IS~女の子になった幼馴染   作:ハルナガレ

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変化した日常

葵が登校して、数週間が過ぎた。

 葵が一緒の生活に俺は慣れ、それどころか前よりも充実した生活を送っている。葵が来る前まで、俺には本当の意味で心を許せる相手が居なかったのが大きい。一緒に馬鹿な雑談するだけでも凄く楽しい。いや箒達とも仲良くしてるんだが、なんというか葵と比べると空気が堅いっていうのか、たまになんかプレッシャーみたいなものを感じるんだよな。その点、葵は一緒に居てもそんなものは感じないし、逆に落ち着く。さすが10年近くも付き合っただけの物がある。見た目は完璧に女の子になっても、纏っている雰囲気は昔のまま。人は外見じゃない中身だな、いや本当に。

 

 

 午前6時半。毎朝この時間に起きるが、例外なくその時間に葵の姿は無い。ベットは空っぽ。葵は毎朝5時には起きて空手の練習をしているからだ。これは葵のIS操縦技術に大きく影響しているので、毎日欠かさず行い己を高めている。

 何度か付き合ってみたが………凄まじい練習量に俺は何度も倒れそうになり、さらに翌日激しい筋肉痛に悩ませる事になった。その後葵から白式の戦い方を考えると、俺より箒と特訓した方が良いと言われ、休日は箒が嬉々として早朝から俺をシバキ倒すようになった……。

 

 そして俺が起きて顔を洗ってる時位に葵は部屋に帰ってくる。その時俺は洗面所を出て、入れ替わりに葵が入りドアを閉める。練習後の汗を流すためシャワーを浴びるためだ。シャワーの音が聞こえたら俺は再度中に入りさっさと用を済ませる。俺が出るとすぐに葵もシャワーを終え、着替えて出てくる。

数日前、寝惚けて葵のシャワーシーンを遭遇してしまった事があるが、葵は笑って「何、一緒に浴びるか」とからかってきたが、俺はその言葉を聞いても目は葵の体を凝視してしまった。あまりにも二年前とは違う葵の体の変化に、俺は目を奪われてしまった。…まあ、俺もその、だって見てしまうじゃないか!

あまりにも無言でじ~っと見ていたら、いい加減恥ずかしくなってきた葵が俺にシャワー浴びせてきて、俺は意識を取り戻し急いでシャワー室から出た。その後葵から散々「エロ河童」とからかわれたため、二度とそういう事が無いよう注意している。

 いや、今でも脳裏に離れない。いや離したくない光景を脳裏に刻んだのは秘密だ。

しかし、まあ当たり前と言えば当たり前なんだけど、葵は昔みたいに部屋では一緒に着替えないし、シャワーを浴びた後もバスタオル姿だけとかも無く、最低Tシャツ短パン姿になってから俺の前に現れる。下着類も全く俺の目に触れないよう隠しているし、二年前は夏場等はパンツ一丁でゲームをやったりした事を思い出すと…なんか少し寂しく感じるなあ。

 こんな事を葵に言ったら、

 

「何言ってるんだ一夏。俺だってお前みたいにシャツとパンツ姿でだらけたいぜ。ただな一夏…もしそんな恰好でお前と一緒の姿を千冬さんや箒達に見られたら、……寮が廃墟になるぞ」

 と、葵は少し引きつった顔をしながら俺の肩に手を置いた。ははは、そんなまさか…と言えないのが怖いな。そしてさらに葵は、

 

「それにだ、お前ばかり良い目見るのもムカつくしな。俺はお前の裸見ても、少しも嬉しくないがお前は違うだろ。…俺のシャワーしてる姿見た時のあの顔、あれが答えだよなあ」

 と、ニヤつきながら俺を見て言った。…サービスって。いや俺はお前が目の前で着替えたりしたって別になんとも……思わないぞ、うん!本当に!

 

 

 

 

 

 

 午前7時頃に二人で今日の予定や持っていく物の確認をした後、俺達は一緒に朝食に行くのが朝のサイクルとなっている

食堂に着く時間はほぼ毎日同じなので、時間を合わせてるのか箒達と一緒になる事が多い。朝は多く食べる派の俺と同様、朝練をしている葵も朝はかなり食べる。ご飯みそ汁は毎回御代りしてる位だ。皆の朝食の軽く2倍は食べる俺達に、箒達は毎回苦笑いを浮かべている。ラウラは千冬姉の影響なのか、皆より比較的多く食べてるが俺達と比べたらかなり少ないのはいなめない。まあ体格差があるし。一度クラスの女子が葵の健啖っぷりを見て「そんなに食べたら太るよ」と言ったら

 

「毎日毎日体を動かしまくってるから大丈夫。それに食べないと体持たないし成長もしないわよ」

 この発言を聞いた周りの女子達は葵の胸に視線が注がれた。そこには箒にも勝るとも劣らない立派な胸がある。皆葵を羨ましそうに眺めるが葵は気にせず食事を続けていった。

 ちなみに葵は登校三日後から基本食堂や校舎の中等寮以外では完全に女口調で会話するようになった。俺に対してもそうで、「一夏、今日は何食べる?私は今日は鮭定食にしよっかな?」と言ってきた時は思わず葵を凝視した。まあ葵曰く

 

「何時、何処で織斑先生に出くわすかわからない以上、公共の場ではちゃんと女の子しないとね」

 らしい。千冬姉本当にいきなり現れるからな。何度も何度も殴られればそうなるか。そのため箒達も最初は面喰らってたが、今では慣れて普通に会話している。むしろずっとそうしなさいと皆言ってる位だ。

 ちなみに何故葵が男みたいに喋ったら叩かれる理由だが、代表候補生だから。国の看板とも言える存在が、そんなガサツなことはしてはいけませんと主に女性議員から言われてるらしい。これもある意味性差別じゃないとぶつぶつ文句言ってるが、俺も箒達も今の外見じゃ女の口調の方が断然あってるので同意できない。

 

 

 

 

 その後朝のHRを終え、授業に入る。相変わらず授業について行くのがやっとの俺だが、それでも葵が来てからは大分マシにはなった。

「助けてドラエモ~ン、ここがさっぱりわからないんだ」

 

「全くしょうがないなあのびた君は。…で、一夏どこがわからない訳?」

 

「このPICの原理がよくわからないんだよ。山田先生から今度小テストするからよく覚えておきましょうねとか言ってるがよくわからん」

 

「…一夏、これ基礎の基礎な理論なんだけど。この程度でドラえもんに頼るのはどうなわけ?」

 

「じゃあ出来過ぎ君でもいいから教えてくれ」

 

「何がじゃあなんだか、…ISに関する知識は本当に一夏はのび太レベルね。少しは辞書引いて覚えなさいよ。PICはパッシブ・イナーシャル・キャンセラーの略で~」

 こんな感じでバカやっても、葵は乗ってくれてそのままわかりやすく教えてくれる。セシリアやシャルルとかに聞いても快く教えてくれるが、俺は葵が来てからは葵に聞く事が多くなった。まあどっちかというとこういったバカなやり取りがやりたくて葵に聞くのが大きな理由。もう一つは……例えばセシリアに聞いた場合、そしたら箒にシャルルにラウラが不機嫌になるし『どうして私に聞かないの(だ)』となるからだ。何でこうなるんだ?と葵に聞いてみたら苦笑いしか返ってこなかった。

 実習授業の時、葵に専用機が無い事を知った。代表候補生なのに?と俺が聞いたら

 

「別に代表候補生なら全員専用機持ちってわけじゃないわよ。あくまで候補生なんだから。それに私の専用機の話はあったんだけど……誰かさんの専用機を作るためにコア使われて私の分が無くなったし」

 そして俺をジト目で見る葵。いやなんというか…すまん。

 しかし専用機は無いが、葵の操縦技術は確かに凄かった。訓練機に乗ってるのに、専用機持ちのセシリア達とほぼ変わらない動きをする。一番驚いてるのは同じ訓練機に乗ってる箒で、どうやったらそこまで動けるのかと驚愕していた。

 そしてここでも俺は葵に操縦について教えて貰うようにしている。何せ訓練機で俺よりも動きが数段上だもんな。代表候補生の肩書は伊達じゃない。

 

…まあ俺のコーチを買って出ていた皆に不満持たれてるけどね。だってシャルルと同じ位こいつに教えて貰う方がわかりやすいんだよ。葵も俺が理解できるように考えて言ってくれるし。ただ難点があるとすれば

 

……ISスーツって目のやり場に困るよね。

 

    

 

 

 昼食は最近では食堂以外でも、屋上で皆で弁当を持ち寄って食べる事も多くなった。箒は和風、鈴は中華、シャルルは洋食が多い。葵は何でも作れるが、最初は食後のデザートをよく作ってたな。自己紹介の時菓子作りにハマってるとか言ってたが、その通り葵の作るシュークリームはかなり美味しかった。皆葵が作る菓子を美味しい美味しい言って食べてたが、しばらくしたらぱったり作るのを止めてしまった。葵に聞くと、「…作りすぎてね。女の子は食べすぎたら駄目ねやっぱ」と、ばつが悪そうな顔をして言った。

セシリアとラウラも頑張って作るようにしている。最初葵はセシリアの料理を食べ、正直に、

「不味い!ちゃんと味見してるの!」

 と言ってしまった。セシリアはその時はショックで泣いてしまい、葵は慌てて、

 

「ごめん!言いすぎたわ!私がちゃんと料理教えてあげるから!だからセシリア泣かないで」

 と、昼休み時間中セシリアを宥めていた。その後葵は約束通り、暇な時間があればセシリアに料理を教えるようになった。その甲斐あってか、最近では最初に比べかなり上達し、安心してサンドイッチを食べられるようになった。ラウラも酷かったが、シャルルがサポートすることでこちらも最初と比べかなりマシになった。

 ちなみにこの昼食を皆で一緒に食べようと言い出したのは葵。葵はセシリアと鈴、ラウラの仲が妙にギクシャクしてると俺に指摘。学年別トーナメント前に起きた出来事を話すと葵は納得し、その翌日から弁当を各自作って一緒に食べようと提案してきた。各自のお弁当を食べて意見交換してしていけば、心のしこりも解けるんじゃない?とかなり曖昧な理由で行われたお弁当会は、まあ第一回はセシリアが大泣きして終わったが、その後は葵の言う通り順調に進んだ。主にセシリアと鈴には葵が、ラウラにはシャルルが間に入ってやり取りをしたおかげで、最近ではもうわだかまりなく三人とも仲良くなっている。

 しかしこの昼食会、俺だけ弁当を作るのを葵から禁じられている。いや楽だからいいけど、理由を聞いたら

「まだ駄目。皆のレベルがもっと上がったら一夏にも作ってもらうから。今作ったら…皆ショックを受ける」

 との事。なんのこっちゃ。

 

 

 

 

 放課後になると、俺は以前同様アリーナでISの特訓をしている。専用機を持っていない葵は箒同様申請書を出してISを借りてくる。しかし毎日借りる事は出来ないので、基本セシリアや鈴達と訓練することが多い。

 葵と箒だが、借りられない日は道場に行き、剣道勝負をよくしている。箒が転校してからは葵は剣道の練習はしていなかったが、代表候補生になってからは剣道の練習も再開したという。葵と箒だが、7対3の割合で箒が勝っている。さすがにずっと剣道を続けていた箒の方が強いようだが、それでも負けるのが悔しいのか大体箒の方から勝負を挑んでいる。葵の専門はどちらかというと空手だが、箒の実力は本物なので良い特訓になると喜んで応じている。俺も葵に剣道で勝負したが……ええボコボコにされましたよ。

 

 そして葵とのIS戦だが、初めて戦った時はあまりの強さに茫然としたな………。

 

 

「よし、じゃあ一夏!待望のISでの勝負をしましょうか!あ、手加減いる?」

 葵はそう言って打鉄に乗って俺に笑いかけた。その顔は俺に負ける事なんてありえませんと言っている。

 

「ふざけんな!全力できやがれ!」

 俺はそう叫び返した。俺の返事を聞いて葵はニヤっと笑うと、

 

「じゃあ、始めようか!」

 と言って、俺に突撃してくる葵。早い!すぐに後退し距離を開けようと飛翔。しかし葵も俺を追い飛翔。その瞬間いきなり『瞬時加速』で一気に間合いを詰めて来た葵。その手には何も持ってない。

 

「くそ!」

 すぐさま雪片弐型を構え、迎撃態勢を取る。葵の専門は空手だが、これはIS戦。なにか武器を持ってるかもしれない。しかし葵はそのまま俺に接近。俺は雪片弐型を葵めがけて振り下ろす。

 

「それは下策中の下策ね」

 と言って葵は、俺の一撃を真剣白刃取りで受け止めていた。嘘だろ!

 

「じゃあ見せてあげる。私の戦い方」

 と言って葵は雪片弐型から手を放すと、流れるような動作で瞬時に正拳突きの構えを取った。その姿は空中なのに、まるで地面に立っているように、空手をそこまで良く知らない俺から見てもわかる位、完璧な構え。そして白式の腹部に、葵は右の正拳突きを叩きこんだ。その瞬間、

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

凄まじい衝撃が俺を襲い、勢いよく壁に激突。あまりの衝撃に眩暈を起こしかけるが、エネルギーを見て絶句。さっきの一撃で半分は無くなっていた。

 

「まだ終わりじゃないよ」

 そういって再度俺に接近してくる葵。雪片弐型を構え迎撃するも、俺の攻撃を曲芸師のようにかわしていく。そして葵は雪片弐型の柄部分を蹴りあげ、浮いた手をさらに蹴って俺から雪片弐型を手放させた。無手となった俺に葵はまた右拳を構えて、振り抜いた。

 また容赦なく壁に激突した俺。そして絶対防御発動。俺のエネルギーは全て空となった。

 誰が見てもわかる通り、俺の完敗だった。

 

「いやね、私はISは乗るでなく、肉体の延長的な物と思ってるわけ」

 試合終了後、俺は葵にあのでたらめな一撃の正体を聞いてみた。

 

「ISを動かすのはあくまで人間。それは当たり前だけど、ISって人型じゃない。そして精密なその作りは肉体、いやそれ以上の動きを行える。一夏、私はISを操縦するでなくISを装備して戦うと認識してるわ」

 

「そして肉体とISの動きを完全にシンクロさせることで、今まで私が長年練習を重ねて来た空手の技をISで完全再現。あの威力はISを使うことでISが持つ力を最大限まで引き上げてるから産まれる威力。みんなISで格闘してるけど、それはただ動かして相手にぶつけてるだけ。私からすればままごとね」

 そういって葵はラウラ達が待機している所まで戻って行った。回線を通じ俺達の会話を聞いてたんだろう、皆驚愕の目で葵を見ていた。第三世代の特殊兵装とかとまるで違う、おそらく葵しか出来ないだろう攻撃方法に、皆心底驚いていた。

 

 

「葵、次はあたし!あたしが戦うわ!」

皆の所に戻って来た葵に、鈴が真っ先に勝負を挑んだ。

 

「いいわよ、鈴。全力できなさい」

 

「当然!あんたも手を抜かないでガチで来なさいよ!」

 葵は続けて、鈴と試合する事となった。両者互いに少し離れ、開始の合図が鳴ると共に、葵と鈴の戦いは始まった。

 

「喰らいなさい!」

 開始と同時に、鈴は葵に衝撃砲を叩きこんだ。初撃は鈴の衝撃砲の存在を知らなかった葵はまともに喰らってしまい、地面に叩きつけられたが、その後しばらくすると、

 

「ちょっと!何で直撃しないのよ!」

 鈴の放つ不可視の衝撃砲を、葵はギリギリながらもかろうじてかわしていく。完全にはかわせてはないが、それでも直撃をうけるよりもずっとマシだ。縦横無尽に動き回りながら、葵は徐々に鈴との距離を詰めて行った。…しかし鈴の言う通り何で衝撃砲をあれだけ避ける事ができるんだ?

 間合いを詰めた葵に、鈴が双天牙月を取りだして葵目がけて振りおろした。その一撃を葵は近接ブレードを展開させ、鈴の攻撃を防いだ。そして数合切り結んで行くが、鈴よりも先に葵の剣が鈴の肩に直撃。衝撃で体勢を崩した鈴に、すかさず葵は近づいて―――俺にしたように右拳を構え、鈴の胸部に正拳突きを叩きこんだ。

 勢いよく吹っ飛んだ鈴は壁に激突し、その鈴を追う葵。鈴はすぐに体勢を整えて衝撃砲を使いながら応戦したが…最後は葵の左回し蹴りが鈴の腹部を強打してエネルギー切れとなった。試合後、鈴が何故衝撃砲をかわせていたのか葵に問い詰めたら、

 

「第三世代兵装の癖、鈴よく出てるよ」

 の一言で鈴は黙ってしまった。

 

その後も葵の試合は続いた。

俺と鈴の戦闘を見ていたセシリア、シャルル、ラウラの三人も葵に試合を申し込み、葵は全て受けて立った。…どんだけ体力あるんだこいつは?

 

セシリア戦では、セシリアが繰り出すビットの攻撃に最初は翻弄されていたが、葵はその後ビットを近接ブレードを振って一基ずつ破壊して行った。次々破壊されていくビットにセシリアは動揺していたが、近づいてきた葵にミサイルで応戦。そのミサイルも近接ブレードで切り裂く葵だが、その一瞬止まった時にセシリアはスターライトmkIIIレーザーライフルを連射。しかし直撃するも葵もすぐに回避行動を取り、再びセシリアに接近。再度ミサイルを繰り出すセシリアだが、ビットからミサイルが繰り出される瞬間、葵は近接ブレードを投擲。それは正確にミサイルに当たり、セシリアのすぐ近くで爆発。爆発で吹き飛んだセシリアに葵はすぐに近づき、その後勝負を決めた。

 

 シャルル戦だが、これまでの戦いで葵は銃等を使わない事を理解したシャルルは、基本距離を取って戦い、ライフルで狙撃したりマシンガン撃ったりとにかく近づけないような試合運びをした。それでも掻い潜ってくる葵に、中間距離では散弾銃等面の攻撃で葵を牽制、しかしそれでもかわし多少の被弾は恐れず『瞬時加速』で肉薄する葵に、シャルルはその正面に実体シールドを出現。いきなり現れたシールドに葵は避けきれず激突。動きが止まった所をシャルルが『瞬時加速』で距離をつめ、左腕に仕込んだシャルルの最強武器、『盾殺し』を打ち込もうとした。が、その一瞬の後

 

「きゃあ~~~~~~!」

 勢いよく吹き飛んだのはシャルルの方だった。葵はあの一瞬で機体を調整、突進してくるシャルルをカウンターで迎撃したのだ。その後は同じ手は通用せず、ついにシャルルに接近する事に成功した葵は一気に勝負をつけた。ちなみにあの時カウンターが成功したのはほぼ奇跡だったと葵が言っていた。

 

 ラウラ戦だが、この時とうとう葵は敗北した。ワイヤーを掻い潜りラウラに接近するも、ラウラのAICが発動し、完全に行動不能になった。その後葵はラウラにワイヤーブレードにレールカノンとタコ殴りにされ破れた。その姿に俺達は茫然とした。…だってあんだけ俺達ボコボコにした相手がこんなあっさり負けるのは。

 

「あ~、まさかシュバルツェア・レーゲンにあんな装備があるなんて。ここまで完敗されたのは初めてよまったく!」 

 ラウラと戦った後の葵は、口ではそういうも楽しそうな顔をしていた。

 

「でも、いずれその装備も克服してあげるから、覚悟してなさい」

 

「ふ、望む所だ。今回は私の手札を知らなかったからあの結果になっただけだしな。でも次回も私は負けんぞ」

 

 そういって互いを讃えあう二人。その様子を見て

 

「葵!次は私が勝つんだからね!覚悟してなさい!」

 

「次に戦う時は、本日とは違いますわよ!」

 

「そうだね、僕ももっと戦術の幅を利かせるようにするよ」

 三人の言葉を聞いて葵も、

 

「いいねいいねこういう熱い展開!でも次も私が勝つ!」

 と宣言。望む所と言いあってる皆を眺めながら、俺の心にも熱い物が産まれてくる。ああ、やっぱり男ならこの熱い展開は良い!

 

「俺もだぜ葵!次は俺が勝つ!」

 しかし俺がそう言った後、皆の返事は

 

「「「「「それは無理(だ、ですわ)」」」」」

 ……おまえら酷くない?

 

 こうして俺達の日常は流れていくようになった。以前とは違う毎日を、俺は楽しむようになった。そしてそのまま、来週に控える臨海学校も俺は楽しみにした。今のメンバーで迎える臨海学校、それは最高に楽しい思い出になる気がするからだ。

 

 

 そういや葵水着持ってるんだろか?シャルルも男としてここに入学してるんだし、持ってないかもしれない。次の休みの日に二人を連れて買いに行くのも悪くないな。

 


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