IS~女の子になった幼馴染   作:ハルナガレ

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専用機タッグマッチトーナメント ファーストコンタクト

「何だあれ?」

 

「一夏の机に皆群がってるわね」

 何時ものように葵達と朝食を食べた後、皆と一緒に教室に入るとクラスメイト達が俺の机の周りを取り囲んでいた。何があったと思いながら俺は自分の机に近づくと、

 

「あ、織斑君! これ見てよこれ!」

 谷本さんがとてもいい笑顔を浮かべながら、俺の机を指指してた。いや谷本さんだけでなく、「これはあれでしょ!」「私初めて見た!」「おりむーはモテモテだあ~」と相川さんや鷹月さん、普段おっとりしているのほほんさんまで少し顔を赤くしながら俺を見た後、机を見てはしゃいでいる。

 

「え、一体どうしたって……え?」

 興奮したクラスメイト達言われ、俺は自分の机を見てみたらそこには……一通の手紙が置いてあった。手に取って見ると、そこには『織斑一夏様へ』と書かれている。 え、ちょっとまって! まさかこれって!

 

「ラブレターね」

 俺の横から、葵がニヤニヤしながら言って俺が持っている手紙を見つめている。

 

「何! ラブレターだと!」

 

「一夏さんにラブレターですって! 相手は誰ですの!?」

 

「……まさかこういった搦め手でアプローチしてくる子が出てくるなんて」

 

「シャルロット、何だラブレターとは?」

 箒、セシリア、シャル、ラウラも俺が持っている手紙を見つめ、他のクラスメイト達同様興奮し出している。いや、俺もちょっとドキドキしてるけどな。誰か知らないけど、俺の事が好きでこの手紙書いてるんだよな。

 でも……一ヵ月前ならともかく、今の俺にはその気持ちは受け止める事は無理なんだ。気持ちは嬉しいんだけど……俺はすでに好きな子がいるから。

 

「へ~、今時ラブレター書くなんて子いたんだ。で、どうなの一夏、嬉しい? 約束の木の下にでも行ってくる?」

 ……俺がラブレター書いた子に申し訳ないと思ってる横で、その好きな子が、俺の横で手紙を見ながらやたら楽しそうに俺に絡んでいる。おい、ちょっとくらいはヤキモチとか、そういう反応してくれよ。そりゃ俺と葵の関係考えたら、この反応が当然なんだけどよ。

 

「ねえねえ織斑君! 早く開けて中身を見てよ!」

 

「そ、そうだぞ一夏! お前宛で置いてあるのだから、早く読んであげるべきだ!」

 

「そうだそうだ~」

 

「織斑君はやくはやく~」

 葵の反応に少し憮然としていたら、目をキラキラさせながら、鷹月さんが俺に早く読めと催促し、その後箒や周りにいる皆から中身を読んでと催促されるが、ちょっと待ってくれ! 

 

「いや待ってくれよ皆! これは勿論読むけど……まずは俺一人でな」

 

「ま、そりゃそうね。人のラブレターを皆で読むのは野暮だし」

 

「あ、……うん確かにそうだよね」

 一人で読みたいと言う俺に、葵も同調し葵の言葉を聞いた他の皆も多少騒ぎ過ぎたと反省したのか、先程までより少し落ち着いた。

 俺は皆から少し離れ、教室の壁を背にしながら手紙を開ける。中には一枚の紙が折りたたんで入っており、俺は緊張しながらその紙を広げた。そして、ドキドキしながら広げた手紙には!

 

『史上最強の女が、史上最強の男を誘いに来た

青崎葵と組むのが一度なら、私と組むのも一度

機会が二度、君のドアをノックするとは限らない』

  

 …………謎の文章が書かれていた。え~っと……何これ?

 

 

「どうしたの一夏? 変な顔しながら手紙読んで?」

 中身を読んで固まる俺に、葵が不思議そうに言ってくるが……いやこれ読んでそうならない方が無理だろ。そして結局この手紙差出人書かれてないから誰が書いたのかわからないし。何だよ組むって? 何のことだよ? 葵と組むって……そりゃ葵とは何時も一緒にいるか、どういう事だ?

とりあえず俺にわかるのは……これはラブレターでは無いということだけだ。

 俺は葵に近づくと、

 

「……読んでみろ」

 そう言って、俺は葵に手紙を押し付けた。

 

「え、ちょっと一夏! 良いの? だってこれ」

 

「ああ、ラブレターじゃないし……意味が解らん事しか書いてない。それにお前の名前もそこにあるから読んでみろよ」

 

「私の名前も?」

 

「おい、葵! 私にも読ませてくれ!」

 

「私も私も~」

 

「ラブレターでないってどういう事?」

 葵に手紙を渡すと、皆一斉に手紙に群がっていった。そして手紙の中身を知りたかった皆は葵の手に持っている手紙を読み……あ、全員固まっている。

 

「……何ですのこれ?」

 

「嫁よ、これはどういう暗号なのだ?」

 セシリアにラウラが、謎の怪文書について俺に尋ねてくるが、それは俺の方が知りたい。

 他の皆も、葵が持っている手紙を読んで困惑している。そりゃあなあ、何が言いたいのか全くわからんし、これ。

 

 

 結局、この手紙が何を意図してるのかわからない上に差出人も書かれてないので、先程までの興奮が嘘のように皆消えて俺の周りから離れて行った。皆期待していたラブレターな内容じゃ無かったので、興味が無くなったのだろう、一様に残念そうな顔をしていた。

しかし箒達は何故かラブレターでないとわかったら喜んでおり、そして葵は手紙を俺に返すと、

 

「なーるほどね」

 それだけ言って、俺から離れて行った。

 

 

 

 

「……はあ、疲れた。」

疲労の限界を迎えた俺は、そう呟いた後男子更衣室の床にへたり込んだ。今日も俺は千冬姉に稽古して貰い、歩くのも億劫になる位しごかれたからだ。

 

「……流石に剣道場行って箒や葵と部活した後、千冬姉の指導受けるのはキツイ」

 今日の朝も千冬姉に剣の稽古して貰ってたし、朝から晩まで体を動かし続けている。最近そんな毎日が続いてるから、部屋に戻っても葵と会話する余裕も無くそのまま寝てしまう事も多い。強くなる為に自分からお願いしたとはいえ、ちょっと寂しい気もする。

 しかし寝ない場合は……相変わらず葵の事意識してしまうんだよなあ。というかもう意識するなが無理なんだよな。好きな子が無防備で俺に接して来てくれてるのに、何も思うなという方が無茶だ。でも、流石にここ最近の……俺の葵を見る目はよくなかった。葵を見て……そのエロい妄想してたが、これってよく考えなくても幼馴染に対し最低な事やってたな。今思い出しても最低だと思う。幸いなことに葵にはまだ気付かれなかったようだが、なるべく控えた方がいい。もしあいつに察しられて、あいつからゴミを見るような目をされたら……俺は立ち直れる自信が無い。

 だから葵のいる自室に戻る時は、そんな煩悩がない状態で接するのが一番だ。その状態なら俺も変な考えを抱かずに、葵と普通に接していけるし。

 

 というわけで、煩悩が無い状態にするために―――煩悩の元を追い出し、今日も俺は賢者となろう!

 命に関わる為、まず更衣室のカギをしっかりかける。これはこれから行う事を思うと、絶対必要な事だ。それが終わると俺はベンチに腰掛け、俺はズボンをおろし、ポケットティッシュを取り出し中身を広げ取りあえず脇に置く。そして右手にある待機状態の白式の腕輪操作し、空中にディスプレイを表示させる。そのディスプレイには―――葵の際どい水着姿が写しだされ、さらに別のディスプレイには、葵によく似たAV女優さんの本番シーン! さらに別のディスプレイをだせば、弾から借りた黒髪巨乳お姉さん系エロ動画!

 それらを見た俺は、男が産まれながら持っている刀を脇差から大太刀へとクラスチェンジさせ、それを丹念に磨ぎをする準備に入った。

 

 葵を見たらエロい妄想するなら、その対策は簡単だ。そのエロい妄想を物理的に抜いて賢者として接すればいい!

 男子更衣室で何やってんだ俺と思わなくもないが、こうでもしないと俺のエロパワーを抑えるのは無理だ。

 前までは大浴場に入れる日に、男の煩悩を抜く作業を行い心をリフレッシュさせてたが、最近は葵のせいで俺の煩悩が増えまくり、大浴場に入れる日だけじゃ抑えきれなくなった。

 何せ一日貯め込んだだけで、俺の欲望は夢で大爆発してしまうのだ。いや、それはそれで大変良い夢でむしろ何度でも来い! なのだが、朝葵から栗の花の匂いがするとか言われた時はマジ焦った。あいつはあれがあんな匂いするとは知らないようだから気のせいだ! で誤魔化したが、それから数日後またやらかして、幸い夜中だったから葵が寝てる間に洗って事なきを得たが、このままでは不味い。葵に俺がこんな事やってるなんてバレたら不味い!

 そのためにも、ここで煩悩を捨てる必要があるんだ! だからこれはしょうがない! 男の子だもん!

 いやあしかし、ISって便利だなあ。だっていつでもどこでも、好きな場所でこんな風に男の業物を研ぐ作業をするための道具を揃える事ができるんだから。白式にデータ転送させて、それを自分の一番見やすい場所にディスプレイ投影させ、音はプライベートチャネルの応用で俺だけにしか聞こえないように出来るんだぜ!

 まさに思春期の少年には夢のようなアイテムだ! 例え隣に家族がいようとも、ISがあれば大画面、大音量で目的を遂行できるという優れもの! 

 そしてさらに! このISはさらに夢のような事をしてくれるのだ! 俺は葵の水着姿のディスプレイを操作、画面でなく―――立体投影機能に変更! するとどうだ! 俺の目の前で水着姿の葵が姿を現せるのだ! さすが束さんの仕事だ、再現度が半端じゃないぜ! そしてありがとう、夏休みの間俺の白式を点検に来てくれた倉持技研の職員さん達! 貴方達からこんな事教えてくれたおかげで、俺は充実した学園ライフ送れてます! 貴方達の『俺達は教えるだけだ。これを有効活用出来るのは、お前次第だ』と行った時の男らしい顔、一生忘れません。

 これのおかげで、部屋で葵を変態な目で見る頻度を減らせる事ができた。だってこっちだと水着姿で、しかも至近距離からガン見出来るし! 

 まあこんなの、葵にバレたら……半殺し確実だろうな。箒達も好奇心でやっちゃったけど、あいつらにバレたら……いかん、こっちの場合死のイメージが明確に浮かんでしまう。

 頭を振り不吉なイメージを払うと、俺は早く俺の業物の大太刀を研磨すべく、葵やディスプレイを見ながら右手を大太刀に添えようとした瞬間、

 

「!!!」

 俺の体は一瞬にして後方を振り返った。自分でもわからない、ただ、このまま前を向いていてはいけない、後ろを見ろ! という本能が俺を無意識に後ろに振り向かせた。そして振り向いた先には、

 俺から数メートル離れたロッカーの陰から、顔を半分出して右手にスマホを持っている眼鏡をかけた女子生徒の姿があった。

 

「……」

 

「……」

 俺も女子生徒も、互いに無言で見つめあう。……いや、ちょっと待って。誰この子?い、いやそれよりも、俺、まさかこの状況をずっとこの子に……見られてた?

 自分でもわかる位、顔から一気に血の気が引いていく。そしてそれと同時に、俺の大太刀も脇差に、さらに小さくペーパーナイフにダウンしていった。その様子を女子生徒はじっと見つめると、

 

「あ、いや私に構わず、どうか続きを」

 

「出来るか~~~~!」

 眠そうな目をしてるのに、口だけはにんまりと笑いながら言う女の子に、俺は羞恥心含めた大絶叫で返した。

 

「ちょ、いや何だよあんたは!」

 俺は空中に投影していたディスプレイや葵の立体映像を消しながら、さっきまで下ろしていたズボンを慌てて履き直す。そんな様子を女の子はスマホを掲げながらニヤニヤ笑っている。

 

「っておい! 何撮ってんだよ!」

 

「ん? まあ一言で言ったら変態?」

 さっきから勝手に俺を取っている女の子に俺は詰め寄り、手に持っているスマホを叩き落とそうとしたが、女の子は軽くかわして俺から距離を取った。 頭に血がのぼっていたとはいえ、あんなにあっさり俺の手をかわし、自然に後方に下がった身のこなし、ただ者じゃない。 俺は警戒しながら不審者の女の子を眺めていくが……うん? この肩で切りそろえている髪型に可愛い顔してるけど眠そうな目をしており眼鏡をかけているこの子、どっかで見たような……ああ、思い出した!

 

「お前、まさか楯無さんの妹で、葵と一緒の日本代表候補生の更識……簪さん?」

 

「正解~。へえ意外。私の顔と名前知ってたんだ」

 

「そりゃあ、な」

 俺が名前を当てると、更識さんは少し驚いた顔をした。

 知らない訳ないだろう、あの学園祭の時、お前が所属する漫研が俺達のクラスを蹴落として一位になった挙句、全校生徒の前でこれ見よがしにドヤ顔で自慢してたからな! あれかなりいらっときたぞ! さらにその漫研の漫画とやらが、俺と葵(男)、俺と弾、シャル(男)とラウラ(男)の吐き気がするような内容の漫画だったからな! あれほど脳が本の中身を理解するのを拒否した事は無かったぞ!

 

「で、もう一人の代表候補生の更識さんが、男子更衣室に勝手に入ってくるような非常識な真似してまで来て俺に何の用だよ。っていうか、鍵掛けてたはずだぞ!」

 

「学校の男子更衣室で自家発電するような人に非常識呼ばわりする謂れはないと思うけど」

 

「……」

 勝手に入って来て最悪な光景を見られたため、俺は虚勢を張りながら更識さんに嫌味を言ったが、それは100%反論出来ない正論で返された。

 

「……しかも、幼馴染の水着姿を見ながらとか、葵が知ったらどうなるかなあ」

 そう言いながら、更識さんはスマホを操作し、画面を俺に向けた。その画面には……先程の俺が賢者になる為の儀式準備が写っていた。

 

「た、頼む! 見逃してくれ!」

 恥も外見も無く、俺は更識さんの前で土下座した。 これが皆に知られたら、俺もうこの学園にいられない!

 

「いいよ」

 

「へ?」

 俺が懇願したら、拍子抜けするほどあっさり更識さんは俺の目の前で動画を消去した。

 

「いや別にこんな動画取りたくてこんな所に来た訳じゃないしね」

 そう言って、俺に微笑む更識さん。

 

「ありがとう! ありがとう!」

 先程とは一変し、俺は更識さんを天使のように崇めながら、ひたすらありがとうと連呼していく。 本当にありがとう! 命助かった。そして社会的にも命助かった!

 

「織斑君には本で荒稼ぎさせてもらったし、さっき正確なデータも取れたしね……想像よりも小さくてがっかりだったけど」

 超感謝している俺の前で、なんかがっかりした顔しながら更識さんは、視線を俺の股間に注ぎながら溜息をついた。

……うん、もう感謝しなくていいよなこいつには。

 

「……それで更識さん、鍵のかかった男子更衣室にわざわざ侵入してまで俺に何の用だった訳? というかどうやって入った?」

 

「ピッキングで。楽勝だったわ。 それよりもここに来た理由だけど、織斑君が返事しに来ないからこっちから来たんだけど」

 

「返事? 何の事だよ?」

 

「見てないの? 朝織斑君の机に手紙置いてたんだけど?」

 

「ああ? あの手紙更識さんが書いたのか?」

 

「ええ。で、織斑君、返事は?」

 返事はもくそも、あの怪文書の内容が1ミリも理解出来なかったのに、返事もくそもあるかよ。

 

「ごめん、更識さん。あの手紙意味がわからなかったんだけど」

 俺がそう言うと、更識さんはショックした顔をしながら後ずさった。

 

「そんな……あれほど完璧なタッグパートナーの誘い文句は無いはずなのに。バッファロ○マン先生お墨付きだったのに」

 誰だよそいつは。

 俺がどうやら本当にわかってないとわかると、更識さんは大きく溜息をついた

 

「……はあ、わからないなんて、織斑君には少し勉強が必要なようね」

 ……何の勉強だ、何の。

 

「で、更識さん。結局何が言いたいんだよ?」

 

「……いやさっきタッグパートナーとか言ったでしょ。来月末に専用機タッグマッチトーナメントがあるから、織斑君をパートナーにしようと思って誘ったわけ」

 

「……何の話だよ? そんなの俺聞いた事ないけど?」

 

「え? 最近HRで織斑先生からそんな話無かった?」

 

「いや? 聞いてないぞ」

 千冬姉の話聞いてないとかあったら出席簿でどつかれるからな。そこはちゃんと聞いていたから間違いない。しかし専用機タッグマッチトーナメント? そんなのが来月にあるのか? そしてあるにしても……何で更識さん、俺をパートナーにするんだよ。正直今まで面識全くないんだけど?

 

「あちゃ~ちょっとフライングしちゃった。昨日か今日にでもこの件は発表されたと思ってたのに」

 

「逆に何で更識さんは知ってるんだよ」

 

「まあ、お姉ちゃんが生徒会長だからかな。色々な情報入ってくるし」

 

「ふうん、まあ楯無さん生徒会長で色々権力とか持ってるから、そういうの知っててもおかしくないか。しかしわからないんだが、俺と更識さんってまともに話したのってこれが初めてだよな。そのタッグマッチが本当にあるとしても、何でその大会に俺をパートナーにしようとするんだ?」

 俺はさっき思った疑問を更識さんに尋ねる事にした。すると、更識さんは相変わらず眠そうな目をしながら、俺を見据えると面倒臭そうな声で言った。

 

「あ~それ。……なんというか、私ってやらなくて良い事はやらない。やるべきことは手短にってのを信条にしてるんだけど、それでちょっと先の事を考えたら……どうせ織斑君は私と組むことになるんだから、早めに一緒に練習しようと思って」

 




いい加減これで下ネタやめようかなと思います

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