IS~女の子になった幼馴染   作:ハルナガレ

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専用機タッグマッチトーナメント 序章

「何があった一夏!?」

 色々な意味で俺にとって衝撃的だった男子会から一週間が経った。今日に至るまでこの一週間で色々あり、悩みがかなり出来てしまったので相談するために弾に会いに五反田家に来たのだが、俺に会った瞬間、弾は俺の心配をし出した。

 

「お、おい一夏! お前顔色悪いぞ! それに何だその目のくまは!? それにどことなくやつれてるし……どうしたんだよ!?」

 はは、やつれてるか顔色悪いか。そうだよなあ、俺も自覚してるよ。葵を始め箒達もここ数日ずっと心配されたし、あの千冬姉からも授業中なのに何度も保健室に行くように言われたもんな。

 でも、俺がこうなってるのって保健室行っても治らないし。葵達からは悩みがあるなら相談に乗るから!と言われ続けたが、さすがにこの悩みは皆に、特に葵には絶対知られるわけにはいかない! 

 

「弾……相談に乗ってくれ」

  おそらく今の俺をわかってくれるのは弾しかいないと思った俺は、藁にも縋る想いで、今の現状を弾に相談する事にした。

 

 

 

 

「で、一夏。相談ってなんだ?」

 弾の部屋に入り、お茶と菓子を俺の前に置いた弾は心配した顔をしながら、俺に声を掛けた。俺は出されたお茶を一口飲み、乾いていた口と喉を潤した後に、

 

「……最近、葵と一緒にいるのがつらい」

 

「……はあ!?」

 ここ数日の悩みを弾に言ったら、弾が驚愕した顔で叫んだ。……まあ、予想通りの反応だな。

 

「いや、まてまて一夏! そりゃどういうことだ? お前一週間前俺の前で葵が好きだ!って言ったじゃないか! え、お前と葵との間で何かあったのか?」

 

「……いや、特にない。あの男子会が終わった後も葵とは特に何かあったわけじゃない」

 ……一つ気になる事があったが、あれは特に関係無いだろうし。

 

「はあ? じゃあどうして葵といるのがつらいんだ? そして何でそんなにやつれてるんだ?」

 弾の疑問に俺は、

 

「いや葵と一緒にいると……もう色々我慢が出来なくなりそうで」

 

「我慢?」

 

「なんかもう……葵とむちゃくちゃセックスしたい」

 ここ最近抑えるのに必死な衝動を我慢している事を打ち明けたら……弾から物凄い白い目で見られた。

 

「……すまん一夏、もう一回言ってくれ」

 

「葵とセックスしたい」

 

「死ねよお前」

 俺がここ数日悩んで苦しんだというのに、弾は虫けらを見るような目をしながら吐き捨てた。

 

「何だよ、友達が物凄く悩んで苦しんでるのに!」

 

「煩い! どんな悩みかと思ったらくだらない事言いやがって! さっきまでの俺の心配返しやがれ!」

 

「はあ!? じゃあ弾お前虚さんとセックスしたくないとでも言うつもりか! あの胸とか尻とか触りたくないとでも言うつもりなのかよ!」

 

「馬鹿言うな! それが出来たら俺もう死んでもいいと思うわ!」

 

「じゃあわかるだろう! 俺のこの苦しみが!」

 俺がそう叫ぶと、俺の剣幕に押されたのか弾はすこしたじろいだ。

 

「あの男子会後、葵と一緒にいるとエロい妄想が止まらなくなったんだよ。今までは葵は親友、中身は男と自分に戒めかけてたから部屋で二人きりでも、別に性的な目で葵を見たりは……いや偶に見てたけど問題無かったんだ。でも最近じゃもう、……ヤバい」

 

「ヤバいって、どうやばいんだ?」

 

「例えば葵の胸とかみたら揉みたくなり、顔見たらキスしたくなる。ベットで横になってる姿見たらルパンダイブしてめちゃくちゃにしたいと思う」

 俺が本心を打ち明けたら、弾は若干顔を引きつらせながら後ずさった。

 

「あ、何だよその反応! だってしょうがないだろ! 好きな女の子が一緒の部屋にいて生活してるんだぞ! 今まで抑えてきた気持ちやらが爆発している分、妄想とか抑えきれなくなってもしょうがないだろうが! 大体、あいつの体エロ過ぎなんだよ! 顔も可愛すぎるし! ああ、何をどうやったら俺は今まであいつと一緒にいてこんな衝動を我慢できてたんだ? これはもう平成の7不思議の一つとして後世に語り継がなければ」

 

「あ~わかった、わかったから落ち着け!」

 

「グヘ!」

 色々な感情が溢れ暴走し出した俺だが、弾に蹴られて吹っ飛ばされたおかげで落ち着く事ができた。

 

「へへ、ナイスパンチ」

 

「キックだ阿保。……つまりあれか、葵の事好きだと自覚したら今まで意識しなかったことが意識し出すようになって困っていると?」

 

「その通り! ……ここ最近寝ようと思っても、俺のすぐ横で葵が無防備で寝てると思うと、夜這いしようとする俺の煩悩とそれを止めようとする俺の理性が凄まじいバトルを引き起こし、悶々として眠りたくとも眠れない」

 

「夜這いってお前、葵にそんな事したら」

 

「……まあ間違いなく、俺は残りの人生入れ歯で過ごす事になるだろうな。以前葵が島根にいた時、葵に迫った男がそんな末路になったらしい。その話を聞いた後、部屋居る時葵に俺がもし同じ事したら? と聞いてみたら『一夏、歯が無くなったら美味しい物食べれなくて辛いよ』と笑顔で言われたぜ」

 あの時の葵の目は、決して冗談で言っている訳じゃなかった。

 

「なら一夏、それは最初から無理なんだし」

 

「わかっている! でもわかっているが意識するななんて無理だよ! 眠れないまま朝を迎える事が多くなり、でも眠れないとか関係無しに朝練はしなくちゃならないし! ……3日前から千冬姉に『朝練する前に体を労われ!』とか言われて殴られて強制睡眠されるようになった」

 

「それってただ気絶してるだけだろ!」

 

「そのおかげでなんとか体持ってるけどな。そしてたまに体が限界を超えて葵がいても寝る事があるが、そういう時は決まって……夢精してしまう」

 

「……夢で葵を襲ってるのか?」

 

「ああ、まさに最高に良い夢で、目覚めが近くなると絶望しながら目を開ける。俺はその度に、夢での出来事を映像で残す機械が無い現実を激しく呪っている。束さんに相談して作って貰うよう何度迷ったことか!」

 

「……ISを作った天才に、そんなくだらない事頼むな!」

 いや、束さんならわりとノリで作ってくれそうな気もする。いや、むしろ好きな夢を見せてくれる機械すら作ってそうだ。そんな機械あったら世界は破滅だな。世のすべての男はその機械の虜にされてしまう。ワールドパージだ。

 

「……というか一夏、そんな様子で大丈夫なのか? 葵に変に思われてないか?」

 

「ああ、そこは問題無いと思う。葵の事が好きだと自覚し、欲望まみれになってるがそれは顔に出さないで普段通りに接している」

 

「……本当か? 話聞いてたらお前が異常なのバレバレというか、もう葵に気付かれてると思うんだが?」

 

「ふ、そこは大丈夫だ。見ての通り寝不足のせいで顔色が最悪だがそれについての心配はかけてるだけで、行動は変えて無い。それに妄想でヤバくなるのは部屋で一緒にいる時だけで、部屋以外では葵をそういう目で見ないし、部屋以外では俺は葵の事今までと変わらないようにしている」

 

「そうなのか? それならいい…のか?まあいい、どっちにしろ今の話を聞く限りでは告白はまだしてないのか」

 

「あ、当たり前だろう! 何言ってんだよ」

 

「いやあんだけ俺達の前で初恋相手とか、好きになったとか言った癖にしてないとか。とんだチキン野郎としか思えないだろ」

 

「だってよ……今更何て言ってあいつに告白すればいいんだよ」

 今まで親友と思っていた奴から異性として好きですとか言われたら、あいつもどう反応していいか困るだろうし。

 

「つーか一夏、お前あの学園祭で葵に告白じゃなくライバル宣言とかやったしな。その前のプールじゃ、お前葵に友達が遊びに誘っても断りやがってとかで散々葵に喚き散らしたし」

 

「そ、それはしょうがないだろう! 学園祭の時はまだ葵にそんな感情自覚しなかったんだし、プールの時も久しぶりに再会し今までの分穴埋めしようとしても葵から断ったりするから!」

 あ~でも学園祭の時もそうだが、あのプールであんだけ葵に怒ったのって……自覚無いだけでやっぱり俺以外二人っきりという状況にムカついてたのかもしれない。

 

「……これだけお前は葵に親友やら幼馴染を強調してたのに、あの学園祭からそんなに経ってないのに葵が好きとか。どの面下げて言えばってのもわかるにはわかるが」

 

「……そうなんだよ。正直今更どう言ったらいいんだってのがなあ」

 そりゃあ今までの発言、あれはあの当時の俺の本心だったけどよ! でも今となっては特大の黒歴史だよちくしょう!

 

「それよりも一夏、肝心な事忘れてないか」

 

「肝心な事?」

 

「葵だけど、あいつまだ女になって2年と半年位だろう。そんな奴がもう男を受け入れられるのか?」

 

「……確かに。女になったからと言って、男をすぐ受け入れられるかと言ったら難しいかもな。でも、あいつ裕也から告白された時顔真っ赤にしてたし、多少は意識してるんじゃないか? 中身男のままだったら、裕也の告白聞いても引くだろ」

 

「なるほど、それもそうだな。……まああいつ、アホな考えしてそれを実行しようとしてたし、葵も男を異性として見る覚悟はあるにはあるか」

 

「アホな考え?」

 

「ああ、それはお前が知らなくていい事だ」

 気になる事を呟く弾に何のことか聞いたら、弾は何故か妙に焦って答えをはぐらかした。……気になるが、こいつって言いたくない事は絶対言わないからなあ。

 

「何だよそりゃ。まあ、いいか。とにかく、葵は男を恋愛対象として見る可能性があるにはあるんだよな」

 

「ああ、俺もそう思うが……あくまで推測だぞ。それに男子会でも言ってが、それよりもお前はまず葵から異性として見て貰わんと駄目だろ。葵はお前を異性というより、幼馴染の一夏としか見てないんだし」

 

「それなんだけど……よく考えたら部屋でのあいつって着替えやら下着とか絶対俺に見せないよう徹底してるし、これって裏を返せば俺を意識しまくってるんじゃ?」

 

「あ~それはあれなんじゃね? 妹の蘭が俺にそういうの絶対見せないようにしてるみたいな? 家族でも見せないだろ、そういうのは」

 

「千冬姉はどこでも脱ぎ散らかしてるし、俺の目の前でも着替えたりしてたけど?」

 

「……一夏、それは例外だと思っとけ。大体、元男でも今女なんだから、男の前でそういうことするのは倫理的に駄目だろ。家族でもないんだし」

 そういうもんなのか? 千冬姉を基準に考えてたけど、駄目ってことか。

 

「葵に告白はまだ早い。というか葵に俺を意識させないと始まらないし……どうすりゃいいんだ?」

 

「知るかよ。葵の事はお前の方がずっと詳しいだろう」

  俺が悩んでるのに、無碍な事言いやがる。友達がいの無い奴だな。

 

「あ、ちょっと待て。そういや葵前こんな事言ってたな。確かあの久しぶりに会った時だが、俺が冗談で葵に彼女になるか? と聞いたら戦って私より弱い男は嫌とか言ってたような」

 

「何! 弾それは本当か!」

 

「い、いや確かにそう言ったけどよ……戦いって事ならIS戦なのか葵の得意な空手なのかよくわからんぞ? 空手基準ならお前一生無理なんじゃ?」

 

「いや、空手前提ならあいつはそういうはずだ! ……よし、これで方向性が決まった!」

 何だよ、葵に意識して貰うのって、結構わかりやすいことだったんじゃねーか! というか、これって俺が今まで散々俺があいつに言ったことでもあるじゃないか!

 

「あの告白大会、あれって実は葵に対する告白になってるじゃねーか! 俺はあいつよりも剣道でも、ISでも強くなると言った! あの時はあれで俺はあいつと、同じ目線でライバルと見てくれると思ったから言ったが、あれが全ての答えだったんだ!」

 ああ、なんだこういうの、灯台下暗し? 幸せの青い鳥って言うのか? 俺がずっとここ最近打倒葵! を目指してたのが、一番葵を攻略するのに近道だったなんて!

 

「……盛り上がるのはいいが、お前って葵よりもかなり弱いんだろ? それじゃ何時になったら告白できるんだよ」

 

「うっせー! 必ず追い着き、追い越してやる! 強くなるため、葵と対等なライバルになる為、そして―――葵を彼女にする為俺はこれからも強くなる!」

 

「すっごい欲望まるだしな決意だな。つーか一夏、盛り上がるのはいいが例えお前が葵より強くなっても、それでお前の告白を受け入れるかはまた別問題な気もするんだが?」

 

「う! そ、それはそうだが、それはこの際考えないようにしよう。強くなることは、葵抜きでも俺の目標なんだし! ようし、やることは決まった! 今日からでも千冬姉に鍛えてもらわねえと!」

 俺は立ち上がり、何か呆れながら俺を見ている弾に向かって、

 

「じゃあな弾! 俺IS学園に帰って練習する!」

 漲る決意を言葉に込めながら言って、俺は五反田家を後にすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、あれが朴念仁とか言われてた一夏なのかよ? 恋は人を変えると言うが変わり過ぎだろう。そして一夏、結局お前が葵を意識して云々は全く解決してないんだけどな」

 


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