が終わった後も聞いてこなかったくせに! というか箒、お前鈴の主張する女子会に乗り気なのか?

 

「そうですわね、それはわたくしも気になりましたわ。一夏さんはその……あまり女性に積極的な方ではありませんが、あの裕也という方は葵さんに一直線に思いをぶつけてましたし」

 

「凄かったよね、クラスに乱入した時から一夏や五反田君を思いっきり敵視してたり周りに人がいようが葵に告白しようとしたり。……一夏もほんの少しだけでいいから、ああいう情熱を僕にむけてくれたらなあと思っちゃった」

 

「クラリッサが『リアル青春キター! 大変良いものが見れましたよ隊長!』等と意味不明な事を言っていたが、確かにあの男が行った行動力は私も見習いたいと思う」

 

「じゃあ、そういうのを聞くためにも」

 

「そうですわね、鈴さんが言う通り女子会とやらは」

 

「うむ、絶好の機会だな」

 おいおい、何か箒に続いてセシリアにシャルロットラウラも何か乗り気になってるんだが。しかも、なんか目が輝いてるし。……やっぱ女子って恋愛話が好きなんだな

 

「……皆あの告白大会について聞いてこないから、私の事を思って放っておいてくれてたのかと思ってたのに」

 何てことはない、単に聞く機会を窺ってただけかよ。しかし、

 

「いい加減あれから結構経ったんだから、葵も気持ちの整理できたでしょ」

 鈴の言葉を聞き、俺は自然に笑みを浮かべてしまった。……ま、確かにもう色々決着ついたのは確かだ。

 

「そうね、その女子会とやらで皆聞きたがっていたあの時の事話してあげるわ」

 俺がそう言うと、皆目を輝かせて喜んでいく。よく考えたらあの時は皆に色々と心配させたからなあ。皆気にしてたようだし、そのお詫びも兼ねて話しておくか。

 

 

 

 

それに――――私も、ちょっと抱え込まずに、裕也や弾の時感じた事皆に話したいしね。あの時感じたあの気持ち、そして私が本当はまだ男を本当の意味で異性だと思えないと伝えたら皆少しは安心するだろうし。

あ、なんかそう思ったら私もちょっと女子会楽しみになってきたかも。この際だから普段聞かないような事を箒達に聞いてみたいし。

あ、でも待った。

 

「ねえ鈴、女子会するのはいいけど、場所はどうするの? あんまり人がいる所で話したくない話題もあるんだけど。でもIS学園の寮でやったら遅くまで部屋にいれないし、そもそも騒いだりしたら千冬さんにどつかれるわよ?」

 

「大丈夫、それは考えてあるわ。そもそもIS学園でやったら解放感が無く、皆の口が軽くならないし。学園外でやるわよ! それに時間を気にせずやりたいから、泊まり込みでね」

 

「泊まり込み! しかし鈴、それだと何処でやろうというのだ? 学園外で泊まるとなると外出許可証にも場所をちゃんと書かないといけないぞ。 旅館にでも行くのか?」

 

「何をそんな勿体無い事するのよ。箒、このIS学園はあんたの実家からそう離れてないんでしょ。箒、あんたの家貸してくれない? 事情があって引っ越してたようだけど、家は残ってるんでしょ」

 箒の疑問に、鈴がさも名案とばかりに言ってるけど……ああ、そういや鈴は知らないんだった。

 

「……すまないが鈴、私達一家が引っ越しを余儀なくされた為篠ノ之神社の運営を任せる為親戚の者が今私が住んでいた家を使用している。だから実家は使えない。使えるのは……道場ぐらいだろう」

 

「え、そうなの」

 暗い顔で言う箒に、鈴の顔が引きつる。ああ、鈴は箒の家を当てにしてたのね。

 

「流石に道場でやるのは……」

 

「女子会とはイメージがかけ離れてるよね」

 

「近所で集まる集会みたいだし」

 別に道場が悪い訳ではないけど、なんかこう雰囲気というものがない。

 

「ああ、どうしよ。箒の家で女子会して一晩中遊ぼうと思ってたのに」

 箒の家が使えないとわかり、鈴が頭抱えて悩みだしてるけど、鈴一瞬本音が漏れてたわよ。

 

「仕方ないね、じゃあ僕とラウラがいる部屋でやろうよ。他の皆は同室の子がいるし。お茶とか用意して皆で楽しもうよ」

 

「そうですわね、それが無難でしょうし」

 他に当てが無いため、シャルロットの意見に皆が賛成していく。

 う~ん、それでもいいんだけど……鈴の言う通り学園の寮じゃいまいち盛り上がれないし、どうせなら私も外出してハメ外したいし。あ、ちょっとまった。そういや明後日なら……

 

「ねえ鈴、その女子会いつ始めようと思ってた?」

 

「え、そりゃあ思ったら即実行! 明後日土曜日だからその日にやろうと思ってたわよ」

 明後日! よし、なら大丈夫ね。

 

「ねえ、それなら私の家で女子会しない」

 私の提案に、まず驚いたのが箒と鈴だった。

 

「え? 葵、お前の家は確か……」

 

「あんたの家は2年前に引っ越してもう無いじゃない」

 

「それなんだけど、私がIS学園に通うようになったしもう私の存在を秘密にする理由も無いから、お父さんとも一緒にいる許可も下りたのよね。だからお父さんも私がここにいるから、またこっちに戻ってくる事になったの。あの家は借家だったけど、まだ空いたままだったのは良かったわ。実は明後日に引っ越し業者が私の家に家具とか持ってくるから、整理するのに少し手伝ってくれたら私の家貸すわ。まあほとんど引っ越し業者さんがやってくれるから、小物整理位しかないけどね」

 

「そうなの! じゃあ葵の家で女子会するわよ!」

 私の言葉を聞き、鈴は再び目を輝かせていく。しかし、

 

「でもいいの葵? 引っ越し初日からお父さんいるのに僕達がいて騒いでも?」

 

「その日はお父様も葵さんと二人でいたいのでは……」

 

「……流石に久しぶりに会うのに野暮ではないだろうか?」

 シャルロット、セシリアに箒は怪訝な顔をしながら私に聞いてくる。あ、そういや普通はそう思うわよね。

 

「あ……、それもそうよね。葵、それはちょっとお父さんが可哀想よ。……久しぶりに会うんでしょ? なら家族優先にしなさいよ。日にちはまた来週にすればいいんだし」

 

「そうだな、家族というものは……大切にした方がいい」

 箒達の指摘で鈴も気付いたのか、今度は神妙な顔をしながら私に忠告していく。ラウラもどこか達観した顔で私に忠告しているけど……何か私凄い地雷を踏ませた気がする。いや、そもそもこのメンバーでそういう心配させるのって、ああ、私物凄く馬鹿だ!

 

「ちょ、ちょっと待って! 大丈夫! その日はお父さんいないから! 近くに住んでる私が家に家具を受け入れるだけで、お父さんが来るのはその翌日から! 本当は土曜日から来る予定だったけど、急に用事出来て来れなくなったみたいだから。だから土曜日はオールで騒いでも大丈夫!」

 周りの心配顔を見て、私は急いで誤解を解くことにする。いけないけない、この問題で皆を不安にしてはいけない。

 

「そ、そうなの。そういうことなら……明後日、皆で葵の家で女子会を開くわよ!」

 懸念事項が無くなった為、今度こそ鈴は楽しそうに鈴は女子会開催を宣言した。箒達も異議など無く、すでに何を私の家に持って行こうかで盛り上がっていく。

 一夏の件で皆に相談したかっただけなのに、こんなことになるなんて。

 でも、明後日の事を楽しみにしている自分に気付き、私も結構思考が女の子らしくなってきたのかなと思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

    おまけ

 

「というわけで一夏。明後日は俺と箒達は俺の家で女子会するから」

 

「……女子会? 何をするんだ?」

 

「今の所多分菓子やジュース食べて飲んで、色々な話をして盛り上がろうな感じ」

 

「ふーん。まあいいんじゃないか? 男の俺抜きで、女子だけで騒いでこいよ」

 

「……拗ねるなよ一夏。こればかりは性別の問題というか、仕方ない事だろ?」

 

「……その女子会ってお前の家でやるんだろ? やけにお前乗り気だな」

 

「ああ、なんせ俺もよく考えたら元男という意識が心の奥底にあるんだよ。セシリア達は勿論、幼馴染の箒や鈴でもちょっと心の奥底で距離置いてる気がするんだよな。その距離感を無くすのに、この女子会は良い機会かなと思ってる」

 

「……そんなものあるのか?」

 

「? 一夏なんか言ったか?」

 

「別に」

 

「そう。まあ一夏も俺達が女子会するんだから、一夏も男子会やったら? 弾や御手洗達と一夏の家でさ。昔俺と一夏、弾の三人でたまに男だけで騒いだみたいに」

 

「男子会か……、よし! なら俺も男子会開いてやるよ! そして葵、後で参加したくなってもお前は参加させてやらないからな!」

 

「はいはい、なら明後日は俺は女子会。一夏は男子会を楽しんでこような」

 

「ああ、お前等が羨ましがる位盛り上がってやるぜ」

 

「……一夏、お前本気で拗ねてるんだな」

 

「やかましい!」




さてさて葵の家で行われる女子会、一夏の家で行われる男子会はどうなっていくのでしょうか?

とりあえず次話ではこの言葉が頻繁に登場することになります。


般若湯

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